11 / 18
若者首脳会談
しおりを挟む
3日後、ちょうど近くの交流館にて各国の王子が集まって会議を行うというイベントがある日。
【魔術師殺し】として暴れまわっていたコビーの妹、アルブレンド・ココアはようやく目を覚ました。
"マすた、めサメた!"
「あぁ、そうだな。けっこう目覚めるのに、時間がかかったな」
ちなみにここ数日の間に、コビーが暇つぶしとして飼い始めたカフェオレの会話力はメキメキと上昇傾向にある。以前だったらただ唸っていたり、鳴き声を出してるような声だったのが、凄い成長である。
ここは、コビーの自室。
アイストロークとの出逢いの後、トルテッタの手を借りて寮へと連れ帰られたココア。3日間も眠り続けていた彼女は、今ようやく目覚めようとしていた。
「うっ……ううっ……」
寝苦しそうな声と共に、目を覚ますココア。
まぶたを開けると共に、人形を思わせるガラスのような瞳がこちらを覗いていた。
「ブラザー、ブラザブラザ? 目が覚めたらコビー兄様、これはいったい?」
「どうやら、覚えてないようだな」
「おぼえ、てない?」
ぽかん、とした様子で呆けた様子で起き上がってこちらを、コビーの方を見るココア。
「コビー兄様、居るという事はここは共和国の学生寮? 何故、私はここに居るんですか?
ティーチ、ティチティチ。教えてください」
「……なにから話したモノか」
と、コビーは部屋の隅に置いていた金庫槍を手にして、ココアに見せる。
「金庫……槍?」
「原理は良く分からないが、魔道具を金庫の中に入れることでその効果を使うことが出来るという不思議な槍だ。なにから話したら良いか分からんが、とりあえずこの金庫槍は元はお前の持ち物、だったんだ」
3日後、ちょうど近くの交流館にて各国の王子が集まって会議を行うというイベントがある日。
【魔術師殺し】として暴れまわっていたコビーの妹、アルブレンド・ココアはようやく目を覚ました。
"マすた、めサメた!"
「あぁ、そうだな。けっこう目覚めるのに、時間がかかったな」
ちなみにここ数日の間に、コビーが暇つぶしとして飼い始めたカフェオレの会話力はメキメキと上昇傾向にある。以前だったらただ唸っていたり、鳴き声を出してるような声だったのが、凄い成長である。
ここは、コビーの自室。
アイストークとの出逢いの後、トルテッタの手を借りて寮へと連れ帰られたココア。3日間も眠り続けていた彼女は、今ようやく目覚めようとしていた。
「うっ……ううっ……」
寝苦しそうな声と共に、目を覚ますココア。
まぶたを開けると共に、人形を思わせるガラスのような瞳がこちらを覗いていた。
「ブラザー、ブラザブラザ? 目が覚めたらコビー兄様、これはいったい?」
「どうやら、覚えてないようだな」
「おぼえ、てない?」
ぽかん、とした様子で呆けた様子で起き上がってこちらを、コビーの方を見るココア。
「コビー兄様、居るという事はここは共和国の学生寮? 何故、私はここに居るんですか?
ティーチ、ティチティチ。教えてください」
「……なにから話したモノか」
と、コビーは部屋の隅に置いていた金庫槍を手にして、ココアに見せる。
「金庫……槍?」
「原理は良く分からないが、魔道具を金庫の中に入れることでその効果を使うことが出来るという不思議な槍だ。なにから話したら良いか分からんが、とりあえずこの金庫槍は元はお前の持ち物、だったんだ」
そして、コビーはココアにこれまでの情報を可能な限り与える。
‐‐‐‐ココアが【魔術師殺し】として、多くの魔術師を襲っていたこと。
----この学園の生徒であるタタン・トルテッタに狙いを定めて、生徒会長にコビーが護衛を依頼されたこと。
----ココアから槍を離したら、アイストークと名乗る謎の人(?)と出会ったこと。
そこまで聞いたココアは、ふむっと考え込む。
その際に胸の下で腕を組むことによって、12という年月では考えられないほど大きく実ったものがさらに強調されている。この光景を特定のとある人物が見ていたら、恐らく嫉妬でどうかしていただろう。
"むゥ……"
「状況に関しては、だいたい理解しました。そしてコビー兄様、私の胸を凝視しているこの小さなのは、何者ですか?」
「そいつはカフェオレ、ちょっと前から飼い始めている妖精で、簡単に言えばペットのようなものだ。頭は良いし、自分で考える力もある。そこまで気にしないで大丈夫だ」
"カフェオレ! ワたしのナまエ!"
「……なるほど、了解しました」
‐‐‐‐相変わらず、可愛げのないやつである。
コビーは淡々と、冷静に情報を聞いているココアを見て、そう思った。
彼女も昔からこうだったわけではない、むしろ魔法が使えないと知ると駄々をこねて周囲を困らせる"こまったちゃん"だった。
彼女が変わり始めたのは、槍を習い始めた頃から。
魔法が使えないため、その情熱を別の事に向けてほしいからと父親である国王が武芸の達人を紹介して、それで彼女が習い始めたのが槍。魔法の才能がない代わりに槍の才能はものすごくあったらしく、彼女はメキメキと上達した。そして、その影響からか、武芸者としては精神を鍛えることも意識しなければならないからか、このような可愛げのない性格に育ってしまったという訳である。
閑話休題、コビーは今度は逆にコビーに対して聞き返す。
「こちらからも聞いておきたいんだが、逆にココアはどこまで覚えているんだ?」
「‐‐‐‐私の記憶、ですか」
今回、気になったのはココアの記憶がどこの時点で途切れているか。
それが分かればあの金庫頭、アイストークの事も分かるかもしれない。
コビーがそう思って尋ねると、ココアは少し考えているようで‐‐‐‐
「‐‐‐‐確か、風車国アルブレンドでゆっくりしていて、散歩ついでに裏々山くらいに行こうかなと思いまして」
「散歩ついでに馬車で一日かかる距離を?」
「ノット、ノトノト。いえ、20分、30分程度かと」
相変わらず、運動神経だけは異常に良いココアである。
若干、いやかなり呆れながらも、コビーはココアの話を聞いていた。
「その最中に、アート、アットアット。なにか芸術的な、綺麗なものを見つけたような……?」
「その後の記憶は?」
「‐‐‐‐ソーリー、ソリソリ。すいませんが、覚えていません」
考え込んでいるようだけれども、やはりココアはなにも思い出せないみたいである。
恐らく、その"綺麗なもの"が金庫槍、もしくはアイストークに関係しているものなのだろうか。そこで操られた、だからその辺りの記憶がない、のだろうか。
「……分かった、とりあえず今は休め」
「はい、ではあそこでジト目でこちらを見ている妖精をダウン、ダウンダウン。下がらせてください」
"ジとォォォォォォォォォォォォ…………"
はいはい、と軽い口調で言いながら、コビーはカフェオレをひょいっと摘まんでいた。
その前までココアのことをジト目でじっくり見つめていたカフェオレだったが、コビーに摘ままれて嬉しそうにしているのをココアは見ていた。
「(ハート、ハトハト。コビー兄様は妖精さんに愛されていますね。
あぁ、背中の羽が綺麗ですね。表と裏のデザインが違うので、正面と背中の印象がだいぶ……。あぁ、私も妖精が欲しくなりますね)」
と、顔は相変わらず人形の面のようになりながらも、ココアはきゅんきゅんしながら、そんな事を考えていた。その時、ココアは急になにかを思い出していた。
「金庫頭……それに首脳会談? まさか、これってコビー兄様が言っていた洗脳された頃の記憶?
コビー兄様、なにか急にリメンバー、リメンバリメンバ。思い出したんですが、これって多分、コビー兄様が‐‐‐‐」
「別に知りたかったわけではないんだが」
首脳会談。近々行われる予定の首脳会談は今日の各国の王子姫5人が揃って会談する、という若者首脳会談なるものだけである。
恐らく、ココアが思い出した、"首脳会談"というのはそれだろう。
「けど、今日の首脳会談‐‐‐‐うちの国からは、"あの姉"が来るんだよな。
‐‐‐‐それだったら助けないとな」
そう思いなおして、コビーは淡々と部屋の外に向かって歩いていく。
"マすタ? いイ顔シてル?"
「オフコース、オフコスオフコス。だって今日、若者首脳会談に登壇するのは、コビー兄様の大好きな、【アルブレンド・ラムネール】姉さまですし」
"むゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……"
「……? また、ジト目?」
☆
ちょうどその頃、学園近くの共和国交流館には5人の若者が揃って、1つの部屋にいた。全員がそれぞれの椅子につき、会談をいつ始めても良い雰囲気が漂っていた。
若者首脳会談、それぞれの国の未来を担う王子や姫達が未来を語り合う場には、共和国に揃い踏みしていた。
一発当てる逆転の国である鉱山国コールフィールドからは、継承順位第1位の【コールフィールド・モナカルト】王子。
あらゆる書物を保存する図書館国ブックブックからは、継承順位第8位の【ブックブック・パルフェ】姫。
魔法よりも科学の発展を優先する工場国アイアンフォースからは、継承順位第85位の【アルザーク・ルカツドン】工場長。
伝統と格式を大切にする庭園国テトラポットからは、継承順位第5位の【テトラポット・ダージリン】姫。
そして、平和と安定を主とする風車国アルブレンドからは、継承順位第3位のアルブレンド・ラムネール姫。
簡単にそれぞれの容姿を説明すると‐‐‐‐
・赤髪ヤンキーの、モナカルト王子
・おっとり金髪ロングの、パルフェ姫
・ボウズの渋顔おっさんの、ルカツドン工場長
・黒髪ショートの足長ドレス美人の、ダージリン姫
・魔女帽子を被った三つ編みお姉さんの、ラムネール姫
‐‐‐‐という感じである。
「‐‐‐‐じゃ、今日の首脳会談を始めましょうか。先月は確か、今後の条約撤廃あたりを話し合っていたんだっけか?」
と、30代くらいの、この中では一番歳をとっているいると思われるアイアンフォース国のルカツドン工場長がそう言って会議を始める。
力があるものが、技術力のある者が全てというこの国にて、王家において重要な物資の発明をして工場長の地位と王位継承権を得たルカツドン工場長。
30代くらいの見た目に見える、実年齢19歳という老け顔おっさんの彼がそう話し始めると、その隣に座っていたラムネール姫が口を挟む。
「いや、だわ。ルカツドン工場長ちゃんったら。
そんなつまらない、どうしようもない話だなんてこんな会議の場で話すべきことじゃないでしょう?」
「……つまらない事か? 俺、なにか間違ってたりするのか?」
「ルカツドンさん、ラムネールちゃんの言葉はあんまり重要視すべきじゃないのでして。彼女はその……頭が良いのでして」
どこか遠慮したように語る、おっとり笑顔のほんわか系の少女、パルフェ姫。14歳という若さの彼女は、腰まで伸びている金髪ロングストレートをくるくると右手で触りながら、もう片方の左手で10数枚の書類を取り出していた。
「……パルフェ姫、それはなんだ?」
「あなたも数日中に貰うであろう、ラムネール姫からの完璧な提案書なのでして。彼女の頭脳なら、こんな事でも可能でしょうなのでして」
パルフェ姫から書類を受け取ったルカツドン工場長は、それを見て息を呑む。
‐‐‐‐完璧。まさしく、完璧であった。
10数年にも渡る五か国間に繋がる商売などを始めとした12の契約事項、それが全て無と化しているのだ。いや、全てがより良い形で解決している。
「(流石は、アルブレンド・ラムネール。女だからと、継承順位は低めだが、彼女の頭脳は優に100年先をいっている)」
正直なところ、この会談はただの茶番だ。5人が仲が良いことを国外に示すための茶番でしかなく、会談で得られたと思われている解決策などは全てラムネール姫が考えたものだ。
コールフィールドで、新たな農作物を作るようになったのも。
ブックブックに、貯蔵されている詳細な情報が書かれた書物が寄贈されたのも。
アイアンフォースにて、新技術の化学装置が作られるようになったのも。
テトラポットの茶葉の歴史どころか、それ以前に茶葉そのものの品種改良にも着手。
‐‐‐‐万能、彼女を言い表そうと思えば、そういう単語を使わなければならないだろう。彼女がちょっとした暇つぶしで行った相談で、いったいどれだけの偉業が為されたのかは計り知れない。
惜しむらくは、そんな彼女に国を良くしようという気が一切ないという事だろうか。あと、彼女の身体の一部が19歳という年齢にしてはまったく成長していない、まったくの絶壁というところだろうか。
神もまた凄すぎる才覚を与えたが、それでも身体に関してはそこまでではなかったみたいである。
「お前が本気でやれば、世界の頂点なんて簡単に取れるだろう。ラムネール」
「いや、だわ。モナカルトちゃんまでそんな事を言い出すだなんて。わたし、国造りに一切興味ないのよ。そう言うことは継承順位1位の、【アルブレンド・シュトロムース】兄様に任せときゃ良いのよ」
「……それでラムネールが納得なら、良いけどよ」
「そうっ! それにこの会合は皆で仲良くするのが目的。親が仲良しなら、子もみーんな仲良し。それがこの会合の目的なんだし」
実際、その目的を額面通りに受け取っているのは、ラムネールただ1人。
後の4人は‐‐‐‐こういった会合に出席していて、他国との繋がりがある事を利用して継承順位を上げ、王位を手に入れようとしているのである。
「今はね、この共和国にはココアちゃんも来てるみたいで、私、嬉しいの。
留学しているコビーちゃんも合わせて、2人とも大好き。私の、お気に入りだったりするわ」
「(可哀想な、コビーちゃんとココアちゃんとやら)」
ラムネールは異常なまでの、化け物じみた才覚の持ち主である天才。その上で、国づくりなどの政策にまったく興味を持たない、未来や将来に期待していない。
そんな人間が"お気に入り"と称して、構われる人間がどのような性格思考になるのか。大人びた喋り方になるくらいなら良いだろうが、もし仮に彼女の主義まで、未来や将来に対してさしたる希望を持たない正確になってるかと思うと忍びない。
「(過ぎたる才覚は、凡人にとっては猛毒だ。こんな強烈すぎる光があったら、確実に性格が歪んでしまっても仕方があるまい。それだけ彼女は、才能が強すぎる)」
ルカツドン工場長は、そんな事を思いながらラムネールを見ていた。
こういった、異常なまでに強すぎる才覚の持ち主とか、自分よりも明らかに強すぎる者との対応も、これから先、国の代表を担うのならば必要となってくる事だから。
「‐‐‐‐もうあかんわ」
と、今の今まで喋らなかったダージリン姫‐‐‐‐艶のある黒髪が特徴の、和服を着崩した格好で来ている姉御さんは、口を開くなり、そんな言葉を吐き出した。
「ごめんな、みんな。うち、もうダメみたいやわ。この会談、抜けさせてもらいます」
「……どうしたの、ダージリン姐。それは全然、完璧じゃないと思いますよ」
いきなり脱退を宣言したダージリン姫に対して、この中でも一番仲が良かったパルフェ姫が歩み寄って、脱退を止めようとしていた。
「……パルフェ、うちはな。もうあかんねん。この会合はそれぞれの国の代表、つまりは長になるんを目的とした会合や。
けどなぁ、庭園国テトラポットの長に未練はないんや。あの古臭い錆びた伝承だけを心の支えにしとる、そんな国をうちは継ぎとうなくなったんや」
「嘘……それは完璧な回答ではありません。この会合は元々、ダージリン姐の提案から始まったのに」
「堪忍してな、パルフェ。やけどなぁ、それだけやないんや。
みんなに報告があるんや、今日ここに来たんわ、皆に報告があるから。それはな‐‐‐‐」
「‐‐‐‐こういう事や」と、ダージリン姫はそう言って"ざくりっ"と剣をパルフェ姫に突き刺していた。
「「「「‐‐‐‐っ!?」」」」
刺されたパルフェ姫、それだけではなく他の3人にも大きな動揺が襲う。
「なっ、んで……ダージ……リンねぇ……」
がたり、とパルフェ姫は音もなくどさりと、倒れていた。
刺されたお腹から大量の血がどばどばと流れ落ちて、大きな血溜まりとなっており、その中に倒れたパルフェ姫の身体が、彼女の着ていた真っ白なドレスが真っ赤に、深紅の色に染まっていく。
「むっ……ダージリン姫ちゃん。あなた、今なにをしているのかをちゃんと理解してるの?」
「そんな事を言ってる場合じゃないぞ、ラムネール! 魔法が使えないよう、安全対策を施された部屋で、こいつ、どうやって武器を?!」
「おいっ! 何とか言いやがれっ!」
3人がそれぞれ、非難の言葉を浴びせる中、浴びせられた当人であるダージリン姫はと言うと、けろりとした、むしろ晴れやかな顔で3人を見ていた。
「勿論、分かっとるわ。こないな事をしでかしたからには、継承権はく奪では収まらへん。
良くて投獄、悪うて死罪、やろな。見せしめにはそれくらいせんと、あかん。
‐‐‐‐でもなぁ、うちはもうそんなこと、ちーとも怖ないねん。何故ならな」
そう言ってダージリン姫は、長い着物で隠れていた足を見せて‐‐‐‐
「‐‐‐‐世界は、今からうちらが取るからや」
‐‐‐‐右足に取り付けられた、"淡く光る金庫"を見せつけるのであった。
【魔術師殺し】として暴れまわっていたコビーの妹、アルブレンド・ココアはようやく目を覚ました。
"マすた、めサメた!"
「あぁ、そうだな。けっこう目覚めるのに、時間がかかったな」
ちなみにここ数日の間に、コビーが暇つぶしとして飼い始めたカフェオレの会話力はメキメキと上昇傾向にある。以前だったらただ唸っていたり、鳴き声を出してるような声だったのが、凄い成長である。
ここは、コビーの自室。
アイストロークとの出逢いの後、トルテッタの手を借りて寮へと連れ帰られたココア。3日間も眠り続けていた彼女は、今ようやく目覚めようとしていた。
「うっ……ううっ……」
寝苦しそうな声と共に、目を覚ますココア。
まぶたを開けると共に、人形を思わせるガラスのような瞳がこちらを覗いていた。
「ブラザー、ブラザブラザ? 目が覚めたらコビー兄様、これはいったい?」
「どうやら、覚えてないようだな」
「おぼえ、てない?」
ぽかん、とした様子で呆けた様子で起き上がってこちらを、コビーの方を見るココア。
「コビー兄様、居るという事はここは共和国の学生寮? 何故、私はここに居るんですか?
ティーチ、ティチティチ。教えてください」
「……なにから話したモノか」
と、コビーは部屋の隅に置いていた金庫槍を手にして、ココアに見せる。
「金庫……槍?」
「原理は良く分からないが、魔道具を金庫の中に入れることでその効果を使うことが出来るという不思議な槍だ。なにから話したら良いか分からんが、とりあえずこの金庫槍は元はお前の持ち物、だったんだ」
3日後、ちょうど近くの交流館にて各国の王子が集まって会議を行うというイベントがある日。
【魔術師殺し】として暴れまわっていたコビーの妹、アルブレンド・ココアはようやく目を覚ました。
"マすた、めサメた!"
「あぁ、そうだな。けっこう目覚めるのに、時間がかかったな」
ちなみにここ数日の間に、コビーが暇つぶしとして飼い始めたカフェオレの会話力はメキメキと上昇傾向にある。以前だったらただ唸っていたり、鳴き声を出してるような声だったのが、凄い成長である。
ここは、コビーの自室。
アイストークとの出逢いの後、トルテッタの手を借りて寮へと連れ帰られたココア。3日間も眠り続けていた彼女は、今ようやく目覚めようとしていた。
「うっ……ううっ……」
寝苦しそうな声と共に、目を覚ますココア。
まぶたを開けると共に、人形を思わせるガラスのような瞳がこちらを覗いていた。
「ブラザー、ブラザブラザ? 目が覚めたらコビー兄様、これはいったい?」
「どうやら、覚えてないようだな」
「おぼえ、てない?」
ぽかん、とした様子で呆けた様子で起き上がってこちらを、コビーの方を見るココア。
「コビー兄様、居るという事はここは共和国の学生寮? 何故、私はここに居るんですか?
ティーチ、ティチティチ。教えてください」
「……なにから話したモノか」
と、コビーは部屋の隅に置いていた金庫槍を手にして、ココアに見せる。
「金庫……槍?」
「原理は良く分からないが、魔道具を金庫の中に入れることでその効果を使うことが出来るという不思議な槍だ。なにから話したら良いか分からんが、とりあえずこの金庫槍は元はお前の持ち物、だったんだ」
そして、コビーはココアにこれまでの情報を可能な限り与える。
‐‐‐‐ココアが【魔術師殺し】として、多くの魔術師を襲っていたこと。
----この学園の生徒であるタタン・トルテッタに狙いを定めて、生徒会長にコビーが護衛を依頼されたこと。
----ココアから槍を離したら、アイストークと名乗る謎の人(?)と出会ったこと。
そこまで聞いたココアは、ふむっと考え込む。
その際に胸の下で腕を組むことによって、12という年月では考えられないほど大きく実ったものがさらに強調されている。この光景を特定のとある人物が見ていたら、恐らく嫉妬でどうかしていただろう。
"むゥ……"
「状況に関しては、だいたい理解しました。そしてコビー兄様、私の胸を凝視しているこの小さなのは、何者ですか?」
「そいつはカフェオレ、ちょっと前から飼い始めている妖精で、簡単に言えばペットのようなものだ。頭は良いし、自分で考える力もある。そこまで気にしないで大丈夫だ」
"カフェオレ! ワたしのナまエ!"
「……なるほど、了解しました」
‐‐‐‐相変わらず、可愛げのないやつである。
コビーは淡々と、冷静に情報を聞いているココアを見て、そう思った。
彼女も昔からこうだったわけではない、むしろ魔法が使えないと知ると駄々をこねて周囲を困らせる"こまったちゃん"だった。
彼女が変わり始めたのは、槍を習い始めた頃から。
魔法が使えないため、その情熱を別の事に向けてほしいからと父親である国王が武芸の達人を紹介して、それで彼女が習い始めたのが槍。魔法の才能がない代わりに槍の才能はものすごくあったらしく、彼女はメキメキと上達した。そして、その影響からか、武芸者としては精神を鍛えることも意識しなければならないからか、このような可愛げのない性格に育ってしまったという訳である。
閑話休題、コビーは今度は逆にコビーに対して聞き返す。
「こちらからも聞いておきたいんだが、逆にココアはどこまで覚えているんだ?」
「‐‐‐‐私の記憶、ですか」
今回、気になったのはココアの記憶がどこの時点で途切れているか。
それが分かればあの金庫頭、アイストークの事も分かるかもしれない。
コビーがそう思って尋ねると、ココアは少し考えているようで‐‐‐‐
「‐‐‐‐確か、風車国アルブレンドでゆっくりしていて、散歩ついでに裏々山くらいに行こうかなと思いまして」
「散歩ついでに馬車で一日かかる距離を?」
「ノット、ノトノト。いえ、20分、30分程度かと」
相変わらず、運動神経だけは異常に良いココアである。
若干、いやかなり呆れながらも、コビーはココアの話を聞いていた。
「その最中に、アート、アットアット。なにか芸術的な、綺麗なものを見つけたような……?」
「その後の記憶は?」
「‐‐‐‐ソーリー、ソリソリ。すいませんが、覚えていません」
考え込んでいるようだけれども、やはりココアはなにも思い出せないみたいである。
恐らく、その"綺麗なもの"が金庫槍、もしくはアイストークに関係しているものなのだろうか。そこで操られた、だからその辺りの記憶がない、のだろうか。
「……分かった、とりあえず今は休め」
「はい、ではあそこでジト目でこちらを見ている妖精をダウン、ダウンダウン。下がらせてください」
"ジとォォォォォォォォォォォォ…………"
はいはい、と軽い口調で言いながら、コビーはカフェオレをひょいっと摘まんでいた。
その前までココアのことをジト目でじっくり見つめていたカフェオレだったが、コビーに摘ままれて嬉しそうにしているのをココアは見ていた。
「(ハート、ハトハト。コビー兄様は妖精さんに愛されていますね。
あぁ、背中の羽が綺麗ですね。表と裏のデザインが違うので、正面と背中の印象がだいぶ……。あぁ、私も妖精が欲しくなりますね)」
と、顔は相変わらず人形の面のようになりながらも、ココアはきゅんきゅんしながら、そんな事を考えていた。その時、ココアは急になにかを思い出していた。
「金庫頭……それに首脳会談? まさか、これってコビー兄様が言っていた洗脳された頃の記憶?
コビー兄様、なにか急にリメンバー、リメンバリメンバ。思い出したんですが、これって多分、コビー兄様が‐‐‐‐」
「別に知りたかったわけではないんだが」
首脳会談。近々行われる予定の首脳会談は今日の各国の王子姫5人が揃って会談する、という若者首脳会談なるものだけである。
恐らく、ココアが思い出した、"首脳会談"というのはそれだろう。
「けど、今日の首脳会談‐‐‐‐うちの国からは、"あの姉"が来るんだよな。
‐‐‐‐それだったら助けないとな」
そう思いなおして、コビーは淡々と部屋の外に向かって歩いていく。
"マすタ? いイ顔シてル?"
「オフコース、オフコスオフコス。だって今日、若者首脳会談に登壇するのは、コビー兄様の大好きな、【アルブレンド・ラムネール】姉さまですし」
"むゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……"
「……? また、ジト目?」
☆
ちょうどその頃、学園近くの共和国交流館には5人の若者が揃って、1つの部屋にいた。全員がそれぞれの椅子につき、会談をいつ始めても良い雰囲気が漂っていた。
若者首脳会談、それぞれの国の未来を担う王子や姫達が未来を語り合う場には、共和国に揃い踏みしていた。
一発当てる逆転の国である鉱山国コールフィールドからは、継承順位第1位の【コールフィールド・モナカルト】王子。
あらゆる書物を保存する図書館国ブックブックからは、継承順位第8位の【ブックブック・パルフェ】姫。
魔法よりも科学の発展を優先する工場国アイアンフォースからは、継承順位第85位の【アルザーク・ルカツドン】工場長。
伝統と格式を大切にする庭園国テトラポットからは、継承順位第5位の【テトラポット・ダージリン】姫。
そして、平和と安定を主とする風車国アルブレンドからは、継承順位第3位のアルブレンド・ラムネール姫。
簡単にそれぞれの容姿を説明すると‐‐‐‐
・赤髪ヤンキーの、モナカルト王子
・おっとり金髪ロングの、パルフェ姫
・ボウズの渋顔おっさんの、ルカツドン工場長
・黒髪ショートの足長ドレス美人の、ダージリン姫
・魔女帽子を被った三つ編みお姉さんの、ラムネール姫
‐‐‐‐という感じである。
「‐‐‐‐じゃ、今日の首脳会談を始めましょうか。先月は確か、今後の条約撤廃あたりを話し合っていたんだっけか?」
と、30代くらいの、この中では一番歳をとっているいると思われるアイアンフォース国のルカツドン工場長がそう言って会議を始める。
力があるものが、技術力のある者が全てというこの国にて、王家において重要な物資の発明をして工場長の地位と王位継承権を得たルカツドン工場長。
30代くらいの見た目に見える、実年齢19歳という老け顔おっさんの彼がそう話し始めると、その隣に座っていたラムネール姫が口を挟む。
「いや、だわ。ルカツドン工場長ちゃんったら。
そんなつまらない、どうしようもない話だなんてこんな会議の場で話すべきことじゃないでしょう?」
「……つまらない事か? 俺、なにか間違ってたりするのか?」
「ルカツドンさん、ラムネールちゃんの言葉はあんまり重要視すべきじゃないのでして。彼女はその……頭が良いのでして」
どこか遠慮したように語る、おっとり笑顔のほんわか系の少女、パルフェ姫。14歳という若さの彼女は、腰まで伸びている金髪ロングストレートをくるくると右手で触りながら、もう片方の左手で10数枚の書類を取り出していた。
「……パルフェ姫、それはなんだ?」
「あなたも数日中に貰うであろう、ラムネール姫からの完璧な提案書なのでして。彼女の頭脳なら、こんな事でも可能でしょうなのでして」
パルフェ姫から書類を受け取ったルカツドン工場長は、それを見て息を呑む。
‐‐‐‐完璧。まさしく、完璧であった。
10数年にも渡る五か国間に繋がる商売などを始めとした12の契約事項、それが全て無と化しているのだ。いや、全てがより良い形で解決している。
「(流石は、アルブレンド・ラムネール。女だからと、継承順位は低めだが、彼女の頭脳は優に100年先をいっている)」
正直なところ、この会談はただの茶番だ。5人が仲が良いことを国外に示すための茶番でしかなく、会談で得られたと思われている解決策などは全てラムネール姫が考えたものだ。
コールフィールドで、新たな農作物を作るようになったのも。
ブックブックに、貯蔵されている詳細な情報が書かれた書物が寄贈されたのも。
アイアンフォースにて、新技術の化学装置が作られるようになったのも。
テトラポットの茶葉の歴史どころか、それ以前に茶葉そのものの品種改良にも着手。
‐‐‐‐万能、彼女を言い表そうと思えば、そういう単語を使わなければならないだろう。彼女がちょっとした暇つぶしで行った相談で、いったいどれだけの偉業が為されたのかは計り知れない。
惜しむらくは、そんな彼女に国を良くしようという気が一切ないという事だろうか。あと、彼女の身体の一部が19歳という年齢にしてはまったく成長していない、まったくの絶壁というところだろうか。
神もまた凄すぎる才覚を与えたが、それでも身体に関してはそこまでではなかったみたいである。
「お前が本気でやれば、世界の頂点なんて簡単に取れるだろう。ラムネール」
「いや、だわ。モナカルトちゃんまでそんな事を言い出すだなんて。わたし、国造りに一切興味ないのよ。そう言うことは継承順位1位の、【アルブレンド・シュトロムース】兄様に任せときゃ良いのよ」
「……それでラムネールが納得なら、良いけどよ」
「そうっ! それにこの会合は皆で仲良くするのが目的。親が仲良しなら、子もみーんな仲良し。それがこの会合の目的なんだし」
実際、その目的を額面通りに受け取っているのは、ラムネールただ1人。
後の4人は‐‐‐‐こういった会合に出席していて、他国との繋がりがある事を利用して継承順位を上げ、王位を手に入れようとしているのである。
「今はね、この共和国にはココアちゃんも来てるみたいで、私、嬉しいの。
留学しているコビーちゃんも合わせて、2人とも大好き。私の、お気に入りだったりするわ」
「(可哀想な、コビーちゃんとココアちゃんとやら)」
ラムネールは異常なまでの、化け物じみた才覚の持ち主である天才。その上で、国づくりなどの政策にまったく興味を持たない、未来や将来に期待していない。
そんな人間が"お気に入り"と称して、構われる人間がどのような性格思考になるのか。大人びた喋り方になるくらいなら良いだろうが、もし仮に彼女の主義まで、未来や将来に対してさしたる希望を持たない正確になってるかと思うと忍びない。
「(過ぎたる才覚は、凡人にとっては猛毒だ。こんな強烈すぎる光があったら、確実に性格が歪んでしまっても仕方があるまい。それだけ彼女は、才能が強すぎる)」
ルカツドン工場長は、そんな事を思いながらラムネールを見ていた。
こういった、異常なまでに強すぎる才覚の持ち主とか、自分よりも明らかに強すぎる者との対応も、これから先、国の代表を担うのならば必要となってくる事だから。
「‐‐‐‐もうあかんわ」
と、今の今まで喋らなかったダージリン姫‐‐‐‐艶のある黒髪が特徴の、和服を着崩した格好で来ている姉御さんは、口を開くなり、そんな言葉を吐き出した。
「ごめんな、みんな。うち、もうダメみたいやわ。この会談、抜けさせてもらいます」
「……どうしたの、ダージリン姐。それは全然、完璧じゃないと思いますよ」
いきなり脱退を宣言したダージリン姫に対して、この中でも一番仲が良かったパルフェ姫が歩み寄って、脱退を止めようとしていた。
「……パルフェ、うちはな。もうあかんねん。この会合はそれぞれの国の代表、つまりは長になるんを目的とした会合や。
けどなぁ、庭園国テトラポットの長に未練はないんや。あの古臭い錆びた伝承だけを心の支えにしとる、そんな国をうちは継ぎとうなくなったんや」
「嘘……それは完璧な回答ではありません。この会合は元々、ダージリン姐の提案から始まったのに」
「堪忍してな、パルフェ。やけどなぁ、それだけやないんや。
みんなに報告があるんや、今日ここに来たんわ、皆に報告があるから。それはな‐‐‐‐」
「‐‐‐‐こういう事や」と、ダージリン姫はそう言って"ざくりっ"と剣をパルフェ姫に突き刺していた。
「「「「‐‐‐‐っ!?」」」」
刺されたパルフェ姫、それだけではなく他の3人にも大きな動揺が襲う。
「なっ、んで……ダージ……リンねぇ……」
がたり、とパルフェ姫は音もなくどさりと、倒れていた。
刺されたお腹から大量の血がどばどばと流れ落ちて、大きな血溜まりとなっており、その中に倒れたパルフェ姫の身体が、彼女の着ていた真っ白なドレスが真っ赤に、深紅の色に染まっていく。
「むっ……ダージリン姫ちゃん。あなた、今なにをしているのかをちゃんと理解してるの?」
「そんな事を言ってる場合じゃないぞ、ラムネール! 魔法が使えないよう、安全対策を施された部屋で、こいつ、どうやって武器を?!」
「おいっ! 何とか言いやがれっ!」
3人がそれぞれ、非難の言葉を浴びせる中、浴びせられた当人であるダージリン姫はと言うと、けろりとした、むしろ晴れやかな顔で3人を見ていた。
「勿論、分かっとるわ。こないな事をしでかしたからには、継承権はく奪では収まらへん。
良くて投獄、悪うて死罪、やろな。見せしめにはそれくらいせんと、あかん。
‐‐‐‐でもなぁ、うちはもうそんなこと、ちーとも怖ないねん。何故ならな」
そう言ってダージリン姫は、長い着物で隠れていた足を見せて‐‐‐‐
「‐‐‐‐世界は、今からうちらが取るからや」
‐‐‐‐右足に取り付けられた、"淡く光る金庫"を見せつけるのであった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
ひだまりを求めて
空野セピ
ファンタジー
惑星「フォルン」
星の誕生と共に精霊が宿り、精霊が世界を創り上げたと言い伝えられている。
精霊達は、世界中の万物に宿り、人間を見守っていると言われている。
しかし、その人間達が長年争い、精霊達は傷付いていき、世界は天変地異と異常気象に包まれていく──。
平凡で長閑な村でいつも通りの生活をするマッドとティミー。
ある日、謎の男「レン」により村が襲撃され、村は甚大な被害が出てしまう。
その男は、ティミーの持つ「あるもの」を狙っていた。
このままだと再びレンが村を襲ってくると考えたマッドとティミーは、レンを追う為に旅に出る決意をする。
世界が天変地異によって、崩壊していく事を知らずに───。
御者のお仕事。
月芝
ファンタジー
大陸中を巻き込んだ戦争がようやく終わった。
十三あった国のうち四つが地図より消えた。
大地のいたるところに戦争の傷跡が深く刻まれ、人心は荒廃し、文明もずいぶんと退化する。
狂った環境に乱れた生態系。戦時中にバラ撒かれた生体兵器「慮骸」の脅威がそこいらに充ち、
問題山積につき夢にまでみた平和とはほど遠いのが実情。
それでも人々はたくましく、復興へと向けて歩き出す。
これはそんな歪んだ世界で人流と物流の担い手として奮闘する御者の男の物語である。
王家から追放された貴族の次男、レアスキルを授かったので成り上がることにした【クラス“陰キャ”】
時沢秋水
ファンタジー
「恥さらしめ、王家の血筋でありながら、クラスを授からないとは」
俺は断崖絶壁の崖っぷちで国王である祖父から暴言を吐かれていた。
「爺様、たとえ後継者になれずとも私には生きる権利がございます」
「黙れ!お前のような無能が我が血筋から出たと世間に知られれば、儂の名誉に傷がつくのだ」
俺は爺さんにより谷底へと突き落とされてしまうが、奇跡の生還を遂げた。すると、谷底で幸運にも討伐できた魔獣からレアクラスである“陰キャ”を受け継いだ。
俺は【クラス“陰キャ”】の力で冒険者として成り上がることを決意した。
主人公:レオ・グリフォン 14歳 金髪イケメン
【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める
シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。
メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。
しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。
生贄公爵と蛇の王
荒瀬ヤヒロ
ファンタジー
妹に婚約者を奪われ、歳の離れた女好きに嫁がされそうになったことに反発し家を捨てたレイチェル。彼女が向かったのは「蛇に呪われた公爵」が住む離宮だった。
「お願いします、私と結婚してください!」
「はあ?」
幼い頃に蛇に呪われたと言われ「生贄公爵」と呼ばれて人目に触れないように離宮で暮らしていた青年ヴェンディグ。
そこへ飛び込んできた侯爵令嬢にいきなり求婚され、成り行きで婚約することに。
しかし、「蛇に呪われた生贄公爵」には、誰も知らない秘密があった。
ざまぁ系ヒロインに転生したけど、悪役令嬢と仲良くなったので、隣国に亡命して健全生活目指します!
彩世幻夜
恋愛
あれ、もしかしてここ、乙女ゲーの世界?
私ヒロイン?
いや、むしろここ二次小説の世界じゃない?
私、ざまぁされる悪役ヒロインじゃ……!
いやいや、冗談じゃないよ!
攻略対象はクズ男ばかりだし、悪役令嬢達とは親友になっちゃったし……、
ここは仲良くエスケープしちゃいましょう!
婚約破棄されましたが、無駄に戦闘能力があるせいで王太子の婚約者になりました。そのせいで厄介事が更に羽根を生やしてやって来ました。
善奈美
ファンタジー
リストル公爵令嬢、リラ・クラリエス=リストル、十六歳。第三王子《ボンクラ》からの婚約破棄で望んでいた騎士として就職しようとしていた矢先、無駄に優秀な戦闘能力のせいで王太子の婚約者に収まってしまった。どうにかしようにも、王太子妃は命を狙われる為、己を守る能力は必要と誰もが反対しない。リラは果たして無事、命を繋ぐ事が出来るのか?!
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる