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(蓮 目線パート)

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RRRR....
「はい。若様、いかがしましたでしょうか。」
『学園に迎えを寄越せ』
「かしこまりました。すぐに。」


快楽に飲まれ気を失ってしまった夏樹の、頬に手をあてる。

『可哀想な夏樹。もう逃してやれない。』


俺の家は日本で有数の財閥の家系、御堂家。
華やかに思われる世界だが、決して綺麗な世界だけではない。むしろ、裏の仕事と表裏一体で繁栄してきた。
そのため経済だけでなく政治の世界でも重んじられる存在だ。

御堂系の血筋はその特徴を多く受け継ぐほどに能力が高く、統率する家長に相応しいと言われるが、俺は特に強いようだ。

知性だけでなく、運動能力、洞察力、人として成功する上で必要な才能に関して他者より抜きん出る。
その代わり、バランスを取るために心が欠けるのだろう。
他者への関心や愛情、思いやりが芽生えないのだ。
むしろ冷淡な判断を平気でできる残虐性の方が強い。

表の世界よりも裏の世界の方がよっぽど性質としては合っているだろう。


俺の父親も血は強く出ており、俺自身愛情を感じて育てられた記憶はない。
ただの自分の後釜としてしか捉えられてないことは幼い頃から理解していた。
だがそれでも俺は何とも思わない。俺も父親以上にその特徴がよく出ているからだろう。

父親が唯一執着していたのは母親に対してだ。俺の母親は父と正反対で朗らかで快活な女性だった。父は母が亡くなるその時まで過剰な愛で囲っていた。母親に大事にされる俺の存在にすら嫉妬していたようだった。
母が病で旅立った日は父も追うのではと思ったほどの執着だ。

母親にとっては全く幸せじゃないだろうと思っていたが、旅立つ日まで幸せそうにしていた。
母親は旅立つとき俺の手をとり
「蓮、私はあなたと明人さんを得られてとても幸せな人生よ。狂おしいほどの愛を向けられて私はとても幸せだった。あなたも素敵なパートナーを得てね。」
と言っていた。

父親からも
「その相手と出逢ったら、牢に入れてでも手に入れ守れ。まぁ言わずともお前はそうするさ。」と予言されたわけだが。

俺は、母親が亡くなっても心が動かなかった。
異常なのだと自分でも分かっている。
世界に色がない感覚だ。みんな一緒。
人間だから性欲は生まれるので、性欲処理のために寄って来る女を使うことはある。
だが顔も覚えていない。


何かが足りない、欠けているという感覚からなのか自分が何なのか分からないという不快感を覚えることが幼いころからあった。
少し満たされる気がする瞬間は人の苦痛の表情を見たとき。
俺は生に対する執着がないからか、生に向かって必死にあがく姿を見ると少し気持ちが昂るような気がしてその瞬間は満たされたような気分になる。

だから気に食わないやつがいたらとりあえず暴力をふるってみたり、規模を大きくしてみようと不良のチームごと潰していったりしたら気づけば総長と呼ばれるようになっていた。
心からどうでもいいが、勝手に相手の方から暴力を振るえる機会が飛び込む環境なので、そのまま放置している。
人間は脆いから、たまにやりすぎてしまうことがあるが、そこは御堂家の裏の顔で整理できる。

暴力は一瞬の快楽はあるものの、満たされない何かは変わらない。



高校は家が経営している学園に通っているが、中学の時に高校レベルの勉学は済ませているので授業なんて受けなくてもどうにでもなる。
だが体裁のためにもと通わされている。


ある日、いつものように体育をさぼって寝ていると、教室に入ってくる気配がする。
ふーん、まだこの学園にも俺を襲おうなんて勇気あるやついるんだー
どうやって遊ぼうかな~と思っていると、まさかのそいつは俺の体調を気にかけ、さらに体操服を借りたいとか一緒に探そうなんて言い出す。

俺はこれまで生きてきて、〝恐怖〟〝嫉妬〟〝欲〟などの気持ち悪い視線を受けることしかなかったので、いわゆる〝普通〟に接してくるやつなんていなかった。
それだけで面白い。どうボロボロにしようかと思っていた気持ちよりも、そいつに対して強く興味が湧いてくる。

人の容姿に興味を持ったことはなかったが、見てみると所謂普通の部類だろう。
こげ茶のふわふわの髪に、男にしては少し大きめな目なんだろうが、顔立ちも普通。
だがなぜかこいつだけ色があるような感覚になる。

なんとなくこいつを逃がしたくないという気持ちが働いた。
俺から離れようとしたからイラっとして、床に押し倒した。
こいつは俺のものだと本能が言っている。

噛みついて、キスをして、俺のものだと刻めば刻むほど、もっと深く刻まないといけないという気持ちが高まる。

あー見つけた。
俺の唯一。
逃がさない。
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