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本編
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しおりを挟む「可愛い顔して見つめてるだけ?何か言わないと進めちゃうけど良いの?」
「ぁ…っ…よ、良くない!!」
スッと俺の内股を撫で上げてきた義輝の手にトリップしていた意識が戻ってきた。
(危うく流されるところだった…)
義輝は恐らく俺が『良いよ』と言えばそのまま続けていただろうが、俺の答えは『ノー』だった。『嫌だ』と言えば止める気でいたようで、普通に離れた。
その事に少しだけ不満が募った。その心境に困惑し思わず義輝を見てしまう。
俺と目が合うと義輝は「ふふ」っと笑っただけだった…
☆
芽生えた感情を誤魔化したくてひたすらお菓子を食べお茶を飲んだ。黙々と食べて飲んでを繰り返す俺を義輝はいつも通りに見ているだけだった。
それも落ち着いた頃、義輝のスマホが着信を知らせる。スマホとかには頓着しないのか初期設定の甲高い呼び鈴の音に少しだけ煩そうに顔を歪めてしまったのはしかたないと思う。
いや、だって焦るし…いろんな意味で焦ってキョロキョロしちゃうから少しだけ低くしてほしいと後で伝えるつもりだ。
義輝は少しビクついた俺を見て少し笑ったが、直ぐに名前を確認する。そして、「良い子で待っててね」と言ってリビングからベランダへ続く出入り口を開くとベランダへと出て行った。
ちなみにガラス越しに義輝の姿を確認する事はできるが、会話の内容は聞こえない。読唇術も使えないから全く分からないけれど、何故か見えるところに義輝がいてくれるとひどく安心する自分がいる。
幼い頃は優しく見えていたはずの初恋の相手…
今は少し怖くも感じる初恋の相手…
時折見え隠れする独占欲なのか、執着なのか…それとも狂気なのかも分からない義輝の危うい感情に触発されたのか、『兆し』が現れたというこの薬の効果なのかは分からないが…
俺の中に甘い疼きのような感情と身体の奥底にチリチリと燃え上がるような熱いナニかが生まれ始めていた。
お腹を見下ろすとそこには普段と変わらないペタンとした胸と食べ過ぎて少しポッコリしたお腹が視界に入る。
その少し出たお腹を撫でてみると、奥の方がズクンと甘く疼いたような気がした…
暫くすると電話を終えたのか義輝は部屋に入ってきた。そして、少しだけ驚いたような表情を浮かべる。
義輝を見て俺が首を傾げていると「何でもないよ」と言っていつも通りに近くへ寄ってくると俺の瞳をジッと見てきた。
「ねぇ…修兵?」
「な、何だよ?」
「んん?これって…まさかね…」
聞いてきたにも関わらず答えない義輝にますます不審感が募り怪訝そうに眉間にシワが寄った自覚はある。
「オメガのフェロモンにすごーく近いフェロモンになってるよ。俺が目を離した隙きに何かあったの?」
という義輝に驚いて思わずスンスンと自身の服の裾などの匂いを嗅いだが、自分には全く分からなかった。
*
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