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俺のイケてるオメガ様。

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 暫く経った頃…、婚約者が妊娠したという報告が来た。当たり前だが、俺の子ではない。恥ずかしながら未だに童貞処女だ。

 それは雅輝や交友関係にある『鬼』たちも知っている。

 婚約者の妊娠報告は『鬼』から来た。その後、雅輝からもその連絡が来た。
 結婚その物を考え直すように言ってきたがー…、上司の顔に泥を塗る事になる…。と言い淀んだ俺に雅輝が渋い顔をして引き下がった。が、後日、その上司から直々に諭されて、婚約破棄をする事になった。

 ま、自分の後ろ暗さに負い目を感じていたので、慰謝料請求はしない事にしたんだけど…後日ボロボロの元婚約者となった彼女が出張先の俺の住居へ来て土下座をしているのだ。

 「申し訳ございませんでした。是非、慰謝料を払わせて頂きたく」などと言っている。
 呆気にとられたままポカンとしていると、ガタガタと身体を震わせ俺の様子を伺っている…。

 「いや、でもー…慰謝料は取らない事で取り敢えず話は終わったはずだったよな?」
 「托卵を企てたクズな女なのです。貴方のお父様と身体の関係をもち、妊娠した穢らわしい女なのです。」

 などと、前の高慢な態度は何処へやら…。これは生き別れた双子の姉もしくは妹なんじゃないかと疑ってしまうレベルの変わり様にただただ、驚く事しかできない。

 「最低な私に贖罪の機会をいただけないでしょうか」

 そう言って俺を見上げてくる。思わず、同席してもらった上司と目を見合わせる。

 「どうするのかは千歳、お前が決めろ」
 「千歳様、どうか贖罪の機会を…」

 あまりの変わり様に何が何だかである。『千歳様』って…前までは馴れ馴れしく『千歳』と呼び捨てにしていた女と同一人物なのか?と疑わしく女を見ていると、何を勘違いしたのか…顔を真っ青にしてこちらを見ている…。

 「あぁ、私はどうすれば良いのですか…」

 なんて号泣し始めた…。正直に言うと、かなり迷惑な上に煩い…。

 「というか…何でいきなり贖罪になるの?『アルファのくせにチビな貴方と結婚してあげると言ってるの』とか婚約破棄の話をした時なんて『ぷぷっ、やっぱり貴方でも実の父には強く出られないんだ?ダサい男ね。この腰抜け』とか好き勝手言ってたよな?」

 そう言って女を見た瞬間、再び土下座をして床に額を擦り付けた。しかも「すみません」と「ごめんなさい」を連呼している姿はある意味ホラーだった…。

 顔面は鼻水と涙でグチャグチャになっており、自分は美人だと豪語していたのと同一人物には見えなかった。

 「分かった。慰謝料は受け取る…それで終わりにしよう。二度とお互いに関わらないって事で良いだろ?」

 そう言うと何度も頷いて「ありがとうございます。ありがとうございます。」と何度もお礼を言う。

 その後、帰って行った元婚約者から俺の通帳に相場以上の金額が振り込まれており、間を置かずに実父からも多額のお金が振り込まれていた。

 いや、一度、雅輝のマンションに弁護士を引き連れて戻ったんだけど…、久し振りに見る実父の顔は見ない間に一気に老け込んでいるようにも見受けられた。
 実父は大人しく俺の要求を全て飲み、スムーズに処理が終わった。

 その後、実父は神無月かんなづき様のところに身柄が預けられ、数千万の借金を返す為に殆ど年中無休の上に給料は借金返済に殆ど当てられ住み込みで働く事が決まっていると後に雅輝から聞いた。

 死なない程度に休ませて貰えるらしいが…、保険も結構かけられているようだ。

 しかも、許せん事に雅輝と結婚・・・・・していると思い込んでいたらしい…。

 実父とはいえ、最初から敬って居なかった事もあり、殺意が湧いたのは言うまでもないだろう…。
 
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