鬼の花嫁

スメラギ

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鬼の花嫁―短編―

年末年始【前編】ーいつきSideー

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 1年間の最後の日…忙しく動き回っていたのは昼頃から夕方くらいまでだった…
 さぁ、1年間の汚れを落としてしまおうと掃除を開始しようにも普段から紅輝がこまめに掃除をしているから全く汚れていないので掃除はする必要もない…

 「僕がやるよ!」と意気揚々に言ったら凄く微妙そうな顔をされて「怪我をして苦痛に歪んだいつきの顔なんてもう・・見たくないぞ俺は…」と溜め息混じりに言われて普段の掃除すら断られてしまう始末だ。

 どれだけ僕の事を『どんくさい奴』だと思っているのか…いや、そうではなく…あの事・・・が原因かと思うと何とも言えない。

 僕の見てくれは番った当初からほとんど変わっておらず、ほとんどあの時のままなので年月が麻痺しているのか分からなくなる…

 アレは何時だったか…もう何十年も前になるのか…それとも数年前になるのかは分からないが…僕も年末の掃除をしていた時期があった。

 まぁ、お察しの通りヘマして怪我をしたわけだ…いや、ヘマではないか…自業自得といえるだろう…
 紅輝が近くに居たら直ぐに受け止めてくれたんだろうけど…丁度その時は別の場所の掃除を手分けしてしていた。近くに紅輝は居なかった…

 そんな時、タイミングが良いのか悪いのか…台の代わりに使っていた物の上から落っこちたんだよね…面倒くさいからと横着せずにちゃんとした脚立を持ってきていたら、こうはならなかった事を後悔しても遅かった。

 掃除を始める前に紅輝から「高いところには上ってほしくないが…いつき、お前の事だ俺を呼ばずに上るんだろう…いいか?もし、上るのなら脚立があるからソレを使え。作りもしっかりしているから安心だろう。俺を呼ばないのならば絶対に・・・使うと約束しろ。」と口を酸っぱくして言われていたのだから全ての非は僕にある。

 その時に「分かってるって!紅輝は心配性だなぁ」なんて言ってる手前、責められても何も言えない…そう思っていたんだけど…

 思いの外、凄い音がした後…直ぐに紅輝はやってきた。それはもうドアを破壊しかねない勢いで…
 そして、僕と周りの状況を見て全てを察したらしい紅輝は凄く焦ったように忙しくしているだろう義輝を何故か呼びつけた。

 呆れたような顔の義輝は紅輝を見て、僕を診た。結果、左手首を骨折…
 「鬼の番だから2週間程度で治るよ。良かったねぇ」と言って手際良く僕の手首を固定する。
 そして、紅輝を見ると「もう、母さんの事だから仕方ないのかもしれないけど…父さんも焦りすぎだよ。近くに庇護鬼であり凄腕の医師でもある翼がいるでしょーが。父さんのあまりの焦りように柄にもなく俺も焦っちゃったじゃん」なんて言って呆れたように肩を竦めていた。

 義輝が帰った後は掃除をそっちのけで、お説教タイムに突入した。あの時の焦った顔の紅輝と呆れた顔の義輝は忘れることなく僕の中に残っている。

 その時は新年早々、紅輝が続きの掃除をしており、挨拶に来たお義父さんやお義母さん、子どもたち…庇護鬼にまで事の次第を説明する事になり、それ以来、僕が年末の掃除に参加する事はなくなった。

 というより、以前にもまして紅輝がこまめに掃除という掃除をするようになったので、年末の大掃除自体が無いようなものになってしまった。

 そんな事もあり、朝はのんびりと過ごし、昼から夕方までは年越し蕎麦の仕込みやお節料理の準備を一緒にするのが毎年の通例となっている。
 勿論、高い所の物は紅輝が取り、滑ると危ない物や固い物なんかも紅輝が切った。
 僕は柔らかい物を切ったり、卵を掻き混ぜたりだとか、野菜の皮剥きでも手で剥ける物に限りやらせてもらえた。
 実質は味付けして煮込む専門の簡単な要員であり、少しでも紅輝が危ないと思った工程は例外なく全て・・紅輝本人がやってしまう。

 紅輝の言いつけを破り怪我をした代償とでも言うべきか…こういう事に関しては強く出られない僕がいた…

 夜は年越し蕎麦を一緒に食し、一緒にお風呂に入り、そして一緒に年を越すわけだけど…

 のんびりと越せたためしがない…いや、コレばっかりはお互い様なのかな…

 
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【禁止次項】
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【注意次項】
●説明文とか下手です。(キャラも時折迷子になります。)
●物語最終話までの構成などは全く考えておりません。(大体グダグダです。)
●全て妄想で書き上げています。(自己満足です。)
●専門的な知識などは皆無です。(ご都合主義です。)
●気がついたら直していますが、誤字やおかしい文章など多数あります。(ごめんなさい。)
●R指定は念のため【R-18→*】
●メンタル弱いです。暖かい目で見てやってください
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全ては“自己責任”でお読み下さい。


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