鬼の花嫁

スメラギ

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鬼の花嫁―短編―

自分の家だからといって安心できません。*―いつきside―

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 遊びに来ていた子どもたちが帰った後、何となくそういう雰囲気になり、身を委ねていると…紅輝はおもむろに口を開いた。

 「いつき…」
 「んっ…ぁ…どうしたの?」
 「結婚式―…上げてないよな…」
 「ひゃっ…ぅ、うん。あげ、てないね…ぁ…」

 服の中を悪戯に這う手をそのままに紅輝の言葉に返事を返す。そして、僕自身忘れていたが…以前、僕は御披露目なるものを強制的に開かれた事がある。紅輝と対面していない内に…だけど…

 その後で『海外挙式』にするかと言った紅輝の言葉がよみがえる…ついでに僕にとっては初めての行為セックスの事も思い出した…
 まぁ、実際には発情期間中に意識のない僕はマグロ状態で犯されており、初めてではないわけだけど…

 「子どもたちも大きくなって、生活も落ち着いただろう?」
 「ぁ…んんっ…そ、だね。」

 僕のイイトコロを狙ったかのように攻めている紅輝は至って冷静だ。それが何だか悔しい…

 「挙式するか?」そう言った紅輝はどうやら僕の返事次第で決めようとしているらしい…

 「や、んん…ど―…」
 「どちらでも良いというのはなしで…」
 「え、そ、んなぁ…ぁあっ!」

 そう言ってどんどんエスカレートしていく行為…服をたくし上げ、直接舌で愛撫を始めた。そして、終いには僕の孔が十分に濡れそぼっているのを確認して、指を1本挿入した。
 最早、ついているテレビの声すら耳に入ってこない…

 冷静に思考したいのに、これでは出来ないではないかと睨めば、頬を染めて目をそらすも、直ぐに向き直ってきて意地悪な笑みを浮かべ攻め立ててくる。
 秘部からは『ぐちゅぐちゅ』と卑猥な音がしており、ペニスからは先走りが流れ出して、指の数も増えている。

 すっかり、紅輝のペースに巻き込まれてしまったので、この身体と思考回路は暫く真面に働いてはくれないだろう…と残り少ない理性が僕に訴えかけていた。

 「あ、ダメっ…」
 「可愛い…」
 「やぁ…んんっ…へ、へんじできないよぉっ!」

 半べそをかいている僕に紅輝は微笑み返してきた。座っていたリビングのソファーベッドにくるりと身体の体勢を変えられ、押し倒された。
 そのまま、避妊具をつけた紅輝のペニスを迎え入れる。

 「返事は終わってから聞くわ…取り敢えず、こっちセックスに集中してくれ」

 そう言って、僕と紅輝は深く交わった…何度目かの絶頂を迎える直前に事件は起こった…

 「ひぅ…ぁあっ!ら、らめ、んんっ…い、イクからぁ」
 「一緒に、な…っ…」
 
 ガチャッとリビングの扉が開いたのだ。もう既に僕は紅輝の背中に腕を回して達してしまった直後だったので、どうする事も出来なかった。
 紅輝もまた、僕の顔を紅輝自身の首元にうずめるように抱えて隠すようにしたが、紅輝も僕の締め付けに耐えられなかったようで達したみたいだ。

 「ひっ…ぁあー!」
 「っ…」

 ぜぇぜぇと肩で息をしていると紅輝のモノがゆっくりと僕の中から出ていった。その感覚にすら感じてしまう素直な身体…

 「ぁ…んん…」

 そして、行為セックスをする前に着ていた紅輝の上着を脱ぎ捨てられた服の山から取り、僕の身体にかけると不機嫌丸出しの声が紅輝から飛び出した。

 「政夜…何の用だ」と言った紅輝の言葉に驚いて『嘘だよね!』と思わず起き上がりそうになったが、紅輝に押さえ付けられたので、起き上がることはかなわなかった…

 ソファーベッドの背凭れの部分がスッポリと僕を身体ごと隠しているので全裸を見られる心配はなかったが、紅輝の身体は惜し気もなく、さらけ出されている。
 多分、大事な部分は見られてないだろう…

 まぁ、子どもに情事を目撃されて冷静で居られるわけもなく…僕は恥ずかしさのあまり泣いてしまった。
 我ながら情けない…
 紅輝を見上げると目が合う…紅輝の眉間にはさらに皺が寄った…
 そして、僕から視線を外し、政夜が居るであろう方を向くと睨めつける。

 「スマホ鳴らしたんだけど?」という言葉は『もう、呆れてます』と言わんばかりの声音だった。

 その言葉に机の上に置いてあった僕と紅輝のスマホに視線をやると、どちらも着信があった事を伝えているランプが光っている。
 全く気づかなかった…

 「知らん…お前、わざとか?」
 「いやいや、別にそうでもないんだけど…あ…いや、わざとになるのかな…」

 その言葉に紅輝の纏う雰囲気が変わった。ちょっと鬼化しかかってるんだけど!?と焦ってワタワタとしていたら、凄く冷静な政夜の声がソファーの向こうから聞こえてきた。
 
 「まぁ、行為セックスの最中に入ったのは謝るけど―…いつまで経っても終わる気配なかったから、強行手段?的な感じだよ。最中のつがいの声を聞かれたのだから、怒るのもムリはないけどね。姿は見てないからセーフでしょ?」
 「普通にアウトだ。」
 「いや、それは、ほらっ!ごめんって!俺も急ぎだったから仕方なかったんだ。」

 紅輝は溜め息混じりに政夜と話している。
 「はぁ…いつき、泣いたんだけど?どうしてくれるんだ?」
 「母さん泣いちゃったの!?本当にごめん!母さんには謝っとく!」
 「おい…俺にも謝れ…」

 ぐずぐず泣いていると紅輝に頭を撫でられる。僕の涙を舐めとると優しい表情を浮かべてポツリと呟いた。

 「泣き顔も可愛い…」
 「父さん…」
 「ん゛ん゛…何でもない…忘れろ。それで?何の急ぎなんだ?」

 「リビングに書類を忘れちゃったんだよね…この辺りにない?茶色い封筒なんだけど…これ以上は母さんが居るから近づけないし、父さん探してよ。」と政夜が言っている。
 全裸です。ごめんなさい。紅輝、助けて…僕、動けないよ…探してあげたいけど…ムリだよ…

 「茶色い封筒?」

 ソファーベッドの前に置いてあるガラステーブルの横に茶色い封筒があった。
 紅輝は周辺を見渡し、ガラステーブルの方を見ると体勢をずらして、それに手を伸ばす。

 「あぁ…これか…」

 紅輝は気にした様子もなく全裸・・で封筒を取る。そして、政夜に投げ渡した。
 
 「本当にごめん…これないと俺も困るんだよ…」
 「マッチングするんだろ?」
 「うん、まぁね…それに必要な書類だからね…母さん、本当にごめんね。泣かないでね。父さん、余計なお世話かもしれないけど―…忠告、カードキー変えといた方が良いよ…」
 「俺もそれ考えてた…」
 「それじゃまたね。俺、今からマッチング行ってくるから」

 涙声で「気をつけてね」と言うのがやっとだった。政夜はフフと笑ったあと、「ありがとう母さん。父さん、ほどほどにしてあげなよ」なんて言うものだから、いたたまれなくなった。

 「あ、そうだ。これあげるから2人で行ってくると良いよ。新婚旅行もまだなんでしょ?ここに置いておくから。俺から2人にお詫びと感謝の気持ちね」と言って何かを置いたらしい政夜は今度こそリビングから出ていった。

 リビングの扉が閉まり、玄関が閉まる音が聞こえた。
 何を置いたのかは僕には見えなかった。
 政夜が帰った後、紅輝は早々にカードキーを変える手配をしていた。

 僕は服を着ようとしたが、紅輝が許してくれるはずもなく、もう1回ソファーベッドに押し倒されることになった。




 その後、漸く終わり、抱き潰された僕は紅輝にお風呂に入れてもらい紅輝の膝の上で首に顔をうずめて寛いでいる。
 甘えていると言っても過言ではないだろう。

 もう、ここが定位置になっている。政夜が生まれる以前からなので…僕もここが落ち着くのだ…安心感が全く違う。

 「あぁそうだ…」と言って先ほど政夜が置いていった物を紅輝が僕に手渡した。
 どうやらパンフレットと一緒になっているみたいだ。その場所は鬼が経営しているらしく。
 最近出来たテーマパークの中にホテルがある場所で、そこの2人用の入場兼宿泊チケットだ。しかも、1番豪華な部屋で最上階の露天風呂付きのものだ。

 我が息子ながら凄い…

 政夜はなぜか普通に人間の世界で会社員やっている。鬼にも理解がある会社だから問題ないと言っていた。暫くはそこで働くらしい。社会勉強だと本人がやる気なので、邪魔はしない。ちなみにIT関係の仕事で部長にランクアップしたと言っていた。
 もっとノウハウを学んだら起業するかもしれないと言っていた。

 樹輝はプロダクトマネージャー。義輝は医師だが、たまにクッキングアドバイザーもしているみたいだ。
 優樹はインテリアコーディネーター。勇夜はグラフィックデザイナーをしている。

 ちなみに紅輝はプログラマーの他に賃貸マンションの経営もしているのだとか…他にも資格を持っているが、まるで活かせてないらしい…

 ちなみに今はプログラマーの仕事は外してるんだって、夏樹に丸投げしているとサラッと言った。それで良いの!?と思ったが、紅輝が良いのなら僕は何も言わない…

 紅輝の庇護鬼たちも何かしらしているんだって…

 鬼の世界では強い鬼からランクごとに毎月、決まった額が口座に振り込まれているはずなので、最悪、働かなくても支障はないくらいには生活出来るらしいが、上層部や上層、中層の鬼は必ず何かしらして働いているのが通例らしい。

 だから、鬼は少なくとも2つ口座を持っているらしい。紅輝でいうと『神木かみきの口座』と『紅輝の口座』。

 紅輝が仮に神木を返上することになれば、新たに別の口座を宛がわれるらしい。

 下層の鬼も働くのだが、稀になにもしないクズがいるんだって…陽穂ようすいがそれだったらしい。納得してしまった…もう、クズの時点で大いに納得である。

 何はともあれ、政夜がくれた宿泊チケットをムダには出来ないと、新婚気分で旅行へ出かける事にした。
 ちなみに海外挙式は断ったよ。その代わり、政夜の気持ちに応えようという事になった。

 全ての手配は政夜がしっかりとしてくれていたようで、何の心配も要らないらしい。紅輝もしっかりと不備がないか確認した上で言っているので安心している。


 今さら・・・だけど…政夜がセッティングしてくれた『新婚・・旅行』を楽しんでくるつもりだ…


*end*
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【禁止次項】
●転載、盗作、荒し、中傷、醸し
●他の作品と比べること
**
【注意次項】
●説明文とか下手です。(キャラも時折迷子になります。)
●物語最終話までの構成などは全く考えておりません。(大体グダグダです。)
●全て妄想で書き上げています。(自己満足です。)
●専門的な知識などは皆無です。(ご都合主義です。)
●気がついたら直していますが、誤字やおかしい文章など多数あります。(ごめんなさい。)
●R指定は念のため【R-18→*】
●メンタル弱いです。暖かい目で見てやってください
***

全ては“自己責任”でお読み下さい。


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