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鬼の花嫁―本編―
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しおりを挟む目覚めると寝泊まりしていた病室にいた。
すでにお義母さんとお義父さんも来ており、談笑しながら紅輝に抱かれている赤ちゃんを見ていた。
僕が目覚めたのを感じとったらしい紅輝がこちらを振り返ってくる。
目があうと紅輝は危なげ無い足取りで僕の方に歩いてくる。その後ろを2人がついてきた。そして、お義母さんが僕を支えて起こしてくれた。
お義父さんが僕に極力触れないのも、紅輝がお義母さんに極力触らないのもお互いの事を考慮して、らしい。
自分以外の鬼が必要以上に番触れると心穏やかでは居られないらしい。
「気分は?」
そう言ってくる紅輝に「大丈夫。」と返事をして改めてお義母さんたちを見る。
「良く頑張ったね。」
そう言ってお義母さんは微笑んだ。お義父さんは頷いている。
「これが、人間でいう孫というやつか」
そう言って2人とも歓喜しているようだ。
「わざわざ来ていただき、ありがとうございます」
お礼を言って頭を下げようとしたら紅輝とお義母さんに制止された。
「鬼の番は子宮が元の大きさに戻るのに1週間はかかるからね。嫁は大体だけど人間と同じくらいの期間はかかるんだ。収縮の際に激しい痛みを伴う場合もあるから、出来るだけお腹に負担をかけない方が良いよ。」
その辺りの事を紅輝は先生に聞いていたようだ。
軽く頷くと僕は赤ちゃんを見た。
そして、驚いた…首が座っているのだ。昨日と今日で…
お義母さんは全く驚いていないし、紅輝とお義父さんも同じポーズで不思議そうにこちらを見て首を傾げている。
可愛い…
2人は僕が何で驚いているのか分かっていないようだった。
お義母さんは何かを察したらしい。僕を見て口を開いた。
「そうか、いつきは鬼の子ども―…赤ちゃんを出産したのは初めてだったよね。舞も最初は凄く驚いていたからなぁ。」
そう呟きながら感慨深そうに頷いている。
何でも鬼の身体能力は半端ないようで、紅輝も産後2、3時間で首が座ったらしい。1ヶ月くらいで、はいはいを覚え、2ヶ月で座ったり掴まり立ちをして離乳食に完全に入る。
3ヶ月すれば歩き始めるんだと…
まぁ、早ければ1ヶ月経った頃に完全に離乳食入りする子どもも居るんだって。
えっ…鬼、普通に凄い…
実質、ミルクは1ヶ月と少しくらいで卒業なんだって…人間と違いすぎて吃驚だ…
「まぁ、紅輝がそうだったし、舞の所も似たものだったから。大体はこんな感じだよ。」
そう言ってお義母さんはニコニコとしている。
紅輝から赤ちゃんを慎重に受け取り覗き見ると、目の色は紅輝と同じで、髪の毛は赤みがかった茶色だった。
ニコニコと上機嫌に笑っている。その表情を見て知らぬ間に笑顔になっていたらしい。
皆がすっごい優しい表情でこちらを見ている。
暫く我が子をあやしていると、お義父さんが「あっ」と声を上げた。その声に皆の視線がお義父さんへ集まる。
紅輝が「何だ?」と聞けば、赤ちゃんの名前をそろそろ教えてくれとの事…紅輝を見ると、どうやら名前を教えていないらしい。
「そうだね。『いつきが起きてからな』なんて勿体ぶってたからね」
なんておかしそうにお義母さんは笑っている。
紅輝とアイコンタクトをとると…頷かれた。僕の口から伝えろという事みたいだ。
実はもう、既に決まっている。紅輝に相談した時に良いと思う。と言われたのでこの名前を名付けた。
「政夜と名付けました」
そう、お義母さんとお義父さんの名前を一文字ずつ貰ったのだ。紅輝も頷いている。
「そうか、政夜か…よろしくね」
そう言って優しく微笑んだお義母さんはとてもキレイだった。
お義父さんも嬉しそうに笑っている。
★
その後、いろいろとあったけど、ピッタリ1ヶ月で退院した。
本当に1ヶ月でミルクを卒業してしまったんだけど…哺乳瓶咥えている姿を連写しておいて良かったと思う。
そして、今ハイハイで室内を暴走している政夜。
ちなみに子ども部屋。極力ではあるけど、危なくない作りになっている。
鬼の赤ちゃんは多少ぶつかっても無傷なんだ。それはつい最近知った事…
最初は子ども部屋ではなくリビングや寝室などで遊ばせていたんだけど…凄く速いの。ハイハイの速度が!
リビングで遊ばせていた時に、かなりの衝撃で机に頭を打ち付けた…しかも、机が動くほどだったんだ。
慌てて抱き上げると泣くどころか『フンスフンス』と鼻息荒く怒ってたの!その上に無傷…寧ろ机が負傷した…
あまりの僕の慌てっぷりに紅輝が心配して子ども部屋をリフォームした。遊び専用の部屋…端から見たらただの親バカである。それと、子どもがもう少し大きくなったら使うであろう部屋もつくってある。
ちなみに、その子ども部屋は舞さんの部屋にもあるみたい。椿と柊を出産した時に僕みたいに慌てたんだって。
その事実にお互い笑ってしまったのは仕方ないと思う。政夜よりヤバかったんだって。窓硝子を破壊したらしい。驚きである。しかも、椿と柊は無傷…鬼の子ども恐るべし…と戦慄した…
そして、話は変わるが、颯の所も予定通りに出産したみたいだ。名前は翡翠というんだって。まだまだバタバタしているから顔合わせは出来てないんだけどね…
お義母さんやお義父さん、紅輝の庇護鬼たちも会いに来てくれる。政夜自身も人見知りはしていない。
寧ろ喜んで襲いかかっている。あまりの威力にヒヤリと冷たい何かが僕の背中を流れたが…流石というべきか…お義母さんの事はお義父さんが庇い、僕の事は紅輝が庇ってくれる。
成長すれば力も比例して強くなる…ある意味、兵器な政夜の破壊力は半端ない。脆弱な番や嫁が巻き込まれたらヤバいのだ。大怪我をした事例もあるんだって。
元気に育っているのは実に嬉しいが、危険が付き物…
紅輝の時はお義母さんの力も健在だったので全く問題なかったんだって…お義母さん凄い…
でも、政夜は本能的な部分で番や嫁の事が分かっているのか、半年を過ぎると番である僕と鬼である紅輝に対しての力加減に違いが出てきたのがハッキリと分かった。
ちなみに、産後は普通に発情期が来ました。その期間中、政夜は庇護鬼たちに預けられていた。お義母さんやお義父さんに預ける時もあった。2人が是非ともと言ってくれたので心強かった。
舞さんが発情期になると夏樹の庇護鬼に預けるんだって。
嫁は?って思うけど…
何か昔、番の子どもに危害を加えた嫁が居たんだって、それで、子どもや妊娠した番には近づけさせないのが通例になったのだとか…
まだまだ、知らない事が沢山あるみたいだと痛感した。
*
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**
【禁止次項】
●転載、盗作、荒し、中傷、醸し
●他の作品と比べること
**
【注意次項】
●説明文とか下手です。(キャラも時折迷子になります。)
●物語最終話までの構成などは全く考えておりません。(大体グダグダです。)
●全て妄想で書き上げています。(自己満足です。)
●専門的な知識などは皆無です。(ご都合主義です。)
●気がついたら直していますが、誤字やおかしい文章など多数あります。(ごめんなさい。)
●R指定は念のため【R-18→*】
●メンタル弱いです。暖かい目で見てやってください
***
全ては“自己責任”でお読み下さい。
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