鬼の花嫁

スメラギ

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鬼の花嫁―本編―

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 向かえた2日目…ずっと紅輝と居れる事に浮き足立っていた。
 嬉しいのだけど、恥ずかしさもあって…
 昨日…いや、昨日だけではないんだけど、発情期以外でも行為セックスとかはしているが…それとは違った恥ずかしさがある。

 所謂、校内デートってやつだよね!なんて葉月とかが朝からからかってくるから…
 もう、既に心臓が爆発しそうなくらいにドキドキしている。
 普通な流れで恋人繋ぎして歩くから皆が注目してくる。その中にはやっぱり、嫉妬であったり羨望であったりという視線もあるが…
 流石は紅輝、といった所かな…まるで気にした様子もない。
 僕自身が気にしすぎてるのかもしれない…と思うくらい気にした様子がない。

 「それで?いつきはどこから行きたいんだ?」
 「へ?あぁ、調理部の洋菓子に興味があって…」

 視線の定まらない僕にいきなり紅輝が声をかけてくるから凄く吃驚して変な声を出してしまった。
 そんな僕を紅輝は優しい目で見てる。ドキドキしすぎて苦しいけどね!
 「行くか」と言って僕の手を優しく引いてくれる。多分、僕の顔は緩みっぱなしである。

 調理部へ入ると外よりも濃厚な甘い匂いが漂っていた。各テーブルが可愛くメイキングされている。
 洋菓子を食べに来た生徒もまばらにいた。案内されるまま紅輝の手に引かれて歩いていると、やはり、ここでも注目を浴びる…
 息を飲むほど整った顔をしている紅輝だから仕方ないのかもしれないが―…僕の心は少し荒れてくる。

 「どうした?楽しくないのか?」
 「え、あぁ、うんん。楽しいよ?」
 「……あまり美味しくないのか?」

 そう言った紅輝の目の前にはバタートーストと珈琲が置かれている。僕の前には数種類のケーキとアイスココアがある。
 紅輝の言葉に僕は顔を横に振った。怪訝そうな顔をした紅輝は少し考える素振りを見せる。
 その仕草でさえ周りの女子生徒が色めき立つのだ。乙女心ならぬ男心とはいえ複雑にさせる。

 「その顔も可愛いけど…笑顔の方がいつきには似合ってるぞ。」

 そう言って、僕の眉間に寄っていたであろう皺を指で軽く広げていく。何か擽ったくて少し笑ってしまった。
 僕が笑うと紅輝の表情も和らぐのだ。

 「口元に付いてるぞ」

 なんて言うと、僕の口元から指で掬い取るとそのまま自分の口元へ持っていく…そのイケメンの破壊力は凄いと思う。
  思わず凝視してしまった。周りも息を飲んだと思う…



 洋菓子を堪能して調理部を出た僕たちは茶道部へと向かった。告知通り、抹茶と和菓子で出迎えられ。ここでも同じように注目を浴びる…
 当たり前だが、気にした様子がない。

 洋菓子とは違った華やかさがあり、目で和菓子を楽しんだあと食べるとやっぱり美味しくて終始ニコニコしていたような気がする。もちろん抹茶も美味しかった。

 和菓子などに舌鼓を打っていると…
 「神木先輩。よければ此方でご一緒致しませんか?」と随分色気のある声が聞こえてきた。顔をあげると声に劣らない美貌を持った女子生徒が紅輝を誘惑している。

 「しない。」あっちに行けと言わんばかりの態度で顔も見ずに言い放つ。
 女子生徒は僕を一見して自分の美貌に自信を持ったのか鼻で笑うと、尚も紅輝に話かけた。

 「茶道部のお抹茶も美味しいですが、華道部の喫茶店も素晴らしいのです。良ければご一緒しませんか?」先輩の為に選びますよ?なんて言ってしなだれかかろうとしたが、紅輝の拒絶の声に動きを止める。

 「俺に触るな。」と言ってここで初めて女子生徒の顔を見る。すると、女子生徒の顔が色づき誘うような表情になる。その目は舐めるように紅輝を見ていた。その目に紅輝は不愉快そうに顔を歪めて言葉を続ける。

 「お前に用はない…消えろ。」

 そう続けて女子生徒を睨め付けた。暫くうっそりと紅輝の顔を見ていたが、紅輝と目が合うとサッと青褪めた。
 視線を床に落とし顔も俯き加減になると、そそくさとその場を去っていった。

 その後の紅輝は相変わらずで、僕にあれこれ勧めてきて食べる所を見てる。
 時に食べさせようとしてきたりするものだから、周りの視線がかなり痛い…
 大人しくソレを食べる僕も同罪なんだけどね。



 無事に2日目の前半が終わり、後半に差し掛かったときだった。紅輝と2階の廊下を歩いていると、下の階から壁が崩れて窓硝子が割れる音が響いてきた、その上、建物全体も揺れている。

 紅輝は僕を抱き寄せて周りに視線を走らせる。不安になり紅輝を見上げると『大丈夫だ』という感じで僕の背中を撫でる。
 
 「居た!如月ー!」突如聞こえた声は小幸のものだった。
 そして、僕の頭上から舌打ちが聞こえた。その舌打ちは確認するまでもなく紅輝のものだ。
 ぎょっとして顔を上げると凄く冷たい目で小幸を見据えている。

 「恭介きょうすけつかさ…来い。」

 紅輝が静かに名前を呼ぶと音もなく現れる恭介と政。庇護鬼であり、2人ともつがいよめはいない。最初から作ってないらしい。

 政は寡黙というより殆んど喋らない。ほぼ頷くか首を振るかだ。
 恭介は喋るけど単語だったりする…たまに長く喋ってくれる。

 「紅輝、何?」
 「いつきを連れてここから離れろ。マンションへ行って夏樹たちと合流しろ。」
  「了解した。」

 恭介の言葉に同意するかのように頷く政。この雰囲気の中『多分、紅輝には見えてないと思うよ。』とは言えない。その勇気もない…
 
 「ま、待って紅輝は!?」
 「俺は後から行くから、庇護鬼のつがいたちと一緒に居ろ。」

 離れたくないという風に紅輝の服を握り締めると顎を掴まれて上を向かされた。キスする寸前の距離で止まった。その近い距離に状況も忘れて思わず赤面した。

 「帰っていい子にしてろ。」

 唇に掠めるか掠めないかの距離でそう言うと、微笑んで啄むだけの軽いキスをして直ぐに離れてしまった。軽く放心してしまった僕は政に手を引かれて歩き始める。

 「如月!皆、体育館に避難だって!」

 そう言いながらこっちに来なさいと言わんばかりに僕の手を引こうとしたが、恭介が遮った。

 「お前、邪魔。紅輝の話、聞いてた?いつき様はマンションに連れて帰るからお前とは行かない―…邪魔だから消えて?」

 そう言ってそのまま階段を下り始める。小幸も一瞬、恭介の冷めた目に怯んだが…何故か着いてきた。

 紅輝を振り替えると窓から飛び降りる所だった。けたたましい音が響く中、下の階へ行くと酷い惨状だった。
 コンクリートは剥がれ鉄骨が剥き出しになり、穴が開いている。
 極力、危なげのない場所を選んでくれているのだろう。その場を歩きながら廊下やら玄関を抜けてマンションへ向かった。




 
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●気がついたら直していますが、誤字やおかしい文章など多数あります。(ごめんなさい。)
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●メンタル弱いです。暖かい目で見てやってください
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全ては“自己責任”でお読み下さい。


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