鬼の花嫁

スメラギ

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鬼の花嫁―本編―

KOUKI side.01

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 スマホが着信を告げる。音は鳴らないように設定してあるので、万が一にもいつきが起きる事はない…着信相手は颯だ。
 連絡内容は予想ついたが、一応出ておく。

 「何だ?」
 「あー、今、大丈夫なのか?」
 「問題ない」
 「そうか、わかった。内容は予想ついていると思うが―…」
 「騒動の事、だろう?」
 「そうだ。」

 内容を聞くと…やはり陽穂ようすいの所の庇護鬼の事だ。恐らく狙いはいつきだろう。
 あの鬼の差し金なのか、それともあの女の差し金なのか…どちらにせよ。衝突は避けられないらしい。
 まぁ、いつきを奪おうとするなら―…潰すまでだ。

 「他の階のつがいよめも狙われている」
 「そうか…」
 「狙いが分からない以上、警戒しておくべきだと思う」
 「お前の庇護鬼のつがいよめはどうなんだ?」
 「あぁ、大丈夫だ。恐らく夏樹たちは自分の庇護鬼も生活圏内に入れようと考えて、許可を取るために連絡がいくと思うが?」
 「そうか、わかった。その件に関しては好きにしろと言っておけ」
 「あ、あぁ。わかった。伝えておく。」
 「何だ?」
 「いや、紅輝も例外なくお前の庇護鬼を貸せとか言うのかと思ったが?」
 「は?お前、夏樹とかからそんなこと言われたのか?」
 「………」
 「沈黙は肯定と捉えるが?」
 「…まぁ、そんなところだ。」
 「そんな余裕、お前にはないと思うが?」
 「……まぁ、紅輝だしな、気づいてたか…」
 「つがいよめにしないと一緒に住めないぞ」
 「わかってる」
 「決めるのはお前だ。俺は口出ししないから…」
 「助かる。あまり時間を取るのも悪いから、そろそろ切るわ。一応、そっちも警戒しておくように」

 という颯の言葉に返事を返して電話を切り、枕元にスマホを放り投げる。

  視線を戻すと俺のつがいであるいつきは自身の白濁や愛液、俺の唾液などでベタベタになっており、ぐったりして意識を失っている。
 その姿に更に欲情してしまって、スマホが光るまで止まらなかったのは俺の落度…ある意味、颯に感謝している。あのままだと絶対に止まらなかった。

 理性は戻ってきたものの下半身は自分でも呆れるほど正直で…いつきを見ただけでこのザマである。

 自身を見下ろして溜め息をつくと、ゆっくりと出来るだけ負担をかけないように、刺激しないように、いつきの中から抜いていく。
 
 「んっ…はぁ…」

 意識を失っているとはいえ、少しの刺激すらも拾ってしまうほど敏感になっているのだろう。
 その声を聞いて欲情して再び穿ちそうになる腰を何とか止めた。
 息をついて己を静める。

 完全に抜ききると俺が出した白濁をひくつきながらドロリと吐き出すその卑猥な光景を目の当たりにして、いつきの中に欲を叩きつけたくなる衝動に駆られたが、それも理性で何とか押さえた。

 いつきの意識があるうちは鬼化とまではいかなかったが、半分くらい理性が飛んだことに間違いはなく、いつきが抑制剤を服用していたとはいえ、こっちは全く避妊なんてしていなかった。
 鬼専用の抑制剤も飲んでいたが、全く役に立たなかった。気絶した相手を鬼化して犯すほどには自我を失っていた。

 『孕んでしまえ』と先程はずっとそれだけを考えていた。孕んでしまえば他の事に気を取られる心配はないから…
 などと浅はかな事を考えている自分に嫌気が差す。しかも、これで2回目だ。学習能力の無さに失望している。

 俺以外誰もその瞳に写してほしくない。いつきは俺のもの。
 本当は学校になんて行かせたくないし、この部屋から出てほしくもない…他の誰の目にも触れさせたくない。
 なんて身勝手で狂気じみた考えを持っている事なんていつきは考えもしないだろう。

 嫌われたくない一心で踏み留まっているにすぎない…危うい感情。

 疲れきっているいつきの頬を優しく撫でると微かに眉間に皺が寄る。安眠を妨害するな、という事らしい。
 意図せず顔が緩む。
 その何とも言えない表情すら可愛らしいと思うほど俺はいつきに溺れてしまっている…

 俺はそのままいつきの横に転げた。結構派手にベッドのスプリングが軋んだが起きる気配はなかった。相当疲れているようだ。
 その姿を見て悪いと思う自分と、反対に満足している自分がいる。その姿に満足はしているが、正直、全然足りない。
 でも、これ以上は本当に壊れてしまうだろう。俺はいつきに壊れてほしくない。大切にしたい。

 壊してしまいたいほど愛したいが、壊れないように大切にしたい。
 狂気じみた感情の他にこういう矛盾した感情も生まれる。時々、自分がどうしたいのか分からなくなる。

 身体を奪うのは簡単だが、俺はいつきの心も欲しい。恨まれてもおかしくないことを最初の一発目からやらかしている俺が言うのもなんだが…そう思っている。

 いつきは俺を好きなのだろうという事はなんとなく分かる。けれど、瞳の奥底にはいつも不安が燻っているのだ。
 どうにかして不安を取り除いてやりたいのに、心の底から幸せにしてやりたいのに…という焦りにも似た感情もあって、ますます混乱する。
 
 今までは『運命のつがい』の事を狂わせる…許せないモノだと漠然と思っていたが―…運命とは鬼も人もおかしくするのだろう。
 今ならそれがよく分かる…
 いつきに会うまでは全く理解できなかった、理解しようともしなかった事…

 『俺は一体、どうしてやるべきなんだ?』と今まで何度も自問自答してきたが、答えは未だに出ていない。

 出会う前とは全くの異なる感情に振り回され混乱する事が多くなった気がする。
 だが、不思議と悪い気がしないのはきっと、いつきが居るからだろう…

 夏樹も今でこそ落ち着いているが、俺と会った当初は相当だった。
 つがいである春風を成り行きとはいえ助けたにも関わらず、何を勘違いしたのか、訳も聞かずいきなり殺そうとして来るくらいだったしな…死なない程度に返り討ちにしたけど…


 俺はつがいとかよめとかどうでも良くて、関係ないと、誰であろうと…その気になればいつでも殺せるとすら思っていた…だが、その考えも今はなく…

 いつきさえ居れば他は何も要らないのに……

 そういう想いが生まれたのも、いつきが俺の中でとても大きな存在になっている―…という事なのだろう…

 そういう事を考えながら目を閉じているといつきの寝息も聞こえ、心が穏やかになる。

 
 何となく自分の顔が緩んでいる気がしたが、次第に意識が遠退いていき眠りに落ちていた…

 
 

 

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