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鬼の花嫁―本編―
08
しおりを挟む凄い勢いで半強制的に外堀を埋められた僕は半年遅れではあるが高等部へ通うことになった。
勉強は紅輝が直々に教えてくれるのが殆どだったけど、紅輝が用事で出かけている場合は舞さんが勉強を教えてくれたので編入テストは無事通過した。
来週から通う事になってる。僕は1年生のクラスに編入が決まっている。
紅輝が必要な手続きを手伝ってくれた。
『全て任せろ』状態だったが僕が断った。「手続きの練習をさせてくれ」と言って。紅輝は最終的にいつも僕の意思を尊重してくれる。紅輝は僕に甘すぎじゃないか?と思わなくもないけど、紅輝本人が構わないらしいので突っ込まない事にした。
半年遅れたのは鬼の子どもを生めるように体質が変わってから日が浅く、いつ体調を崩すか分からない状態だったので、様子を見ていたと紅輝が言っていた。
裏を返せば、紅輝と暮らし始めて半年という事にもなる。意外にも紅輝は積極的に家事を手伝ってくれるのだ。その上、手際がいい。
料理は2人で作るときもあるし、1人で作りたいと言って作るときもある。逆に紅輝が作ってくれるときもあるが、殆ど2人で作ってる。初めての発情期の時に僕に食べさせた料理を作ったのも紅輝らしい。それを聞いた時は驚いた。
しかも、僕より料理のレパートリーがあるのだ。二度、 吃驚である。
それに、紅輝が作った料理は凄く美味しい。紅輝はそれでも僕が作った料理を「美味い」と嬉しそうに食べてくれる。
その顔を見ると胸の辺りが暖かくなるが、贅沢な話だけど、それでは物足りなくなった。紅輝の料理が 美味すぎて素直に喜べないというのも一理ある。
料理の腕を上げ、料理のレパートリーをもっと増やして、紅輝にもっと沢山褒めてもらいたいのだ。それを分かっているのか、いないのか、僕が教えて欲しいと言えば上機嫌で教えてくれるし、一緒に作ってくれる。1人で作りたいと言って作っている時も邪魔しないようにして同じ空間に居てくれる。
大切にされているその事実に心の何かが埋まり始めた気がした…
★
洗濯物といえば、あの頃は三着を着回していたが、新しい服がかなり増えて、あの頃に着ていた服は気がつけば無くなっていた。恐らく処分したのだと思う。
増えた理由は紅輝が知らぬ間に服などを発注しているので、気がつけば増えてる。最近、僕に金をかけるのだ。
寝室の空いてるスペースに衣装ケースを嵌め込み使っている。僕の服と紅輝の服は別々に入っている。
好みの本やそれを収納する本棚などに関しては僕の個人的な娯楽関係なので凄く申し訳なく思ってる。
しかも、 全て紅輝がパパッとしてしまうのだ。発注から受け取り、組み立てまでバッチリなのだ。その上、納金済み。手際が良すぎるのも問題である。
本人は「全く問題がないから気にしなくて良い」と言うので考えものである。
物がどんどん増えてる。この勢いだと『入りきらなくなったな』とか言って一戸建ての新築を建てそうで怖い。
建てると言えば、この部屋には乾燥機も備わっているんだけど、基本的に僕は日干しの自然乾燥が好きなんだ。『太陽の匂いって良いよね』なんて思っていたが、実際に見てみると、この部屋のベランダは広いのだ。
洗濯を干すだけでは勿体ないだろという具合に。なので、洗濯を干す以外の用途を増やす為に広いベランダをリフォームしてサンルームを後付けしてもらった。
日向ぼっこをしつつ長椅子に持たれなから読書を出来るのは嬉しかった。他にも鉢植えを置いて花を植えたりもした。ベランダの一画でプチガーデニングである。これがまた楽しかったりする。
その際に紅輝へ 直談判すると、なんて事はないという風に「好きにしていい。その為の 財布だろ。」と言われたので拍子抜けではあったが、有り難く使わせてもらった事もある。
サンルームに洗濯を干していれば知らぬ間に来て手伝ってくれるのだが、料理の時と違ってスキンシップが激しくなる。軽いキスまでならなんとかなるけど、服の中に手が入ってきた時は高確率でベッド行きになる。
そうなってしまえばその日はベッドの中から出られない。本気で嫌がれば紅輝は無理強いなどしないだろう。
嫌がるどころか快楽に流されるのだ……自業自得とはいえなんとも言えない気分になる。
しかも、アレでセーブしているらしいのだから驚きだ。
そして、紅輝は掃除も手伝ってくれる。てっきり掃除は業者を呼ぶのかと思ったら、僕と過ごしている空間に他者を入れるとかあり得ないらしい。
風呂掃除とトイレ掃除、高いところは僕が取り掛かろうとする前に既に終わっていたりする。僕がするのはフローリングの掃除くらいである。
家にいるとき紅輝はトイレ以外離れず、必ず僕の隣にいてくれる。何故か風呂も毎日一緒に入っているし、もちろん寝るときも一緒にベッドに入っている。まぁ、僕は紅輝の抱き枕状態なんだけど。大切な宝物を護るように抱き締めて寝てくれている。
セックスするときに「健康的な身体つきなってきたな」と嬉しそうに言われた時もあったな。あれは凄く恥ずかしかった。
しかも、「もっと肉をつけないとな」なんて言われながら、いつもより激しく突くものだから次の日ベッドに腰かけることすら出来なかった。
せかせかと凄く嬉しそうに世話をしてくれたのは記憶に新しい。
恥ずかしい事を思い出してしまったけれど、何はともあれ紅輝は僕にあの家で与えてはくれなかったモノを与えてくれる。
とても暖かい気持ちになれる。大切にしてくれているのも分かるし、心配なのも分かる。『少し過保護だな。』なんて思うときもあるけれど。僕は別に邪魔だとか思った事ない。
僕も傍に居たいから。だからだよ。居るだけじゃダメだから僕は学校に行って少しでも多く学んで紅輝の役に立ちたいと思ってる。甘やかされるだけではダメなんだ。と決意を新たにしていた。
ヘッドボードに 凭れて読書をしていた僕の下腹部に腕を巻き付けるようにして隣で昼寝をしていた紅輝が起き上がった。まぁ、全く本の内容なんて頭に入ってきてないけど…その証拠にページが全く進んでない。
本を閉じて紅輝の行動を目で追いかける。紅輝の顔が近づいて来て、啄むような軽いキスをしてきた。紅輝からの挨拶のようなものらしい。
僕自身、毎回照れる。いい加減なれろよ。と内心思うが、全く慣れない。それを見て嬉しそうに頬にキスするおまけも付いてくる場合がある。嫌じゃないから別にいいんだけどね。
ちなみに今のは『おはよう』のキス。他にも寝る前の『おやすみ』や出かける時は『行ってきます』に帰ってきた時には『ただいま』のキスがある。全て紅輝から僕へ贈られるもの。恥ずかしくて僕からは出来ない。
「出かける」と僕の頭を撫でながら優しくそう言った。
その台詞に寂しく思いつつも「行ってらっしゃい。気をつけてね」と送り出す言葉を掛けた。紅輝が出かけるということは舞さんが来るのかな?と思っていたが、紅輝は僕の前から動かない。
いつもならここでキスして出ていくんだけど今日は違うらしい。
一向に出ていく気配がないので、疑問に思い、首を傾げて見上げていると紅輝はおもむろに口を開いた。
「いつき、お前も行くんだよ。泊まりがけな。」
なんて言うものだから驚いて紅輝を凝視してしまった。
*
2
**
【禁止次項】
●転載、盗作、荒し、中傷、醸し
●他の作品と比べること
**
【注意次項】
●説明文とか下手です。(キャラも時折迷子になります。)
●物語最終話までの構成などは全く考えておりません。(大体グダグダです。)
●全て妄想で書き上げています。(自己満足です。)
●専門的な知識などは皆無です。(ご都合主義です。)
●気がついたら直していますが、誤字やおかしい文章など多数あります。(ごめんなさい。)
●R指定は念のため【R-18→*】
●メンタル弱いです。暖かい目で見てやってください
***
全ては“自己責任”でお読み下さい。
*
【禁止次項】
●転載、盗作、荒し、中傷、醸し
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**
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