鬼の花嫁

スメラギ

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鬼の花嫁―本編―

03

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あれから、また数日間かかって歩けるようになったけど、一度も紅輝は僕に逢いには来なかった。
 部屋に戻って来た様子もない。まぁ、お陰で好きに過ごせるのは有り難い。

それに、考えることは沢山ある。恐らく紅輝に出会ったあの日に初めて発情期をむかえたという事。
 鬼はαアルファしか生まれないと言っていた。
 発情期をむかえてしまった僕のフェロモンに当てられたに違いない。

 僕も彼の被害者だけど、彼もまた僕の被害者という事になる…

 発情期になっていなかった事もあるけれど、"底辺Ωオメガ"にかけるお金はないというのが我が家のスタンスだったので首を保護するΩオメガ専用の首輪がなかったのだ。

 僕の首にはその保護具がついてなかった。
 それが災いしてお互いに望まぬ結果になったんじゃないかと思う。

 紅輝は伴侶はんりょを望んで居なかったー・・・
 だから、逢いに来ないんだと思うと府に落ちた。
 府に落ちたんだけど、そう考えてしまうと悲しくて胸が張り裂けそうなくらい痛むのだ。
 何故なのかは分からないけれど、、、

 鬼の世界で僕がどの立場にあるのかは、まだ分からないけど、分かった事もある。

この部屋は『神木かみき』である紅輝に宛がわれた部屋でマンションのような建物であり、そこの最上階がその部屋だ。セキュリティーも万全になっている。

最上階より下の階には庇護するグループ信頼できる鬼に所属している鬼とその伴侶はんりょが住まう住居区間となっている。
申し分なく10人とも強い鬼なんだけど、その10名の中でも先祖返りが強い鬼ほど最上階に近い階に住んでいるようだ。舞さんも普段は1つ下の階で生活しているみたい…

今さらだけど、僕は未だに部屋から出たことない。部屋の設備は恐らく最新のもので、家事に必要な物が全て揃っているので困ることが先ずない。
 後は出来るだけ自分で出来ることは自分でするようにする他ない。当然だが、自炊や掃除、洗濯もする。
 それに、頼んでいた食材などを舞さんが部屋まで持ってきてくれるので、外へ出る用事も必要もない…
 積極的に出たいとも思わない。あの家に居るより断然楽しいし、家事も楽だということ。夜は1人だと思うとやっぱり寂しいと思ってしまうが。そこさえ乗り越えれば後はどうということはない。


 補足すると、この鬼が住まう区間には一般教育を教えてくれる学校(中高)がある。伴侶はんりょと共に過ごしたいという鬼のために建てられたらしい。
 そのため寮生はΩオメガが大半を占めている。まぁ、第一に伴侶はんりょの安全を考慮しているというのもあるだろうが、、、

その学校は一般の女のβベータのみ入学を認めている。伴侶はんりょとなったΩオメガ伴侶はんりょの鬼以外、フェロモンで誘惑することはないが、人間のαアルファや男のβベータが居ないのは間違いを犯さない為の措置だという。
 まだどの鬼とも伴侶はんりょになってないよめ候補のΩオメガが中には居るらしく…強い鬼にアピールしたりしているようだ。

 皆、中学と高校の生徒は寮で住む決まりがある。一般の生徒(女のβベータ)専用の寮、Ωオメガ専用の寮、鬼専用の寮の他に職員が生活する為の職員専用の寮がある。
 職員専用の寮の中には発情期をむかえるΩオメガの為の設備(部屋)が幾つか用意されている。

僕はその学校へ通うことになるが、寮へは入らずにここから通うようになるみたいだ。紅輝へ話しはいっているはずだが、紅輝自身どうするのかは分からない。



 そして、今日、舞さんが血相を変えて訪れてきた。緊急事態だという。
何でも、紅輝が居ないにも関わらず「御披露目をしろ!」と騒ぎが起きているらしい。
 紅輝にも連絡を取ろうとしているが繋がらないのだとか。

 歴代最高の『先祖返りの血が濃い鬼強い鬼』なので騒ぎにもなるし、勿論、伴侶はんりょも例外はなく注視される。
そのΩオメガは何れだけ優れているのかを見るためである。

 舞さんが険しい顔のまま爆弾を落としてくれた。
今までの鬼の伴侶はんりょは例外なく見目麗しい女のΩオメガだけなのだと。
 今までになかった事だらけなので、どうなるのか分からないと。
 頼るべき伴侶はんりょ紅輝は居ない。しかも、女ではなく男のΩオメガである。その上、見目麗しいわけでもない薄茶色の髪に茶色い目、平凡で地味な顔の自分。貧相な身体。何一つ抜き出ているものがない。
 しかし、首に刻まれた噛み跡は最高ときた。もう、どうして良いのかも分からない。
 最悪、その候補達の敵意攻撃を受ける可能性も大いにある。

 唯一の取柄は『歴代最高の強い鬼の子どもを授かれる。』という点だけだと思う。


 収拾がつかなくなり「もう、どうにも出来ない」という事になってしまったので、御披露目が強行されることになってしまった。
 会場は高校の体育館を貸し切ってするらしい。

 今、僕は女物の着物を着込まされ、無造作に伸びていた髪の毛も整えられショートボブになった。
 着物に着られている感が半端ない。
 上質な白い羽織に口元しか見えないようになっている角隠しを被せられて、これからの一連の流れを聞かされた。

 何を聞かれても黙って居れば良い。
 堂々として座って居れば大丈夫。
 隣に紅輝が居れば何の問題もなく進行できるらしい。
 危険が及べば庇護するグループ信頼できる鬼が助けに入ってくれるらしい。

1人とか正直、不安しかない。


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【禁止次項】
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【注意次項】
●説明文とか下手です。(キャラも時折迷子になります。)
●物語最終話までの構成などは全く考えておりません。(大体グダグダです。)
●全て妄想で書き上げています。(自己満足です。)
●専門的な知識などは皆無です。(ご都合主義です。)
●気がついたら直していますが、誤字やおかしい文章など多数あります。(ごめんなさい。)
●R指定は念のため【R-18→*】
●メンタル弱いです。暖かい目で見てやってください
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全ては“自己責任”でお読み下さい。


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