鬼の花嫁

スメラギ

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鬼の花嫁―本編―

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どれだけ走っただろう。途中草木に隠れて少しの休憩を取りながら獣道を縦横無尽に走りまくった。食べれる木の実などをしょくしながら走った。
 飛び出したのが夕方で逃げてから多分、二晩くらいは山に居ると思う。最早ここがどの辺りに位置するのかわからない。出来るだけ遠くにという一心でここまで来た。
どこに繋がっているのかもわからない吊り橋も2つくらいは渡ったと思う。

ヘトヘトになって獣道を走っていると開けた空間に出た。上から大きな滝の水が飛沫をあげながら落ちてきている…
幻想的な風景を目尻にほとんど食事らしい食事を口にしていない僕は最早、限界らしい。止まってしまった足は鉛のように重く少しも動かせない。地面に膝をつけ、近くの木に手をついて浅い呼吸を繰り返している。

すると、周りの空気が変わった。周りを凍てつかせるような冷たいような重い感じ。
 ボヤける視界で必死に目を凝らす。
こちらに近づいてくる足音。小枝を踏みつける音に砂利を踏む音。土を踏む音がして。

目の前の茂みから出てきた人。視界に捉えた直後、全ての感覚を持っていかれるような感覚に襲われる。目が離せなくなった。
 突如、お腹のそこから燃え上がるような熱を感じて身体を支えられなくなり、その場に倒れ込む。

浅い息の中に艶かしいような息遣いが時折入る。目の前に佇むこの人にこの熱をどうにかしてほしい。
 後ろの奥の方が疼くのだ。触れてもいないのに自身が張りつめ、ドロリとぬめりのある体液が後ろから垂れているのがわかった。
 その者のモノを身体が欲している。疼いている最奥を埋めてほしい。穿ってほしい。という強い欲求が、本能が、理性を押し退け顔を出す。

どうにも出来ないもどかしさに生理的な涙が浮かんだ。
これ以上、近づかれるとおかしくなると思った僕は声にならない声で『来ないで!』と懸命に口を動かした。

そんな思いも届かず、気配が近づいてきたと思ったら乱暴な手つきで僕を抱き起こした。
輪郭などは涙でボヤけて分からなかったが、黄金に染まったその冷たい瞳と目があった瞬間、完全に意識がブラックアウトした。その後の記憶はない。




そして、目の前にいる女性との出会いだ。
身体を起こすのを手伝ってもらい。水分を体内に流し込み声が出ることを確認して、あらましを女性に話した。

女性の名は春風 舞はるかぜ まいと教えてくれた。
僕の名前は如月きさらぎ いつきと自己紹介した。


舞さんは神木かみき 紅輝こうきが『"神木かみき"』に宛がわれた部屋に何の前触れもなく少年を連れてきて、共に部屋へ入ったのだと教えてくれた。
 そのとき、誰にも声を掛けなかったらしい。

 神木かみき 紅輝こうき、、、フルネームで呼ぶのも面倒になったので、もう、紅輝こうきだけで良いだろう。
 話しを戻すと、部屋に1週間くらい籠っていたようで、出てきたと思ったら庇護するグループ信頼できる鬼を呼びつけて出ていったようだ。

 部屋に入ると行為セックス特有の濃い臭いが充満しており、身体は清められ、服もきれいに着せられてはいたが、グッタリしてベッドに寝ていた僕を見つけようだ。
 見つけた時、既に手当てはされていたというのが一連の流れらしく、舞さんは呼びつけられた庇護するグループ信頼できる鬼に所属している鬼のつがいでその鬼のよめを統率している立場にあるのだとか。
僕のお世話をしてくれていたらしい。

 首に巻かれた包帯は伴侶はんりょとなった噛み跡がついていると思って先ず間違いないと言われた。紅輝は今まで伴侶はんりょを迎えたことがなく、上が宛がおうとした事もあるらしいが、その時によめを殺しかけた事もあるらしい。
 僕が現れたのは異例中の異例で今まさに鬼の世界がゴタゴタとしており、ざわついていると教えてくれた。

 庇護するグループ信頼できる鬼の中の会議で紅輝が居ない間、僕には日替わりではあるが交代制で2人つくらしい。隣に居るわけではないが、陰ながら命の危険から護ってくれるのだとか。
 紅輝に従う庇護するグループ信頼できる鬼は10人いると教えてくれた。

 伴侶はんりょの危機は感覚で分かるらしい。
 助けを呼んでも来てくれる。と教えてくれた。

 通常の鬼は伴侶はんりょとなって日が浅いΩオメガの傍を絶対に離れないらしい。
 もう、この時点で異例なのだと…

 鬼は自分の姓を持たない生き物なのでつがいが居ればつがいの姓を名乗るらしい。
 生まれた子どもも例外はなく、親の姓は名乗らない。自分のつがいの姓を名乗る。

 神木かみきは例外で例えつがいにしたとしても神木かみきである以上、つがいの姓は名乗れない。逆もまた然りである。
 後、つがいは紋章を刻まれた歳で身体の成長を止めて歳を取らなくなり、伴侶はんりょになった(項に噛み跡を残された)時に、その身に鬼の子どもを宿すために身体の中身が変化すると話してくれた。

 ただの伴侶はんりょは年齢と共に年を取るらしく、寿命も人間のそれと同じなんだって…

 噛み付かれ鬼の体液をその身に取り込んだ事によって身体が子どもを宿すために変化する。その影響で高熱を出していたらしい。
連れて来られてから既に1週間経ち、それから3日くらい高熱を出して意識が戻らなかったらしい。

目が覚めたという事は体液が身体に馴染み、変化が終わったのだと教えてくれた。


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【禁止次項】
●転載、盗作、荒し、中傷、醸し
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【注意次項】
●説明文とか下手です。(キャラも時折迷子になります。)
●物語最終話までの構成などは全く考えておりません。(大体グダグダです。)
●全て妄想で書き上げています。(自己満足です。)
●専門的な知識などは皆無です。(ご都合主義です。)
●気がついたら直していますが、誤字やおかしい文章など多数あります。(ごめんなさい。)
●R指定は念のため【R-18→*】
●メンタル弱いです。暖かい目で見てやってください
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全ては“自己責任”でお読み下さい。


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