鬼の花嫁

スメラギ

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鬼の花嫁―本編―

01

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 生まれながらに決まっている男女の他に"第二の性"というαアルファβベータΩオメガという性が存在している。

 医療機関が発達し、10歳を越えた時に受ける検査でしか分からなかった第二の性がわずか3歳で分かるという検査が普及していたー・・・


 僕は第二の性が分かった3歳のあの日からずっと奴隷のように扱われていた。
 両親はβベータで上には姉が1人と妹が1人いる。もちろん、どちらもβベータである。
 αアルファと結婚するのかβベータの男の人と結婚するのかは知らないが、両親の愛情を受けて育った2人はなんの疑いもなく両親と同じように僕を扱った。
 まるでそうすることが普通なのだという風に。
 βベータ同士の間に生まれ、3歳のあの日から地獄を味わってきたΩオメガの僕。

 男のΩオメガはただでさえ冷遇される。
 βベータ同士の間に生まれたΩオメガで、しかも男のΩオメガなど『出来損ないの底辺』として格好の餌食である。

 薄暗く三畳くらいの広さで通気性の悪い所でおまけにカビ臭い場所が僕の部屋。服は三着をずっと着回しているので色褪せくたびれている。
 食事は皆の分を作らされ、自分は残った残飯のようなものを食べなくてはならない。
 買い出しも掃除も洗濯も全てしなくてはならない。
 出来てなかったらご飯抜きならまだマシだ。それに暴力が加わる場合がある。
 姉や妹からは毎日罵倒され、殴られ蹴られ水を浴びせられたりもされる。その上、母親や父親まで加わったらたまったものじゃない。

 親戚なども例外はなかった。間違ってつがいとなってしまったら汚点だと思ったのか、それとも妊娠する恐れがあったからなのか性的な暴力を奮われなかったのが不幸中の幸いだったと思う。

 "つがい"とはΩオメガとの性交の最中に体液を流し込みながら項に噛み付き跡を残す事で成立するという。
 ちなみに発情期の方がつがいになりやすいらしい。

 稀に発情期以外でもつがえる場合もあるのだとか、、、
 稀と言えば、生涯に出会えるか分からないという都市伝説に近い"運命うんめい"のつがい と呼ばれるものもあって、何でも発情期でなくても強く引かれ合うのだと…
 その際に一時的に発情して、つがいやすい状態になるらしい。僕には縁のない話だろう。


 話しは少し飛躍するが、僕は男のΩオメガだったから、学校へ行っても苛められ、心が休まる場所がなかった。義務教育なんてあってなかったようなものだった。

 Ωオメガは10代半ばになると発情期をむかえるらしい。  3ヶ月に一度、1週間くらい発情期に入る。
 初めての発情期で周期が決まると本で読んだ。

 発情期のΩオメガはフェロモンで男女のαアルファと男のβベータを誘惑する。
 発情期にαアルファにあったら捕まって犯されるだろう。
 αアルファの力にΩオメガは敵わない。βベータにすら敵わないのだから当然なんだけど。

 発情期の間はつがっても、つがわなくても妊娠の可能性が飛躍的に高くなるようだ。

 αアルファβベータΩオメガなど各第二の性に対応した抑制剤フェロモンを抑える薬があって、良い薬だと副作用がなく避妊薬のような効果を発揮するらしい。

 Ωオメガはそれに加えて発情を軽減してくれるという優れものらしい。
 僕の家族にはそんな予算もなければΩオメガにかけるお金は全くないというスタンスだった。

 合わない人の方が多いという粗悪な抑制剤すら貰えなかった。
 女のΩオメガだったならそこまででもなかっただろうけど…
 βベータ同士から生まれた男の"底辺Ωオメガ"として認知されている状況である。
 これ以上の待遇なんて良くはならないし、期待もできない…

 第二の性に対する知識も他の勉学も独学で教科書やノートも無かった。教えてくれる人も居なかった。

 僕にあったのはこっそり読んだ本の知識だけだった…

 学校に行っても教室に入れないし、一縷の望みを懸けて「助けて!」と叫んだ事もあったけど…
 僕が"底辺Ωオメガ"だと知ると皆離れていってしまったし、手を差し伸べてくれる人なんて誰1人として居なかった。

 助けを求めた事が家族に知られた時は命の危機を初めて感じるくらいだった。
 もう、一思いにって何度も思ったけど、臆病な僕は覚悟も行動力もなかった。嘆くだけの意気地無し。それが自分。

 そんな僕も16歳になる。発情期はまだ来てない。どうせ、いつもと変わらずにこれからも全てを諦めて過ごすのだろうと思っていた。


 あの日、帰るまでは、、、






 全ての家事を終え、買い出しに行き買い物を済ませて帰路につく。
 帰った後、ヒステリックに叫ぶ母親に打たれ、汚物を見るような目を向けている姉に蹴られ、物を投げてきた妹はまるでおもちゃで遊ぶ子どもみたいに笑顔だった。

 いつになく荒れている家に嫌な予感しかしなかった。その極めつけは父親の言葉だった。
 任されていた企画をダメにしてしまい損害賠償にまで発展してしまった。

 とてもじゃないが、そんな額は払えないという事になり借金を 肩代わりしてくれるという上司のところに子どもを行かせる愛人にするというイカれ具合を発揮した。
性の捌け口にされるのが目に見えている。暴力だってあるだろうし。いろんな事を無理強いされるだろう。

 そんなイカれた父親でもβベータである娘たちは可愛いらしい。僕に行けと。これまでの恩を返せと。少しは役立てと言ってきた。

 寒い日だって暑い日だって毎日休まず食事だって朝昼晩と3食必ず作ったし、洗濯も今までずっとしていた!
 家中の掃除だってしてきた!
 庭のお手入れも、蔵の掃除だって…
 買い出しだってずっと1人で頑張ってきたし、手伝いをしてくれる人なんて、いなかった!
 自分の服なんてくたびれた物が三着だけ…
 新しいのなんて買ってくれた事もない…

 働きたくても"底辺Ωオメガ"というだけで面接すらしてくれなかった!

 金さえあればこんな家、出ていってやるのに!何で僕だけこんな目に遭ってるの!と何度思ったことか、、、

 何もしてない姉や妹より十分役立ってると自負してた。
 もしかしたら…いつかは認めてくれる…愛してくれるかもしれないと、未だに希望を捨てきれず、そう思っていたが…その見込みは全くなかった…

 僕が居なくなったら誰が代わりにやるのだろう。という言葉は不要だろう。皆の顔を見ても『"お前が行って当然だ"』とでも言いたいような顔をしていたから…

 限界だった。意に沿わない相手に辱しめを受けるなんて嫌だ。
"底辺Ωオメガ"と蔑まれたって僕も生きてる!人間なんだ!

 父親は上司の家へ僕を連れていく為と家の門前に車をつけるためにエンジンをかけに外へ行った。
 母親や姉妹は僕に関心が向いていない。
 逃げるなら今しかないと、父親の後を追うふりをして庭裏にある扉から山道へ向かって走った。

 あの家が荒れようが荒れまいがもうどうでも良い。
 いずれ見つかるだろう。捕まれば後はない。今まで以上に状況が酷くなるだろう。捕まって上司に売られるくらいならば出来るだけ遠くへ逃げて、逃げて、逃げまくって…そして死んでしまおう。そう思った。
 その一心でボロボロの身体に鞭を打ち走り続けた。








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全ては“自己責任”でお読み下さい。


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