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Main Story〜アルファな彼とオメガな僕。〜

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 「こっちの男と話が終われば、次は貴女なんだ…逃げる事ないだろう?お・か・あ・さ・ま」

 そう言った崇陽の顔は未だに無表情である…しかもこのお化粧の濃い女の人がお義母さん…
 踏まれている男の人も驚いたような顔をしている。しかし、崇陽と共に入ってきた。生まれて此の方、見た事のない絶世の美女ならぬイケメンは驚いたような表情を浮かべる事はなかった…

 優しそうな表情ではあるが…その表情とは裏腹に全く以てとらえどころのないその男の人と目が合い背がゾクリとした。
 これは深く関わってはいけないと頭のどこかで警鐘が鳴る…ソっと視線を逸して崇陽の首元に顔を埋めた。

 崇陽はこの状況に怯えていると思ったのか…宥めるように僕の背中を擦ってくれている。その手に安心感を覚えて軽く息をつくと目を閉じた。

 「ふむ。押さえつけられて少しは大人しくなったか…暫くそうしていろ。許可するまで声を出す事は許さない。これで漸く落ち着いて話せるな…」という僕に触れる手の優しさとは裏腹に声音に抑揚はなかった。

 その台詞を最後に僕の意識は暗転した…



 次に目覚めたのは寝室のベッドの上だった…隣に崇陽は居らず、気持ちが焦り文字通り飛び起きる。
 すると、最近寝室用に購入したソファーに深く腰掛けており、何やら作業をしていたようだが、僕が飛び起きたのが分かったのか少し驚いたように振り返ってきた。
 スッと静かに立ち上がると僕の近くへと寄ってくる。

 「大丈夫だ。今回のような事は二度と起こらない」そう言ってギュッと抱きしめてくれた。
 強めに抱きつき返して深呼吸をすると崇陽の匂いがして幾分か落ち着きを取り戻す。

 そして、崇陽からソっと身体を離すと目が合った。事の顛末を聞くと…あまり言いたくはなさそうであったが…一応、言葉を選ぶ素振りを見せて教えてくれた。

 クラスに戻ると僕が居らず、直ぐに学園内はもちろんだが、周辺の防犯カメラを全て洗い出したらしい…
 それと同時進行で僕に付けてあるGPSで場所を特定して犯人も特定したようだ…

 万が一に備えて後ろ盾であるあの・・男の人を連れてきたらしい。下手な護衛より確実なんだとか…
 しかも、扉を破壊したのはその人だという…一体何者なのかと問えば、ビジネスパートナーだと言われ、僕が聞きたかった事とは別の答えが返ってきた。
 何か・・をはぐらかされたけど…崇陽の表情から深く言及する事ははばかられた…

 半ば強制的に話を戻される。崇陽に踏み付けられていた人はやっぱりアルファであった。その人は数年前に恋人のオメガを亡くしており、未だに立ち直れず傷心していたらしい…

 丁度、早く番った方が世のためになる男の・・オメガが居たので、オメガの見張りも兼ねて紹介・・をしてやったと言っていた。
 ちなみに拒否権はなく、番ったのも部下に確認させたらしい…

 崇陽の機嫌をこれ以上逆撫でしない為なのか、拒否権がないにも関わらず即答で了承してきたらしい…そして、崇陽の監視下へ入った。

 不審な真似をすれば、適切に処理・・する…と崇陽が酷く冷たい目で言っていたのが印象に残った…

 
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