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Main Story〜アルファな彼とオメガな僕。〜

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 何の変わりもなく日々を過ごしていると紅葉の季節となっていた。しかし、何かが変わるわけでもなく、相変わらず僕は勿論だけど、崇陽も学校が休みの日は買い物へ行く以外はマンションの部屋に居た。

 オンラインを使用する急ぎの仕事以外は僕と同じ空間で作業をしていた。
 いつかの発情期にしていたような体勢でサイドテーブルにパソコンを置き、キーボードを叩いている。冬樹さんへの用事だったり、冬樹さんからの連絡ならオンラインであっても違っても僕の側から離れない。

 今日の通話相手は冬樹さんらしくソファーからあまり立ち上がったりしていなかった。
 そして、僕はというと大きな液晶テレビで秋の特集番組を見ていた。いや、見てはいたんだけど…頭にはテレビの声なんて入って来なかった。

 崇陽が喋れば僕は無意識にその声を拾おうとする。仕事の内容なんだからダメだとは思う。聞いても全く分からないんだけど…声が聞こえれば内容なんて何だって良いのだろう。

 急にハッと我に返り、テレビに集中しようとするが…数分と経たずに同じ事を繰り返している。
 今もそうだった…

 「ーーだから、ーーで…こっちがあの時のーー」とか「は?お前、なめてるのか?」という言葉も聞こえてきていた。

 僕がテレビに集中できていないのが分かったのか、僕の頭を撫でてきたのでチラリと崇陽を見ると、雰囲気で申し訳なさそうな感じを伝えてくる。

 ずっと、一緒に居たからか、最近は怖がる前に何となく雰囲気で今はこんな感じかな?と分かるようになった。

 僕と目が合うと頬を撫でて立ち上がろうとした。恐らく僕に気を遣ってくれようとしたのだろう…しかし、僕はソレを拒んで逆に崇陽の服の裾を掴んで引き止めた。

 逡巡した後に再び僕の近くに座ったので、僕の方から崇陽へと近づき膝へと寝っ転がった。
 何も考えていなかった僕は身体が動くままにそうしていた。崇陽は僕の行動を咎める事はなく、そのまま受け入れてくれた。
 頭を撫でてくるその手付きや温もりに安心して知らぬ間に夢の中へと旅立っていた。



 起きたら既にパソコンは閉じられており、ソファーに凭れるようにして、やる気無さそうにテレビを眺めている崇陽が視界に入る。
 そして、寝る前の行動を思い出し、飛び起きた。いや、飛び起きようとしたが、崇陽により阻まれて、頭を崇陽の膝につけたまま身悶えて終わった。

 身体が動いた事によりパサっと僕に掛けてあったタオルケットが下へ落ちた。
 崇陽は身を捩ってソレを手に取ると再び僕の上へと掛け直す。

 「ベッドで寝るか?」と聞かれて僕は首を傾げる。その様子を見て崇陽も首を傾げた…ちょっと可愛いと思ったのは内緒だ。

 「自覚がないのか?」
 「じかく?」
 「熱があるぞ」

 そう言われて、目をぱちくりしてしまった。何でも甘えてきた時に身体が熱く感じたみたいで…僕が崇陽の膝枕で眠ってしまった時に計ったらしい…

ー確かに言われてみれば身体がフワフワして熱っぽいかもしれない…

 おかしい話で、自覚をすると本当に体調が悪くなっているのが分かるというか、悪化していく…

 崇陽曰く、一度僕を起こしたらしく、その時にベッドに運ぼうとしたら、しがみつき離れようとしなかったようで、最終的に膝枕続行で落ち着いたみたいだ…



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