兄のやり方には思うところがある!

野犬 猫兄

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【幕間】兄side

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 父が不倫した相手の子どもが朋だった。

 朋の母は、俺の母が子育て中に父と仲が良くなった職場の女性だ。

 当時は女性が面倒を見る方向で話し合いがされ、少なくない金額が支払われたという。

 しかし、その女性は赤ん坊と手紙を置いて失踪してしまった。

 父と血の繋がった子どもを両親は放置できるはずもなく、鷺沼家にくることになった。

 しかし、父も母も冷え切った仲で弟の朋はベビーシッターに任せきりだった。俺も進んでまでいきなり家族となった朋に、父と同様不信感しかなく構う気にはなれなかった。

 ただ、朋のことは弟として気にしていたし、朋が過ごしやすいよう自分なりに環境を整えたりと考えてきたつもりだった。

 大学では経済学部で学び、友人となった医学部にいる上條カナタと出会った。

 上條には弟の話ばかりしていると指摘され、朋をいつも気にしていたことに気づいた。

 弟の朋に対しては年齢とともに不信感は消え、好きでも嫌いでもなくなっていた。

 弟という存在は俺にとって家族ではあるがそれ以上でも、それ以下でもなかったからだ。

 それから社会人として働くようになり自分が不能だと知った。俺としてはまったく機能しなくても問題はなかった。

 が、新米医師となった上條に診察され、早めになんとかしたほうがいいだろうということになった。

 薬は悪夢に魘され、ただでさえ少ない睡眠時間が削られるという悪循環に陥り、上條から服用のストップがかけられた。

 薬は体質的にも合わなかったらしい。身体に優しいと言われる薬も服用したがやはり合わなかった。

 上條から提案されて興奮するような性的な志向を探っていく中で、朋に触れた日から徐々に変化が見られた。

 最初は気の所為だと思った。

 朋が俺の手でイッた表情は俺の中で天変地異が起きたと思うほどの衝撃だった。

 何が起きたのかわからなかったが、それから構うようになった。何度見ても朋の悶える姿は可愛らしい。

 それに怒られたことも嬉しかった。

 今まで朋と喧嘩をしたことも喜びあったこともなかったし、感情的になるということがそもそも一度もなかった。

 朋に触れるたび悦びが身体の中に満たされる。

 自分が不能だったことを感謝したくなるくらいで、ただなぜ幸福感を感じるのかはわからなかった。

 くすぶるような気持ちが沸々と湧き出るような感覚はあったように思う。

 朋には家族として愛していたのだと気づくのにそれほどの時間は必要なかった。すぐに違う気持ちに上書きされたからだ。好きという感覚や愛してるという気持ちは朋と触れ合うことで理解していった。

 隣りにいてくれる朋に髪を撫でられ温かな感情が伝わってくるようだった。

「どうですか?」

「気持ちがいい」

「それは良かったです」

 簡単なやり取りの中でも朋に対しては好きな気持ちが際限なく溢れてくる。

 しばらく撫でられたまま身を横にしていると、隣りに滑り込んだ朋はぴたりと俺にくっついてくる。そんな可愛らしい行動にも胸がときめくのを感じる。

 寝る前の会話では俺を疑うような眼差しをしていたことが気になった。だが、過呼吸になりかけた朋に焦ってそれどころではなくなってしまった。

 深い病が隠されてはいないかと診察した上條を呪いたくなる。

 具合の悪そうだった朋は健やかに寝ている。その姿を見て安心した。

 苦しくないように朋の衣類を取り除く。朋が隣りで苦しまず寝ているだけで幸せな気持ちになる。

 多幸感のまま眠れる気がして、朋を閉じ込めるようにして抱き、目を閉じた。
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