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気遣える速水くん
しおりを挟む引っ越しに必要な手続きや両親への連絡はすべて兄が手を回していた。
そこまでしてでも回復させたいと考えているのだ。兄の本気を感じた気がした。
「引っ越したんですか?」
生徒会の提出書類を作成し終わったその帰り道。速水くんと話しながら昨日の出来事を振り返っていた。
「うん。兄が体調を少し崩してしまってね。しばらく同居することになったんだ。協力するとは言ったけれど、なにから手を付けたらいいのかと迷っているんだ」
兄の体調面など健康に関する情報を把握するところから始めるべきだろうか。
「この間お会いしたときは元気そうでしたが、表面からではわかりませんね。それでしたら食生活から変えてみてはいかがでしょう?」
僕が考えていた内容と一致する。
「食事面からのサポートなら僕でもできそうだ」
「えぇ、何を主食にしているか、好みの傾向を教えてもらうのも献立を作りやすいかもしれませんね」
「うん、そうしてみるよ。速水くんに相談してよかった。ありが……あっ」
速水くんの顔を見ながら歩道を歩いていたので段差に足を取られつまずいてしまった。
廊下に手をつこうとした体勢を速水くんが支えてくれた。
「大丈夫ですか?」
ぎゅっと抱きしめられる体勢になり腹の脇に回された手がくすぐったい。
「んっ、ちょっと、手が、ふふっ」
「か、会長っ?! あっ、もしかして脇が弱いんですか?」
「そうみたい。助けてくれたのに変な声を出してごめんね」
顔を真っ赤にした速水くんは僕からぱっと身体を離した。恥ずかしい気持ちになったが速水くんの方が、もっと居た堪れないだろう。
「いえっ! 気にしないでください。生徒会長の弱点を知ってしまったなんて光栄ですよ。それに怪我がなくて良かったです」
「弱点って……相変わらず大げさだね。でも助かったよ。ありがとう」
ぶんぶんと顔を振る速水くんは僕の手を掴んだままだ。
「もうつまずいたりしないから離しても大丈夫だよ?」
「えっ、おわっ?!」
無意識で手を握っていたらしい。速水くんは慌てた拍子に電柱にぶつかっていた。
よそ見をせず前を向いて歩いたほうが安全ですねと、速水くんはぶつかった肩を撫でながら真面目な顔をして言った。
恥ずかしさも霧散した。
人を気遣える速水くんはなんて素敵なのだろうと思った。
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