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未来の嫁?
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俺は今ものすごいお宝を前にしている。
煌びやかに見えるそれらは俺が知らない未知のものだ。
そこは馬車の中であり、商談する為の空間と広さがある。
設置されているソファーに俺は腰を落ち着け、テーブルを挟んだ先にいる商人の男に好意的な笑顔を向けられていた。
「本当に助かりました。せめてものお礼に我が商会の商品をお譲り致します」
そう話すのは頭部がつるりと禿げた狐目の商人で、先ほど魔獣に襲撃を受けていたところを助けたキャラバン隊のリーダーだ。
名をサクと名乗った。
ちなみに、新人にある程度任せろというジルベルトの言葉により、俺は何もしていない。
もはや代表として、この場にいる。
「いや、民を守るのは我々のの役目だからな。無事で何よりだ。……ところで、これは一体何の商品なのだろうか?」
楕円形のテーブルの上に広げられているのは数枚の布だ。
「おや、ご存知ありませんか? 紐付きパンチィーと言って、最近人気の商品で異国から取り寄せたものなんですよ」
ジルベルトも初めて見るのか興味津々で覗き込み質問をする。
「紐付きパンチィーとは、どうやって使うものなんですか?」
砂時計のような形の先の角から1本づつ紐が伸びている。清潔な布ではあるが装飾がついているものもあり、止血する医療具という訳では無さそうだ。
「主に女性が身に着ける下着ですね」
俺とジルベルトは一瞬にして固まった。
ドロワーズが女性の下着というのは周知の事実だろう。
しかし、異国ではこんなに布面積が少ないもので大事な部分を隠すらしい。
結び目が解けたらと思うと気が気ではないだろう。
「こちらのレースも大変人気の商品となっておりまして、男性の方も使われますよ」
──なに?! 隠すところがない、だと?! スッケスケなんですけどっ?!! というか、男でもこれをつけるのか?!
履くという概念ではない布面積だ。
装飾のように身に着けるというのが、正しいのだと教えてくれた。
ただ、着けたとしても全部丸見えだ。
大事な部分が飛び出してしまい、しまう面積などないに等しく、もしあるならば異空間に続いているとしか思えないその形態。
ジルベルトをちらりと見れば、青ざめて首を横に振っている。
俺達にはハードルが高い代物のようだ。
「今はそういう品が人気商品なのだな」
その場は酷く重い空気が漂っている。
それを知ってか知らずか、明るい声で商人は話を続ける。
「奥様にいかがでしょうか?」
俺は独身だし、ジルベルトも妻帯者ではない。
可愛い女の子を探し中と言ってはいるが、女の子に出会う暇さえないらしい。
たぶんそれは俺が休まずに働いているのに付き合って居るからだろう。もっと休暇を取るように話をすり合わせよう。
『ジルベルトの未来の彼女にどうだ』
『こんな破廉恥なものを渡したら正気を疑われますよ?!』
『仲良くなったら渡せば良いじゃないか』
『だったら、クラウ師団長こそ、バロル師団長にお贈りすればいいでしょう?! 未来の嫁なんですからっ!?』
それを聞いた俺は周囲に花びらが舞い散る錯覚を見た。リンゴーンと幻聴も聞こえる。
──未来の嫁。
そうだった。俺にはリズウェンがいたのだ。あまりの衝撃に頭が真っ白になる。
男用もあるらしく、恥を忍んでいろいろと見せてもらう。
収めるべき袋がついたものもあるが、何のためにこんな手間をかけたものを作るのか。
「勃ちあがり滲み出る様がありありとわかりますよ。つけたままずらして致す方もいらっしゃるそうで、隠されたものが揺れるのを見て楽しまれる嗜好をお持ちの方は多いのです」
恥ずかしくなったのか目を閉じ耳を覆うジルベルトに、かけてやる言葉もない。俺もその場で恥ずかしさのあまり叫び転げ回りたい気分だ。
しかし、それをすれば師団長としての威厳はなくなるし、童貞だと見抜かれてしまうかもしれない。
商人の鑑定眼は人の趣味嗜好まで覗き見ることは無いと思うができればそっとしておいて欲しい。
「なるほど。ではそれを1枚と、先ほどのレースも欲しい」
「承知致しました。お礼としてお包み致しますのでお待ちください」
「いや、購入する。正直、ただで貰ったものを人に渡すのは心証が良くないだろう? それに俺としても相手が身につけるものならば尚更だからな」
目を丸くする商人はふっと、息を吐いて、
「大事にされているんですねぇ」
と、嬉しそうに笑った。
「独占欲が強すぎでしょう! バロル師団長があのような卑猥な下着を? ……まったく想像できない!」
ジルベルトがなにかブツブツ言っていたが無視をする。
そして、商人は本領発揮とばかりに、次々と新たな商品をテーブルに並べ始める。
──いやいや、もうお腹いっぱいな気分なんだけどっ?! っていうか、ちんこの模型ってなにー?!
「こちらは張り型と言いまして、棒の部分を陰茎に見立てた処女用のものになります」
──いらないからっ! なんでそれで処女を散らすんだっ?! 意味がわからないっ!!
「大きすぎると入りませんからね。無理やり入れたら流血沙汰ですよ。慣らすためのものです」
聞いてもいないのに心の中を読んだようにタイミング良く答えが返ってきた。
「いいいいいや、それは不要だっ」
──いらない、いらない、いらないよっ! 無理矢理なんて入れないしっ、時間をかけて解すしっ?!
「テクニシャンですねぇ~」
ニヤリと悪い笑みを浮かべる商人の禿げた頭をひっぱたきたくなった。
「もう、これで充分……」
可愛らしい包装紙に包まれた2枚のパンチィーを胸にだく。
「あ、これなんてどうですか? 燃え上がるような一夜という媚薬なんですけど」
その言葉に眉根が寄った。
リズウェンも俺も媚薬は嫌悪している。
「媚薬はいらん」
「そうですか。まぁそうですよね。この媚薬は有名な薬師様が作られたもので、一度使うと意識が飛ぶほど感じて乱れるらしいのですが、二度と、どの媚薬も効果がなくなるという微妙な代物だというものですからね。なかなか売れなくて」
「よし、買った」
俺は今後のために購入を決めた。
効果のほどはわからないが、媚薬効果無効という商品が本当にあるならば買わない手はない。
「お買い上げありがとうごさいました!」
商人に見送られて、討伐の目的である場所へと出発した。
しかし、ジルベルトの顔は赤いままだ。
「大丈夫か?」
馬上でジルベルトはキョロキョロしてから、周囲に消音壁の魔法を展開する。内側の会話はこれで外部に聞こえなくなる。
「大丈夫ではありませんよー。なんで平気な顔をしていられるんですか?! 挿入しながら、揺れる様を見て楽しむ人がいるんですよー?! もうっ、何処見てんのぉぉおっ?! って思うじゃないですかっ?! それをクラウ師団長は買っちゃうし! どんな顔してバロル師団長を見たらいいんですかっ!」
「リズで想像するな」
リズウェンのあられもない姿を想像するのは俺だけで充分だ。
「バロル師団長が清廉すぎて想像できませんってぇ! 助けた商人が品物をお礼としてくれるって言うから加工食品あたりかとおもうじゃないですかぁ! あんなにいかがわしい物が出てくるとは思わないぃぃいっ!」
あれはイレギュラーなキャラバン隊だった。どの商隊も大人のお店専門店の品物を取り扱っているわけではないはずだ。
何人もいる商人の中のリーダーが仕入れているのがアレだっただけで。
「普段からちんこ、ちんこ言っているからそういうのに慣れているのかと思ったんだけど、案外ウブなんだな。気にするなよ」
「うわああああァァァ! ものすごく恥ずかしいいいいいィィィ!!」
「クラウ師団長なんかに慰められるなんてぇっ!」と言いながら、馬を走らせて先に行ってしまった。
俺だって内心は叫んでいた訳で、それを表に出さないようにしていただけだ。
ジルベルトには、なにかとお世話になっているが「なんか」とは失礼だなと思った。
煌びやかに見えるそれらは俺が知らない未知のものだ。
そこは馬車の中であり、商談する為の空間と広さがある。
設置されているソファーに俺は腰を落ち着け、テーブルを挟んだ先にいる商人の男に好意的な笑顔を向けられていた。
「本当に助かりました。せめてものお礼に我が商会の商品をお譲り致します」
そう話すのは頭部がつるりと禿げた狐目の商人で、先ほど魔獣に襲撃を受けていたところを助けたキャラバン隊のリーダーだ。
名をサクと名乗った。
ちなみに、新人にある程度任せろというジルベルトの言葉により、俺は何もしていない。
もはや代表として、この場にいる。
「いや、民を守るのは我々のの役目だからな。無事で何よりだ。……ところで、これは一体何の商品なのだろうか?」
楕円形のテーブルの上に広げられているのは数枚の布だ。
「おや、ご存知ありませんか? 紐付きパンチィーと言って、最近人気の商品で異国から取り寄せたものなんですよ」
ジルベルトも初めて見るのか興味津々で覗き込み質問をする。
「紐付きパンチィーとは、どうやって使うものなんですか?」
砂時計のような形の先の角から1本づつ紐が伸びている。清潔な布ではあるが装飾がついているものもあり、止血する医療具という訳では無さそうだ。
「主に女性が身に着ける下着ですね」
俺とジルベルトは一瞬にして固まった。
ドロワーズが女性の下着というのは周知の事実だろう。
しかし、異国ではこんなに布面積が少ないもので大事な部分を隠すらしい。
結び目が解けたらと思うと気が気ではないだろう。
「こちらのレースも大変人気の商品となっておりまして、男性の方も使われますよ」
──なに?! 隠すところがない、だと?! スッケスケなんですけどっ?!! というか、男でもこれをつけるのか?!
履くという概念ではない布面積だ。
装飾のように身に着けるというのが、正しいのだと教えてくれた。
ただ、着けたとしても全部丸見えだ。
大事な部分が飛び出してしまい、しまう面積などないに等しく、もしあるならば異空間に続いているとしか思えないその形態。
ジルベルトをちらりと見れば、青ざめて首を横に振っている。
俺達にはハードルが高い代物のようだ。
「今はそういう品が人気商品なのだな」
その場は酷く重い空気が漂っている。
それを知ってか知らずか、明るい声で商人は話を続ける。
「奥様にいかがでしょうか?」
俺は独身だし、ジルベルトも妻帯者ではない。
可愛い女の子を探し中と言ってはいるが、女の子に出会う暇さえないらしい。
たぶんそれは俺が休まずに働いているのに付き合って居るからだろう。もっと休暇を取るように話をすり合わせよう。
『ジルベルトの未来の彼女にどうだ』
『こんな破廉恥なものを渡したら正気を疑われますよ?!』
『仲良くなったら渡せば良いじゃないか』
『だったら、クラウ師団長こそ、バロル師団長にお贈りすればいいでしょう?! 未来の嫁なんですからっ!?』
それを聞いた俺は周囲に花びらが舞い散る錯覚を見た。リンゴーンと幻聴も聞こえる。
──未来の嫁。
そうだった。俺にはリズウェンがいたのだ。あまりの衝撃に頭が真っ白になる。
男用もあるらしく、恥を忍んでいろいろと見せてもらう。
収めるべき袋がついたものもあるが、何のためにこんな手間をかけたものを作るのか。
「勃ちあがり滲み出る様がありありとわかりますよ。つけたままずらして致す方もいらっしゃるそうで、隠されたものが揺れるのを見て楽しまれる嗜好をお持ちの方は多いのです」
恥ずかしくなったのか目を閉じ耳を覆うジルベルトに、かけてやる言葉もない。俺もその場で恥ずかしさのあまり叫び転げ回りたい気分だ。
しかし、それをすれば師団長としての威厳はなくなるし、童貞だと見抜かれてしまうかもしれない。
商人の鑑定眼は人の趣味嗜好まで覗き見ることは無いと思うができればそっとしておいて欲しい。
「なるほど。ではそれを1枚と、先ほどのレースも欲しい」
「承知致しました。お礼としてお包み致しますのでお待ちください」
「いや、購入する。正直、ただで貰ったものを人に渡すのは心証が良くないだろう? それに俺としても相手が身につけるものならば尚更だからな」
目を丸くする商人はふっと、息を吐いて、
「大事にされているんですねぇ」
と、嬉しそうに笑った。
「独占欲が強すぎでしょう! バロル師団長があのような卑猥な下着を? ……まったく想像できない!」
ジルベルトがなにかブツブツ言っていたが無視をする。
そして、商人は本領発揮とばかりに、次々と新たな商品をテーブルに並べ始める。
──いやいや、もうお腹いっぱいな気分なんだけどっ?! っていうか、ちんこの模型ってなにー?!
「こちらは張り型と言いまして、棒の部分を陰茎に見立てた処女用のものになります」
──いらないからっ! なんでそれで処女を散らすんだっ?! 意味がわからないっ!!
「大きすぎると入りませんからね。無理やり入れたら流血沙汰ですよ。慣らすためのものです」
聞いてもいないのに心の中を読んだようにタイミング良く答えが返ってきた。
「いいいいいや、それは不要だっ」
──いらない、いらない、いらないよっ! 無理矢理なんて入れないしっ、時間をかけて解すしっ?!
「テクニシャンですねぇ~」
ニヤリと悪い笑みを浮かべる商人の禿げた頭をひっぱたきたくなった。
「もう、これで充分……」
可愛らしい包装紙に包まれた2枚のパンチィーを胸にだく。
「あ、これなんてどうですか? 燃え上がるような一夜という媚薬なんですけど」
その言葉に眉根が寄った。
リズウェンも俺も媚薬は嫌悪している。
「媚薬はいらん」
「そうですか。まぁそうですよね。この媚薬は有名な薬師様が作られたもので、一度使うと意識が飛ぶほど感じて乱れるらしいのですが、二度と、どの媚薬も効果がなくなるという微妙な代物だというものですからね。なかなか売れなくて」
「よし、買った」
俺は今後のために購入を決めた。
効果のほどはわからないが、媚薬効果無効という商品が本当にあるならば買わない手はない。
「お買い上げありがとうごさいました!」
商人に見送られて、討伐の目的である場所へと出発した。
しかし、ジルベルトの顔は赤いままだ。
「大丈夫か?」
馬上でジルベルトはキョロキョロしてから、周囲に消音壁の魔法を展開する。内側の会話はこれで外部に聞こえなくなる。
「大丈夫ではありませんよー。なんで平気な顔をしていられるんですか?! 挿入しながら、揺れる様を見て楽しむ人がいるんですよー?! もうっ、何処見てんのぉぉおっ?! って思うじゃないですかっ?! それをクラウ師団長は買っちゃうし! どんな顔してバロル師団長を見たらいいんですかっ!」
「リズで想像するな」
リズウェンのあられもない姿を想像するのは俺だけで充分だ。
「バロル師団長が清廉すぎて想像できませんってぇ! 助けた商人が品物をお礼としてくれるって言うから加工食品あたりかとおもうじゃないですかぁ! あんなにいかがわしい物が出てくるとは思わないぃぃいっ!」
あれはイレギュラーなキャラバン隊だった。どの商隊も大人のお店専門店の品物を取り扱っているわけではないはずだ。
何人もいる商人の中のリーダーが仕入れているのがアレだっただけで。
「普段からちんこ、ちんこ言っているからそういうのに慣れているのかと思ったんだけど、案外ウブなんだな。気にするなよ」
「うわああああァァァ! ものすごく恥ずかしいいいいいィィィ!!」
「クラウ師団長なんかに慰められるなんてぇっ!」と言いながら、馬を走らせて先に行ってしまった。
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