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乳は出ないのです
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チャラ男ことジルベルトが簡易ベッドの上で俺に押さえつけられている。
少し垂れた目元は今は驚きに見開かれていた。
──おかしい。なぜ朝からこの顔を間近で見なければならないんだ。
驚いた顔は赤くしたり青くしたり、口をぱくぱくと開けたり閉じたりとかなり忙しそうだ。
「ギブッ! ギブですぅっ!」
「なんだ? 俺を襲おうとしたのか?」
「お、起こしに来ただけなのになんという理不尽な言い方っ!!」
ジルベルトを解放するとジルベルトの温かさが、リズウェンの温かさに思えて切なくなる。
「……リズに逢いたい」
ボソリと愛しい人の名前を呟くと、さらに逢いたくなった。
ホームシックならぬ、リズウェンシックになり簡易ベッドの上で膝を抱えているとジルベルトが呆れた視線を向けながら服を整えている。
「まったくもう……なんです? そのみっともない姿は。バロル師団長不足ですか? まだ、遠征してから1日しか経っていませんよ。しかも好かれているのかもわからないのに、つけちゃったのが呪いの指輪ですからね。詰んでます。今から謝る言葉を考えておいてくださいね」
グサグサとむき出しのハートにトゲを刺してくるジルベルトに、そこまで言わなくてもと泣きたくなってくる。
「呪いの指輪ではない。それに昨日手紙でたくさん謝ったから、石化は解けたんだ。だから、そのことについてはもう怒っていないと思う」
テントの中を片付けていたジルベルトが勢いよく振り返る。
「石化が解けたんですか?! さすがバロル師団長ですね。剣技と魔術の巧みな戦術で師団長になっただけのことはあります。人に使う遠隔魔法なんてよっぽど魔術操作が上手くないと、もげますよね。呪う以外で普通は人に向けて使わないですよ」
危うく俺の大事な息子が消え失せるところだったようだ。
「バロル師団長ってば、クラウ師団長のちんこにどんだけ集中してたんだろ? 美人で冷たそうな顔をしながらクラウ師団長のちん…………意外と可愛らしい人なんですね!」
ジルベルトをジロリと睨めば途中で言葉を濁し、話題を変えた。
リズウェンが可愛いというのは否定するべくもない。当然の賛辞だ。
──そうだ。リズウェンは何もかもが素晴らしい。
身支度をしながら、じーんと浸っているとジルベルトは追い立てるように手を叩いてテントの外へと出す。
切り替えが早い。
「はい、そういうことで、ほら、さっさと出発しますよ、部下に情けない姿は見せないでくださいね」
「あぁ」
テントから出ればリルとルストが準備万端で待機をしていた。
「遅いですよ。いつまで人を待たせるおつもりですかぁ? 足が棒になっちゃいましたよ」
そばかすの散らばる優しそうな風貌に、茶色い髪がふわふわのラズロ・ハーバーに化けているので、女王様のようなキツさはない。
「わぁ、ベ……クラウ師団長! 抱きしめていい?」
リルは呼び方を直すように躾られたようだ。
「いやダメだろ」
ブレないリルは今にも俺に飛びかかりそうに構えていた。グイグイと押してくる頭を押さえながら撫でると嬉しそうにニコニコしている。
「遠征中なんですから、気を引きしめてくださいよ。道中は魔獣を討伐しながら進むんですからね。忘れ物はないですか?」
もはや統率ではなく、引率の様相を呈している。
そんなジルベルトはテントの中から疲れた表情をさせて出てきた。
簡易セットが外へと出され、テントはあっという間に解体されて、空間を歪められて作られた収納バッグに入れられた。見た目以上の収納力があるので遠征時には必需品となる。
俺が持っている荷物も一つだけだ。簡易セットは荷物の中に格納し、それを繋いでいた場所から連れてきた愛馬のリズリズに取りつける。
重さを感じさせないから馬にとっても優しい設計だ。
初めての野営で新人たちは四苦八苦しながら纏めている。それもパートナーが手伝い早々に終わらせていた。
ちなみに新人やベテラン騎士には収納バッグなんて高価なものは持たされていない。
「ほらほら、さっさとワイバーン倒して、さっさとお家に帰りましょうね。お母さんが家で待っていますよ」
「えっ! お母さんって、あの幻の?!」
幻とは一体何の話だ。女児の出生率が低いわけでもないから、母親になる女性が、少ないわけでもない。
フェンリルがそうなのだろうか?
ルストがオレになにを焚きつけようとしているのかは、わからないが先を急がせようとしているのは何となくわかる。
──お母さんか……。
悲しい思い出に浸りそうになったところで、家で待っているはずのリズウェンを想う。
今頃何をしているのだろう。いつもと同じように訓練と王城の巡回警備だろうか。
リズウェンは母ではないが、俺がお父さん役なら、リズウェンはお母さん役だ。
母という字は授乳のために乳房が突出することから成り立っているらしい。それは古の象形文字だ──リズウェンもお母さんになったら乳が膨らむのか?
別に膨らんでいようがいまいが、リズウェンであればどちらでも構わないがどうなのだろう。
男が乳を出すはずはないな。弄りまくったらいやらしく膨らむ?
母乳なんてものは、そもそも出ないしな。出るとしたら下しかない。
──ん? 下から搾りとる?
ぐはっ!
そ、それはエロすぎだろ?!
恥ずかしそうに股を開くリズウェンなんて、鼻血がでる! 妄想だけでヤバイ。
でもいい! いい案だ! ソロプレイのレクチャーもまだだし!
ただし、それを行うにはひとつ問題がある。
俺は殺されずに、リズウェンの服を脱がすことが出来るのだろうか、という極めて重大な問題だ。
リズウェンに少しでも嫌なことをすれば流血沙汰になりそうな気がする。
「なにを深刻な顔しているんです? ワイバーンの攻略方法でも考えているんですか? クラウ師団長が出ると瞬殺だから、新人に対処を学ばせてやってくださいね。では、そろそろ出発しますよ。干し肉でも齧りながら馬に乗ってください」
「…………」
いろいろと尽くしてくれるジルベルトだが、オカン属性でもやはり乳はでないだろう。
男なので当然だが、たとえジルベルトの胸から乳が噴出しても、ドン引く未来しか見えない。
やはりリズウェンあってのこの気持ちなのだ。
少し垂れた目元は今は驚きに見開かれていた。
──おかしい。なぜ朝からこの顔を間近で見なければならないんだ。
驚いた顔は赤くしたり青くしたり、口をぱくぱくと開けたり閉じたりとかなり忙しそうだ。
「ギブッ! ギブですぅっ!」
「なんだ? 俺を襲おうとしたのか?」
「お、起こしに来ただけなのになんという理不尽な言い方っ!!」
ジルベルトを解放するとジルベルトの温かさが、リズウェンの温かさに思えて切なくなる。
「……リズに逢いたい」
ボソリと愛しい人の名前を呟くと、さらに逢いたくなった。
ホームシックならぬ、リズウェンシックになり簡易ベッドの上で膝を抱えているとジルベルトが呆れた視線を向けながら服を整えている。
「まったくもう……なんです? そのみっともない姿は。バロル師団長不足ですか? まだ、遠征してから1日しか経っていませんよ。しかも好かれているのかもわからないのに、つけちゃったのが呪いの指輪ですからね。詰んでます。今から謝る言葉を考えておいてくださいね」
グサグサとむき出しのハートにトゲを刺してくるジルベルトに、そこまで言わなくてもと泣きたくなってくる。
「呪いの指輪ではない。それに昨日手紙でたくさん謝ったから、石化は解けたんだ。だから、そのことについてはもう怒っていないと思う」
テントの中を片付けていたジルベルトが勢いよく振り返る。
「石化が解けたんですか?! さすがバロル師団長ですね。剣技と魔術の巧みな戦術で師団長になっただけのことはあります。人に使う遠隔魔法なんてよっぽど魔術操作が上手くないと、もげますよね。呪う以外で普通は人に向けて使わないですよ」
危うく俺の大事な息子が消え失せるところだったようだ。
「バロル師団長ってば、クラウ師団長のちんこにどんだけ集中してたんだろ? 美人で冷たそうな顔をしながらクラウ師団長のちん…………意外と可愛らしい人なんですね!」
ジルベルトをジロリと睨めば途中で言葉を濁し、話題を変えた。
リズウェンが可愛いというのは否定するべくもない。当然の賛辞だ。
──そうだ。リズウェンは何もかもが素晴らしい。
身支度をしながら、じーんと浸っているとジルベルトは追い立てるように手を叩いてテントの外へと出す。
切り替えが早い。
「はい、そういうことで、ほら、さっさと出発しますよ、部下に情けない姿は見せないでくださいね」
「あぁ」
テントから出ればリルとルストが準備万端で待機をしていた。
「遅いですよ。いつまで人を待たせるおつもりですかぁ? 足が棒になっちゃいましたよ」
そばかすの散らばる優しそうな風貌に、茶色い髪がふわふわのラズロ・ハーバーに化けているので、女王様のようなキツさはない。
「わぁ、ベ……クラウ師団長! 抱きしめていい?」
リルは呼び方を直すように躾られたようだ。
「いやダメだろ」
ブレないリルは今にも俺に飛びかかりそうに構えていた。グイグイと押してくる頭を押さえながら撫でると嬉しそうにニコニコしている。
「遠征中なんですから、気を引きしめてくださいよ。道中は魔獣を討伐しながら進むんですからね。忘れ物はないですか?」
もはや統率ではなく、引率の様相を呈している。
そんなジルベルトはテントの中から疲れた表情をさせて出てきた。
簡易セットが外へと出され、テントはあっという間に解体されて、空間を歪められて作られた収納バッグに入れられた。見た目以上の収納力があるので遠征時には必需品となる。
俺が持っている荷物も一つだけだ。簡易セットは荷物の中に格納し、それを繋いでいた場所から連れてきた愛馬のリズリズに取りつける。
重さを感じさせないから馬にとっても優しい設計だ。
初めての野営で新人たちは四苦八苦しながら纏めている。それもパートナーが手伝い早々に終わらせていた。
ちなみに新人やベテラン騎士には収納バッグなんて高価なものは持たされていない。
「ほらほら、さっさとワイバーン倒して、さっさとお家に帰りましょうね。お母さんが家で待っていますよ」
「えっ! お母さんって、あの幻の?!」
幻とは一体何の話だ。女児の出生率が低いわけでもないから、母親になる女性が、少ないわけでもない。
フェンリルがそうなのだろうか?
ルストがオレになにを焚きつけようとしているのかは、わからないが先を急がせようとしているのは何となくわかる。
──お母さんか……。
悲しい思い出に浸りそうになったところで、家で待っているはずのリズウェンを想う。
今頃何をしているのだろう。いつもと同じように訓練と王城の巡回警備だろうか。
リズウェンは母ではないが、俺がお父さん役なら、リズウェンはお母さん役だ。
母という字は授乳のために乳房が突出することから成り立っているらしい。それは古の象形文字だ──リズウェンもお母さんになったら乳が膨らむのか?
別に膨らんでいようがいまいが、リズウェンであればどちらでも構わないがどうなのだろう。
男が乳を出すはずはないな。弄りまくったらいやらしく膨らむ?
母乳なんてものは、そもそも出ないしな。出るとしたら下しかない。
──ん? 下から搾りとる?
ぐはっ!
そ、それはエロすぎだろ?!
恥ずかしそうに股を開くリズウェンなんて、鼻血がでる! 妄想だけでヤバイ。
でもいい! いい案だ! ソロプレイのレクチャーもまだだし!
ただし、それを行うにはひとつ問題がある。
俺は殺されずに、リズウェンの服を脱がすことが出来るのだろうか、という極めて重大な問題だ。
リズウェンに少しでも嫌なことをすれば流血沙汰になりそうな気がする。
「なにを深刻な顔しているんです? ワイバーンの攻略方法でも考えているんですか? クラウ師団長が出ると瞬殺だから、新人に対処を学ばせてやってくださいね。では、そろそろ出発しますよ。干し肉でも齧りながら馬に乗ってください」
「…………」
いろいろと尽くしてくれるジルベルトだが、オカン属性でもやはり乳はでないだろう。
男なので当然だが、たとえジルベルトの胸から乳が噴出しても、ドン引く未来しか見えない。
やはりリズウェンあってのこの気持ちなのだ。
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