瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜

Kei

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第3章

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「ん、…」
ふと目を覚ますと真っ暗だった。


「ん?」
くしくしと目をこすり体を起こす。あれ、寝ちゃってたんだ。だんだん目が暗闇に慣れてくる。ここは昼間に案内された自分の部屋で、ベッドの上で眠っていた。
たしかリビングにいたはずなのに誰かが運んでくれたのかな。



どのくらい眠っていたんだろう。窓から見える空はすでに星が見えてきている。
そろりとベッドから抜け出し壁伝いに歩き出す。
たしかーリビングはこっちだったはず!、当てずっぽうでペタペタと歩き出すとリビングの扉の下から漏れ出る淡い光を見つける。当たってた。
カチャっと静かに扉を開くが眩しさに耐えられず目を手で覆う。



「お、水樹?起きたのか、そろそろ様子見に行こうと思ってたんだが、大丈夫か?」

大貴の声は聞こえてくるが、まだ目が明るさに慣れず姿を確認できない。

「ん、だいじょぶ。大貴?今何時?」


「今、夜の10時だぞ。5時間ぐらい寝てたか?よく寝たな」

そんなに寝てたのか。慣れてきた目をパシパシと瞬かせやっと周りを見渡す。どうやら大貴しかいないようである。その大貴はお風呂上がりなのか髪が湿っていてほっぺたがほんのりピンク色だ。
俺のそばまで来てソファへ連れてきてくれる。



「他のみんなは?」

「あいつらは演奏の練習するって防音室にこもったな。1時間ぐらい前に。それより腹減ったろ?何か食うか?燐矢が消化のいいもの作ってくれたぞ」

防音室!たしか前に燐くんが家でも演奏の練習できるっていってたね。ふむふむと納得しながら大貴にお礼を言う。
言われてみればお腹すいたな。それに結構寝てたしもう寝れないかもしれない。


燐くんはたまご粥を作ってくれていて、優しくて美味しい味に心も体も満たされる。おいしい。食べ終わった後、1人で入れるのかと心配されながらお風呂に向かう。…1人で入れるよ。お風呂ぐらい。めんどくさいのはガーゼの貼り替えくらいだし。


もくもくと湯気が出る温かいお湯に浸かる。全身の力が抜けて無意識にはぁーーー、と長い息を吐き出した。
お風呂場には猫足バスタブと物凄い広いお風呂がある。広いお風呂の方はみんなで入っても全然平気なほどだ。いつかみんなで入ってみたら楽しそうだなー。
俺は今猫足さんの方に入っている。足をぐーっと伸ばしてもまだまだ余裕で俺が寝っ転がっても平気なくらいだ。極楽極楽
左目をあまり濡らさないように気をつけながらお風呂を存分に楽しみ、心配なのか俺の生存確認をしにきた大貴に急かされお風呂から上がる。




「……水樹、あまり足出すなよ」

お風呂から上がり普段きているラフな部屋着に着替えると、大貴にそう言われる。
自分の足を見下ろすと短い短パンから覗く生っ白い俺の足がある。


「?、なんで?」

「何でもいいから、そのかっこでうろちょろするな。長ズボンはけ、せめて膝まで長いの」

「えーやだよ。暑いし、それに俺これしか持ってないもん」

「(もんって可愛い)、はあ、じゃあ風呂入ってそれに着替えたらこれからはさっさと自分の部屋入って寝ろ。それでみんなの前にあんまり出るなよ」

よくわかんないけど大貴の迫力がすごかったため、とりあえず頷いといた。
ソファに座ってなんとなくついているテレビをぼーっと眺める。すると目の前にコップが差し出された。

ありがと、と受け取るとコップはキンキンに冷えたオレンジジュースだった。

「つめたーい」
火照った体に冷たいオレンジが心地いい。はぁ、と暑いほっぺにコップを当て熱を冷ます。



「そう言えばまだみんな練習してるのかな?」

「そうじゃないか?部屋の前通りかかったらかすかに音が聞こえたし」


そうなんだ。時刻はもうすでに明日に変わろうとしている。毎日こんな遅くまでやってるのかな、すごいなぁ



大貴と少しテレビを見た後、そろそろ寝ようと部屋に移動する。



「早く寝ろよ。…おやすみ」

「うん、おやすみ」


部屋に入りベッドに寝転がるが、一向に眠たくならない。ごろんごろんと寝返りをうって落ち着く場所を探すが逆に目が覚めてしまった。
仕方なくベッドから降りて窓から外を眺める。35階という高さなのでなかなかの絶景だ。東京の街はキラキラと輝き、ビルのオフィスが至る所で煌々と光っている。あそこにいる人たちもまだ起きてるんだな。
そっと窓を開けてベランダに出てみる。どうやらこちら側の部屋の窓にはひとつひとつベランダがあるみたいだ。夜になっても蒸し暑さは変わらないが、昼間あれだけ鳴いていた蝉の声が聞こえない。セミは寝てるのかな

ベランダの柵に頬づえをつき空を眺める。星がちらほらとあるが左半分は見えない。
これからずっと、、見えない。



いつもはそんなこと考えないのに、この夜景のせいなのか漠然とした不安が胸の中に広がる。これから先十年、二十年とやっていけるのだろうか。大貴にも言われた職業先もしっかりと考えねばならない
そんなことをつらつらと考えていると部屋の中で何かの音が聞こえた。


部屋に入り確認すると携帯にメールを受信した音だったみたいだ。差出人は兄さんだ。


メールには会いに行けない謝罪と心配しすぎて死にそうだというような内容が書かれていた。相変わらずな兄さんのテンションと優しい言葉に沈んでいた心が落ち着いてくる。
しかし、最後らへんの文に書かれていた内容に 再び心がざわめき出した。
『心配だから怪我の写真送って!それと一緒に住んでる人も。』
なんらおかしくない文章だと思うかもしれないが、俺は兄さんにみんなと一緒に暮らすことは伝えていない。大貴だけならまだしも出会ってすぐの人たちと暮らすなんて兄さんが許さないと思ったので、いつも通り1人での生活を頑張ると伝えていたのだ。もちろん家族にも口止めはした。なんで知ってるの兄さん!!

心なしか最後の一文が怒っている気がする。普段は温厚で優しい兄さんは怒る時も笑顔である。しかしその笑顔がとても怖い。とてつもなく怖い。目が笑っていないのだ。その笑顔になった途端周囲の温度がマイナス5度ぐらいは下がる。

ど、どうしよう。知ってるってことは俺が引き続き1人で暮らすと嘘をついたことも気づいているはずだ。
兄さんに会った時に落ち着いて話せばわかってくれると、伝えるのを先延ばしにしたのだ。必殺泣き落としも使えるから、……


どうやって知ったのだろう……、家族の誰かか、もしくは大貴か。いや、大貴はないだろう、大貴も俺と一緒に住んでいるのだしバレたら兄さんに確実に怒られる。



「はぁ、」
バレてしまったのだから怒られることは確実だ。これから考えなければいけないのはどうすればその怒りを最小限にできるか、、、



携帯の画面を閉じ裏返しにする、うん、今は見なかったことにして明日考えよう。きっと大貴も一緒に考えてくれるだろう。
いそいそとベッドに潜り込み布団を抱きしめて、キュッと体を丸める。昔からこの体勢は落ち着くのだ。




















もしかして妹かな。兄さんに話したの。

…いやいや、妹に限ってそんなこと

……いやいやいや
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