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第3章
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時々痛む傷を癒しながら、検査をしてお見舞いに来てくれた友達に労られゆったりとした入院生活を送っている。
普段は痛まない左目だが、どんよりとした曇りの時や雨が降る時などは鈍い痛みが続いている。顔に出さずにいるはずなのに大貴は目ざとく気づき心配してくれる。夜眠れずにいることもバレてお医者さんからは痛み止めと軽い睡眠薬を処方してもらった。
あれから、両親たちはちょくちょく連絡をくれるが「お兄ちゃんが今度転勤になるみたいなのよ。今までそんな希望も出したことないのになんでだ!って言ってたわ。忙しくて水樹のお見舞いにもいけない!って上司に食ってかかろうとしてたのをお父さんが電話口で必死になだめてたのよ」うふふふふ、と笑いながら母が電話をくれたことに一番驚いた。兄さん転勤になるんだ。だからお見舞い来れなかったんだ。ってか母さん笑って話す内容じゃないと思うんだけど。
ダリアのみんなは、初めて会った日から2日と置かずに頻繁にお見舞いに来てくれる。最近は俺がオレンジ好きだと気づいたのか、果物やらジュースやらいろいろ持ってきてくれている。はぁー、幸せ。オレンジ好きおいしい。
そしてなぜか、大貴が明日来れない、と言った日にダリアのみんなが来るんだと話したら、やっぱり来る!と言って朝早くからベッドのそばにいる。?大貴もみんなと仲良くしたいのかな?
「水樹!あーん」
「あー、むぐ……ふぁんふぁよ」
悠が剥いてくれたオレンジを差し出してきたのでぱかっと口を開けていたら、大貴の手で口を塞がれる。
「自分で食え、もしくは俺が食べさせる」と言って大貴もオレンジを剥き始めた。
「えー!なんだよー、俺が食べさせたって良いだろ!?」
「ダメだ」
「良いじゃん!」
「ダメだ」
「独り占め禁止!」
「ッそんなことしてない」大貴がわずかに頬を染める。こんな表情珍しい。いつのまにか悠と仲良くなってたんだな。
なかなかな頻度でこういうやり取りを病室で繰り返している。俺としては仲良くしてくれているので嬉しい限りだ。
ツンツン
何かにほっぺたをつつかれ、そちらに顔を向けるとオレンジを片手にスタンバイしている道人がいた。やり取りをしている2人を意に返さず俺の口に放り込んだ。
「もきゅ、もきゅ、もきゅ」おいしい。幸せ。ほっぺたを押さえて味わっていると決まって必ずみんな俺をガン見する。優雅で綺麗な麗さんまでも。なんでだろ。あ、オレンジ狙いか?あげないからな!
そういえば、こんな頻繁に俺のお見舞い来てくれてるけど、ライブ大丈夫なのかな。練習とか。そんなことを聞いてみれば
「大体ライブは夜からなので、水樹さんに会いに来ても支障はありません」と麗さんが綺麗に笑った。
「そーそー、練習も家でできるから。心配しなくて大丈夫だよー。水樹はゆっくり体癒して?」
「燐くん…、ありがと」俺を心配してくれるその瞳に少し恥ずかしくなりながら、嬉しくて微笑んだ。
そっか、もしかしたら俺のせいでライブとか出来てないのかなって思ってたけどそんなことなかったのかな。よかった。とホッと安心していると側にいる燐くんが目を開いて固まっている。
「?燐くん?」
「燐くん、君付け、ちょー可愛いんですけど。やばい、もっかいよんで?」
「燐くん」
求められるままもう一度呼ぶと、燐くんははぁーと長い息を吐いて口元をおさえる。
どうしたんだろ?君付けダメだったのかな。
「おい、俺も呼べ」
「道人?」
「僕は!僕は!?」
「悠」
「では、私は?」
「麗さん」
「……………」
「麗さん?」
「なぜ、私はさん付けなのですか!?私も呼び捨てでいいのですよ?」
なぜか名前呼び合戦が始まり、麗さんまで来ると呼び捨てで!とお願いされる。いつもの穏やかーな綺麗な笑顔から一転して、悲しそうな傷ついた顔をしている。
「!、え、えっとなんていうか。麗さん、は麗さんっていうか、麗さんはすごく綺麗で丁寧に喋るから、れ、麗って、呼ぶより、麗さんの方が呼びやすいっていうか」いじいじ、もじもじ、指をいじり時々ちらっと麗さんを見てみたり。
「だから、麗さんは麗さんなんです!」テンパりすぎて何を言っているのかわからなくなってきた。でもでも、麗さんを呼び捨てるのはなんか違うんだもん。
「ぐふっ」
どこからか何が吹き出るような音が聞こえる。何?と見渡すと麗さんが口元を押さえ、よろよろと病室を出て行った。
「え?麗さんは?どうしたの?」
「あー、大丈夫だ。きっとトイレに行きたかったんだろ(あんな可愛い水樹を間近でみたらああなるよな)」道人は何かを悟ったような顔をして出て行った扉を見つめていた。
それから少しして看護師さんにリハビリに呼ばれみんなは仲良く帰って行った。大貴は、まだいる!って言っていたけど悠に引っ張られ帰って行った。仲良いなぁ。そして結局最後まで麗さんが帰ってくることはなかったけど…
トイレ長いな、お腹痛かったのかな?
普段は痛まない左目だが、どんよりとした曇りの時や雨が降る時などは鈍い痛みが続いている。顔に出さずにいるはずなのに大貴は目ざとく気づき心配してくれる。夜眠れずにいることもバレてお医者さんからは痛み止めと軽い睡眠薬を処方してもらった。
あれから、両親たちはちょくちょく連絡をくれるが「お兄ちゃんが今度転勤になるみたいなのよ。今までそんな希望も出したことないのになんでだ!って言ってたわ。忙しくて水樹のお見舞いにもいけない!って上司に食ってかかろうとしてたのをお父さんが電話口で必死になだめてたのよ」うふふふふ、と笑いながら母が電話をくれたことに一番驚いた。兄さん転勤になるんだ。だからお見舞い来れなかったんだ。ってか母さん笑って話す内容じゃないと思うんだけど。
ダリアのみんなは、初めて会った日から2日と置かずに頻繁にお見舞いに来てくれる。最近は俺がオレンジ好きだと気づいたのか、果物やらジュースやらいろいろ持ってきてくれている。はぁー、幸せ。オレンジ好きおいしい。
そしてなぜか、大貴が明日来れない、と言った日にダリアのみんなが来るんだと話したら、やっぱり来る!と言って朝早くからベッドのそばにいる。?大貴もみんなと仲良くしたいのかな?
「水樹!あーん」
「あー、むぐ……ふぁんふぁよ」
悠が剥いてくれたオレンジを差し出してきたのでぱかっと口を開けていたら、大貴の手で口を塞がれる。
「自分で食え、もしくは俺が食べさせる」と言って大貴もオレンジを剥き始めた。
「えー!なんだよー、俺が食べさせたって良いだろ!?」
「ダメだ」
「良いじゃん!」
「ダメだ」
「独り占め禁止!」
「ッそんなことしてない」大貴がわずかに頬を染める。こんな表情珍しい。いつのまにか悠と仲良くなってたんだな。
なかなかな頻度でこういうやり取りを病室で繰り返している。俺としては仲良くしてくれているので嬉しい限りだ。
ツンツン
何かにほっぺたをつつかれ、そちらに顔を向けるとオレンジを片手にスタンバイしている道人がいた。やり取りをしている2人を意に返さず俺の口に放り込んだ。
「もきゅ、もきゅ、もきゅ」おいしい。幸せ。ほっぺたを押さえて味わっていると決まって必ずみんな俺をガン見する。優雅で綺麗な麗さんまでも。なんでだろ。あ、オレンジ狙いか?あげないからな!
そういえば、こんな頻繁に俺のお見舞い来てくれてるけど、ライブ大丈夫なのかな。練習とか。そんなことを聞いてみれば
「大体ライブは夜からなので、水樹さんに会いに来ても支障はありません」と麗さんが綺麗に笑った。
「そーそー、練習も家でできるから。心配しなくて大丈夫だよー。水樹はゆっくり体癒して?」
「燐くん…、ありがと」俺を心配してくれるその瞳に少し恥ずかしくなりながら、嬉しくて微笑んだ。
そっか、もしかしたら俺のせいでライブとか出来てないのかなって思ってたけどそんなことなかったのかな。よかった。とホッと安心していると側にいる燐くんが目を開いて固まっている。
「?燐くん?」
「燐くん、君付け、ちょー可愛いんですけど。やばい、もっかいよんで?」
「燐くん」
求められるままもう一度呼ぶと、燐くんははぁーと長い息を吐いて口元をおさえる。
どうしたんだろ?君付けダメだったのかな。
「おい、俺も呼べ」
「道人?」
「僕は!僕は!?」
「悠」
「では、私は?」
「麗さん」
「……………」
「麗さん?」
「なぜ、私はさん付けなのですか!?私も呼び捨てでいいのですよ?」
なぜか名前呼び合戦が始まり、麗さんまで来ると呼び捨てで!とお願いされる。いつもの穏やかーな綺麗な笑顔から一転して、悲しそうな傷ついた顔をしている。
「!、え、えっとなんていうか。麗さん、は麗さんっていうか、麗さんはすごく綺麗で丁寧に喋るから、れ、麗って、呼ぶより、麗さんの方が呼びやすいっていうか」いじいじ、もじもじ、指をいじり時々ちらっと麗さんを見てみたり。
「だから、麗さんは麗さんなんです!」テンパりすぎて何を言っているのかわからなくなってきた。でもでも、麗さんを呼び捨てるのはなんか違うんだもん。
「ぐふっ」
どこからか何が吹き出るような音が聞こえる。何?と見渡すと麗さんが口元を押さえ、よろよろと病室を出て行った。
「え?麗さんは?どうしたの?」
「あー、大丈夫だ。きっとトイレに行きたかったんだろ(あんな可愛い水樹を間近でみたらああなるよな)」道人は何かを悟ったような顔をして出て行った扉を見つめていた。
それから少しして看護師さんにリハビリに呼ばれみんなは仲良く帰って行った。大貴は、まだいる!って言っていたけど悠に引っ張られ帰って行った。仲良いなぁ。そして結局最後まで麗さんが帰ってくることはなかったけど…
トイレ長いな、お腹痛かったのかな?
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