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第2章 出会い
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目が覚めたのは次の日の朝だった。検温に来た看護師さんに起こされた。看護師さんの質問にいくつか答えているとキュ~と腹の虫が空腹を訴えた。クスクスと笑われ俺は恥ずかしくなって顔を押さえた。
「昨日、ぐっすり眠っていらしてご飯食べなかったんですね。栄養剤を投与していますがきちんと食べてくださいね。後少ししたら朝ごはんの時間ですから。」と看護師さんは言い点滴を交換すると病室を出て行った。
恥ずかしい。昨日ちゃんと食べればよかった。そういえば大貴いつの間に帰ったのかな。全然気づかなかったし、そんなに爆睡してたかな
火照る頬を冷ましながら窓の外を眺める。あいにく今日の天気はどんよりと曇り今にも雨が降り出しそうだ。
そういえば今日、両親たちがお見舞いに来るって言ってたな。雨降らないといいけど。…兄さんも来るのかな。ただでさえ一人暮らしを反対してたのにこんな状態見られたらどうなるんだろ。怒るかな?もう実家に帰れって言われたらどうしよう。
そんなことを考えながら、運ばれてきた朝ごはんを食べ、のんびり過ごしていると扉がノックされ「水樹?入るぞー」と大貴がやってきた。
「水樹おはよ。調子はどうだ?体に優しい果物買ってきたぞ」と差し出してきた。大貴に返事しながら俺はキラキラとした目で果物の袋を凝視した。その、その果物は!オレンジではないですか!
俺の視線を受け止め、くすくす笑いながら大貴は袋をテーブルに置き食べやすいように皮まで剥いてくれている。それをわくわくと眺めている俺はさながら尻尾を全力で振り、待てをされている犬だろう。
だって、オレンジ好き。ジュースもすごい好きだけど果物はもっと好き。
「もきゅ、もきゅ、もきゅ」
オレンジをほっぺたいっぱいに詰め込み薄皮から弾ける果汁。幸せ。大貴はそんな俺を眺めては、顔を背けまたガン見するという変な行動をしている。だが、その手はすでに2個目のオレンジを剥いてくれている。
落ちそうなほっぺたを抑えながら大貴の変な行動に心の中で首を傾げた。
っていうか幸せ。大貴神
そんなことをしながらのんびり過ごしていると、またもや扉がノックされ、人が入ってきた。「水樹ー?入るわよ?」と言いながら3人の人が入ってきた。その人物を見て俺は目を見開いた。
「!母さん、父さん、それに美香まで!」入ってきたのは兄を除く3人の家族だった。全員で来てくれたのか。片方の親どちらかだけだと思ってた。ちなみに兄は家族とは別に遠いところで働いて暮らしている。
「水樹、大丈夫かい?大貴くんから話は聞いてたけど」と父がいう。いたわしげに家族が俺の左目に目を向ける。
「うん、今はそんなに痛くないし。お医者さんも日常生活に慣れればそんなに大変なことはないって言ってたよ!」と元気よく答える。
「そう、元気そうね。それにそんないっぱいオレンジを食べれるのならそんなに心配いらなかったかしら」と母が安心したように息を吐いた。
家族全員と近況を話しながら落ち着いてくるとおもむろに大貴が立ち上がる。
「あの、この度は本当に申し訳ありませんでした。電話でもお伝えしましたが俺のせいでこんな傷を負ってしまって。俺にできることがあればなんでもします。本当にすみませんでした」と頭を下げて謝罪した。
「!! 大貴!もう謝んなくていいって言ったじゃん!それに大貴のせいじゃないから。ライブに誘ってくれて俺嬉しかったし」と慌てて頭を上げさせようとアワアワしていると、父がそっと優しく大貴の肩に手を置いて頭を上げさせた。
「大貴くん、そんなに気に病まないでくれ。電話で話を聞いていたけど君がいけないことをしたところなんてひとつもないじゃないか。すぐに救急車を呼んで今まで水樹のそばにいてくれたのだろ?目の前でそんなことが起きて大変だっただろうに。逆に私たちが謝罪をしなければいけないな」父は目元に小じわを作り安心させるように大貴の肩を叩いた。
その隣に母も寄りそった。
「そうよ、大貴くんが悪いことは何もないわ。水樹ったらもともとおっとりしてるからいつか大怪我するんじゃないかって思ってたのよ。」と、うふふふふと笑った。母さんひどい。それは本音じゃないよね?大貴を慰めるために言っただけだよね?
「おじさん、おばさん、」こちらからは大貴の顔を伺い知ることはできないが、声音からして安心したようなそれでいて泣きそうな顔をしているだろうなと思った。昨日から張り詰めた雰囲気が少しあったのはこのせいだったのかな。ほっと肩の強張りが溶け両親とポツポツと会話を始めた。
両親と大貴を眺めていると今まで心配そうに俺を見ていた妹が近寄ってきた。
「お兄ちゃん大丈夫?痛くないの?」と俺を覗き込んできた。かわいい。今年高校一年生になった妹の美香は一年と少し会わないだけで急成長したように感じる。髪の毛を綺麗に伸ばし顔もうっすらと化粧をしている。かわいい。大人になったなぁと寂しく思いながら大丈夫だよと答えた。
美香、可愛くなったなぁ。兄もなかなかなブラコンだと思うが、俺もなかなかなシスコンだ。エッヘン
そんな俺の考えなどいざ知らず美香は
「お兄ちゃんの綺麗な色の目が、…勿体無いね」と悲しそうに左目の眼帯をそっと撫でてきた。
そう、大貴も言っていた綺麗な目というのは瞳の色のことである。
「昨日、ぐっすり眠っていらしてご飯食べなかったんですね。栄養剤を投与していますがきちんと食べてくださいね。後少ししたら朝ごはんの時間ですから。」と看護師さんは言い点滴を交換すると病室を出て行った。
恥ずかしい。昨日ちゃんと食べればよかった。そういえば大貴いつの間に帰ったのかな。全然気づかなかったし、そんなに爆睡してたかな
火照る頬を冷ましながら窓の外を眺める。あいにく今日の天気はどんよりと曇り今にも雨が降り出しそうだ。
そういえば今日、両親たちがお見舞いに来るって言ってたな。雨降らないといいけど。…兄さんも来るのかな。ただでさえ一人暮らしを反対してたのにこんな状態見られたらどうなるんだろ。怒るかな?もう実家に帰れって言われたらどうしよう。
そんなことを考えながら、運ばれてきた朝ごはんを食べ、のんびり過ごしていると扉がノックされ「水樹?入るぞー」と大貴がやってきた。
「水樹おはよ。調子はどうだ?体に優しい果物買ってきたぞ」と差し出してきた。大貴に返事しながら俺はキラキラとした目で果物の袋を凝視した。その、その果物は!オレンジではないですか!
俺の視線を受け止め、くすくす笑いながら大貴は袋をテーブルに置き食べやすいように皮まで剥いてくれている。それをわくわくと眺めている俺はさながら尻尾を全力で振り、待てをされている犬だろう。
だって、オレンジ好き。ジュースもすごい好きだけど果物はもっと好き。
「もきゅ、もきゅ、もきゅ」
オレンジをほっぺたいっぱいに詰め込み薄皮から弾ける果汁。幸せ。大貴はそんな俺を眺めては、顔を背けまたガン見するという変な行動をしている。だが、その手はすでに2個目のオレンジを剥いてくれている。
落ちそうなほっぺたを抑えながら大貴の変な行動に心の中で首を傾げた。
っていうか幸せ。大貴神
そんなことをしながらのんびり過ごしていると、またもや扉がノックされ、人が入ってきた。「水樹ー?入るわよ?」と言いながら3人の人が入ってきた。その人物を見て俺は目を見開いた。
「!母さん、父さん、それに美香まで!」入ってきたのは兄を除く3人の家族だった。全員で来てくれたのか。片方の親どちらかだけだと思ってた。ちなみに兄は家族とは別に遠いところで働いて暮らしている。
「水樹、大丈夫かい?大貴くんから話は聞いてたけど」と父がいう。いたわしげに家族が俺の左目に目を向ける。
「うん、今はそんなに痛くないし。お医者さんも日常生活に慣れればそんなに大変なことはないって言ってたよ!」と元気よく答える。
「そう、元気そうね。それにそんないっぱいオレンジを食べれるのならそんなに心配いらなかったかしら」と母が安心したように息を吐いた。
家族全員と近況を話しながら落ち着いてくるとおもむろに大貴が立ち上がる。
「あの、この度は本当に申し訳ありませんでした。電話でもお伝えしましたが俺のせいでこんな傷を負ってしまって。俺にできることがあればなんでもします。本当にすみませんでした」と頭を下げて謝罪した。
「!! 大貴!もう謝んなくていいって言ったじゃん!それに大貴のせいじゃないから。ライブに誘ってくれて俺嬉しかったし」と慌てて頭を上げさせようとアワアワしていると、父がそっと優しく大貴の肩に手を置いて頭を上げさせた。
「大貴くん、そんなに気に病まないでくれ。電話で話を聞いていたけど君がいけないことをしたところなんてひとつもないじゃないか。すぐに救急車を呼んで今まで水樹のそばにいてくれたのだろ?目の前でそんなことが起きて大変だっただろうに。逆に私たちが謝罪をしなければいけないな」父は目元に小じわを作り安心させるように大貴の肩を叩いた。
その隣に母も寄りそった。
「そうよ、大貴くんが悪いことは何もないわ。水樹ったらもともとおっとりしてるからいつか大怪我するんじゃないかって思ってたのよ。」と、うふふふふと笑った。母さんひどい。それは本音じゃないよね?大貴を慰めるために言っただけだよね?
「おじさん、おばさん、」こちらからは大貴の顔を伺い知ることはできないが、声音からして安心したようなそれでいて泣きそうな顔をしているだろうなと思った。昨日から張り詰めた雰囲気が少しあったのはこのせいだったのかな。ほっと肩の強張りが溶け両親とポツポツと会話を始めた。
両親と大貴を眺めていると今まで心配そうに俺を見ていた妹が近寄ってきた。
「お兄ちゃん大丈夫?痛くないの?」と俺を覗き込んできた。かわいい。今年高校一年生になった妹の美香は一年と少し会わないだけで急成長したように感じる。髪の毛を綺麗に伸ばし顔もうっすらと化粧をしている。かわいい。大人になったなぁと寂しく思いながら大丈夫だよと答えた。
美香、可愛くなったなぁ。兄もなかなかなブラコンだと思うが、俺もなかなかなシスコンだ。エッヘン
そんな俺の考えなどいざ知らず美香は
「お兄ちゃんの綺麗な色の目が、…勿体無いね」と悲しそうに左目の眼帯をそっと撫でてきた。
そう、大貴も言っていた綺麗な目というのは瞳の色のことである。
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