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第1章

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ふと意識が上昇していく感覚がわかる。何か長い夢を見ていたような、真っ暗な中をひたすら歩いていた気がする。意識が戻る感覚に逆らわずゆっくりと深呼吸をして目を開いた。少し薄めを開けたが眩しいあかりに耐えられずもう一度閉じ、またゆっくりと開けた。ぼやける視界に何度か瞬きをしていると違和感を覚える。



?なんだ?何か視界が狭い


それにここは、どこだろう。真っ白な部屋はどこを見ても俺のアパートではない。窓から差し込む日の光、風で揺らめく白いレースのカーテン。部屋の中は俺しかおらず、薬品の匂いで満ちており俺の左腕には点滴がある。

うん、ここは病院だな。と納得をして先ほどから違和感を感じている左目に手を持っていった。左目にはガーゼが貼られておりその上から眼帯をしているみたいだった。右目しか空いていないから視界が狭いんだなと思っていると、カラカラと病室の扉が開いた。



「ッ、水樹!目が覚めたのか!?」扉を開けたのは大貴で叫びながらこちらに駆け寄ってきた。

「だいき?」寝起きのせいかうまく舌が回らず掠れた声が出た。

「あぁ、あぁ、よかった。医師が麻酔が効いてるせいだと言っていたがなかなか目が覚めないから心配したんだ」と涙ぐんで俺の手を握りしめた。

「……おれ、なんでここに。」と意識を失う前のことを思い出そうとする。たしか俺は大貴とライブに行って

「思い出せないか?俺とライブに行ってお前は投げられたスティックが、お前の、その、」俺が思い出そうとしているとそう話しながら大貴は視線を俺の左目に向ける。

あぁ、そうだった。お客さんに弾かれたスティックが目に刺さって…痛みで気を失ったのか。そう考えながら、またそっと左目に手を添える。

「、とにかく先生を呼ぼう」と大貴が枕元にあるナースコールを押す。


少しして医師と看護師が病室に来た。意識のチェックや今の怪我の状態そしてこれからの生活について話をした。

「黒崎さん。あなたの左目は完全に失明しています。もう元の状態に戻ることは厳しいでしょう。しかし、神経までは傷つけていないため右目までは影響がありません」と簡単に説明をしてくれた。

「明日、また詳しい検査をしますから、今日はゆっくりと休んでください。片目が見えないと距離が掴みにくいことがあります。もし何かありましたら近くの看護師さんになんでも言ってくださいね」と目元にしわを作り優しそうに笑って看護師を連れ出て行った。

静かな病室に戻ると隅の方にいた大貴が近くに寄って椅子に座った。俺の手を握り瞳を揺らめかせながら顔を歪める。

「だいき?」と呼ぶと少し顔を緩めながら意を決したように話し始めた。

「すまなかった。俺がライブに誘ったせいでお前は片目を、その、失ってしまって。謝っても許されることじゃないとわかってる。それでもごめん」

大貴はごめん、すまなかったと謝りながら握った俺の手に額をこすりつけた。俺の手が濡れている感覚がした。

「だいき?泣いてるの?…おれは大丈夫だよ。ちょっと、まだ、受け止められてないけど。でも、右目はまだ見えるんだしそんな大したことじゃないよ。だいじょーぶ。だいきのせいじゃないよ。それにおれ初めてのらいぶたのしかったし」と微笑んでいうと大貴はガバッと起き上がった。

大貴の瞳からは涙が溢れていた。
「大丈夫じゃ、ないだろっ。片目が見えないんだぞ、先生だって距離感が掴めなくて危ないって言ってたし、きっと大学生活も。それに!就職先だってッ」とおれより傷ついた顔をして、大貴の方が怪我をしたみたいだ。おれが何も言えなくなると

大貴はそっと優しくおれの左目の近くを触り「何よりお前の、水樹の綺麗な両目が見えなくなった。俺はお前の目が好きだったのに。ッほんとにすまない。悪かった。」とさらに謝った。

大貴の優しい手と、温かい体温、何より俺を心から案じてくれる大貴の想いに俺はやっと受け入れることができてきた。

そっか、俺片目なくなっちゃった。


「っだい、き…うぅ、グス。だいき。だいき。っヒック、うぅ」現実を受け止められてなかった心が大貴の優しさに触れて頭と心がやっと一つになった気がした。左頬にある大貴の手にすがりつきぽろぽろと涙をこぼした。これから俺どうしたらいいんだろう



















目からこぼれ落ちる涙は左目から流れることはなかった


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