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第1章

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演奏を終盤に差し掛かってきたのか会場の盛り上がりはボルテージに達している。いつのまにか人が後ろにも増え、気がついたら俺たちは会場の真ん中らへんに来ていた。

先ほどまではアップテンポの盛り上がる曲だったが今はバラードの静かな曲。周りのお客さんたちもうっとりと聴き込んでいる。


「ライブってすごい楽しいね、誰かの歌でこんなに感動するなんて知らなかった」とステージを見ながらいい、続けて大貴の方を向いて「連れてきてくれてありがとう」と笑った。

大貴は驚いたように目を見開きついで「おう」と幸せそうに笑いながら俺の頭を優しく撫でた。恥ずかしくなった俺はまたステージに向き合い静かに歌っているボーカルを眺めた。その一瞬なぜか目があって微笑まれた気がした、が周りの女の子たちが目があった!こっち見て微笑んだ!と少しざわめいたのできっと俺の勘違いだと思った。


最後の曲が終わり、周りからの盛大なアンコール合唱に応え4人の男たちがまたステージにやってきた。また、激しい曲調の演奏が始まり周りはキャーと喜んでいる。熱狂的な盛り上がりを見せるお客さんに4人とも嬉しそうに笑い、ベースを弾いている茶髪さんがピックを2、3枚客席に放り投げた。その近くにいたお客さんは大歓声を上げながら我先にとそのピックに群がる。すると、黒髪さんやピンク髪の八重歯くんも使っていたタオルを投げたりしている。


その瞬間、後ろでドラムを叩いてた人が前に出てきてボーカルの隣に肩を並べて立った。それを見た瞬間周りからは絶叫が上がりその銀髪の人に向かって手を差し伸べている。

なんだ?あの人もなんか出すのか?

と大貴と一緒に不思議そうに見ていると持っていたドラムのスティックの片方一本を客席に放り投げた。

「!  え!?そんな物までファンサで投げるの!?」とつい叫ぶと大貴が少し笑いながら、「周りの反応見るといつもやってるみたいだな」と答えた。たしかに周りは驚いた風もなく嬉しそうに掴もうと悪戦苦闘している。しかし、いろんな人の手が押し寄せているためはじに弾かれ俺の近くまで来ている。その時、近くにいた1人が身を乗り出しスティックに手を伸ばす。その人の前にいた人は迷惑そうにその手を払おうとした。弾かれて近くに来ていたスティックはその手と一緒に素早く弾かれてスピードを出して目の前に来た。




え?



と思う間も無く左目に激痛が走り視界が一気に赤に染まった気がした。

左目に違和感を感じて手を当てようとすると誰かがその手を掴んだ。
「ぃい、あ、」
自分でも何を発しているかわからない。
えっ、何?何が起こってんの
痛い痛いいたい
近くで誰かが何かを叫んでいるが何を言ってるのかわからない。聞こえない。痛い


激痛に耐えながら周りを確認しようとするが痛みで麻痺しているのか何が何だかわからない。前のめりに倒れそうになったところを誰かに横から抱きとめられた。



「ッ水樹!!!!!!」



そこでやっと大貴の悲痛な叫び声が聞こえた。何?どうしたの  そんな声出して。 周りからはキャーー!という悲鳴と誰か救急車!というような声が聞こえた気がした。


「水樹!!水樹!!!聞こえるか!?わかるか!?ッッ誰か早く救急車呼んでくれ!」と怒鳴るような声が聞こえた。


「だ、いき?」と痛みをこらえ右目で大貴を探す。「ッああここにいるぞ水樹!」大貴の顔がぼんやりと見える。虚ろに眺めていると焦った大貴がまた何かを言おうとして口を開く。しかし、急に視界が黒く染まり始め意識が遠のいていく。




覚えているのは視界を染め上げる赤と体に走る鋭い激痛。そして俺の名前を悲痛に叫ぶ大貴。何か言おうと開いた口を最後に俺の意識はフェードアウトした。



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