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28.盗賊Ⅲ

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とりあえずコースの事を無視して馬車の外に出た。

周囲を警戒しているダカンに道沿いに野営できる所があるか聞くと、2キロほど進むと道沿いに川があって開けている場所がある。そこならできるそうだ。
この場所の周りには盗賊の死体だらけだ。ここでライツを待つ気にはならない。
わざわざ死体を片付けるのもめんどくさい……と言うか死体を触りたくない。そのまま放置しておく。
街道沿いだが魔物とかが来て、勝手に死体を食べて片付けてくれるに違いない。

「今日はこの先の川沿いで野営をします」

マァズと村長達にそこで野営をする事を伝え、ダカン達にはライツを待つ事を教える。

「ああ、任せる」

マァズはこの盗賊退治で、俺達を完全に信頼したみたいだな。


しばらく馬車を走らせると、ダカンの言っていた川のほとりに到着したので野営の準備をする。
俺達は馬車の中で寝ればいいのだが、マァズ達と村長達は幌さえも無い馬車だから、村長達とマァズ達は野営をするためのテントを建てていく。
マァズはドワーフだけあってテキパキとテントを建て、村長達の手伝いもしていた。


俺が周囲の警戒をしていると、ダカンがワイルドボアと言う鹿みたいな角を生やした牛ぐらいの大きさの猪の魔物を狩ってきた。

ダカンが手早くワイルドボア解体した。そして俺が土魔法を使い岩で出来たテーブルを作ると、その岩を火魔法で加熱して焼肉をできるようにする。
解体した肉を街で買った調味料で味をつける。意外と味噌や醬油に近い調味料が売っていたので、それを上手く合わせて焼き肉のたれを作って肉に漬けて味をつける。

「うわぁぁぁぁ肉だ」

肉を焼き始めると、カイが小躍りをして飛び跳ねていた。
貧乏な農村で『村人』の職業ジョブで生活している者にとっては、肉はなかなか口に入る物ではない。

「カイ……もうちょっと焼かないと腹壊すぞ?さあマリンちゃん達もこっちに来て、肉を食べていいよ」

カイが焼き始めたばかりの肉を、我先にと生肉の状態で食べようとしていた。
そしてカイのその姿を、マリンがマリスの後ろから物欲しそうに見つめていた。

「いいのか?金はこれ以上払えないぞ」

マァズが驚くように聞いてくる。
まあ護衛代も少ないのに、護衛に飯も用意してもらうのは気が引けるのだろう。

「いいですよたっぷりと食べてください。大量に肉がありますし、余っても肉が腐るので、この場に捨てていくだけなのでたっぷりと食べてください」

まあアイテムボックスがあるから腐ることは無いのだが、別にタダで手に入った肉だ。ケチる事はない。

「すまない、いろいろしてもらって」

マァズがすまないそうにしている。
マァズはドワーフとはいえ、ジョブ職業が『村人』なので戦闘はからっきしで、魔物を狩ってくる事は出来ない。

「まあ村長たちも遠慮なく食べてください」

村長達も食べるように進めて、皆で食べ始める。
なかなか美味しい肉でクセはなく豚肉と牛肉を合わせたような味で、高級なA5ランクの牛肉にも負けない味だった。
焼肉にしていない肉と骨で女性たちがスープを作っていた。それでも大量の肉なので余った肉は干し肉に加工していた。


俺は野営している周りに『嫌魔の聖水けんまのせいすい』と言うアイテムを使い周辺に撒く。これはドラゴンのションベンを薄めた物らしく、これを身体に吹きかけたり辺りに撒くとレベルの低い魔物レベル30以下は寄ってこなくなるというアイテムだ。
序盤のここらなら、まず魔物が近寄って来ることは無いだろう。


日も暮れ始めた頃にライツが馬に何かを括り付けたものを引きずって、土煙を上げて帰ってきた。

「どうだった」

「あいつは嘘ついていたなアジトには二人いたぞ。一人は魔法使いのジョブだったから喉を潰した、もう一人は戦士のジョブだったから足と腕を切ったから歩く事すらも出来ないだろう、捕まっていた奴らはいたがそれは奴が言ったとおりに全員死亡していたぞ」

馬なら伸びているロープの先には、30代から40代ぐらいの二人の男が縄でくくられていた。
アジトからここまで馬で引きずってきたのだろうか、全身が土まみれと血まみれになっている。
土だらけだったので水魔法で軽く洗うと、身寄りがない人を養子縁組してその人を保険金殺人をして逮捕された男達とそっくりな顔立ちだった

「アジトには大したものはなかったぞ」

馬の背には剣と鎧と金が入っている袋がくくりつけていた。

「あーそれはライツに全てやる。売るなりなんなりしろ」

「いいのか?」

不思議そうな顔をする。

「わざわざアジトまで行った駄賃だ。あと晩飯の焼肉をライツの分もあるから食べておいで、ご苦労さん」

ここらの奴らが持っている物はどうせいらない物ばかりだ。
別にライツにやってもいい。

「おっおう……」

ライツが少し顔を赤らめて嬉しそうな顔をする。

それよりも……。
流石に走っている馬に引きずられていたしライツとの戦闘で、二人共は大怪我をしていて今にも死にそうだ。だから死なない程度に二人の男にナミンを振りかけた後に、『拘束の紐』をして逃げないようにする。




「さて、嘘つきはどうなるかな?」

「しっ知らねえ、とっ頭領とお抱えの魔法使いなっなんか知らねえ」

馬車の中でコースは目が泳がせながら、しどろもどろに答える。
いやいやそれでは白状しているようなもんだろ。

今はライツと俺で、盗賊たちコースのの尋問をすることにした。

ダカンには『警戒の鏡』と『危険察知の鈴』を渡して周囲の警戒をしてもらっている。もし何かあったら気づくだろう。
……と、言っても周りに『嫌魔の聖水けんまのせいすい』を撒いているので、魔物が寄って来ることはまずないし、盗賊団も壊滅させているので危険はまずない。
マァズや村長達が見張りダカンがいないと不安になるだろうから、警戒させているだけだ。


「てめぇ嘘つくとどうなるかわかっているんだろうな」

「ひぃぃ」

ライツが怒る。
あの二人の持っていたギルドカードを確認したら、二人ともレベルが11だった。
コースが嘘をついたのはあの二人の強さを知っていて、嘘をついても俺やライツが簡単に倒されると思っていたのだろう。
ライツは平気な顔をしていたが、身体を確認したらライツもかなり苦戦したみたいで傷だらけだった。
さっき馬車の中に入った時に、服を全部脱がせてナミン回復薬を塗ってやったら、抵抗して恥ずかしがっていた。


「まあいいや」

俺はコースの服に触れてアイテムボックスの中に収納する。

「なっ何をする」

突然全裸になり驚くコース、そしてライツが殴って傷だらけになった身体に、ナミン回復薬をぶっかける。

ナミンで治療されて驚いた顔をしているが、別にコースが怪我をしているのが可哀想だから、わざわざナミンで治療したわけではない。


これから犯すから、傷だらけなのは都合が悪かっただけだ。
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