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23.ギルド職員

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「おい、とっとと開けろ、扉を破壊するぞ」

「駄目ですよギルドマスター、扉の修理代かかります」

野太い声の主はギルドマスターなのか?

「これから開ける」

「おい無事なのか? 」

俺が返事をすると、驚いた声をする。まるで俺がライツに殺されていると思っていたみたいだな。

俺はキスをするついでにライツの顔にかかっている精子を、アイテムボックスに収納を試みると簡単に出来た。意外となんでも行けるな、アイテムボックス恐るべし。
ついでに精子臭の残る空気を、風魔法を使い拡散させる。風系の魔法などの全系統の魔法を、レベルが上がると共に覚えることが出来た。
威力のデカい攻撃魔法よりも、威力のない初級魔法の方がこうした細かい事にも使えるのでいろいろと便利だ。

扉の閂を外し扉を開くと、なだれ込むようにしてスキンヘッドの男が入ってきた。
2メートル近くの大男だ。30代半ばぐらいの筋肉質なゴツイ身体で、片目に眼帯を付けていていかにもギルドマスターって感じの男だ。
こいつはゲーム中では会ったことが無い出てこないNPCキャラだ。

「無傷です」

俺は怪我が無い事を見せるように手を上げる。

「俺が負けた、完敗だ」

ライツは指示通りに負けた事を宣言する。

「お前が負けたのか? 坊主はレベルいくつだ! 」

ギルドマスターが驚いた顔をする。まあ当然だ。
ライツはこの宿場町にいるゲーム序盤の街にいる冒険者キャラとしたら、かなり高いレベルと言えるだろう。

「まあ……それは言えませんね」

「ギルドマスターの命令でもか? 」

強烈な殺気を放つ。
このギルドマスターはどう見ても格上レベル上位者、普通に戦えばまず勝てる事がないだろう。

「彼のレベルは16ですよ、勇者ですし魔法を使ったコンビネーションなら勝てると思いますよ」

受付嬢がベラベラと喋り出す。
このくそアマ、勝手に情報を漏らすステータス喋るななよ。

「ホントかフローラ、どう見てもジョブを得たばかりの小僧だぞ? 」

そう言えば受付嬢じゃなくフローラと言う名前があったな、女の名前なんか興味が無いから忘れていた。

「ここのギルドはベラベラと冒険者の情報を漏らすのですか?それともこのギルドはマスターが許しているのが当たり前ですかね? 」

「いやそれは……」

言葉を濁すが常識的にアウトだろう。
貰ったカードにはレベルとジョブしか書いてないが、そのことだけでも生死にかかわる重要な情報だ。その上ライツは勇者を殺そうとしているのだから、決してギルド職員が勝手に喋っていい情報ではない。

「王都に着いたら、この事を冒険者ギルド本部に相談しますよ」

「なんだと! 」

再び、殺気を俺にぶつける。
このギルドにいる奴は、ギルドマスターからしてクソだな。

「彼が勇者と言う事は王都にすでに連絡が行ってますよ。ギルドマスター、ここで殺してもまずバレますよ。勇者保護法で勇者を殺したら、ギルドマスターがクビになるどころか処刑されて家族丸ごと国から追われますよ」

へぇーそんな事があるんだ。
……てか、それなのにライツは俺を勇者殺そうとしていたのか!

「そうだった……大体勇者を助けるためだったな」

無茶苦茶だな、このギルドマスターは……。

「まあ無事よかったですわ」

まるで心配していない顔で言う。
……いや、もしかしたらフローラは、俺がライツに殺されるのを狙っていたのかも知れない。
ライツが俺を殺すなら、ライツは勇者保護法とかで国から追われて処刑されることになる。
つまりは、自分のストーカーで態度の悪いライツを殺すために、わざとしたのかも知れない。
本気でライツを止める気ならば、もう少し早く来ているはずだ。普通なら俺は殺されているかも知れない。
来るのが遅れたという事は俺が殺されたぐらいのタイミング狙っていた。で、今はライツが逃げれないぐらいの絶妙な時間だな。

ひぇぇぇ……ここは本当ろくでもない奴しかいないよな。

「まあこいつぐらいなら、何とか倒せますね」

「ほう……ならばワシと戦ってみるか? 」

ギルドマスターが俺を睨みつける。
マジでクソだなここは!

「だが断る! 」

「なぜだ! 」

いやなぜって! 戦って何の得がある!? 
ちなみにこのギルドマスターの仲間する条件がこれだ。

【ギガント 仲間条件】
一対一の戦闘で勝つ。

いやいや、俺はこの禿げマッチョはタイプではない。
倒して仲間にするつもりもないし、『魂のカード』を使う気もない。

「いや普通にめんどくさいです……いくぞライツ」

「ああ」

ライツが俺について訓練所から出て行こうとする。

「オイ、チョット待てよ」

お前はキム〇クか!

「なんでライツが言う事を聞いているんだ! 」

「俺に負けたから俺の手下になるって言ってきたからですよ、なっライツ」

「そうだ」

「なんでだ! ライツが言う事聞くわけないだろ!? 」

ギルドマスターギガントが驚くのはわかる。
『魂のカード』を見る限り、ライツの性格では負けたぐらいでは人の下に付くわけがない性格だ。
だがしかし、『魂のカード』で縛られたから召喚獣になったからには、もう逆らう事も逃げる事も出来ない。

まあ悔しそうな顔をしているから、意識は別にあるみたいだな。
仲間になったダカン達みたいに、俺に心酔するわけではないみたいだな。

「まあ、ライツからこう言ってますから、こちらとしては断るつもりは無いですからね、そしてギルドマスターさんとは戦う義理もないし、倒して手下になられても困ります。それよりもこの戦いを止めるのがかなり遅かったから冒険者ギルドに貸しはあると思いますけどね、でしょ受付嬢さん? 」

そもそも勇者保護法がある本来ならば、俺がいいと言っても受付嬢が真っ先に止めるべきだった。

「そうですね、訓練所代も払われているし、

なるほど、性格は悪いがギガントギルドマスターとは違って頭はよさそうだ。
これ以上は関わらないという態度を取るわけだ。

「ワシとたた…うぎゃっ」
ドッカン

状況をわかってない脳筋のギガントギルドマスターを、受付嬢が延髄に思いっきり回し蹴りを食らわせて倒した。
ギガントギルドマスターは、これで失神している。


もしかして……受付嬢が一番強い?

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