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18.冒険者Ⅰ

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王都までは、ダカンが言うのには1週間ほどかかるという事だ。

この馬車の本来の性能ならば、1日もしないうちに着けるだろう。なぜならばゴーレムで出来た馬は、休みをせずに高速で走らすことが出来る上に、日が暮れたとしても暗闇の中でも安全に延々と走らすことが出来るためだ。

だがしかし、一緒に付いてくる村長達の馬車は違う。
2時間ごとに馬を休めつつ走らせないといけないことや、荷物を沢山積んでいるがために人が歩く程度の速度しか出せれない。

そして移動中には……。

「おらっ」

「ギァッ」

ダカンが緑色肌をした裸の身長一メートルぐらいの老人を倒す。
ゲームとかでよく出てくるザコキャラのゴブリンと言う奴だ。

「大火炎球!」

「ギャン」

俺の手からはバスケットボール並みの火の玉が出て、二本足で歩く狼……コボルトにぶつかると、そのまま燃やし尽くす。


【敵を殲滅しました 経験値30ポイント入りました】

目の前にそんな文字が流れる。
要は馬車で移動すると、魔物が襲ってくる。
村長達は『村人』だからこんな魔物に襲われたらまず殺されてしまうから、こうして魔物と戦えるダカンと俺が倒しながら王都を目指している。

「よくやったな、もう一人前の冒険者だな」

魔物を倒す冒険者としては、圧倒的にダカンの方が上だ。
流石に直接武器で人型の魔物を倒すのはまだ無理だが罪悪感があって無理遠距離攻撃魔法で焼くぐらいなら何とか大丈夫になってきた。

チュートリアル通りにダカンが死んでいたら、これらの魔物を俺一人で倒すことになっていたはずだ。
……そうだったら人型相手に戸惑っている内に襲われて、王都につく前に確実に死んでいたと思う。


「兄ちゃん!すげー」

戦闘が終わると馬車から飛び出してきた、カイが抱きついてくる。

「倒したぞ」

「見てたよ!僕も倒せるようになるかな?」

馬車の窓から戦闘を見ていたカイは、天真爛漫な表情をしてそう聞いてくる。

「うーんまだ職業ジョブもらってないから無理だな、大人になるまで待つしかないよ」

「そうだぞカイ、村人と職無しは魔物とは戦えないから戦闘職の者に魔物を倒してもらうまで待つしかないぞ」

『村人』のゼンはカイの頭を撫でながらそう言う。
カイは村にいる時からレベルも上がらずに、ステータスが全く変わっていない。
無職だとレベルアップはしない。だから無職のままでは戦うことは出来ない。

名前 ゼン
種族 ヒューマン
職業 村人
性別 男
年齢 31
Lv  8
HP 38
MP 0
力  22
器用 68
防御 3
敏捷 15
知力 5
技能 村人の恵み
状態 【仲間】

ゼンの方は職業持ちで仲間になっているからか、俺達が倒した魔物の経験値の分配があって、急激にレベルアップしていた。
村人は元々が弱いため、レベルアップ率がかなり高い。ゲームでは村人は戦闘は役に立たないが、武器やアイテムなど作るのにレベルが高くなるのは必要になる。

「後少しで、宿場町がある。それまで一気に行くぞ」

「はっはい」

ダカンが村長たちに声をかける。
村長達は魔物との戦闘を見て、確実にビビッていた。
村と村の周りの畑には魔物が入ってこないようにする結界が張られており、『村人』は基本魔物と戦う事はない。
イベントの様に魔族アスリートが結界の中に入ってから、魔物召喚をして暴れるという特殊な事態が起こらない限りは村の中は大丈夫だ。

魔族が嫌われる理由が『魔族の心』と言うスキルを使い、人が住む村を魔物を召喚して魔物で襲うためだ。
ダカン曰く、魔族達は人を殺すことを楽しんでいるとかなんとか言っていた。
今度アスリートを呼び出した時に犯す時に聞いてみよう。



「うわぁーーすげっすげっ」

宿場町に着きカイが馬車降りると、興奮して飛び跳ねる。
村から出たことが無いカイは、他の街に行くことが嬉しくて仕方がないみたいだ。

「遠くに行くなよ」

「うん」

ダカンと仲良くなり、普通に会話をしている。やっぱりセックスすると仲良くなるよな。

あれからは俺を含めてダカンとカイとゼンはセックスをした。
流石にダカンとカイの二人だけではセックスをさせないようにしていたので、カイは移動でもものすごく求めてきたが、俺とダカンは護衛しながらだからできなかった。
いやーーセックスを覚えたての少年の性欲は凄かった。今晩は宿で求められるよな……。


「ゼロ、この街には冒険者ギルドがある。ついでに登録しておけ」

「そうだ、うん行くよ!」

ここはゲーム始まりの町だ。この町の冒険者ギルドで登録すると、セーブが出来るようになるはずだ。
つまりはこれまでのチュートリアルが終わり、それでログアウトが出来るかどうかわかる。



「ここが冒険者ギルドだ、オイは宿の手続きとか必要なものを買ってくる、冒険者の登録は難しい事ではないから大丈夫だろう?」

「うん、またあとで」

ダカンと入り口で分かれる。保護者付きの登録はカッコ悪いからね。
いや……ここでダカンとわかれてないと、あるイベント的に都合が悪いからだろうな。

中に入ると冒険者が10人近くいて、その中の者で20代後半の男が俺を睨んでいる。
室内なのに金属製の鎧を着ているから少し笑える。

とりあえずは無視して受付に行く。

「いらっしゃいませ」

頭に猫のような耳が生えた受付嬢がいた。獣人という種族で、ラノベとかアニメではよく見かけるようなキャラNPCだ。
金髪碧眼美少女だが、顔は白人と言うよりは中東系の顔立ちをしている。

「冒険者の登録をお願いします」

「はい登録ですね、こちらに記入お願いします」

登録用紙を出されて名前と職業を書く。

「あら、勇者なのですね」

小声で言ってくる。

「はい」

「なら剣も魔法も使えるので、公表して掲示板で募集するとパーティーによく誘われますよ」

「いや、非公開でお願いします」

この世界の勇者というのは一般的に、剣と魔法を使える万能キャラと言う認識だ。
スキルの『勇者の心』は知られていない。まあ仲間にすると精神をコントロールできるとかバレたくないからな。

それと『勇者の心』の本来の使い方は精神のコントロールでけではなく……。
 
「勇者の心発動」

小声言うと受付嬢の頭の上に、ある情報が浮かび上がる。

【フローラ 仲間条件】
真実の指輪を渡す

こんな感じで『勇者の心』を使うと、相手を仲間にする条件が表示される。
まあ……『真実の指輪』はアイテムボックスの中に腐るほどあるが、女は仲間にする気が全くないから条件をクリアはしないけどさ。

「これが冒険者ギルドカードです。身分証明書にもなりますので大切にしてください」

「ありがとう」

受付から離れる。
さて、後は冒険者ギルド内にある教会の出張所にいけば、セーブをしてログアウトが出来るはずだ。

「おい、そこのぺーペーのクソガキ」

振り返るとさっきの鎧を着た男が立っていた。
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