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第1章 剣闘大会編
10話
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ここで、トマーとライアンの試合が始まる3時間ほど前に遡る。
1人の大会スタッフの格好をした男が、手にランプを持ち、競技場の地下通路をキョロキョロと警戒しながら歩いていた。
(通路の形は情報通りだ…。この先を辿れば、例の機密情報がある倉庫というわけか…。)
男は満足そうに、僅かに口角を上げた。
地下空間は日が全く差し込まないため、ランプでは足元しか見えないほど暗い。空気はジメジメとしてカビ臭く、地面の窪みには所々水が溜まっている。
男はさっさと用を済ませ、この不快な場所から立ち去りたいと思っていた。
競技場の地下は入り組んだ構造で、かつて剣闘奴隷、通称剣奴や猛獣の収容場所として主に使用されていた場所である。
500年前、カラム•マルティアをリーダーとしたケルティネ革命による奴隷制度の廃止を機に剣闘競技は廃れ、この地下空間は次第に使われなくなっていった。現在、剣闘大会における選手の待機場所は一階に増設されている。
(あった…ここだ…!)
男はとうとう、地下倉庫を見つけた。倉庫は鉄の扉で厳重に施錠されており、男はポケットから鍵を取り出すと、手元を照らしながらかちゃかちゃと鍵で開けた。
倉庫の内部はおよそ12㎡ほどでそれほど広くなく、天井には直径40cmほどの鉄格子でできた換気口が設置されている。
換気口のおかげか湿気は通路のように酷くはない。周辺は古い本特有の枯草のような匂いが漂っており、木製の棚に文書がずらりと並んでいる。男は真剣な表情で文書を手当たり次第探り出す。
(いや、これじゃない…。これでもない。この資料も興味深いが、俺が探さなくちゃいけないのは…。)
男は次第に焦りで心臓が高鳴っていったが、それと同時に心地よい高揚を感じ始めていた。それは、彼がスリルなどの刺激に身を置くことで生を実感し、快楽を覚える性質だったからだ。
また、彼は目的を成し遂げた後の甘美な達成感を噛み締めるひと時が、何よりも好きだった。
男は冷や汗を浮かべながらも、息遣いが荒く興奮が入り混じった様子で、次々と文書を手に取っては戻すを繰り返していく。そして…
(あった…とうとう見つけた。これだ…!)
血走った目で男が手に取ったのは、外交の機密文書だった。男はその文書の内容を集中して速読し、次々と頭に叩き込んでいく。静寂の中でしきりにページを捲る音だけが響いていた。…その時。
「…こんな地下の見回りなんてよー、俺たちハズレだよな。こんなきたねーとこ誰もこねぇっつーの。」
「全くだ、さっさと終わらせちまおうぜ。…早く昼飯食いてぇなぁ。」
男は、足音と話し声がすぐそこまで近づいてくるのを感じた。
(まずい…警備だ。どこかに身を隠さねば…!)
剣闘祭はケルティネ王国の名物で、毎年大勢の観光客や関係者で国内は溢れ返るため、それに伴い警備体制も強化される。機密文書が隠されている競技場の地下も当然警備強化の対象であるが、他国に機密文書の在処を悟らせないために、少数精鋭の警備が行われていた。
だが…この2人の警備は、腕は立つが脳筋であった。
1人は中肉中背のガッチリした男で名をブライアン、もう1人は細身の高身長で名をフォーレンと言った。
彼らはぼやきながらも、地下倉庫の目の前までやってくる。
「一応中もみておくか。おい、鍵開けろ。」
「わかってる...あれ、鍵がねーな。俺、無くしたかもしれねぇ…。」
ブライアンが、ゴソゴソと衣類やポシェットの中に手を入れ、鍵を探す。
「馬鹿、何やってんだお前!この倉庫には重要な国の機密情報が保管してあんだぞ。無くしたとしれたらお前…ほんとに首飛ぶかもな。」
「なっ...確かに俺はポシェットにしまったはずだ!もしかしたら、扉開いてんじゃねーのか?!」
「馬鹿言えよ、無くしんだろ!ほらみ...ろ...。」
そう言って扉の握り手を持つと、キィ...と扉が開いた。
「おいおい、嘘だろ...。ま、まさか...中に誰かが...。」
「だから言ったじゃねぇか、俺のせいじゃねえって!…ま、まさか、よくわかんねぇけど鍵は盗まれてて、どっかのスパイに機密情報がとっくに抜き取られたりなんてことはねぇか…?」
「...そうなったら、俺たちは2人とも首が飛んじまうな。」
2人は無言で顔を見合わせて、ゴクリと唾を飲んだ。
「と、とりあえず...中に入ろう。」
軋むような音とともに、扉がゆっくりと開かれる。
警備は剣を抜き、ゆっくりと歩を進め恐る恐るランプを照らしながら倉庫の内部を調べる。
文書は荒らされた形跡がなくきちんと棚に収められており、棚上は埃がかぶっている。石造の壁や床にも変わった形跡はなく、何故か一つだけ置かれている樽の中も空だった。
「……誰もいないし、変わったことは無さそうだな。」
「もしかしたら、誰か鍵を閉め忘れんじゃねぇのか?」
「そうかもな…。あとで、鍵だけ探しておこうぜ。鍵さえ見つかれば…何も問題はないんだ。」
ことの重大さを紛らわし、言い聞かせるようにそう言うと静かに扉を閉めた。その後暫く2人はその場に固まり沈黙していたが、現実に引き戻されるかのように会話を始めた。
「...1人は、ここに残ってた方がいいよな。万が一、鍵が空いてる時に誰かに入られたら、まずいしな。」
「そ、そうだな...。じゃあ俺、ここにいるよ。元々俺が鍵をしっかり見てなかったのがわりぃんだからな。」
「そうか...悪いな。警備を増やすように言って、急いでまた戻るから、暫くここは頼んだ。」
「あぁ、任せろ。」
そう言ってフォーレンは立ち去り、ブライアンは扉の前で残った。
(ちっ…1人残ったか。まあ、無能な警備とは言え、流石にそこまで馬鹿じゃないか。まあいい…面白くなってきた。)
何かを企むような顔で、目を細めてニヤリと笑う。
男は扉の両サイドにある壁の突起に足をかけ、天井に張り付いて隠れており、そこからストンと飛び降る。
「な、なんだ?!今、中から音が…!まさか、やっぱり人が...!」
ブライアンは再び剣を抜き、勢いよく扉を開け中に入る。キョロキョロと必死にあたりを見渡すが、警備は人らしき影を見つけられない。
だがその時ー、物影から男が飛び出し素早く背後にまわり込むと、肘で顎を持ち上げて絞めながら、剣で頸動脈を斬った。それは流れるような一連の動きで、ブライアンは声を上げることすらできず、どくどくと血が溢れ出し息絶えた。
この国の警備は、普段は衛兵として働き戦闘に強いが、このような思いがけない奇襲には弱いところがあった。というのも、奇襲を想定した訓練は目が向けられずまともにされていなかったからだ。
それでも、普通の暗殺者ならブライアンは気配に気づき反応できただろう。だがこの男はただの暗殺者ではなかった。それ程までに、この男の暗殺術というのは洗練されていた。
「くっくっく…いいねぇ、人が死ぬ瞬間っていうのは。脈が途絶えでぷちんと生命が消えていく感覚…何度見ても飽きないよ。さて…この後警備が集まって来る前に、さっさとここを出るか。」
(目的は既に…果たした。)
男は意味深に笑うと、ブライアンが持っていた火のついたランプを手に持つと鍵を内側からかけ、樽を足場に換気口の中へと入っていった。
ーーー
男は換気口の出口から少し顔を出し、周囲を警戒して誰もいないことを確認すると、音を最小限に素早く外へ脱出した。
換気口から出た場所は小さな林の中で、草木が物陰となりわかりにくい場所にあった。
おそらく、換気口が地下倉庫と繋がっているために、このような人目につきにくいところに出口が設置されたのだと思われる。
だがそれが、この時仇となってしまった。男は容易に身を隠すことができたからだ。
「なんか、今少しガサガサ音がしたような...。」
1人の警備が、換気口への出口へと近寄る。だが、パッと見てそこには誰も見当たらなかった。
男は、身を隠しながらゆっくりとその場を離れていた。
「...風かネズミか?まさか、こんなとこ誰も来ねーよな。」
警備はそういうと、元の配置へと戻っていってしまった...。
ーーー
男は服に返り血が付いていないことを確認すると、何食わぬ顔でスタッフの装いで競技場の中へと入っていく。その時。
「それでは、選手の皆様!お待たせいたしました!今から、トーナメントを発表いたします!掲示板の前に張り出しますので、しっかりと確認してくださいね!」
アナウンスの声が会場に響いた。男は慌てて、トイレの個室に駆け込むと、変装を始める。
男はあっという間に着替え、どこにでもいる冒険者のような装いになった。
そして男はすぐに会場に戻り、トーナメントを確認する。
(お、急いで着替えてよかった。1戦目か。相手は...トマーとかいうやつか。目的を達したとはいえ、まだここには用がある。仕方がない、運良くさっさと勝ったように見せよう。)
少し面倒くさそうに男は心の中で言った。そう...この男は、ライアンという偽名で健闘大会にエントリーしていたのだ。
理由は、会場を動き回るのに観客より選手の方が違和感がなく都合が良かったからだ。必要に応じてスタッフへ変装して会場に紛れ込むのも容易い。
ーーー
「では早速、第一試合を始めます!西側のゲートから入場するのは、エントリーナンバー35番、人族のライアン選手です...!」
「そして、東側のゲートから入場するのは、エントリーナンバー37番、爬虫類族のトマー選手です...!」
トマーは堂々とした様子で入場し、ライアンはわざとぎこちなく怯えた様子で入場した。
「弱そうなやつ...。」
トマーはボソッと呟く。
「お、お手柔らかに...、お願いしますっ!」
「......よろしく。」
上擦った声で言うライアンに対し、トマーは興味なさそうに、感情をこめずに言った。
「それでは...試合開始!」
トマーは試合開始とともに、一気に踏み込んだ。
1人の大会スタッフの格好をした男が、手にランプを持ち、競技場の地下通路をキョロキョロと警戒しながら歩いていた。
(通路の形は情報通りだ…。この先を辿れば、例の機密情報がある倉庫というわけか…。)
男は満足そうに、僅かに口角を上げた。
地下空間は日が全く差し込まないため、ランプでは足元しか見えないほど暗い。空気はジメジメとしてカビ臭く、地面の窪みには所々水が溜まっている。
男はさっさと用を済ませ、この不快な場所から立ち去りたいと思っていた。
競技場の地下は入り組んだ構造で、かつて剣闘奴隷、通称剣奴や猛獣の収容場所として主に使用されていた場所である。
500年前、カラム•マルティアをリーダーとしたケルティネ革命による奴隷制度の廃止を機に剣闘競技は廃れ、この地下空間は次第に使われなくなっていった。現在、剣闘大会における選手の待機場所は一階に増設されている。
(あった…ここだ…!)
男はとうとう、地下倉庫を見つけた。倉庫は鉄の扉で厳重に施錠されており、男はポケットから鍵を取り出すと、手元を照らしながらかちゃかちゃと鍵で開けた。
倉庫の内部はおよそ12㎡ほどでそれほど広くなく、天井には直径40cmほどの鉄格子でできた換気口が設置されている。
換気口のおかげか湿気は通路のように酷くはない。周辺は古い本特有の枯草のような匂いが漂っており、木製の棚に文書がずらりと並んでいる。男は真剣な表情で文書を手当たり次第探り出す。
(いや、これじゃない…。これでもない。この資料も興味深いが、俺が探さなくちゃいけないのは…。)
男は次第に焦りで心臓が高鳴っていったが、それと同時に心地よい高揚を感じ始めていた。それは、彼がスリルなどの刺激に身を置くことで生を実感し、快楽を覚える性質だったからだ。
また、彼は目的を成し遂げた後の甘美な達成感を噛み締めるひと時が、何よりも好きだった。
男は冷や汗を浮かべながらも、息遣いが荒く興奮が入り混じった様子で、次々と文書を手に取っては戻すを繰り返していく。そして…
(あった…とうとう見つけた。これだ…!)
血走った目で男が手に取ったのは、外交の機密文書だった。男はその文書の内容を集中して速読し、次々と頭に叩き込んでいく。静寂の中でしきりにページを捲る音だけが響いていた。…その時。
「…こんな地下の見回りなんてよー、俺たちハズレだよな。こんなきたねーとこ誰もこねぇっつーの。」
「全くだ、さっさと終わらせちまおうぜ。…早く昼飯食いてぇなぁ。」
男は、足音と話し声がすぐそこまで近づいてくるのを感じた。
(まずい…警備だ。どこかに身を隠さねば…!)
剣闘祭はケルティネ王国の名物で、毎年大勢の観光客や関係者で国内は溢れ返るため、それに伴い警備体制も強化される。機密文書が隠されている競技場の地下も当然警備強化の対象であるが、他国に機密文書の在処を悟らせないために、少数精鋭の警備が行われていた。
だが…この2人の警備は、腕は立つが脳筋であった。
1人は中肉中背のガッチリした男で名をブライアン、もう1人は細身の高身長で名をフォーレンと言った。
彼らはぼやきながらも、地下倉庫の目の前までやってくる。
「一応中もみておくか。おい、鍵開けろ。」
「わかってる...あれ、鍵がねーな。俺、無くしたかもしれねぇ…。」
ブライアンが、ゴソゴソと衣類やポシェットの中に手を入れ、鍵を探す。
「馬鹿、何やってんだお前!この倉庫には重要な国の機密情報が保管してあんだぞ。無くしたとしれたらお前…ほんとに首飛ぶかもな。」
「なっ...確かに俺はポシェットにしまったはずだ!もしかしたら、扉開いてんじゃねーのか?!」
「馬鹿言えよ、無くしんだろ!ほらみ...ろ...。」
そう言って扉の握り手を持つと、キィ...と扉が開いた。
「おいおい、嘘だろ...。ま、まさか...中に誰かが...。」
「だから言ったじゃねぇか、俺のせいじゃねえって!…ま、まさか、よくわかんねぇけど鍵は盗まれてて、どっかのスパイに機密情報がとっくに抜き取られたりなんてことはねぇか…?」
「...そうなったら、俺たちは2人とも首が飛んじまうな。」
2人は無言で顔を見合わせて、ゴクリと唾を飲んだ。
「と、とりあえず...中に入ろう。」
軋むような音とともに、扉がゆっくりと開かれる。
警備は剣を抜き、ゆっくりと歩を進め恐る恐るランプを照らしながら倉庫の内部を調べる。
文書は荒らされた形跡がなくきちんと棚に収められており、棚上は埃がかぶっている。石造の壁や床にも変わった形跡はなく、何故か一つだけ置かれている樽の中も空だった。
「……誰もいないし、変わったことは無さそうだな。」
「もしかしたら、誰か鍵を閉め忘れんじゃねぇのか?」
「そうかもな…。あとで、鍵だけ探しておこうぜ。鍵さえ見つかれば…何も問題はないんだ。」
ことの重大さを紛らわし、言い聞かせるようにそう言うと静かに扉を閉めた。その後暫く2人はその場に固まり沈黙していたが、現実に引き戻されるかのように会話を始めた。
「...1人は、ここに残ってた方がいいよな。万が一、鍵が空いてる時に誰かに入られたら、まずいしな。」
「そ、そうだな...。じゃあ俺、ここにいるよ。元々俺が鍵をしっかり見てなかったのがわりぃんだからな。」
「そうか...悪いな。警備を増やすように言って、急いでまた戻るから、暫くここは頼んだ。」
「あぁ、任せろ。」
そう言ってフォーレンは立ち去り、ブライアンは扉の前で残った。
(ちっ…1人残ったか。まあ、無能な警備とは言え、流石にそこまで馬鹿じゃないか。まあいい…面白くなってきた。)
何かを企むような顔で、目を細めてニヤリと笑う。
男は扉の両サイドにある壁の突起に足をかけ、天井に張り付いて隠れており、そこからストンと飛び降る。
「な、なんだ?!今、中から音が…!まさか、やっぱり人が...!」
ブライアンは再び剣を抜き、勢いよく扉を開け中に入る。キョロキョロと必死にあたりを見渡すが、警備は人らしき影を見つけられない。
だがその時ー、物影から男が飛び出し素早く背後にまわり込むと、肘で顎を持ち上げて絞めながら、剣で頸動脈を斬った。それは流れるような一連の動きで、ブライアンは声を上げることすらできず、どくどくと血が溢れ出し息絶えた。
この国の警備は、普段は衛兵として働き戦闘に強いが、このような思いがけない奇襲には弱いところがあった。というのも、奇襲を想定した訓練は目が向けられずまともにされていなかったからだ。
それでも、普通の暗殺者ならブライアンは気配に気づき反応できただろう。だがこの男はただの暗殺者ではなかった。それ程までに、この男の暗殺術というのは洗練されていた。
「くっくっく…いいねぇ、人が死ぬ瞬間っていうのは。脈が途絶えでぷちんと生命が消えていく感覚…何度見ても飽きないよ。さて…この後警備が集まって来る前に、さっさとここを出るか。」
(目的は既に…果たした。)
男は意味深に笑うと、ブライアンが持っていた火のついたランプを手に持つと鍵を内側からかけ、樽を足場に換気口の中へと入っていった。
ーーー
男は換気口の出口から少し顔を出し、周囲を警戒して誰もいないことを確認すると、音を最小限に素早く外へ脱出した。
換気口から出た場所は小さな林の中で、草木が物陰となりわかりにくい場所にあった。
おそらく、換気口が地下倉庫と繋がっているために、このような人目につきにくいところに出口が設置されたのだと思われる。
だがそれが、この時仇となってしまった。男は容易に身を隠すことができたからだ。
「なんか、今少しガサガサ音がしたような...。」
1人の警備が、換気口への出口へと近寄る。だが、パッと見てそこには誰も見当たらなかった。
男は、身を隠しながらゆっくりとその場を離れていた。
「...風かネズミか?まさか、こんなとこ誰も来ねーよな。」
警備はそういうと、元の配置へと戻っていってしまった...。
ーーー
男は服に返り血が付いていないことを確認すると、何食わぬ顔でスタッフの装いで競技場の中へと入っていく。その時。
「それでは、選手の皆様!お待たせいたしました!今から、トーナメントを発表いたします!掲示板の前に張り出しますので、しっかりと確認してくださいね!」
アナウンスの声が会場に響いた。男は慌てて、トイレの個室に駆け込むと、変装を始める。
男はあっという間に着替え、どこにでもいる冒険者のような装いになった。
そして男はすぐに会場に戻り、トーナメントを確認する。
(お、急いで着替えてよかった。1戦目か。相手は...トマーとかいうやつか。目的を達したとはいえ、まだここには用がある。仕方がない、運良くさっさと勝ったように見せよう。)
少し面倒くさそうに男は心の中で言った。そう...この男は、ライアンという偽名で健闘大会にエントリーしていたのだ。
理由は、会場を動き回るのに観客より選手の方が違和感がなく都合が良かったからだ。必要に応じてスタッフへ変装して会場に紛れ込むのも容易い。
ーーー
「では早速、第一試合を始めます!西側のゲートから入場するのは、エントリーナンバー35番、人族のライアン選手です...!」
「そして、東側のゲートから入場するのは、エントリーナンバー37番、爬虫類族のトマー選手です...!」
トマーは堂々とした様子で入場し、ライアンはわざとぎこちなく怯えた様子で入場した。
「弱そうなやつ...。」
トマーはボソッと呟く。
「お、お手柔らかに...、お願いしますっ!」
「......よろしく。」
上擦った声で言うライアンに対し、トマーは興味なさそうに、感情をこめずに言った。
「それでは...試合開始!」
トマーは試合開始とともに、一気に踏み込んだ。
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