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鷹華を取り巻く環境
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これは私の覚えている記憶である。
私は物心ついてしばらくたったときから両親はいなかった。手にに残っているのは唯一のつながりでもあったお守りだった。両親がいなくなる前にお守りは渡された。それと
「もし私たちがいなくなったらあの宿に行きなさい。」という言葉だった。
私は宿で働いていた。否、働かざる終えなかったというべきなのだろう当時はそんなことは思っていなかったのだけれどね。当時を振り返ると笑えてくる。あの人との出会いで今の私はあるのだろう。
私が働いていた宿はひどいものだった。時代を考えると普通なのかもしれないが。
労働中に失敗をしてしまったら食事が減らされたり、あまりものでよいとはいえないものが与えられていたらしい。私は失敗が多くそれが当然だったので違和感を覚えずにそれらを口にしていた。起きている間は働き、休めるのは文字通りの寝ている間だけだった。その生活が続き、私が11になってしばらくしてからである。夏の夜のこと、買い出しに行っている間のことだった。厳しい労働を強いていたその宿が突如として火が放たれたのである。幸いなことに死人は出なかった。犯人は不明だった。私は宿の外のことを何一つ知らなかったが当時は悪なるものを自己的な方法で裁く偽善者がいたらしい。影と名乗っていたらしいが今となってはどうでもいいことだ。私は当然唖然としていた。私だけではない、私と同じで親がいないが故に労働力として引き取られた子も、宿の持ち主もただただ燃えていく宿を立ちすくんで見続けるだけだった。私はぎゅぅっとお守りを強く握り占めるしかなかった。
宿が燃え尽きてしまい関係者が途方に暮れているときである。ふくよかな偉そうな男が大声を上げた。
「やぁやぁ諸君これからのこと困っているでしょう?私のもとで働きませんか?衣食住は保証しますよ。働いていただければねぇ。」と不敵な笑みで。
私は本能で察したあれについていくのは得策ではなと。後ろの方にいた私は一人静かに人気のない林の方に歩を進めた。その夜は幸いなことに雨も降っていなかった。少しひらけたところに腰を下ろしえこれからのことを考えているうちに眠ってしまった。
朝、無事に目を覚ますことができた。周りを見たところ火を焚いた跡があった。
「誰かがいたのかな?」小言を零しつつも状況を再確認する。これからのことどうしようか?お腹がすいた。とりあえず宿跡に行ってみよう。
宿跡についてみると昨晩の買い出しの包みが放置されていた。あの中には食べ物が入っていたはず...期待を胸に近づくてみる。近づいてみて理解する。その包みは踏まれた形跡があった。ダメもとで中身を確認すると案の定だった。落ち込んでいると後ろから声をかけられた。
「おはようお嬢さん。」
そこには見覚えのあるひげを携えた紳士がいた。
「おはようございます。」
「もしよかったら家に来ないかな。」
いろいろ話の段階が飛んだが大丈夫かなこのおじさんは。
「いきなりすぎて困惑したかな?昨日、林の方に行くのが見えてね。気になって来てみたものの時間がちょうどよかった。」
「おじさまは...」
言葉を繋げたかったが何を言えばいいかわからず言葉が繋がらなかった。
「御影 重三 私はしがない小説家さ。」
悪い人...ではなさそう。御影..御影...思い出した。
「以前宿泊にいらしてましたよね。」
「よく覚えているね。客なんていくらでも来るでしょ。」
「私、だいたいのことは忘れないんですよ。多分ほとんどの人を覚えていますよ。」
「それはすごい。改めてだ、家に来ないかい。」
「おじさまがよいなら。」
「うん、なら付いてきなさい。」
おじさまの家にむかう途中である。
「何故私を?」
「これも何かの縁だからねそれに。一人残ってたら手を伸ばしたくなるでしょ。」
「よくわからないです。」
「そのうちわからるさ。それと君の判断はよかったと思うよ。」
「何のことですか?」
「昨日あの男についていかなかったことさ。確かに働きに対しての報酬は払われるし休みもある。そういった側面ではお嬢さんの働いてた宿よりかはいいのかもしれないが...仕事の内容がね...」
私はその仕事の内容を察した。
「そう...ですか。」
「あまり気分のいい話ではなかったね。すまない。」
しばらくの沈黙の後に重三が口を開く。
「お嬢さんではあれだな。名前はなんというのかね?」
「鷹華...だったと思います。」不安そうに私はそう口にした。
「曖昧だね。」
「あそこでは呼ばれることがありませんでしたから。」
「うん、いい名前だね。その大事に抱えているお守り見せてもらってもいいかな。」
この人なら大丈夫かな。
「どうぞ。」私は差し出す。
「ありがとう。」重三はお守りを返しながら見る。
「この刺繍は鷹かな。」
(鷹って読むんだ)私は内心思う。
「中を見ても?」
「はい、大丈夫です。中には紙が入ってるだけですけど。」
お守りの中からは大分傷んだ紙が出てきた。書き出しが「鷹華へ」と始まっていたので重三は慌てて紙を
お守りの中に戻し鷹華に返すのだった。
「慌ててどうしたんですか?」
「鷹華は中を見たかい。」
「はい、ただ何が書かれているかは分からないんです。」
「もしかして。」
「お察しの通りです。私は字が解らないんです。」言葉は覚えることは容易だったが、識字は覚えることが、機会が今までなかった。
しばらくして重三の家についた。木造でできた一軒家だが、少し傷んでいる。
玄関を開ける前に重三が一言かける。
「ここが今日から君の家だ。」屈託のない笑顔でそう告げる。玄関の扉を開けてそして、立ち止まりこちらを振り返りまた一言。
「おかえり。」
「.....ただいま...です。」私は困惑しつつそう返した。
「うん、おかえり」再度重三はそう告げた。
私は重三とともに家に上がり間取りの説明を受けた。すると「ぐうぅ~」とお腹が鳴った...すごく恥ずかしい。
「もう、こんな時間かご飯にしようか。特に決まった時間で生活してないから気づかなくてどめんね。」重三は気づかってくれた。」
「あの...その...そんなに気にしなくても大丈夫です。」
「鷹華、君は今日から家族だ。今までとは生活が違うと思うが困ったことがあれば何でも言って欲しい。」
「はい。できる限り努力してみます。」
「時間はこれからあるんだ。慌てなくたって、急がなくていい。」一息つけて
「さ、ご飯の準備をしよう。」
「私も何か...」
「簡単なものだからゆっくりしてていいよ。昨日もよく眠れなかったんじゃないかな。」そう言うと足早に台所に向かった。そうは言われたものの私に今まで自由な時間はなかったため何をしたらいいか分からない。とりあえず眠気気を感じたから座布団の上で少し横になった。
「...うか....ようか。」体を揺らされて私は目を覚ました。
「!?」ザッとものすごい勢いで私は起き上がる。
「すみません。すぐに置きます。」
「そんなに慌てなくていいよ。準備できたし寝起きだけど食べれるかな?」
そうか、ここはもう宿ではないんだよね。
「はい食べられます。」
「よし、じゃぁ食べようか。」
ご飯を食べながら話をした。
「私はここに来ましたが何をすれば?」
「特に私からこれをしろってことは言わないよ。そうだなぁ好きなもの、してみたいことを探すのはどうだろうか。今までそんな時間はなかったでしょうにね。」
「やりたいこと...ですか。」確かに今まではそんな余裕すらなかった。その時にお守りの中のことを思い出した。
「とりあえず一つだけ...あります。字を扱えるようになりたいです。」
「一つでも見つかることはいいことだね。まずはそこから始めようか。仕事の合間になっちゃうけどいいよね。」
「ありがとうございます。」
「片づけるかな。」
「片づけぐらいは私がします。」
「じゃぁ、頼んでいいかな。」
「はい。」
しばらく重三が居間で休んでいると台所からパリンっと皿が割れる音が聞こえた。重三が台所に向かうと
「すみません。皿割っちゃいましたー」と大声が聞こえてきた。
「大丈夫かい?怪我は?」
「怒らないんですか。」そのことだけに違和感を覚えた。今までは怒られるだけだった。
「怒らないよ。心配はさせてもらうけどね。」
重三とともに割れた皿を片づけて、皿洗いを終わらせた。
重三の家に来て数日がたった。
「そろそろと字も覚えて来たんじゃないかな。早くて驚いているよ。」
数日あったが実際に教わっていたのは数時間ほどであった。
「覚えるのは得意なんです。というよりあまり忘れないんですよ。」
「いい才能だね。私は忘れることが多くてね。」
「話が変わりますが、今日のご飯私が作ってみてもいいですか。」
「大丈夫かい?君を見てるとかつても友人と同じように危なっかしくてね。」
「大丈夫です。何度かは作ったことはありますし。ただ、周りからはやめてれと言われたんですよね。なんでしょう?」
「まぁ、大丈夫ならいいよ。お願いするね。」
「ありがとうございます。」
しばらくたってご飯の時間になった。
「できましたよ。」鷹華が食事を持ってくる。見た目はよし。
「いただきます。」重三が一口、口にする...電撃が走った。いろんな味が混ざり合って一体感がない。直訳すると不味い。
「どうでしょうか?」不安そうな顔で聞いてくる。重三は悩んだ正確に不味いとはとても言えない。だが、どうするべきか。
「個性的な味でありだと思うよ。」重三は逃げた。
「それはよかったです。」そのことを言った後に鷹華はがつがつと食べ始めた。どうやら、本人は美味しいと思い食べているらしい。(俺の味覚がおかしくなったのかな。)
「ごとそうさまでした。」
その日の夜に鷹華はお守りの中の手紙を読んでみようと思った。以前とは違い手紙の内容が読める。
鷹華へお前を手放すしかなかった私は憎まれても仕方がないよな。私も母も研究者で帝国に隔離されて研究を強いられるだろう。それは危険な兵器開発で行いたくはないのだが、奴らはお前も人質にされるかもしれない。鷹華を一番愛している。勝手な望みだが、鷹華精一杯生きたいように生きてくれ。俺からはそれだけを伝えたかった。最後にすまなかった。おそらく私らはもうこの世にはいないだろうが愛してるよ。
その手紙を読んで何故か知らないが涙が溢れてきた。いや、理由は知っている。両親のことはあまり覚えていない。それでも、愛されていることを確認できたからだろうその日は泣き明かした。
鷹華は15になった。
「重三さん。私もそろそろ働こうと思います。」
「そうか、もう15だもんな時が過ぎんのは早いな。働く場所は決めてあるのかい?」
「はい、もう自分で判断つけられるようになりました。旅館鳥の巣で働こうと思います。」
「うん、あそこならいいんじゃないか。いつ出るんだ?」
「明日の朝には。」
「なら今日は時間あるかい?」
「はい、大丈夫です。」
「連れていきたい所があるんだ。」
二人は準備をして目的地に向かう。
到着したそこは墓だった。
「ここは?」
「君の両親が眠っているところだよ。積もる話もあるだろう。」
「はい、しばらく時間をください。」
「ああ、もちろんだよ。」
(懐かしいな親友)重三も彼との約束を思い出した。
鷹華の父が鷹華を宿に預けてしばらくたった日であった。
「なぁ、重三頼みがある。」
「なんだい?」
「あの娘を、鷹華のことを頼んでもいいかな。」
「俺なんかでいいのかい。」
「ああ。そしてもう一つ。俺を殺してくれ始末屋の影。」
「俺に親友を殺せと。」
「ああ。俺は生きていてはいけない。」
「その依頼引き受けた。」
当時どんな顔をしていたかは分からない。多分泣いていたのだとは思うが。鷹華の父はこの上のない笑顔だった。
鷹華は最後に「ありがとう。」と告げ墓の前から立ち上がった。
重三話す。ずっと黙っていたことを「すまない。鷹華お前の父は...」
「わかっています。話さなくても。あなたは私に愛をくれました。」
「ははは、全く君には敵わない。」
そして翌朝。
「それでは行ってまいります。長い間ありがとうございました。」
「ああ、行ってこい。やりたいように、思うがままに。」
「はい。」最高の寝顔で重三の家を後にした。
子を送り出す親ってこんななのかな。いい四年間だったよ。全く。
これは鷹華が愛を知り、愛を振りまく側に立つまでの話である。鷹華はこれからいろんな人に幸せを振りまくだろう。
私は物心ついてしばらくたったときから両親はいなかった。手にに残っているのは唯一のつながりでもあったお守りだった。両親がいなくなる前にお守りは渡された。それと
「もし私たちがいなくなったらあの宿に行きなさい。」という言葉だった。
私は宿で働いていた。否、働かざる終えなかったというべきなのだろう当時はそんなことは思っていなかったのだけれどね。当時を振り返ると笑えてくる。あの人との出会いで今の私はあるのだろう。
私が働いていた宿はひどいものだった。時代を考えると普通なのかもしれないが。
労働中に失敗をしてしまったら食事が減らされたり、あまりものでよいとはいえないものが与えられていたらしい。私は失敗が多くそれが当然だったので違和感を覚えずにそれらを口にしていた。起きている間は働き、休めるのは文字通りの寝ている間だけだった。その生活が続き、私が11になってしばらくしてからである。夏の夜のこと、買い出しに行っている間のことだった。厳しい労働を強いていたその宿が突如として火が放たれたのである。幸いなことに死人は出なかった。犯人は不明だった。私は宿の外のことを何一つ知らなかったが当時は悪なるものを自己的な方法で裁く偽善者がいたらしい。影と名乗っていたらしいが今となってはどうでもいいことだ。私は当然唖然としていた。私だけではない、私と同じで親がいないが故に労働力として引き取られた子も、宿の持ち主もただただ燃えていく宿を立ちすくんで見続けるだけだった。私はぎゅぅっとお守りを強く握り占めるしかなかった。
宿が燃え尽きてしまい関係者が途方に暮れているときである。ふくよかな偉そうな男が大声を上げた。
「やぁやぁ諸君これからのこと困っているでしょう?私のもとで働きませんか?衣食住は保証しますよ。働いていただければねぇ。」と不敵な笑みで。
私は本能で察したあれについていくのは得策ではなと。後ろの方にいた私は一人静かに人気のない林の方に歩を進めた。その夜は幸いなことに雨も降っていなかった。少しひらけたところに腰を下ろしえこれからのことを考えているうちに眠ってしまった。
朝、無事に目を覚ますことができた。周りを見たところ火を焚いた跡があった。
「誰かがいたのかな?」小言を零しつつも状況を再確認する。これからのことどうしようか?お腹がすいた。とりあえず宿跡に行ってみよう。
宿跡についてみると昨晩の買い出しの包みが放置されていた。あの中には食べ物が入っていたはず...期待を胸に近づくてみる。近づいてみて理解する。その包みは踏まれた形跡があった。ダメもとで中身を確認すると案の定だった。落ち込んでいると後ろから声をかけられた。
「おはようお嬢さん。」
そこには見覚えのあるひげを携えた紳士がいた。
「おはようございます。」
「もしよかったら家に来ないかな。」
いろいろ話の段階が飛んだが大丈夫かなこのおじさんは。
「いきなりすぎて困惑したかな?昨日、林の方に行くのが見えてね。気になって来てみたものの時間がちょうどよかった。」
「おじさまは...」
言葉を繋げたかったが何を言えばいいかわからず言葉が繋がらなかった。
「御影 重三 私はしがない小説家さ。」
悪い人...ではなさそう。御影..御影...思い出した。
「以前宿泊にいらしてましたよね。」
「よく覚えているね。客なんていくらでも来るでしょ。」
「私、だいたいのことは忘れないんですよ。多分ほとんどの人を覚えていますよ。」
「それはすごい。改めてだ、家に来ないかい。」
「おじさまがよいなら。」
「うん、なら付いてきなさい。」
おじさまの家にむかう途中である。
「何故私を?」
「これも何かの縁だからねそれに。一人残ってたら手を伸ばしたくなるでしょ。」
「よくわからないです。」
「そのうちわからるさ。それと君の判断はよかったと思うよ。」
「何のことですか?」
「昨日あの男についていかなかったことさ。確かに働きに対しての報酬は払われるし休みもある。そういった側面ではお嬢さんの働いてた宿よりかはいいのかもしれないが...仕事の内容がね...」
私はその仕事の内容を察した。
「そう...ですか。」
「あまり気分のいい話ではなかったね。すまない。」
しばらくの沈黙の後に重三が口を開く。
「お嬢さんではあれだな。名前はなんというのかね?」
「鷹華...だったと思います。」不安そうに私はそう口にした。
「曖昧だね。」
「あそこでは呼ばれることがありませんでしたから。」
「うん、いい名前だね。その大事に抱えているお守り見せてもらってもいいかな。」
この人なら大丈夫かな。
「どうぞ。」私は差し出す。
「ありがとう。」重三はお守りを返しながら見る。
「この刺繍は鷹かな。」
(鷹って読むんだ)私は内心思う。
「中を見ても?」
「はい、大丈夫です。中には紙が入ってるだけですけど。」
お守りの中からは大分傷んだ紙が出てきた。書き出しが「鷹華へ」と始まっていたので重三は慌てて紙を
お守りの中に戻し鷹華に返すのだった。
「慌ててどうしたんですか?」
「鷹華は中を見たかい。」
「はい、ただ何が書かれているかは分からないんです。」
「もしかして。」
「お察しの通りです。私は字が解らないんです。」言葉は覚えることは容易だったが、識字は覚えることが、機会が今までなかった。
しばらくして重三の家についた。木造でできた一軒家だが、少し傷んでいる。
玄関を開ける前に重三が一言かける。
「ここが今日から君の家だ。」屈託のない笑顔でそう告げる。玄関の扉を開けてそして、立ち止まりこちらを振り返りまた一言。
「おかえり。」
「.....ただいま...です。」私は困惑しつつそう返した。
「うん、おかえり」再度重三はそう告げた。
私は重三とともに家に上がり間取りの説明を受けた。すると「ぐうぅ~」とお腹が鳴った...すごく恥ずかしい。
「もう、こんな時間かご飯にしようか。特に決まった時間で生活してないから気づかなくてどめんね。」重三は気づかってくれた。」
「あの...その...そんなに気にしなくても大丈夫です。」
「鷹華、君は今日から家族だ。今までとは生活が違うと思うが困ったことがあれば何でも言って欲しい。」
「はい。できる限り努力してみます。」
「時間はこれからあるんだ。慌てなくたって、急がなくていい。」一息つけて
「さ、ご飯の準備をしよう。」
「私も何か...」
「簡単なものだからゆっくりしてていいよ。昨日もよく眠れなかったんじゃないかな。」そう言うと足早に台所に向かった。そうは言われたものの私に今まで自由な時間はなかったため何をしたらいいか分からない。とりあえず眠気気を感じたから座布団の上で少し横になった。
「...うか....ようか。」体を揺らされて私は目を覚ました。
「!?」ザッとものすごい勢いで私は起き上がる。
「すみません。すぐに置きます。」
「そんなに慌てなくていいよ。準備できたし寝起きだけど食べれるかな?」
そうか、ここはもう宿ではないんだよね。
「はい食べられます。」
「よし、じゃぁ食べようか。」
ご飯を食べながら話をした。
「私はここに来ましたが何をすれば?」
「特に私からこれをしろってことは言わないよ。そうだなぁ好きなもの、してみたいことを探すのはどうだろうか。今までそんな時間はなかったでしょうにね。」
「やりたいこと...ですか。」確かに今まではそんな余裕すらなかった。その時にお守りの中のことを思い出した。
「とりあえず一つだけ...あります。字を扱えるようになりたいです。」
「一つでも見つかることはいいことだね。まずはそこから始めようか。仕事の合間になっちゃうけどいいよね。」
「ありがとうございます。」
「片づけるかな。」
「片づけぐらいは私がします。」
「じゃぁ、頼んでいいかな。」
「はい。」
しばらく重三が居間で休んでいると台所からパリンっと皿が割れる音が聞こえた。重三が台所に向かうと
「すみません。皿割っちゃいましたー」と大声が聞こえてきた。
「大丈夫かい?怪我は?」
「怒らないんですか。」そのことだけに違和感を覚えた。今までは怒られるだけだった。
「怒らないよ。心配はさせてもらうけどね。」
重三とともに割れた皿を片づけて、皿洗いを終わらせた。
重三の家に来て数日がたった。
「そろそろと字も覚えて来たんじゃないかな。早くて驚いているよ。」
数日あったが実際に教わっていたのは数時間ほどであった。
「覚えるのは得意なんです。というよりあまり忘れないんですよ。」
「いい才能だね。私は忘れることが多くてね。」
「話が変わりますが、今日のご飯私が作ってみてもいいですか。」
「大丈夫かい?君を見てるとかつても友人と同じように危なっかしくてね。」
「大丈夫です。何度かは作ったことはありますし。ただ、周りからはやめてれと言われたんですよね。なんでしょう?」
「まぁ、大丈夫ならいいよ。お願いするね。」
「ありがとうございます。」
しばらくたってご飯の時間になった。
「できましたよ。」鷹華が食事を持ってくる。見た目はよし。
「いただきます。」重三が一口、口にする...電撃が走った。いろんな味が混ざり合って一体感がない。直訳すると不味い。
「どうでしょうか?」不安そうな顔で聞いてくる。重三は悩んだ正確に不味いとはとても言えない。だが、どうするべきか。
「個性的な味でありだと思うよ。」重三は逃げた。
「それはよかったです。」そのことを言った後に鷹華はがつがつと食べ始めた。どうやら、本人は美味しいと思い食べているらしい。(俺の味覚がおかしくなったのかな。)
「ごとそうさまでした。」
その日の夜に鷹華はお守りの中の手紙を読んでみようと思った。以前とは違い手紙の内容が読める。
鷹華へお前を手放すしかなかった私は憎まれても仕方がないよな。私も母も研究者で帝国に隔離されて研究を強いられるだろう。それは危険な兵器開発で行いたくはないのだが、奴らはお前も人質にされるかもしれない。鷹華を一番愛している。勝手な望みだが、鷹華精一杯生きたいように生きてくれ。俺からはそれだけを伝えたかった。最後にすまなかった。おそらく私らはもうこの世にはいないだろうが愛してるよ。
その手紙を読んで何故か知らないが涙が溢れてきた。いや、理由は知っている。両親のことはあまり覚えていない。それでも、愛されていることを確認できたからだろうその日は泣き明かした。
鷹華は15になった。
「重三さん。私もそろそろ働こうと思います。」
「そうか、もう15だもんな時が過ぎんのは早いな。働く場所は決めてあるのかい?」
「はい、もう自分で判断つけられるようになりました。旅館鳥の巣で働こうと思います。」
「うん、あそこならいいんじゃないか。いつ出るんだ?」
「明日の朝には。」
「なら今日は時間あるかい?」
「はい、大丈夫です。」
「連れていきたい所があるんだ。」
二人は準備をして目的地に向かう。
到着したそこは墓だった。
「ここは?」
「君の両親が眠っているところだよ。積もる話もあるだろう。」
「はい、しばらく時間をください。」
「ああ、もちろんだよ。」
(懐かしいな親友)重三も彼との約束を思い出した。
鷹華の父が鷹華を宿に預けてしばらくたった日であった。
「なぁ、重三頼みがある。」
「なんだい?」
「あの娘を、鷹華のことを頼んでもいいかな。」
「俺なんかでいいのかい。」
「ああ。そしてもう一つ。俺を殺してくれ始末屋の影。」
「俺に親友を殺せと。」
「ああ。俺は生きていてはいけない。」
「その依頼引き受けた。」
当時どんな顔をしていたかは分からない。多分泣いていたのだとは思うが。鷹華の父はこの上のない笑顔だった。
鷹華は最後に「ありがとう。」と告げ墓の前から立ち上がった。
重三話す。ずっと黙っていたことを「すまない。鷹華お前の父は...」
「わかっています。話さなくても。あなたは私に愛をくれました。」
「ははは、全く君には敵わない。」
そして翌朝。
「それでは行ってまいります。長い間ありがとうございました。」
「ああ、行ってこい。やりたいように、思うがままに。」
「はい。」最高の寝顔で重三の家を後にした。
子を送り出す親ってこんななのかな。いい四年間だったよ。全く。
これは鷹華が愛を知り、愛を振りまく側に立つまでの話である。鷹華はこれからいろんな人に幸せを振りまくだろう。
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