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日曜日のわたしたち・6
しおりを挟む足元には彼が居て、わたしはゆっくりと腰を上げては下ろすを繰り返した。
キッチンにあるお揃いのお皿は袋に入ったままで、玄関に転ぶ靴は、二足仲良く並んでいて、わたしたちは仲良く一つになっていて。
「……好、きぃ」
吐息のような、喘ぎのような囁きが漏れる。彼の手がわたしの髪を撫でてくる。彼の優しさが、身体の中を満たしていく。
〇〇〇
買い物を終えた後、わたしたちは結局仲良い時間を過ごしてしまい、終わった頃には夜の時間になっていた。
その後片づけを始めたけれど、進捗はダンボールを一つだけ。すぐに夕方になってきて、わたしは近所のスーパーに出向き、食材を買った。彼はその間も片付けてくれたけれど、やっぱり終わりには程遠い。
二人で笑いながら、とりあえずご飯にしようと言い合って、今日のご飯は、少し手抜きの鍋にした。
「二人で食べるにしては作りすぎやな」
「そういうりゅーちゃんて、すごい食べるじゃない?」
「まあ、そやけど」
土鍋を覗き込んだりゅーちゃんが笑う。わたしは彼と自分の器に具を入れる。手を合わせて、いただきますを言い合う。りゅーちゃんが白菜とお肉を頬張る。そんな仕草すら愛おしい。
「めっちゃ旨い」
「ありがとう」
目の前の鍋がぐつぐつと煮えている。りゅーちゃんの器が空になればわたしが受け取り追加する。こんなのも楽しいと思っていたら、目の前のりゅーちゃんがわたしを見つめて黙っていた。
首を傾げて、黙って見返す。
「なな、こんな話したら嫌かもしれんけど」
「またしたいの?」
りゅーちゃんらしいけれどしすぎよ、と思う。りゅーちゃんは顔を赤らめて、首を振って否定した。
「ちゃうちゃう。いや、したいけど、そやなくて」
「したいんだ?」
りゅーちゃんは本当に面白い。エッチなのは別に構わないけれど、明日から仕事なのでほどほどにした方がいいと思う。明日も明後日も、わたしたちはこれから毎日、一緒なのだから。
とはいえ今は、今か。こんにゃくを食べながら、りゅーちゃんの言葉を待つ。りゅーちゃんらしからぬ雰囲気で、彼はしばらく黙っていた。
「ななに好いて貰えて、俺は幸せやから」
「わたしもりゅーちゃんの傍に居られて幸せだよ?」
当然な言葉に当然な返事を重ねる。りゅーちゃんは肩を竦めながら、「やから……」と言葉を濁した。笑顔。
「お前のためやったら、俺は死ねると思う」
ふわりと。
りゅーちゃんの言葉がわたしの心に押し寄せた。居なくなる。彼が死ぬ。死んでわたしの前から居なくなる?
全身の血の気が引いた。手が持ち上がっていた。手にしていた箸が飛んでいた。投げられた木の箸が、りゅーちゃんの肩に当たって部屋に跳ねた。からん、からんと音がした。
りゅーちゃんが酷く驚いた顔をしていた。
「な、な? 何で箸、投げるんよ」
りゅーちゃんが狼狽えていた。怯えてすら居た。わたしは我慢しきれなかった。軽はずみにそんな言葉を吐きやがった男に、殺意すら覚えた。
「あほー」
感情の限界だった。わたしはだから、彼の真似をして誤魔化した。精神が崩壊しかかった。想像以上に、わたしは彼に凭れ掛かっていた。傾倒していた。
依存している自分が嫌いで、一度は別れようとした。けれど彼は笑って、じゃあ一緒になろうと言ってくれた。だから凭れてもいいんだと言ってくれた。
それで死なれたら、わたしはどうすればいいんだ。
《続く》
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