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自分のようなオンナによくもまぁ4
しおりを挟む破瓜は正直、痛かった。
何せ身が切れ血が出るのだ。それを更に擦るのだ。痛くないわけがない。
最初はそう、無理矢理ではなく合意の上での行為だったけれど、あれが自分の中に埋没した瞬間、恐ろしい程の嫌悪感に苛まれたのを覚えている。
好き合う者同士の行為はそれは素晴らしいものだろうと妄想していた部分も手伝って、相手の部位が自らの体内に押し入ってくる感触は、堪えがたい程の屈辱を覚えた。
「抜いてくれ」
真剣にそう頼んだ。本心から、真顔で相手にそう懇願した。なのに彼は自分の二度目の懇願を唇で塞ぎ、問答無用で腰を振った。
腰を振り続けるそいつを見つめながら、終わったら殺してやろうと思った。陰茎を抜き去り横に寝そべった彼に馬乗りになって、首をへし折ってやろうと思った。彼が果てる間際まで、本心で彼を訴えてやると思った。職を失えとすら思った。
そうして彼は、自分の身体で果てた。
そして、けれど、なのに。
○○○
「怒っていますよね」
「しつこいな君も。許すと言っているだろうに」
大学からの付き合いである平蔵さんと、友人の枠を超え、付き合い出して二年が経つものの、未だに彼との距離感は遠いのか近いのかが分からない。
彼こそが独特で、自分こそも独特な人間だと言う自覚はある。
二人はルームメイトとは言うものの、正確に言えば同居し始めてまだ一ヶ月程しか経ってはいない。なのでこれからの距離感も、実は測り切れてはいない。
「平蔵さんは、自分相手によくもまあ盛れるものだな。驚嘆するよ」
「それはあさみ君が素敵だからです」
「素敵、ねえ?」
自分の呟きに、平蔵さんが眉を潜めて困り顔を浮かばせる。細目なくせに妙に表情豊かな彼は、見ていて楽しい。明らかに苦悩の面持ちだ。
「男子はあれだね、愛の語らいもなく、唐突にしたくなるのだろう?」
「身も蓋もないですが弁解の余地もないです、ごめんなさい」
「いやいや、好きにすればいいよ。自分たちは付き合っているのだしね」
そう自分で言いながら、彼を責めているのはワザとだ。彼もそれを解っているので、あまり追求はしてこない。彼はお茶漬けを食べながら、全く合いそうにもない紅茶を嗜んでいる。
ちなみに自分は、紅茶が嫌いで珈琲が好きだ。
「しかし自分のような微オンナの身体の、何に欲情するのかが疑問でしょうがないな。まあ、一応身体は女だから、行為をする事が可笑しいとまでは言わないよ。悲しいかな膣はあるし、胸もまあ、平たいが一応あるか? いや、ないな。身長が子供のようだから、酒もろくに飲めないが」
「あさみ君、不機嫌?」
「素直な感想だよ。自分の何に魅力を感じるのか、真剣に解らないので、いつ捨てられるのだろうかと思っているくらいだ。今から捨てるかい?」
「朝からそんな重い選択は勘弁してください」
平蔵さんが本当に困っているので、自分の無茶突っ込みもこの程度で抑えておく。あまり言いすぎると今日の仕事に支障が出るかもしれない。もっとも彼の表情が彼の気持ちと必ずしも合っているわけではないのは、自分の良く知る所ではある。
彼の表情豊かな面持ちは仮面なのだ。彼は笑顔で嘘を付けるし、必要であれば嘘を本当にすることも、その逆も出来る。罪多き人を笑顔で救う人は、悪人を前に平然と嘘をつく。
彼は言ったのだ。
俺は俺が味方すべき人にとっては正義の人であり、それ以外にとってはただの悪人だよと。
そういう彼だからこそ、自分は不出来な自らでありながらも、彼の告白を受け入れる事が出来たのだ。
少なくとも、自分は彼を尊敬している。
「身体目当ての関係の方が、恋愛は楽なのだろうか」
「それは恋愛とは言わない気がします」
「うん、違うのだろうなあ。身体だけならなおさら、自分のような変なオンナにする必要もないからね。お金もあるのだし、商売女の方が楽しいだろう」
「俺は常にあさみ君としたいので」
これさえなければ、とても素晴らしい人間なのだが。
今にも零れそうな溜息を、彼の前では吐かないように堪える。とりあえず、わかっていることはあるのだ。
「自分も平蔵さんに惚れているから、自分を好いてくれるのは嬉しいよ。それでも良いのだけれど、やはり解せないものはある。自分の膣も、そろそろ狭さを失っているはずだし、具合もさていつまで良いものか」
「あさみ君のあそこは何度しても狭いですから!」
自分の呟きに、平蔵さんが顔を赤らめて真剣に物言いをしてくる。
うむ。朝から恥ずかしい。見れば彼もまた赤くなる。自分の感情すら第三者のように分析してしまう自分の研究者気質を、実は気に入っているというのは誰にも言わない秘密だ。
「朝から猥談は止めようか」
「そうですね」
こちらが言い出しておいてなんだがね、と心で呟きながら、自分は静かに、手にした珈琲を一口啜った。
《続く》
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