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自分のようなオンナによくもまぁ2
しおりを挟む「ぐっ……」
漏れる声は色香とは程遠く、獣の呻きの如くだった。
情けなさが雌心を傷つける。絶対に今、自分の体躯は心と反して火照っている。内腿が熱く、いったい何時から施されていたのやらだ。畜生。
全身を嫌悪感が埋め尽くす。吐き気すらする。思考が喜怒哀楽の怒と哀に満ちる。鳥肌が立つ。
冷静さが一気に消える。さっきの馬鹿声は自分であったかと理解したところで、うなじの後ろを何かが這った。ぞくん。
「ぐあぁ」
呻きのような声が漏れる。思わず体躯をくの字にしてしまい、後ろにいる侵略者の腹に尻を当てたらしい。「うごっ」と僅かな悲鳴が上がり、その声の主に謝罪を一匙、いい気味だという気持ち七割を抱いた。
相手は、しかし止まらない。
相手は就寝中というこちらの事情を無視して布団に侵入し、あまつさえ手足を拘束し、後ろから抱いているのだろう。
嫌悪感で心が満ちている。自分の身体に他人の手が触れている。しかも尻付近には固いものが押し付けられ、間違いなくうなじ付近を、他人の舌が這っている。つまり舌で首元を何度も舐められている。
「んぐ、ぐぅ」
喉から漏れる声は不出来過ぎた。少しも女らしくない。ごそごそと衣服の内部に侵入している手が、自分の腹部を撫で、臍に指を添わせている。知らず汗ばんでいる身体がもどかしい。悲鳴でも上げるかと思うけれど、自分の性格ではそれもままならない。下手に唇を開こうものなら、あられもない、いや意味不明な声が出るだろう。それはプライドが許さない。だから堪えるしかない、構図になる。
畜生。
手も足も縛られているので抵抗できないが、一応はその身を捩ってみた。顔をそっと、後ろへと向けて、
「っ、く」
ぞわ。視線を向け終える前に、唇の上に熱が来た。暗闇の中でも分かる男の唇が、自分の頑なな唇の上を這い、無遠慮な舌が押し入ってくる。失礼に、無理矢理だった。
「んぇぶ」
己の舌で相手の舌を押し返そうとするも、防御が間に合わず、手と同じく自分の口内へと入り込んで来る。口内に熱。無残。前歯から上顎、舌までを丹念に舐められ、自分の口内から唾液が根こそぎ奪われる。
心臓が打っている。息遣いも聞こえる。自らの身から熱が零れ落ちている。自分の内腿に灯る熱が、気持ち悪い。
「は、ぁ、ぐ」
振り向き際にされた濃厚なキスから逃れ、乳房を弄られる度に悲鳴のような呻きが漏れる。薄手のパジャマ越しに、尻上に堅いものを押し当てられ、自分の下着の股当たりは気持ちが悪い程に濡れている。布団もきっと汚しているに違いなく、洪水状態なのが腹立たしい。寝小便でもしたのかと思う程の、自らのふしだらな身体を絞殺したい。
「へぅっ、ふぐっ……」
喉から虚しい息が漏れる。内股あたりは触れるまでもなく冷たいが、相手の指が自分の狭い筋上を何度も撫でてくるので、新たな潤滑液が溢れてきて、濡らした理由を知らされる。悔しさに歯を食いしばるが、動けないのでどうしようもない。後ろ髪の生え際を舐められて、「んぐぁ」と阿呆な声が出た。棒読みの大根役者かと言わんばかりの、偽物のような喘ぎ声が漏れる。
なんて情けない喘ぎ声だろうか。
だからこそ、自分は全身で、本当に感じているのだろうと推測する。可愛い喘ぎなんて出せたためしはない。そこが辛い。だから、男女の行為は大嫌いだ。
どうにも自分はオンナとして、何か決定的に足りないものがある。それは魅力であり、色香であろうか。喘ぎすらダメだし、胸も尻も粗末。全く情けない。こんな不出来な体躯で感じている自分が酷く情けない。
「はぁ……はぁ」
耳元で男の息遣いが聞こえた。彼の声こそ色香に満ちていて、甘く切ない音だった。
腹の上から胸に向かって伸びている他人の腕を、今すぐ引き抜きたい衝動に駆られるが、当然だが、腕を縛られているせいで動けず実行できない。やめろと声を上げるのは性に合わない。なんとか逃げようと身を転がそうと必死になる。
ぐ。しかし後ろから捕獲された状態では逃れられず、腰を逃がすに留まる。しかしパジャマのズボンがずいと下ろされ、尻と下着が布団の中で露わになるのを、止められない。手も足も出ないので、静止できる筈がない。何者かの指に全身を弄られる感触に、鳥肌が立つ。正直、嫌で、怖い。不快で、気持ちが悪い。
「っつ」
ついには下着の上にまで侵入きてきた指が、無遠慮に自分の素肌にまで移動する。粘着質の高い液がそいつの指を受け入れているかのようで気に食わない。早々に下着を横に引っ張られて、自分の濡れた陰部に指が当たった。怖さと辛さに、
「や、めろ」
短く吐き出すような声が出た。自分なりに必死な声だ。しかし相手は止まらない。少しくらいは躊躇するかと思った相手の指は止まらず、息遣いが増す程だ。パジャマが肌蹴て露わになる肩口を舌が添い、舐る。
「ひ、や、ぁ。やめ、ろ、へいぞう、さん」
掠れた声が零れてしまい、咄嗟に相手の名を呼んだ。しかし自分の身に添う侵略者の指先は止まらない。相手は、平蔵は止まってくれない。
「へいぞう、さん、やめて」
「……っ」
今度の、かなり弱気な呼びかけには僅かに反応を見せたが返事はない。色気のへったくれもない自分のボクサータイプの下着が無理やり下ろされ、尻が寒くなる。油断すると小便まで漏れそうな程に腰が砕けていて、仮に手足を縛られていなくとも身動きが取れないのではないだろうと思う程に、全身から力が抜けている。
「く、ぁ……あぁあ」
下半身に違和感。気付いて尻を引くが間に合わない。ぐいと押し付けられた相手の堅い陰茎が、唐突に自分の内側に侵入してくる。押し寄せるのは波。先端からゆっくりと、まるで勿体付けるように挿入されるのを、歯を食いしばって堪えるが無理だった。
「やめろ」
と強気で言うが止まらない。侵入が止まらない。一突き、いきなりだった。嫌だ、自分の中に異物が入ってくる感触が嫌だ。
ずぐり。
嫌だ嫌だ嫌だ。気持ち悪い逃げたい怖い、でも、気持ちが良い。嫌だ。嫌なんだ。やめて抜いて離れて怖い。ぱんと、一瞬で彼と自分の陰部は一つになった。
あっけなく、熱が熱を包み込む。止めて欲しいと真剣に思う。そんな自分の思考を、本気で絞め殺したくなる。
《続く》
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