上 下
71 / 123
7章:12歳になったらしい

70話:予想外な展開は突然に

しおりを挟む
気の強そうな令嬢に声をかけられた後、誰もいないテラスへと私達は来た。

彼女の名前は塔城 舞璃花とうじょう まりか様。

公爵家とほぼ近い位にある侯爵家の令嬢だ。

外は暗く舞璃花様の水色のひとみは月光によって怪しく光り、金色の縦巻きロールが存在感を大きくする。

まさに、the悪役だ。

舞璃花様は腕を組み私を見下ろす。

ど、どうしよう。

緊張で心臓がバクバク鳴ってるよおおお!!

え、何言われるだろう??何かしたっけ?

か、考えろ・・・考えるんだ!!!

私はこの人に何したの!?過去の私何したの!?

「ねえ。なぜ貴女のような人が雪都様に近づくんですの?はっきり言って目障りですわ!」

1人混乱していると睨みつけながらそう言ってきた舞璃花様。

ま、まさかの・・・・・・恋愛系でしたかあああ!!!!何となくは予想してたけど!!

ど、どどど、どうすればいいの?これは、なんて返事をすればいいの??

あ、謝るとか?・・・うーん。なんか相手を煽ってる感じになっちゃうかな??

それはそれで大変なことになりそう・・・。

そもそも初対面相手に上手く喋れない!!

なかなか話さない私にしびれを切らしたのか舞璃花様はカツカツと靴で床を叩き始めた。

ひぇぇええ!!おこですか!?おこですよね!!

「なんとか言いなさいよ!!」

「はい!!縦ロールがお似合いだと思います!!!」

ギロっと睨みつけてくる舞璃花様。

私は背筋をピンッと伸ばし史上最高とも言える返事をした。

「ふふん ♪ 当たり前でしょ!私に似合う髪型にしたんだから~・・・って、そうじゃないわよ!」

初めは自慢げに話していたけれど、はっとした瞬間どこからか扇を出しビシッと私に突きつけて言った。

「私が聞きたいのは髪型の事じゃなくてなぜ!貴女が!雪都様とあんなに近くで親しげに話すことが出来るんですの!?」

くわっと目を開きそう言う舞璃花様。

「え、いや、そ、その。」

その迫力に気圧されながら私は1歩後ろに下がる。

「なんでですの?」

1歩下がったと同時に舞璃花様も1歩近づく。

「あの、だから、その、えっと~・・・。」

じーっと見つめてくる舞璃花様。

私は意を決して口を開く。

「と、とと、ととと、友達、だから、ですっ!」

噛んだり声震えちゃったけどなんとか言えた。

「友達・・・ですって?」

信じられないというような顔をする舞璃花様。

???な、なんでそんな顔をするんだ?

「本当に・・・友達なんですの?本当に??」

困惑した顔で見つめて聞いてくる舞璃花様。

私は疑問に思いつつ頷く。

「え、でも、親しそうにしていらしたし。それに・・・いえ。なんでもありませんわ。」

下を向きながら1人つぶやいていたと思ったら顔を上げてこちらを見つめる舞璃花様。

「友達・・・ですのね。目障りですけど、なら仕方ありませんわね!!近づくなという方が難しいですもの。それは許してあげますわ!!」

ドヤ顔をキメる舞璃花様。

「ほぉ・・・ありがとう、ございます?」

首をかしげつつお礼を言う。

お礼を言うものなのかはよく分からないけど・・・。

「まあ、その、そこでひとつ貴女に頼みたいことがあるのですがよろしいかしら?」

少し恥ずかしそうに言う舞璃花様。

・・・ふむ。もしかして雪都様への告白を手伝って欲しいとかかな?

告白の手伝いって言っても何をすればいいんだろう??

「わ、私と仲良くなってはくれませんか??」

恥ずかしそうに放った言葉はまさかのものだった。

その言葉に私は一瞬固まる。

え、何故?

えぇぇなんでー???

普通目障りな人と仲良くなろうなんて思うかな?

予想外すぎてびっくりした。

「なぜ、そんなに驚くんですの?」

不思議そうに聞いてくる舞璃花様。

「え、あ、いや・・。だって、その、普通目障りな人と仲良くなろうなんて思わないんじゃないかと思いまして・・・。」

素直に疑問に思ったことを言う。

「まあ、確かに普通は仲良くなろうなんて思わないわ。でも、貴女は私のライバルになるのだから仲良くならなくてはと思ったのよ!!それに、雪都様に少しでも近づく勇気にもなるかもしれないと思ったからですわ!!」

ドヤ顔をしながら言う舞璃花様。

ライバルとかはよく分からないけれど・・・舞璃花様は多分それだけ雪都様が好きなのかもしれない。

近づくのも緊張して近づけないのかもしれない。

「えっと、仲良くなってくれるのは嬉しいです!!ありがとうございます!そ、それと、舞璃花様が雪都様を思う真っ直ぐでいて一途なところ素敵だと思います。」

そう言って笑いかける。

「ありがとうございますわ。これからよろしくお願い致しますわ。それではまた。」

強気な印象を持ちつつ笑い掛けてくれた。

その後優雅に立ち去った舞璃花様。

私は見送りつつ息を吐く。

始めは何言われるか不安だったし、もしかしたら罵倒されてしまうんじゃないかと思ってたけど・・・あんな感じの人もいるんだな。

この社会結構恋愛とかいういざこざは面倒くさい世界だったりする。

今日は運良く仲良くなれただけ。

またこんな風になれる保証はないし、こんなことは滅多に起きない。

だからもっと強くなっていかなきゃな~。

うぅぅぅでも、人見知りとかは直せそうにないかも・・・。

そんな不安も抱きつつ空を見上げる。

月が綺麗に輝き星もところどころ輝いている。

少しだけ、元気を貰えた気がした。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました

三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。 助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい… 神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた! しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった! 攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。 ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい… 知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず… 注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

悪役令嬢を拾ったら、可愛すぎたので妹として溺愛します!

平山和人
恋愛
転生者のクロエは諸国を巡りながら冒険者として自由気ままな一人旅を楽しんでいた。 そんなある日、クエストの途中で、トラブルに巻き込まれた一行を発見。助けに入ったクロエが目にしたのは――驚くほど美しい少女だった。 「わたくし、婚約破棄された上に、身に覚えのない罪で王都を追放されたのです」 その言葉に驚くクロエ。しかし、さらに驚いたのは、その少女が前世の記憶に見覚えのある存在だったこと。しかも、話してみるととても良い子で……? 「そういえば、私……前世でこんな妹が欲しかったって思ってたっけ」 美少女との出会いが、クロエの旅と人生を大きく変えることに!?

処理中です...