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6章:8歳になったらしい

61話:1000年前の事件についてⅡ

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呪いをかけられた美結さんはそのまま倒れた。

結恵さんと周りにいた精霊達は驚き固まった。

結恵さんに至っては目の前で起きた事にあまり理解をしていなかった。

結恵さんはフラフラとした足取りで美結さんに近づき声をかける。

勿論、美結さんは返事をしない。

結恵さんはポロポロと涙を零した。

苦しそうな表情で静かに涙を流す結恵さん。

そんな結恵さんを見ていられなくて精霊の一人は結恵さんを元の世界へ返した。

そして、精霊達は美結さんに呪いをかけた男の子を睨んだ。

男の子は悲しむ様子もなくただただ笑っていた。

その笑いはあまりにも楽しそうだった。

そして言った。

「あーあ。僕の大好きな精霊王がまさか他の奴と契約してたなんて・・・ははっ笑っちゃうよねー。」

眠る美結さんを愛おしそうに見つめる男の子。

その姿は本当に美結さんを愛していたのだと伝わった。

だが、次の瞬間男の子は愛おしそうな表情から一変蔑んだ表情に変わった。

「はあ、精霊王はもう喋れないし・・・君たちみたいな価値のない精霊なんかいらないよね。・・・ねえ、消えてくれない?って言っても手持ちがないし明日また来るよーじゃあねー。」

そう言って男の子は帰って行った。

男の子の雰囲気はとても怖く黒い嫉妬と憎しみがこもっていた。

そして、そこにいる精霊達は皆自分たちはもう終わるのだとそう悟った。

男の子が帰っていったあと紅葉達は皆で協力して透明な棺の中に美結さんを入れた。

結恵さんと美結さんのお気に入りの場所だった所に美結さんの棺を置いた。

その日は精霊界の皆で嘆き悲しんだという。

そして、ある者は男の子を恨みある者は自分の未熟さを嘆き自殺したという。

それほど精霊王が眠りについたことは精霊たちに影響を及ぼした。

そして次の日。

男の子は精霊界に姿を現した。

男の子が纏うオーラは最初にあった時より黒く染まり精霊達は怯えた。

そして、男の子は精霊を拘束し契約の玉とよく似たいしを精霊たちに投げた。

石から眩いほどの光が溢れ次の瞬間石の中に紅葉達は閉じこめられた。

だけど、何人か攻撃が当たらず逃げ切ったおかげで精霊界は消えずに済んだ。

でも、何人もの精霊が犠牲となった。

そして、助かった精霊達は犠牲になった精霊たちのために石碑を建てもうこんな事件が起こらないように扉を本当に魔力が強いものにしか見えないようにした。

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

「て感じかしら。なにか質問はある?」

つらそうな表情をしつつもニコッと笑う紅葉。

紅葉の表情に苦しくなるけれど私も上手く笑えない。

乾いた喉を潤すため紅茶をひと口飲む。

そして、口を開く。

「えっと・・・大体のことはわかった。でも、なんで、契約の玉と似た石があるんだろう?それに、曖昧で上手く覚えてないけど・・・確かその男の子は閉じ込められた石の中にも入ってきたんだよね?でも、どうやって?」

私は見た事ないけれどそんな石があったなんて驚きだ。

それに、石の中に閉じこめられた状態で一体どうやってき害を加えられたんだろう?

しっかり会って危害を加えられたんだしなにかルートがあったんだろうけれど。

謎だ。

「そう、ね。何故璃杏ちゃんの世界に似た石があるのか・・・私達もよくわかっていないのだけれど、精霊界と人間界の境目にある石は大体契約の玉と似たような石になるっていう噂は聞いたわ。
あとは、人間界に来た精霊が通った道に落ちていた石がなったりとかするらしいわ。」

ほおー。

私はこくこく頷く。

「あと、閉じこめられた石の中にどうやって入ってきたのか?よね。多分、夢を利用して入ってきたんだと思うわ。夢の中だとしても魔力の強い人は使いたいって思えば発動できるのよ。」

それで危害を加えたってわけですか。

よく考えるなー。その男の子。

「辛いことなのに教えてくれてありがとう。あ、そういえばその男の子の名前ってなんて言うの?」

結恵さんの日記帳に名前が書かれていたけれど黒く塗りつぶしてあって分からないままだった。

「名前・・・名前ね。えっと、確か・・・・・・狗社隼真くろしろはやまだった気がするわ。」

狗社隼真・・・なんか、すごい名前だな。

「そうだ。ねえ、璃杏ちゃん。光の精霊王様見る?」

狗社隼真のことを考えているとそう提案してきた紅葉。

光の精霊王様・・・ってことは美結さん?

「見たい!けど、いいの?辛くならない?」

私は紅葉が辛くなる顔をあまり見たくない。

誰かが辛かったり苦しそうな表情をするとこっちまで悲しくなる。

やっぱり一番いいのは楽しい嬉しいっていう笑顔だよねー!

「ええ。いいわよ。会いに行かないとこの事件が起きたことから目を背けてしまいそうでそれが逆に怖いの。」

そう言って笑う紅葉。

辛そうではあったけれどどこか覚悟を決めた表情をしていた。

心做しかかっこいいと思ってしまった。

「それじゃあ、行きましょうか璃杏ちゃん。」

そう言って歩き出す紅葉。

私もその後に続いて歩き出した。
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