上 下
52 / 123
6章:8歳になったらしい

51話:お父様のお話

しおりを挟む
お母様が目を覚まし病気も無事完治してから2年が経ち、私は順調に歳を重ね8歳になった。

私が目を覚ました翌日にお母様が目を覚ましたことに安堵したのもつかの間。

陽夏凛さんと双美さんに『たとえ怒っていても口調は荒らげてはいけませんよ』と黒いオーラを放ちながら言い聞かせてきた。

正直、前世の記憶を持ってるからお嬢様口調が分からない私は敬語で話しているけど敬語も危うい私には無理!とか思って言おうとしたけど頷くしか生きる道がなかった・・・・・・怖かった。

光魔法を使って助かったお母様は様子見のため一年間はあまり外に出られなかった。

けれど、検査をしていくとお母様の病気は完治していることが判明し屋敷中の人達が驚いていたことを今でも覚えている。

私も結構驚いた。

そして、リハビリも兼ねて少しずつ外に出て一緒に散歩なんかをしたりしていき今では沢山遊んでもらっている。

あと、光魔法の練習は続いている。

この前の光魔法のお礼を紅葉に言ったらあれは私の実力だったと言ってくれた。

なんでも、魔力を全解放していて練習してきたおかげで不安定ながらも助けたいという強い気持ちがありなんとか安定していてお母様を助けられたらしい。

いやー本当によかったー!

そのおかげで屋敷でお母様やお父様に使用人達と紅葉と一緒に穏やかに過ごしていく毎日。

そんなことが続き今日の朝ご飯を食べた後にお父様から執務室に呼びだされた。

お父様の執務室まで陽夏凛さんと歩く。

「陽夏凛さん。私何かしちゃったっけ?光魔法の件についてはもう説明したし・・・私何もしてないよね!?あれ?気づかないうちになにかしてたのかな!?」

私は不安のあまり陽夏凛さんに不安をぶつける。

そんな私に陽夏凛さんは苦笑いをしながら言う。

「落ち着いてください!璃杏様は何もしていないと思いますよ。明日のことについて話があるんだと思いますよ。」

明日のことについて?・・・・・・明日って、何かあったっけ?

んー?きっと何かあるんだよ。陽夏凛さんが言ってるんだし。

陽夏凛さんが知ってたし。

よく考えるんだ璃杏!!

えっと・・・朝ごはんの時にお父様がなにか話しかけていた気がする。

「?璃杏様どうなさいました?考え込んで。」

不思議そうな顔をする陽夏凛さんに私は問いかけた。

「ひ、陽夏凛さん・・・もしかしてお父様朝ごはん食べている時に何か言ってた?明日のことについてとか。」

「え?はい。明日は王城で魔力の強い子だけを集めて魔力検査するからそのことについて話すねーと呑気そうに言ってましたよ。」

そうでしたかー!!!

「ありがとう!陽夏凛さん!!!」

私は陽夏凛さんの手をガシッと握り上下に振る。

身長が少しずつ伸びているおかげで今は陽夏凛さんのおへそぐらいまで身長がある。

陽夏凛さんは身長が高め(166cm位)だから将来陽夏凛さん位まで伸びたい。

前世では152cmで止まっちゃったからもう少し伸びたかった。

それに、本当に教えてくれた陽夏凛さんには感謝だ!!

いやー今日のポテトサラダみたいなサラダが美味しくて夢中で食べてたからお父様の話全部聞き流してた。本当にごめん。お父様。

「は、はい!!そ、それより手を離していただけたら嬉しいです!!!」

少し困った顔をする陽夏凛さん。

はっ!困らせてしまった!!

「ご、ごめんなさい陽夏凛さん。」

私は頭を下げて謝る。

「いえ!そんな、頭を下げるほどのことではっ!それに、早く羽流様の所へ行きましょう!!」

そう言って私の顔を上げさせる陽夏凛さん。

「うん。そうだね。」

私と陽夏凛さんは再び歩き出した。

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

お父様の執務室につきドアをノックする。

コンコンッ

「どうぞ。」

お父様の爽やかボイスを合図にドアを開ける。

「失礼します。お父様。」

私は一礼してからお父様の執務室へ入る。

私が来たことを確認するとお父様はにこーっとそれはそれは嬉しそうな表情をした。

ほぉー凄いなー。さっきまでキリってしてたのにその面影が残っていない!!

「あ、来たー!じゃあ、そこに座って。」

お父様は執務の机から離れお客様と話す席に私を促した。

私はソファーに近づきお父様の正面のソファーに座る。

陽夏凛さんは私の左斜め後ろに立っている。

お父様の左斜め後ろには楓斗さんが立っている。

にしても・・・ソファーがふっかふかだなー!!

気持ちー!これならベッド行かなくても寝れそう。

ふかふかソファーを堪能しているとお父様が話し出した。

「璃杏。朝話した王城でやる魔力検査のことなんだけどね。」

にこにこ笑顔から一変真剣な顔付きになったお父様。

私も姿勢を正しお父様の話を聞く。

「璃杏の魔力を全部解放するんだけどその時に光の精霊を連れてきて欲しいんだって。」

お父様の言葉に疑問を覚える。

「?何でですか?魔力検査なんだよね?」

魔力検査は多分魔力だけを測るためだと思うし精霊を連れてくる必要は無いと思う。

「うん。魔力を測るだけだけど今まで精霊と契約している人はいないから興味があるんだと思うよ?第三王子は。」

第三王子・・・・・・あの甘えん坊王子だと有名な人か。

第三王子───星宮零維ほしみやれいは可愛らしい顔をした甘えん坊の素直な子だ。

個人的には我儘な奴だとしか思っていないけれど。

そうか、ほとんどないと言ってもいいほど甘えない第二王子の礼央れお様と違い零維様は上記のような人だから甘やかしたい王様はかなり溺愛しているらしい。

それに、王族が言っていることに逆らってはいけないから答えはひとつ。

「連れて行ってもいいですけど・・・・・・紅葉は見せ物じゃないです。」

私は不満たっぷりの視線をお父様に送る。

そんな私の態度にお父様は苦笑する。

「ん~僕も正直見てみたい気持ちはあるからなんとも言えないけど・・・その、精霊の気持ちもちゃんと組まないととは思っているよ?精霊だって感情はあるわけだしそこの所は璃杏から聞いてくれないかな?流石の王族も精霊には叶わないからね。」

お父様の言葉に私はハッとする。

そうだ。紅葉の気持ちも考えないと。

でも、紅葉来れるかな?精霊界は直ったみたいだしその分仕事があるらしいけどもしかしたら来れない可能性もあるよね。

「分かりました!紅葉に会えたら聞いてみるね!!!」

私はニコッと笑う。

「話は終わりですか?」

そう聞いた私にお父様は爽やかな笑顔を向ける。

「うん。話を聞いてくれてありがとう。じゃあ、よろしくね璃杏。」

「うん!じゃあ、失礼します。」

お父様の言葉に立ち上がりそのまま挨拶をして私は部屋を出た。

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

バタンッ

執務室の扉が閉まる。

「ふぅ・・・まさか契約しているとはね。」

肩の力を抜き少し息を吐いて言い出す羽流。

「ん?あのネックレスに元々精霊が入っていたんだろ?契約するのは普通じゃないのか?」

首を傾げて聞く楓斗。

「まあ、確かにそうかもしれないけれど普通はありえないんだよ。精霊だって見えるものでは無いし契約だって相手から好かれない限りは契約はもちろん会話だって事務的なことしか会話ができない。」

「へぇー。そういうものなのか。あれ?でも、羽流は精霊見えないだろ?何でネックレスの玉に精霊がいるって知ってたんだ?」

またもや首を傾げて聞く楓斗。

そんな楓斗に苦笑しながら答える。

「それは、あのネックレスを買った店の主から聞いたんだ。半信半疑で一応僕はネックレスの玉に魔法を抑えられる魔法をかけたはずだったけど璃杏に渡した数日後にその魔法は消えていた。そのネックレスには璃杏に渡すまで感じていた僕の魔法が感じられなかったんだ。」

少し眉を顰める羽流。

その様子は何処か辛そうだった。

楓斗は目を見開き驚いていた。

「そんな事ってあるのか?」

「いや、分からないけれど現にそうなっているから認めるしかない。王様の命令って言うのと一応再確認したくて精霊のことを言ったらまさか名前で返ってくるとは思わなかったよ。」

肩を竦める羽流。

羽流の様子はもうどうすればいいのかわからないと言った様子だった。

「まあ、そうだな。璃杏様はもしかしたら俺達が考えている以上にすごいものを持っているのかもな。」

なにか考えるふうに言う楓斗。

「いや、僕の娘は確実にすごいものを持っているよ。・・・・・・その分、辛い思いをすることになるだろうけど。」

そう言った羽流の顔は本当に辛そうだった。

羽流の頭の中には2年前の扇木和羽の言葉が頭をよぎる。

妻を罵倒した後に娘のことをゴミのような目で見つめたあと吐き捨てるように言ったあの言葉がどうしても忘れられなかった。

“化け物” “忌み子”

そう言われた璃杏は平気そうにはしていたが羽流には分かった。

璃杏が酷く悲しそうな顔をしていたことを。

そんなふたりを助けられなかった自分にすごく後悔をしている。

だから、二人を助けられる強い自分にならなくてはと思ってしまう。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました

三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。 助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい… 神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた! しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった! 攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。 ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい… 知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず… 注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

悪役令嬢を拾ったら、可愛すぎたので妹として溺愛します!

平山和人
恋愛
転生者のクロエは諸国を巡りながら冒険者として自由気ままな一人旅を楽しんでいた。 そんなある日、クエストの途中で、トラブルに巻き込まれた一行を発見。助けに入ったクロエが目にしたのは――驚くほど美しい少女だった。 「わたくし、婚約破棄された上に、身に覚えのない罪で王都を追放されたのです」 その言葉に驚くクロエ。しかし、さらに驚いたのは、その少女が前世の記憶に見覚えのある存在だったこと。しかも、話してみるととても良い子で……? 「そういえば、私……前世でこんな妹が欲しかったって思ってたっけ」 美少女との出会いが、クロエの旅と人生を大きく変えることに!?

処理中です...