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5章:5歳になったらしい

48話:陽夏凛への贈り物

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目が完全に覚めた時窓の外は日が昇り始めていた。

布団から起きあがり冬用のドレスの上から暖かい上着を羽織る。

ドアを少し開いて誰もいないことを確認してからゆっくりとした足どりで廊下を歩く。

数分歩いて外に出たあと森へと向かう。

少し森の中は薄暗いけれどこんな朝早くから森の中に入ったことは無かったからかとても新鮮で空気がみずみずしくて美味しい。

森の奥へどんどん入っていき何十分くらいか歩くと開けた場所に出る。

光の魔法訓練をしている所ではなくそれよりもっと奥にある開けた場所で色々な花が咲き誇っている。

そこで少し花を摘ませてもらう。

でも、ただ摘んだだけじゃつまらないだろうから定番の花冠でもつくろうかな。

それだったら摘んだ花と陽夏凛さんに合う色の花を探そう!

花を探したり花冠を作ったりしていたらだんだんと空が明るくなってきていた。

「あっ!そろそろ陽夏凛さんが部屋に来る頃だ!!急がなきゃ。」

私は花冠を持って家の中へ急いだ。

玄関まであと少しのところで慌ただしく扉が開いた。

「あっ!璃杏様!どこにいたんですか!?探したんですよ!!もう・・・心配したじゃないですか。出かける時はしっかり声をかけてください。侍女用の部屋の中にいますので!いいですか?」

玄関から出てきたのは陽夏凛さんだった。

私を見つけた瞬間安心した表情をしたと思いきや怒った表情で叱ってきた。

「うぅぅ。ごめんなさい!陽夏凛さん。次からは声をかけれたらかけます。」

私はぺこりと頭を下げて謝る。

や、やっぱり心配掛けてしまっていた。

「はあ。でも、ちゃんと怪我もなく戻ってきてくれたので許しますよ。それで・・・その花冠を作るために朝早くから起きて部屋を抜け出したんですか?それなら朝食を召し上がったあとでも。」

怪訝な顔をして言う陽夏凛さん。

当然の反応ですよね。本当にごめんなさい。

私は反省しつつ陽夏凛さんに言う。

「陽夏凛さん。しゃがんでもらってもいい?」

「?はい。どうかしたんですか?」

不思議そうな顔をしてしゃがんでくれた陽夏凛さん。

そんな陽夏凛さんににっこりと笑って手に持っている花冠を陽夏凛さんの頭に乗せた。

うん!やっぱり似合う!!

私は上手くできたことへの満足感で心の中で小躍りをした。

「えっと・・・これは一体?」

目を見開いて驚いた顔をする陽夏凛さん。

「あげる!陽夏凛さん昨日元気なさそうだったから少しでも元気になって欲しくて陽夏凛さんに似合う花を花冠にして作ったんだ!」

私はにっと笑って陽夏凛さんを見る。

昨日より元気になってたからもしかしてお節介だったかな。

「ありがとうございます!璃杏様!大切にしますね。」

少し不安になってきていると陽夏凛さんは優しく微笑み頭を優しく撫でてくれた。

嬉しいな~それに良かった。

お節介だったかもしれないけど邪険にされなくて。

にしても・・・・・・陽夏凛さんの頭の撫で方。

ふと思ったことがあったけれど違うと思い直し頭を小さく振った。

「朝食の準備はもうすぐで整いますので上着を脱いで髪も結び直しましょうか。」

クスリと笑って言った陽夏凛さん。

そういえば適当にひとつに束ねて結んだけど髪結んだことあんまりなかったからぐちゃぐちゃになってたんだった。

そんなことを思い出しながら陽夏凛さんと一緒に部屋へと戻って行った。

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

綺麗に身支度を整えてもらい朝食の準備もできたらしいので食卓の席へと向かう。

「おはよう!璃杏!!!」

食卓の席への扉を開けた瞬間元気よく爽やか笑顔で挨拶をしてきたお父様。

この人はいつでもとても元気そうで羨ましい。

元気すぎて時々心配になる。

「おはようございます。お父様!」

私も挨拶を返し食卓の席へとつく。

お父様とお話をしながら朝食を食べる。

本当ならもう一人この席に着いているはずなんだけど。

もちろん、もう一人というのはお母様のことだ。

実は、お母様はここ数日歩けないほど体調が悪い。

持病が影響しているらしいけれどもしかしたら感染病にかかっているかもしれないらしい。

それにこっちの方にも急速に感染病が流行り始めている。

ゲームではもう少し先だったと思うけれど、ここは現実の世界だし何かしら違うところが多いのかもしれない。

実際星舞家の華美様と雪都様の性格は結構違う。

そういう違いが影響しているんだと思う。

今まではお母様のお見舞い行けたけれど今は行けなくなってしまった。

なんでも、お母様が私を部屋へ入れないで欲しいと言ったらしい。

・・・・・・はっ!も、もも、もしかしてっ!お母様、私のこと嫌っちゃったのかな!?

頻繁に行き過ぎてウザがられちゃったりしたのかな!?

どうしよう!!お母様に嫌われたくないよおおお!!!

「!?璃杏顔色悪いけど大丈夫!?」

色々考えすぎて青ざめていたのだろう。

お父様が心配した顔で聞いてきた。

「全然大丈夫です。」

“体調は”と心の中で呟いておく。

精神はボロボロです。

そんなことを思いながら私は朝ご飯のサラダをちまちまと食べる。

「そっか。それならいいんだ!あんまり元気がないと僕も・・・悲しいからねっ!!うぅぅ」

そう言ってくれるお父様。ありがとう。

優しい家に生まれてよかったよ!本当に。

だけど・・・何故涙目なの!?泣かないでお父様!!

「お、お父様・・・心配してくれてありがとうございます。」

でも、心配してくれたのは本当に嬉しいのでお礼を言う。

私がお礼を言うともっと涙を目に溜めて今にも零れてきそうだった。

どうすればいいか困り果てていた時お父様の専属侍従兼秘書の鷹雅楓斗たかみやふうとさんがお父様に近づいて何かを言っている。

まあ、その何かって言うのは聞づらくて分からなかったけれどひとつだけ気になることを楓斗さんが言っていた。

『今日も白百合様の所に行くか?後、白百合様の容態が少しずつ悪くなっているらしい。あの女かなり怪しいぞ。』

とはっきりって訳では無いけれど薄々聞こえた。

そんなことを聞いて冷静でいられる私ではない!!

私は席から立ち上がり向かいにいるお父様と楓斗さんのところに近づく。

「ん?どうかしたの?璃杏。」

私はお父様を睨みつける。

「どういうことですか?なんで私は行っちゃいけないのにお父様は行けるんですか!?私もお母様のところに行きたいです!!」

私はじっとお父様の瞳を見つめる。

お父様は困惑した瞳をしている。

・・・・・・我儘すぎた。

よくよく考えてみれば感染病かもしれないのに行ったりしたらそれこそ迷惑になる!!

そ、そしたら今後一切立ち入り禁止になってしまうぅぅぅ!!!

「ご、ごめんなさい!お父様。迷惑ですよね。私が行ったら・・・。」

久しぶりに会いたかったな。

ここ数日お母様が体調が悪いからその数日間立ち入り禁止になって全然会えてない!!!

でも、迷惑かけたくないし。

はあ、諦めるしかないか。

肩をがっくり落として席に戻ろうと踵を返す。

ぽん

否、踵を返そうとしたら頭にお父様の手が乗った。

「??どうしたんですか?お父様?」

疑問に思いってお父様の方に視線をあげる。

「璃杏。白百合・・・お母様はね璃杏には元気な姿の自分を見てほしいって思っているから璃杏に苦しい姿を見せたくないんだよ。だから、決して迷惑なんて思ってないしましてや会いたくないなんて思ってないよ。だから大丈夫!安心して!でも、そっか・・・。」

私に微笑みかけて暖かい言葉をくれるお父様。

そっか、そういうものなのか。

お母様、私の事嫌ってなくてよかった。

そんなお父様の言葉に嬉しく思っているとお父様はそのままなにか考え事をしていた。

そんなお父様を見ているとお父様が急に閃いた!みたいな顔をした。

「それじゃあ、白百合のところに一緒に行こうか璃杏!」

にっと悪戯っ子のように笑って言い出したお父様。

その提案は嬉しいけど・・・。

そんな私の気持ちに気づいたのか楓斗さんが言った。

「羽流・・・様。璃杏様まだ不安なんじゃないか?白百合様に嫌な思いさせたら嫌なのかもしれないぞ。」

そう言いながら私の頭をぽんぽん優しく叩く楓斗さん。

「そっか。でも、白百合も会いたがっていたし今日の朝様子を見に行ったら少し顔色も良さそうだったし・・・少しなら、ね?はっ!ていうかなんで楓斗、璃杏にさりげなく触ってるのさ!!ずるいぞ!僕なんていっつも逃げられるしさ~。」

恨めしそうに楓斗さんを見るお父様。

でも、お母様今日は少し調子がいいみたいだから良かった。そうだよね!もしかしたら今日は会っても大丈夫かも!

「何言ってんだ?普通逃げるだろ。変態につけまとわれたら。」

私は楓斗さんにお礼を言うべく楓斗さんを見上げた。

「楓斗さんありがとうございます!」

ニコッと笑って。

「どういたしまして。でも、気にしないでください。」

少し目を見開いたあと優しく微笑みかける楓斗さん。

ぶわあ!イケメンの微笑みの破壊力っ!最強すぎる!!!

「!?100年に一度しか笑わないと言われている楓斗が・・・わ、笑った!?凄い。我が家の娘凄すぎる。」

何かお父様が言っているけれど何を言っているのかさっぱりわからなかった。

そうだ!お父様にもお礼を言わなきゃ!

私はお父様に近付く。

「お父様。ありがとうございます!!」

ニコッと満面の笑みで笑う。

「う、うん!どういたしまして!璃杏!!じゃあ、ご飯食べたらお母様のところに行こうか。」

お父様もニコリと微笑み返してそういった。

「はい!」

私は急いで席に戻り早めにご飯を食べ終えた。

「お父様!早くお母様のところへ行こう!!」

お父様に近づき手を引っ張る。

お母様に会えると思うと凄く嬉しい!!!

「う、うん!そうだね行こうか。」

お父様が席から立ち上がり歩きだそうとしたまさにその時だった。

バアアン!!

扉が勢いよく開いた。

そこから慌てた様子の若手の侍従が出てきた。

「どうかしたのか?」

怪訝そうな顔で聞く楓斗さん。

そんな楓斗さんに少し怖気づきながらもしっかりした口調で話し出した。

「あ、あのっ!大変です!!白百合様の容態が悪くなっていって、その、体は生きているんですが・・・・・・白百合様が目を覚まさなくなりました!!」

そう、若手侍従さんが口にした言葉は信じられないものだった。
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