上 下
17 / 33

9.5話:記憶を失くした悪女 ④ 【ノアside】

しおりを挟む
リティー・ラグリントは、エレミラ様から疑いの眼差しでもう一度本当かどうか聞かれていた。

「あ、はい!めっちゃ耳かっぽじって聞いてました!!!!」

数秒間の沈黙の後リティー・ラグリントは勢いよく答えた。

「聞いてなかったらしいので、もう一度エレミラ様からお話された方がよろしいかと思います。」

リティー・ラグリントの答えに、少しムカついたのでエレミラ様に告げ口をした。

そうしたら、リティー・ラグリントは絶望した顔で俺の方を振り向いた。

今までのラリア様に対しての報いだと思えばいいと思って鼻で笑った。

その後は、エレミラ様から起こした出来事とラグリント夫妻と俺とラリア様が、1人ずつリティー・ラグリントに言葉を向けた。

俺は今までラリア様にしてきたことがどうしても許せないでいる。

態度が変わっても今まで自分がしてきたことは変わらない。それを背負っていかなければいけない・・・暗殺で人を殺したという事実のように。

ラリア様は相変わらずだった。

リティー・ラグリントは俯いて掌を握りしめていたかと思ったら、ラリア様を真剣に見つめ出した。

なにかするのでは無いのかと警戒していたが、そんなことはなく、床にうつ伏せで蹲って両手を床に着けた見たことの無いポーズで、謝っていた。

これにはこの部屋にいたラグリント夫妻、ラリア様、俺は驚いた。

「ラリアちゃん!!!私、リティー・ラグリントとして、ラリアちゃんを今まで傷つけたこと・・・心から謝ります!!!本当にごめんなさい!!!!人としてやっちゃいけないこと、今までしてきて辛い思いさせて、ごめんなさい!!・・・き・・・嫌われても仕方ないことしてきたのに・・・た、大切に思っでぐれ"であ"り"がどう"!!!」

震えた泣いている声で、ラリア様にリティー・ラグリントは謝った。

そんな姿を見たラリア様も泣いていた。

ラグリント夫妻も泣いていた。

しかし、俺は、ただただ、この人は誰なのだろうと困惑した。

・・・・・・やっぱり納得ができない。

記憶を失くしただけで、あんな奇怪な言動を、そして、頑なに嫌っていたラリア様に対して謝ることが出来るのか疑問で仕方なかった。

もはや別人なのではないかと思えてならない。

「ラリアちゃんと、家族として、もっと仲良くなりたいと思ってます!!・・・でも・・・でも、私のしてきたことは、謝るだけじゃ許されないから・・・だから、だから・・・!!」

リティー・ラグリントの変わりようについて考えていると、リティー・ラグリントが素早く立ち上がってなにかを言おうとしていた。

そして、そのまま執務室の扉まで走り、思いっきり開け放った。

バアアン!

「私!!!!穢れを無くすために!滝行してきます!!!!!!!!」

そう叫んでリティー・ラグリントは執務室を去って行った。

「「「「えっ・・・。」」」」

執務室に残されたラグリント夫妻、ラリア様、俺はただ唖然とリティー・ラグリントが去って行った扉を見た。

俺はただただ疑問が残った。

・・・・・・・・・滝行ってなんだ?

そんなことを思っていると、ラグリント夫妻が慌てだしているのに気づいた。

「ど、どうしましょう!?アシェル様!リティーちゃんが出ていってしまったわ!」

エレミラ様は今にも泣き出しそうな顔でラグリント公爵に言う。

かく言うラグリント公爵も、自分の子供のこととあってとても青ざめている。

「ノア!リティーを追いかけなきゃ!!」

そう言ってラリア様は執務室を出て行こうとするのを腕掴んで止めた。

「追いかけるのはいいですが、あの速さだと、もう見えなくなっていると思うので、せめて、二手に分かれましょう。」

俺が提案を出すと、ラグリント夫妻も頷いて、子供だけでは対処出来ないこともあるかもしれないからと、ラリア様とエレミラ様、俺とラグリント公爵でリティー様を探すことになった。

そして、俺達は中庭に来たのだったが・・・。

「あの人は一体・・・何をしているんだ。」

俺が目にしたのは、噴水の湧き出て流れる水を頭から受けているリティー・ラグリントの姿だった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ

藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。 そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした! どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!? えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…? 死にたくない!けど乙女ゲームは見たい! どうしよう! ◯閑話はちょいちょい挟みます ◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください! ◯11/20 名前の表記を少し変更 ◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更

見ず知らずの(たぶん)乙女ゲーに(おそらく)悪役令嬢として転生したので(とりあえず)破滅回避をめざします!

すな子
恋愛
 ステラフィッサ王国公爵家令嬢ルクレツィア・ガラッシアが、前世の記憶を思い出したのは5歳のとき。  現代ニホンの枯れ果てたアラサーOLから、異世界の高位貴族の令嬢として天使の容貌を持って生まれ変わった自分は、昨今流行りの(?)「乙女ゲーム」の「悪役令嬢」に「転生」したのだと確信したものの、前世であれほどプレイした乙女ゲームのどんな設定にも、今の自分もその環境も、思い当たるものがなにひとつない!  それでもいつか訪れるはずの「破滅」を「回避」するために、前世の記憶を総動員、乙女ゲームや転生悪役令嬢がざまぁする物語からあらゆる事態を想定し、今世は幸せに生きようと奮闘するお話。  ───エンディミオン様、あなたいったい、どこのどなたなんですの? ******** できるだけストレスフリーに読めるようご都合展開を陽気に突き進んでおりますので予めご了承くださいませ。 また、【閑話】には死ネタが含まれますので、苦手な方はご注意ください。 ☆「小説家になろう」様にも常羽名義で投稿しております。

めんどくさいが口ぐせになった令嬢らしからぬわたくしを、いいかげん婚約破棄してくださいませ。

hoo
恋愛
 ほぅ……(溜息)  前世で夢中になってプレイしておりました乙ゲーの中で、わたくしは男爵の娘に婚約者である皇太子さまを奪われそうになって、あらゆる手を使って彼女を虐め抜く悪役令嬢でございました。     ですのに、どういうことでございましょう。  現実の世…と申していいのかわかりませぬが、この世におきましては、皇太子さまにそのような恋人は未だに全く存在していないのでございます。    皇太子さまも乙ゲーの彼と違って、わたくしに大変にお優しいですし、第一わたくし、皇太子さまに恋人ができましても、その方を虐め抜いたりするような下品な品性など持ち合わせてはおりませんの。潔く身を引かせていただくだけでございますわ。    ですけど、もし本当にあの乙ゲーのようなエンディングがあるのでしたら、わたくしそれを切に望んでしまうのです。婚約破棄されてしまえば、わたくしは晴れて自由の身なのですもの。もうこれまで辿ってきた帝王教育三昧の辛いイバラの道ともおさらばになるのですわ。ああなんて素晴らしき第二の人生となりますことでしょう。    ですから、わたくし決めました。あの乙ゲーをこの世界で実現すると。    そうです。いまヒロインが不在なら、わたくしが用意してしまえばよろしいのですわ。そして皇太子さまと恋仲になっていただいて、わたくしは彼女にお茶などをちょっとひっかけて差し上げたりすればいいのですよね。    さあ始めますわよ。    婚約破棄をめざして、人生最後のイバラの道行きを。       ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆     ヒロインサイドストーリー始めました  『めんどくさいが口ぐせになった公爵令嬢とお友達になりたいんですが。』  ↑ 統合しました

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

【完結】なぜか悪役令嬢に転生していたので、推しの攻略対象を溺愛します

楠 結衣
恋愛
魔獣に襲われたアリアは、前世の記憶を思い出す。 この世界は、前世でプレイした乙女ゲーム。しかも、私は攻略対象者にトラウマを与える悪役令嬢だと気づいてしまう。 攻略対象者で幼馴染のロベルトは、私の推し。 愛しい推しにひどいことをするなんて無理なので、シナリオを無視してロベルトを愛でまくることに。 その結果、ヒロインの好感度が上がると発生するイベントや、台詞が私に向けられていき── ルートを無視した二人の恋は大暴走! 天才魔術師でチートしまくりの幼馴染ロベルトと、推しに愛情を爆発させるアリアの、一途な恋のハッピーエンドストーリー。

乙女ゲームの悪役令嬢は生れかわる

レラン
恋愛
 前世でプレーした。乙女ゲーム内に召喚転生させられた主人公。  すでに危機的状況の悪役令嬢に転生してしまい、ゲームに関わらないようにしていると、まさかのチート発覚!?  私は平穏な暮らしを求めただけだっだのに‥‥ふふふ‥‥‥チートがあるなら最大限活用してやる!!  そう意気込みのやりたい放題の、元悪役令嬢の日常。 ⚠︎語彙力崩壊してます⚠︎ ⚠︎誤字多発です⚠︎ ⚠︎話の内容が薄っぺらです⚠︎ ⚠︎ざまぁは、結構後になってしまいます⚠︎

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

処理中です...