悪役令嬢によるヒロイン幸せ計画!

海亜

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9.5話:記憶を失くした悪女 ③【ノアside】

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ラリア様に拾われて、この1年で気づいたことが3つあった。

1つ目、ラリア様が“家族” “姉妹”というものに執着していること。

2つ目、リティー・ラグリントのラリア様に対する態度と行動が日に日に悪化していること。

最後に、リティー・ラグリントに対して俺は酷く嫌悪感を抱いているということだった。

ラリア様に対しての数々の嫌がらせや、下手をしたら大怪我をさせるかもしれない行動をとるリティー・ラグリントを、俺はずっと悪女として見てきた。

しかし、高熱を出して寝込んだリティー・ラグリントのお見舞いに行くラリア様に、着いて部屋に行った時だった。

ラリア様がリティー・ラグリントが眠るベッドに近づこうと1歩を踏み出した瞬間、リティー・ラグリントは叫びながら飛び起きた。

その後の、リティー・ラグリントの様子は誰がどう見てもおかしい状況だった。

ラリア様に対して、嫌悪感を向けるどころかむしろどこか好意的だと思われる態度というか、視線というかを向けている。

そして、言動がいつものリティー・ラグリントとは違う。

というより、令嬢としての品が無くなっているようだった。

庶民・・・に近いような気がする。

それにしては、行動が奇怪すぎるが・・・。

何故床に頭をぶつけるんだ。

はっきり言ってドン引きだ。

頭がおかしい。

何故今までラリア様に対して酷いことをしてきたというのに、今更好意的な視線を向けるのか?

なにか、企んでいるのか?

俺はリティー・ラグリントに対してそんな疑った思考をした。

ラリア様があまりにも困っていたので、リティー・ラグリントの首根っこを掴んで止めさせたが、俺を見た瞬間倒れた。

睨んだ自覚はあったが、倒れるほどでは無い・・・と思う。

いや、それにしては幸せそうに気絶をしている。

俺はその後ルスターさんを呼びに行き、リティー・ラグリントはまた寝込んだ。

一応ルスターさんとラグリント夫妻には、リティー・ラグリントの様子がおかしかったことを話したが、あまり信じてはくれていないようだった。

当たり前だ。高熱を出したら性格が変わるなんて聞いたことがない。

きっと、熱に浮かされておかしな行動をとったんだろうと、俺はそう思うことにした。

しかし、リティー・ラグリントが寝込んでから4日経ち、ラリア様がお見舞いのためにリティー・ラグリントの部屋に行くのについて行った時だった。

部屋から何かを叫ぶような声が聞こえ、ラリア様がノックをしてから部屋の扉を開けた。

そこには、絨毯に寝転ぶリティー・ラグリントが居た。

あの人は・・・何をしてるんだ?

そんな疑問が頭を埋め尽くす。

リティー・ラグリントも俺達を見て、今まで見た事のない速さで立ち上がったあと、信じられないことを言った。

「だ、だだだ、大丈夫でございます!!いやーこの通り元気でございまして!?と、とと、ところでここはどこで私は誰なんでしょうかああ!?」

そう叫んでいた。リティー・ラグリントも困惑した様子だったが、俺とラリア様もその言葉に困惑した。

その後は、言動のおかしいリティー・ラグリントを連れてルスターさんの元へと歩いた。

ラリア様はルスターさんを呼びに行こうと言っていたが、今までの仕打ちもある。

だから歩かせようと言ったが、ラリア様を困らせてしまうだけで、多分俺がリティー・ラグリントにルスターさんの元へ行こうと言わなかったら、ラリア様が呼びに行っていたに違いない。

お人好しというかなんというか・・・。

ルスターさんの元へ連れていき、そこで重度の記憶喪失という結果が出た。

質問をする上で俺たちのことをルスターさんが聞いてきた時、分からないことを謝られたのは驚いた。

リティー・ラグリントの謝った姿は今まで見た事がなかったからだ。

その後はラグリント夫妻にリティー・ラグリントとラリア様と俺が執務室に呼び出され、リティー・ラグリントが高熱を出す前に起こした出来事を咎めていた。

しかし、当の本人は見ただけでも分かるくらいに意識だけをどこかに飛ばしてにやけていた。

・・・嘘だろ?・・・いや、もしかして、今までのは全部演技か?・・・・・・いや、咎められているのに、にやけているのはおかしい。

「リティーちゃん?聞いているの?」

「はっ!!はい!!もちろん!!聞いてます!!」

エレミラ様は困ったように、リティー・ラグリントに尋ねたが、それにリティー・ラグリントは背筋を伸ばして返事をした。

いや、どう考えても聞いてなかっただろ。

思わず、心の中で俺は指摘をした。
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