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9.5話:記憶を失くした悪女 ②【ノアside】
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日差しが顔に当たり、目を開いた。
その時だった。
「ねぇ。君、大丈夫?!すごく傷だらけよ!」
声をした方を見ると同い年くらいの女の子が、心配そうにこちらを覗き込んでいた。
それが、忘れもしないラリア様との出会い。
声を出そうと、口を開いたが喉が乾き上手く声が出ず、身体も思うように動かなかった。
そんな俺を見たラリア様は、俺の手を自分の肩に回してそのまま立ち上がった。
「・・・あなたのこと、絶対助けるから。だから、大丈夫。」
そう言って微笑んだラリア様に、心が救われた気がした。
ラリア様の侍女らしき人は俺を見た時驚いた顔をしたが、そのままラリア様が乗ってきたという馬車に乗せていただいた。
その時は、ラリア様が貴族だったことに驚いた。
貴族が傷だらけの、しかも、路地で倒れている人を助けるとは思えなかったからだ。
馬車の中でラリア様が自分はラグリント家の人間ではあるが、孤児院から引き取られたことを話してくださった。
孤児だったことに驚いたが、どこか納得した自分もいた。
俺も暗殺者だったことは伏せて、話せるところまで自分のことを話した。
だが、不思議なことに俺はラリア様に助けていただく以前のことを全て覚えている。
記憶を消す魔法をかけたと言っていたことも覚えている。
・・・・・・記憶を持っていることを知られるのは良くないだろうと思い、その情報は自分の中で閉じ込めておくことにした。
そのまま、大きな屋敷に到着して、ラリア様はラグリント家の専属医だというルスターさんのところに連れて行ってくださった。
身体中に傷があることにルスターさんは、眉をひそめたが、事情は何も聞こうとはしなかったので、ありがたかった。
治療や診察が終わったあと、ラリア様に連れられて、ラグリント夫妻に挨拶をし、最初は怪我が治るまでということで、屋敷にいさせていただけることになった。
ラグリント夫妻は俺が見てきた貴族とは違い、優しく、そして気品に溢れており、それでいて何者にも動じないそんな印象をもった。
ラグリント家で働く人たちも優しく、そして、この屋敷で働くことを誇らしく思っているようだった。1人のことを除いては・・・。
リティー・ラグリント。
ラグリント公爵家の実子であり、ラリア様の義姉である。
エレミラ様の容姿と髪色を受け継ぎ、瞳はエレミラ様の濃い緑色の瞳とラグリント公爵のクリーム色の瞳を混ぜたペリドットの宝石のような瞳をしていた。
初めてリティー・ラグリントと会ったのは、ラリア様と廊下を歩いているときだった。
ラリア様はリティー・ラグリントを見つけてとても嬉しそうにしていた。
その時は血の繋がりはなくても仲のいい姉妹なのかなと思っていた。
しかし、そんな考えを打ち破るように、声をかけたラリア様にリティー・ラグリントは嫌悪感を表してラリア様を睨みつけていた。
「リティー。今日から傷が癒えるまでこの屋敷で過ごす子なの。」
嫌悪感丸出しのリティー・ラグリントに気がついていないのか、それとも気にしないようにしているのか、ラリア様はそう話しかけた。
しかし、リティー・ラグリントはラリア様をそのまま強く押して、忌々しそうに睨みつけた。
「私に関わらないでって言ってるじゃない!!!!あなたがどんな人を拾ってこようがどうだっていいのよ!!!あなたみたいなのが、ひとりふたり増えたところで、私には関係ないわ!!!!」
そう叫んだあと、踵を返しそのまま去って行った。
ラリア様を見ると、リティー・ラグリントが去っていく方を寂しそうに見つめている。
嫌悪感も憎悪もなくただただ悲しそうに・・・。
「それじゃあ、あなたが休む部屋に案内するね!」
困ったような笑顔をしながら、振り向いて俺にラリア様は言った。
なぜあんな態度を取られたのに、嫌悪感を抱かないのか不思議でならなかった。
それから傷が治るまでの間、ラグリント家でラリア様と主に行動することが多く、よく話す仲となった。
日々を過ごす中で、ラリア様が名前が無いと不便ということで、“ノア”と俺の名前をつけてくださった。
初めての名前。しかも、俺を助け救ってくれた人がつけてくださった名前。
心が温まり、嬉しさが募った。
ラリア様と過ごす時間はとても楽しく幸せで、この人を守りたいと強く心に思った。
傷が完治した頃、俺はラグリント夫妻に頼み込んで、「屋敷内で1番強い騎士と戦って勝てたらラリア様の従者兼騎士として雇う」という条件で屋敷にいさせていただく許可を得た。
俺は今まで暗殺者として培ってきた能力を活かして、屋敷内で1番強い騎士に見事に勝った。
それを見ていたラグリント公爵にお褒め頂き、ラリア様の従者兼騎士として雇っていただくこととなった。
その事をラリア様に報告をしたら、とても喜んでくださったことはいい思い出だ。
その時だった。
「ねぇ。君、大丈夫?!すごく傷だらけよ!」
声をした方を見ると同い年くらいの女の子が、心配そうにこちらを覗き込んでいた。
それが、忘れもしないラリア様との出会い。
声を出そうと、口を開いたが喉が乾き上手く声が出ず、身体も思うように動かなかった。
そんな俺を見たラリア様は、俺の手を自分の肩に回してそのまま立ち上がった。
「・・・あなたのこと、絶対助けるから。だから、大丈夫。」
そう言って微笑んだラリア様に、心が救われた気がした。
ラリア様の侍女らしき人は俺を見た時驚いた顔をしたが、そのままラリア様が乗ってきたという馬車に乗せていただいた。
その時は、ラリア様が貴族だったことに驚いた。
貴族が傷だらけの、しかも、路地で倒れている人を助けるとは思えなかったからだ。
馬車の中でラリア様が自分はラグリント家の人間ではあるが、孤児院から引き取られたことを話してくださった。
孤児だったことに驚いたが、どこか納得した自分もいた。
俺も暗殺者だったことは伏せて、話せるところまで自分のことを話した。
だが、不思議なことに俺はラリア様に助けていただく以前のことを全て覚えている。
記憶を消す魔法をかけたと言っていたことも覚えている。
・・・・・・記憶を持っていることを知られるのは良くないだろうと思い、その情報は自分の中で閉じ込めておくことにした。
そのまま、大きな屋敷に到着して、ラリア様はラグリント家の専属医だというルスターさんのところに連れて行ってくださった。
身体中に傷があることにルスターさんは、眉をひそめたが、事情は何も聞こうとはしなかったので、ありがたかった。
治療や診察が終わったあと、ラリア様に連れられて、ラグリント夫妻に挨拶をし、最初は怪我が治るまでということで、屋敷にいさせていただけることになった。
ラグリント夫妻は俺が見てきた貴族とは違い、優しく、そして気品に溢れており、それでいて何者にも動じないそんな印象をもった。
ラグリント家で働く人たちも優しく、そして、この屋敷で働くことを誇らしく思っているようだった。1人のことを除いては・・・。
リティー・ラグリント。
ラグリント公爵家の実子であり、ラリア様の義姉である。
エレミラ様の容姿と髪色を受け継ぎ、瞳はエレミラ様の濃い緑色の瞳とラグリント公爵のクリーム色の瞳を混ぜたペリドットの宝石のような瞳をしていた。
初めてリティー・ラグリントと会ったのは、ラリア様と廊下を歩いているときだった。
ラリア様はリティー・ラグリントを見つけてとても嬉しそうにしていた。
その時は血の繋がりはなくても仲のいい姉妹なのかなと思っていた。
しかし、そんな考えを打ち破るように、声をかけたラリア様にリティー・ラグリントは嫌悪感を表してラリア様を睨みつけていた。
「リティー。今日から傷が癒えるまでこの屋敷で過ごす子なの。」
嫌悪感丸出しのリティー・ラグリントに気がついていないのか、それとも気にしないようにしているのか、ラリア様はそう話しかけた。
しかし、リティー・ラグリントはラリア様をそのまま強く押して、忌々しそうに睨みつけた。
「私に関わらないでって言ってるじゃない!!!!あなたがどんな人を拾ってこようがどうだっていいのよ!!!あなたみたいなのが、ひとりふたり増えたところで、私には関係ないわ!!!!」
そう叫んだあと、踵を返しそのまま去って行った。
ラリア様を見ると、リティー・ラグリントが去っていく方を寂しそうに見つめている。
嫌悪感も憎悪もなくただただ悲しそうに・・・。
「それじゃあ、あなたが休む部屋に案内するね!」
困ったような笑顔をしながら、振り向いて俺にラリア様は言った。
なぜあんな態度を取られたのに、嫌悪感を抱かないのか不思議でならなかった。
それから傷が治るまでの間、ラグリント家でラリア様と主に行動することが多く、よく話す仲となった。
日々を過ごす中で、ラリア様が名前が無いと不便ということで、“ノア”と俺の名前をつけてくださった。
初めての名前。しかも、俺を助け救ってくれた人がつけてくださった名前。
心が温まり、嬉しさが募った。
ラリア様と過ごす時間はとても楽しく幸せで、この人を守りたいと強く心に思った。
傷が完治した頃、俺はラグリント夫妻に頼み込んで、「屋敷内で1番強い騎士と戦って勝てたらラリア様の従者兼騎士として雇う」という条件で屋敷にいさせていただく許可を得た。
俺は今まで暗殺者として培ってきた能力を活かして、屋敷内で1番強い騎士に見事に勝った。
それを見ていたラグリント公爵にお褒め頂き、ラリア様の従者兼騎士として雇っていただくこととなった。
その事をラリア様に報告をしたら、とても喜んでくださったことはいい思い出だ。
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