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3.5話:おかしなリティー ②【ラリアside】
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切れた私の頭は血の量に反してそれほど深くはなく、消毒と治癒の魔法ですっかり綺麗に傷跡もなく治った。
「ありがとうございます。ルスターさん。」
治療をしてくれたラグリント家の専属医のルスターさんにお礼を言う。
「いえいえ。ラリア様が無事で何よりです。」
にこりと微笑むルスターさんに心が暖かくなるのを感じていると、ノアが私に近づいた。
ノアは去年、街で出会った孤児。
出会った時は傷だらけで、どうしても放っておけなくて、ラグリント家に連れて帰った。
ラグリント夫妻も驚いていたけれど、傷が治るまでということで置いてもらうことになった。
懸命に手当をして傷も綺麗に治った頃、ノアはラグリント夫妻に頼んで、私の専属従者件護衛騎士として雇われることとなった。
手当てをしていた頃に孤児という共通点もあって仲良くなったから、その時はとても嬉しかった。
ノアとの出会いを思い返していると、ノアは両手で私の頬を包み込んだ。
ノアに視線を合わせると、とても真剣な顔をしていた。
「傷が残らなくて良かった。あなたが無事で良かった。ラリア様、もうあの人に近づかないでください。傷つくあなたをこれ以上見たくない。」
苦しそうにノアは言った。
私は、ノアの手に私の手を重ねた。
「ノア。心配してくれてありがとう。でもね。私は、どんなに嫌われてもリティーと仲良くしたいの。はじめて家族という中で、できた姉妹だから大切にしたいの・・・ダメ、かしら?」
ノアの目を見つめる。
ノアの綺麗なマゼンタの瞳が揺れる。
「っ・・・俺がラリア様を守ります。だから、あの人に会う時は必ず俺も連れて行ってください。」
「ええ。ありがとうノア。」
嬉しくなってノアにほほ笑みかける。
ノアは何故か目を逸らしてしまったけれど、どうしたのかしら?
「本当にノアとラリア様は仲がいいですね。それじゃあ、私はリティー様のところに行っていきます。」
ルスターさんはそう言って椅子から立ち上がって、部屋から出ていこうとするのを、私は引き止めてしまった。
だって、いま、ルスターさんが、リティーのところに行くというのが気になったから。
「ルスターさん!リティーがどうかしたの?」
「ルスターさん・・・。」
私がルスターさんに聞くと、ノアはどこかルスターさんを責めるように名前を呼んだ。
「ああー・・・いや、ノアごめん。いやぁ、そのー・・・リティー様が、ラリア様に怪我をさせたあと、頭を押えて気絶したらしくて、だからその検査と治療に行くんですよ。」
「私も同行させて下さい!!お願いします!」
頬を掻きながら説明してくれたルスターさんに私は前のめりになりながらお願いをする。
まさか、リティーが倒れたなんて!!
「ラリア様。さすがに、迷惑になりますよ。」
ノアの言葉に私はもう一度お願いしようとした言葉を飲み込む。
「ご、ごめんなさい。検査と治療の迷惑になってしまいますよね。」
私は何も出来ない自分に落ち込む。
「あーいや、じゃあ、治療が終わったらラリア様に伝えますよ。その後に、大丈夫そうならリティー様の部屋に行ってもいいですよ。」
「ルスターさんっ!ありがとうございます!!」
ルスターさんのその言葉に私は精一杯お礼を言った。
リティー無事でいて。
私はそう強く願った。
───その頃、ルスターとノアは…
「ルスターさん。なんで、あんなこと言ったんですか!?」
ノアはルスターを睨みつける。
「うっ、いやー逆に聞くけど、ラリア様があんなに落ち込んでるのに、“絶対リティー様には会わせられない”っていえるのか?」
ルスターの言葉にノアは考える。
とても悲しそうに、眉を下げて肩を落とすラリアを思い出す。
「・・・・・・・・・言えないですね。」
「まあ、そういうことだ。」
ルスターはノアの肩に手を置く。
「はあ。」
ノアはラリアの魅力にまたひとつ溜息をつくのだった。
「ありがとうございます。ルスターさん。」
治療をしてくれたラグリント家の専属医のルスターさんにお礼を言う。
「いえいえ。ラリア様が無事で何よりです。」
にこりと微笑むルスターさんに心が暖かくなるのを感じていると、ノアが私に近づいた。
ノアは去年、街で出会った孤児。
出会った時は傷だらけで、どうしても放っておけなくて、ラグリント家に連れて帰った。
ラグリント夫妻も驚いていたけれど、傷が治るまでということで置いてもらうことになった。
懸命に手当をして傷も綺麗に治った頃、ノアはラグリント夫妻に頼んで、私の専属従者件護衛騎士として雇われることとなった。
手当てをしていた頃に孤児という共通点もあって仲良くなったから、その時はとても嬉しかった。
ノアとの出会いを思い返していると、ノアは両手で私の頬を包み込んだ。
ノアに視線を合わせると、とても真剣な顔をしていた。
「傷が残らなくて良かった。あなたが無事で良かった。ラリア様、もうあの人に近づかないでください。傷つくあなたをこれ以上見たくない。」
苦しそうにノアは言った。
私は、ノアの手に私の手を重ねた。
「ノア。心配してくれてありがとう。でもね。私は、どんなに嫌われてもリティーと仲良くしたいの。はじめて家族という中で、できた姉妹だから大切にしたいの・・・ダメ、かしら?」
ノアの目を見つめる。
ノアの綺麗なマゼンタの瞳が揺れる。
「っ・・・俺がラリア様を守ります。だから、あの人に会う時は必ず俺も連れて行ってください。」
「ええ。ありがとうノア。」
嬉しくなってノアにほほ笑みかける。
ノアは何故か目を逸らしてしまったけれど、どうしたのかしら?
「本当にノアとラリア様は仲がいいですね。それじゃあ、私はリティー様のところに行っていきます。」
ルスターさんはそう言って椅子から立ち上がって、部屋から出ていこうとするのを、私は引き止めてしまった。
だって、いま、ルスターさんが、リティーのところに行くというのが気になったから。
「ルスターさん!リティーがどうかしたの?」
「ルスターさん・・・。」
私がルスターさんに聞くと、ノアはどこかルスターさんを責めるように名前を呼んだ。
「ああー・・・いや、ノアごめん。いやぁ、そのー・・・リティー様が、ラリア様に怪我をさせたあと、頭を押えて気絶したらしくて、だからその検査と治療に行くんですよ。」
「私も同行させて下さい!!お願いします!」
頬を掻きながら説明してくれたルスターさんに私は前のめりになりながらお願いをする。
まさか、リティーが倒れたなんて!!
「ラリア様。さすがに、迷惑になりますよ。」
ノアの言葉に私はもう一度お願いしようとした言葉を飲み込む。
「ご、ごめんなさい。検査と治療の迷惑になってしまいますよね。」
私は何も出来ない自分に落ち込む。
「あーいや、じゃあ、治療が終わったらラリア様に伝えますよ。その後に、大丈夫そうならリティー様の部屋に行ってもいいですよ。」
「ルスターさんっ!ありがとうございます!!」
ルスターさんのその言葉に私は精一杯お礼を言った。
リティー無事でいて。
私はそう強く願った。
───その頃、ルスターとノアは…
「ルスターさん。なんで、あんなこと言ったんですか!?」
ノアはルスターを睨みつける。
「うっ、いやー逆に聞くけど、ラリア様があんなに落ち込んでるのに、“絶対リティー様には会わせられない”っていえるのか?」
ルスターの言葉にノアは考える。
とても悲しそうに、眉を下げて肩を落とすラリアを思い出す。
「・・・・・・・・・言えないですね。」
「まあ、そういうことだ。」
ルスターはノアの肩に手を置く。
「はあ。」
ノアはラリアの魅力にまたひとつ溜息をつくのだった。
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