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第15話 外注

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 輸送隊を襲った盗賊を従えると、ライゼルたちは開拓地に凱旋した。

「ライゼル様」

 開拓地に戻ってくると、こちらの到着を待ちわびていたのかオーフェンが出迎えた。

「無事に盗賊を討伐できたようで何よりです」

「カチュアついてるからな。心配ない」

 ライゼルの背後でカチュアが誇らしげに胸を張った。

「この身に代えても、ぼっちゃまには傷一つつけさせません」

「うむ。それでこそライゼル様の家臣よ」

 得意げな様子のカチュアをオーフェンが称える。

 実のところ、ライゼルが盗賊討伐に赴くのを許したのも、護衛にカチュアをつけているからというところが大きい。

 それだけオーフェンもカチュアの強さを認めているということであり、主であるライゼルも鼻が高いというものだ。

 と、オーフェンがライゼルの背後で整列している獣人たちと、その後ろに続く元盗賊たちを見やった。

「それにしても……ほう……ずいぶん多くの盗賊を捕まえたのですな……」

 オーフェンと目が合うと、手ぶらの盗賊たちが会釈をする。

「……見たところ、鎖に繋がれておらぬようですが?」

「ああ、奴らは俺の配下になった」

「…………は?」

 ライゼルの言葉が理解できないようで、オーフェンが耳を疑った。

 ……今、ライゼルは何と言った。

「配下にした……? 盗賊たちを……!?」

「う、うむ」

「……何がどうしてそうなったのですか!?」

 オーフェンに詰め寄られ、ライゼルがたじろいた。

 本当は奴隷として売り払おうとしたところ、何の因果か勘違いされてライゼルの配下に収まってしまったのだが、これらを説明されても理解するのは難しいだろう。

 実際、当のライゼルでさえ理解に苦しんでいるのだ。

 それならば、適当にぼかしておいた方がまだ楽というもの。

 ライゼルはバツが悪そうに視線を逸らすと、

「……話せば長くなるが、まあ成り行きだ」

「頭目を討たれ統率を失った盗賊たちに、「失敗してもまたイチからやり直せばいい」とぼっちゃまが手を差し伸べられたのです」

「カチュア!」

「なんと……!」

 カチュアの端的な説明で合点がいったのか、オーフェンは得心がいった様子で頷いた。

「なるほど、そういうことでしたか……。たとえ罪を犯しても等しく民……救いの手を差し伸べ償いの機会を与えようというのですか」

「いや、これは、その……」

「ライゼル様の心意気、このオーフェン、感服しました」

 服が汚れるのも構わず、オーフェンがその場に膝をつく。

 それを見て、獣人や元盗賊たちも膝をついた。

「……………………」

 彼らを奴隷として売り払おうと思っていたことは、永遠に胸の奥に仕舞っておこう。

「それで、今回捕らえた盗賊の処遇ですが……」

「フレイたち他の獣人と一緒に、灌漑の整備にあたらせよう。あっちは常に人手不足だからな。いくら居ても困らないだろ」

「それなのですが、輸送隊を襲った盗賊たちを捕らえたとはいえ、未だ他の盗賊も少なくありません。引き続き安全を確保しなくては、交易路の安全は確保されたとは言い難いでしょう。……治安維持のため、いくらか兵を用意したいのですが……」

 オーフェンの進言も一理ある。

 今回のように獣人たちを招集しては、肝心の開拓の方が疎かになってしまう。

 それならば、金で兵を雇った方が開拓も捗るというものだろう。

「……雇うか、冒険者を」

 ライゼルの言葉に、オーフェンが難色を示した。

「しかし、冒険者ギルドに使いを出そうにも、遠くの町まで行かねばなりません。その上、腕の立つ者を集めるとなると、さらに時間がかかってしまいましょう」

「心配するな。アテがある」

「アテ、にございますか」

 首を傾げるオーフェンに、ライゼルが頷いた。

「以前、ポンドンが訪れた際、護衛に冒険者を連れていただろ」

「はい。さすがは金貸しとでも言うべきか、なかなか腕の立つ者を連れておりましたな」

「こんなこともあろうかと、接待の折、彼らとも誼《よしみ》を通じておいた。名前と連絡先を教えてもらった」

「なっ……」

「知り合いでもなんでも、彼らのツテを頼れば、手っ取り早く冒険者を集められるだろ」

 誰かの紹介――もとい、コネで人材を雇おうというのだ。

 当然、紹介する側も自分のメンツがかかっているため下手な人材は紹介できず、紹介にあずかる人材もまた、失態を晒してしまえば紹介してくれた者の顔に泥を塗ることになるため、下手なことはできない。

 また、悪さを働けば横の繋がりで醜聞が広がってしまうため、今後の仕事が難しくなる。

 そういう意味でも、知り合いに紹介してもらうというのは理にかなっている選択と言えた。

「なんという抜け目なさ……ライゼル様の思慮深さには驚かされてばかりですな」

 もっとも、実際は彼らが敵に回った時のために媚を売っていただけだが、わざわざ感心しているオーフェンに水を差すこともない。

 真実はそっと胸にしまっておくことにした。
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