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第41話 襲来! 冒険者ギルド
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頭領であるデストラーデを撃破すると、海賊たちは完全に烏合の衆となった。
逃げ惑う海賊船を沈め、あるいは降伏させていると、遥か遠方に見覚えのある船が迫ってきた。
船に描かれたロゴを見て、エクリが「あっ」と声を漏らした。
「あれ、冒険者ギルドじゃない!?」
「マジか……!」
エクリとライが顔を綻ばせる。
『こちらは冒険者ギルドより派遣された、第68艦隊です。すみやかな借金の返済、あるいは、Sランク冒険者ライ及びCランク冒険者カイル・バトラーの身柄を要求します』
「なんで!?」
「おいおいおい、利息の支払いまであと3日はあるだろ!? なんでもう取り立てに来てるんだよ!」
予期せぬ言葉に動揺するエクリとライに、静かに名乗りを上げた。
「俺が通報した」
「ウソでしょ!?」
「はぁ!?」
信じられないものを見るような目で俺を睨むエクリとライ。
やれやれ。俺はため息をついた。
「言っただろ、保険をかけたって」
「まさか……」
「アンタの言ってた保険って……」
ライとエクリの推測を肯定するように、俺は頷いた。
この戦い、もしも敗北するようなことになれば、どんな目に合わされるかわかったものではない。
すべてを失って海賊に捕まるのと、借金を取りに来た冒険者ギルドに捕まる方。
どちらがマシかと尋ねられれば、答えは決まっている。
「連中曰く、借金を踏み倒したら、地の底まで追ってケツ毛までむしり取るらしいからな。……言うなれば、借金踏み倒せばどこにでも駆けつける第三勢力だ。使わない手はないだろ、こんな便利な連中」
「アンタも一応所属してるんだけど、その便利な連中に……」
「帰属意識の欠片もないやつだな……」
エクリとライが呆れた様子でつぶやく。
その後、冒険者ギルドの職員代表としてやってきた受付嬢をアトランティスに招くと、ことの経緯を説明した。
案の定、受付嬢は頬を膨らませた。
「通報が誤報だなんて……。艦隊を動かすのだって、タダじゃないんですよ? イタズラにしても度が過ぎます」
「まったく、困ったもんだな。そんなデマが出回るなんて。いったいどこの誰が流したんだか……」
(いや、それで済ませる気かよ……)
(面の皮が厚すぎるでしょ……)
何か言いたげな様子のライとエクリをスルーして、受付嬢が捕縛された海賊たちを見やる。
「それにしても、さすがカイルさんですね。まさかデストラーデ海賊団を壊滅させるなんて……」
「……運がよかったのさ」
デストラーデを倒すためとはいえ、船内に毒ガスを撒いたことには変わりはない。
すでに酸素発生機と空気清浄機を作動させ、船内の空気は安全圏まで持ってきた。
エクリやライ、親方たちとは口裏を合わせ、証拠隠滅も完了しているため、探られて困る腹はないのだが、手段が手段だけに身構えてしまう。
「……あら?」
「ん?」
受付嬢の視線の先。牢屋を抜け出したのか、こそこそと歩いていた【白い牙】の団長が、ばったり俺と目が合った。
「よう、団長。散歩か?」
「げっ、カイル・バトラー……」
俺の顔を見て、団長の顔が引きつった。
「忘れてないよな? お前を助けたら何でもするって話……」
「あら、そんな約束をしていたんですか?」
俺と受付嬢の視線が団長に集まる。
「い、いや、知らない。そんな話、まったく覚えが……」
「海賊の財産は大小に関わらず、海賊を倒した者に所有権が移ります。今回の場合、デストラーデが所有していた【人質】という財産があるわけなので……」
「俺がお前の所有者、ってことになるな」
俺と受付嬢に詰め寄られ、団長の顔が青ざめていく。
「……………………白い牙のやつらに連絡を取らせてくれ」
「いいだろう。連中に伝えておけ。『団長の身柄が惜しければ20億ゼニー出せ』ってな」
「に、20億……!?」
法外な金額を提示され、団長の顔が真っ青になった。
「いくらなんでも高すぎるだろ! 人質の解放……冒険者なら、高くても1000万が相場だろ!」
「キャンセル料、延滞金、手間賃諸々込みなんだ。これくらい貰わないとワリが合わないだろ」
「だからって……」
「命よりも金を取るのか? 変わってるな、お前」
俺に煽られ、団長の顔が渋っていく。
「だが、そんな大金……いきなり言われても用意できるわけ……」
「ご心配なく。資金に不安があるようでしたら、冒険者ギルドで融通しますよ。……必要でしたら、割のいいお仕事も斡旋します」
ここが商機とばかりに、受付嬢が怪しい笑みを浮かべる。
「さすが冒険者ギルド。手厚い支援だな」
「ええ、冒険者ギルドは冒険者の味方ですから」
当事者そっちのけで戦後処理を始める俺達を見て、団長の顔からダラダラと冷や汗が流れた。
「あ、悪魔だ……」
その後、団長の身柄は無事に【白い牙】に引き渡された。
当然、20億ゼニーもの大金をすぐに用意できるはずもなく、【白い牙】は本拠地であった資源衛星を売却して資金を工面した。
さらに、先のデストラーデとの敗戦で莫大な損失を被ることとなった【白い牙】は組織再編を余儀なくされ、冒険者ギルドから多額の借金を背負うこととなった。
冒険者ギルドに首の根を抑えられ、事実上冒険者ギルドの下部組織として再スタートを切ることとなったのだ。
受付嬢曰く、
「10年ほどタダ働きすれば返せるんじゃないですか?」
とのことだった。
もっとも、団長から貰うはずだった諸々の金は冒険者ギルドが建て替えたのだから、俺にどうこう言うことはできないのだが。
逃げ惑う海賊船を沈め、あるいは降伏させていると、遥か遠方に見覚えのある船が迫ってきた。
船に描かれたロゴを見て、エクリが「あっ」と声を漏らした。
「あれ、冒険者ギルドじゃない!?」
「マジか……!」
エクリとライが顔を綻ばせる。
『こちらは冒険者ギルドより派遣された、第68艦隊です。すみやかな借金の返済、あるいは、Sランク冒険者ライ及びCランク冒険者カイル・バトラーの身柄を要求します』
「なんで!?」
「おいおいおい、利息の支払いまであと3日はあるだろ!? なんでもう取り立てに来てるんだよ!」
予期せぬ言葉に動揺するエクリとライに、静かに名乗りを上げた。
「俺が通報した」
「ウソでしょ!?」
「はぁ!?」
信じられないものを見るような目で俺を睨むエクリとライ。
やれやれ。俺はため息をついた。
「言っただろ、保険をかけたって」
「まさか……」
「アンタの言ってた保険って……」
ライとエクリの推測を肯定するように、俺は頷いた。
この戦い、もしも敗北するようなことになれば、どんな目に合わされるかわかったものではない。
すべてを失って海賊に捕まるのと、借金を取りに来た冒険者ギルドに捕まる方。
どちらがマシかと尋ねられれば、答えは決まっている。
「連中曰く、借金を踏み倒したら、地の底まで追ってケツ毛までむしり取るらしいからな。……言うなれば、借金踏み倒せばどこにでも駆けつける第三勢力だ。使わない手はないだろ、こんな便利な連中」
「アンタも一応所属してるんだけど、その便利な連中に……」
「帰属意識の欠片もないやつだな……」
エクリとライが呆れた様子でつぶやく。
その後、冒険者ギルドの職員代表としてやってきた受付嬢をアトランティスに招くと、ことの経緯を説明した。
案の定、受付嬢は頬を膨らませた。
「通報が誤報だなんて……。艦隊を動かすのだって、タダじゃないんですよ? イタズラにしても度が過ぎます」
「まったく、困ったもんだな。そんなデマが出回るなんて。いったいどこの誰が流したんだか……」
(いや、それで済ませる気かよ……)
(面の皮が厚すぎるでしょ……)
何か言いたげな様子のライとエクリをスルーして、受付嬢が捕縛された海賊たちを見やる。
「それにしても、さすがカイルさんですね。まさかデストラーデ海賊団を壊滅させるなんて……」
「……運がよかったのさ」
デストラーデを倒すためとはいえ、船内に毒ガスを撒いたことには変わりはない。
すでに酸素発生機と空気清浄機を作動させ、船内の空気は安全圏まで持ってきた。
エクリやライ、親方たちとは口裏を合わせ、証拠隠滅も完了しているため、探られて困る腹はないのだが、手段が手段だけに身構えてしまう。
「……あら?」
「ん?」
受付嬢の視線の先。牢屋を抜け出したのか、こそこそと歩いていた【白い牙】の団長が、ばったり俺と目が合った。
「よう、団長。散歩か?」
「げっ、カイル・バトラー……」
俺の顔を見て、団長の顔が引きつった。
「忘れてないよな? お前を助けたら何でもするって話……」
「あら、そんな約束をしていたんですか?」
俺と受付嬢の視線が団長に集まる。
「い、いや、知らない。そんな話、まったく覚えが……」
「海賊の財産は大小に関わらず、海賊を倒した者に所有権が移ります。今回の場合、デストラーデが所有していた【人質】という財産があるわけなので……」
「俺がお前の所有者、ってことになるな」
俺と受付嬢に詰め寄られ、団長の顔が青ざめていく。
「……………………白い牙のやつらに連絡を取らせてくれ」
「いいだろう。連中に伝えておけ。『団長の身柄が惜しければ20億ゼニー出せ』ってな」
「に、20億……!?」
法外な金額を提示され、団長の顔が真っ青になった。
「いくらなんでも高すぎるだろ! 人質の解放……冒険者なら、高くても1000万が相場だろ!」
「キャンセル料、延滞金、手間賃諸々込みなんだ。これくらい貰わないとワリが合わないだろ」
「だからって……」
「命よりも金を取るのか? 変わってるな、お前」
俺に煽られ、団長の顔が渋っていく。
「だが、そんな大金……いきなり言われても用意できるわけ……」
「ご心配なく。資金に不安があるようでしたら、冒険者ギルドで融通しますよ。……必要でしたら、割のいいお仕事も斡旋します」
ここが商機とばかりに、受付嬢が怪しい笑みを浮かべる。
「さすが冒険者ギルド。手厚い支援だな」
「ええ、冒険者ギルドは冒険者の味方ですから」
当事者そっちのけで戦後処理を始める俺達を見て、団長の顔からダラダラと冷や汗が流れた。
「あ、悪魔だ……」
その後、団長の身柄は無事に【白い牙】に引き渡された。
当然、20億ゼニーもの大金をすぐに用意できるはずもなく、【白い牙】は本拠地であった資源衛星を売却して資金を工面した。
さらに、先のデストラーデとの敗戦で莫大な損失を被ることとなった【白い牙】は組織再編を余儀なくされ、冒険者ギルドから多額の借金を背負うこととなった。
冒険者ギルドに首の根を抑えられ、事実上冒険者ギルドの下部組織として再スタートを切ることとなったのだ。
受付嬢曰く、
「10年ほどタダ働きすれば返せるんじゃないですか?」
とのことだった。
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