AI使いの冒険者、ドローンとハッキングで無双する ~手段を選ばず金儲けしていたら宇宙一の大富豪になっていました~

田島はる

文字の大きさ
上 下
40 / 45

第39話 挟撃

しおりを挟む
 大混乱に陥った海賊船を砲撃しながら、アナザーヘブンに篭っているエクリたちと通信をする。

「エクリ、そっちの軍を出撃させろ。挟み撃ちだ」

『わかったわ!』

 こちらの攻撃に呼応して、要塞側から展開した軍が海賊船に攻撃を加えていく。

 一隻、二隻と海賊船が沈んでいく中、お目当ての船を見つけられずにいた。

『いない、デストラーデが……』

『逃げたのか……?』

 エクリとライが捜索を続けるも、逃げ惑う海賊船の群れの中では、見つかるものも見つからない。

「シシー、ドローンを使え」

『待って。あいつの船はスキャナータイプでも捉えられないんでしょ!?』

「ああ、だから別の方を使う。……デブリ採取用のドローン、まだ余ってたよな?」

 リサイクル業の縮小以降、少しずつ採取用ドローンを別のタイプに作り変えていたものの、未だに多くの採取用ドローンが残されていた。

『現在、5000基が使用可能な状態にあります』

 画面上に現在使用可能なドローンたちが表示される。

「そいつを戦場一帯にばら撒いて、自爆させろ」

『了解しました』

『はぁ!?』

『これだけのドローン、全部自爆させんのかよ……』

 自爆と同時に、この星域一帯に大量の宇宙ゴミ(デブリ)がばら撒かれることになる。

 高密度にデブリが撒かれれば、デストラーデの船にぶつかるデブリも出てくるはずだ。

(デストラーデの船は捉えられなくても、近くを漂うデブリは見つけられるからな……)

 ドローンが爆発したのか、画面上ではキラキラと破片が飛び散っていくのが見える。

 シシーが画面を操作しているのか、宙域の一部がクローズアップされた。

『デストラーデの旗艦を発見しました。現在、アナザーヘブンと逆方向に向かっています』

『逃げてる……?』

「いや──」

 その瞬間、アトランティスに衝撃が走った。

 無理やり接舷しようとしているのか、デストラーデの船が半ば突っ込む形でアトランティスに食い込んでいた。

「狙いはここだ」

『ウソでしょ……!?』

『マジかよ、クソっ……。なんでバレたんだ、カイル・バトラーがそこにいるって……』

 悪態をつくエクリとライに、俺は真相を告げた。

「俺がバラしたからな。ここにいるって」

『ウソだろ!?』

『なんで!?』

 俺がここにいるとわかった以上、デストラーデに取れる選択肢は限られてくる。

 無視するか、艦隊で集中砲火するか、直接乗り込むか。

 無視をするとは考えにくい。これだけデストラーデをコケにして、メンツを潰してきたのだ。報復しなくては、海賊団の首領としての威厳もなにもない。

 また、艦隊で集中砲火することも考えにくい。
 今は俺が制圧したとはいえ、ここがやつらの本拠地に変わりないのだ。
 愛着も蓄えられた財宝もすべて無視して焼き払うことができるだろうか。

 そうなると、もっとも可能性が高いのはここに直接乗り込んでくることだ。

 今回の首謀者が俺だとわかった以上、俺を倒せばデストラーデ側は勝利でき、船も奪還できる。

 まさに起死回生の一手。ここから逆転を狙うのなら、これ以外考えられないだろう。

 そのため、デストラーデはここに踏み込んでくる可能性が高いと踏んだのだ。

 たしかにアトランティスを奪われたら、戦況はひっくり返り、俺の身も危うくなる。

 だが、それを抜きにしても、姿を消すデストラーデをおびき寄せ、決着をつける絶好の機会でもあるのだ。

(もっとも、毒ガス対策をしないと中に入れないんだが……)





 機関場に足を踏み入れると、デストラーデは辺りを見回した。

 船内のほとんどの区画では毒ガスが蔓延しているため、満足に動くことはできないが、機関室であれば酸素ボンベなりガスマスクがあるだろう。

 そう踏んでいたからこそ、強引に機関室に乗り込んだわけだが、結果的にこれはアタリだった。

「なんでデストラーデがここに……」

「毒ガス撒けば、海賊を全滅させられるんじゃなかったのかよ……」

 目の前に現れたゴリラ顔の機関士とサル顔の機関士を見て、デストラーデは破顔した。

「お前たち、死にたくなければカインの居場所を教えろ」





 船橋ブリッジの扉が開くと、俺は操縦桿から手を離した。

 相手は見るまでもない。監視カメラで何度もその姿を晒していたのだから。

「……あんたの椅子、なかなかいい座り心地だったぞ」

「カイン……! テメェだけは……テメェだけは、絶対ゼッテェぶっ殺してやる……!」

「違うな」

 怒りに身を震わせるデストラーデを悠然と見据え、俺は静かに立ち上がった。

「……Cランク冒険者、カイル・バトラー。お前を倒す男の名だ」

「ぶっ殺す!!!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...