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第39話 挟撃
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大混乱に陥った海賊船を砲撃しながら、アナザーヘブンに篭っているエクリたちと通信をする。
「エクリ、そっちの軍を出撃させろ。挟み撃ちだ」
『わかったわ!』
こちらの攻撃に呼応して、要塞側から展開した軍が海賊船に攻撃を加えていく。
一隻、二隻と海賊船が沈んでいく中、お目当ての船を見つけられずにいた。
『いない、デストラーデが……』
『逃げたのか……?』
エクリとライが捜索を続けるも、逃げ惑う海賊船の群れの中では、見つかるものも見つからない。
「シシー、ドローンを使え」
『待って。あいつの船はスキャナータイプでも捉えられないんでしょ!?』
「ああ、だから別の方を使う。……デブリ採取用のドローン、まだ余ってたよな?」
リサイクル業の縮小以降、少しずつ採取用ドローンを別のタイプに作り変えていたものの、未だに多くの採取用ドローンが残されていた。
『現在、5000基が使用可能な状態にあります』
画面上に現在使用可能なドローンたちが表示される。
「そいつを戦場一帯にばら撒いて、自爆させろ」
『了解しました』
『はぁ!?』
『これだけのドローン、全部自爆させんのかよ……』
自爆と同時に、この星域一帯に大量の宇宙ゴミ(デブリ)がばら撒かれることになる。
高密度にデブリが撒かれれば、デストラーデの船にぶつかるデブリも出てくるはずだ。
(デストラーデの船は捉えられなくても、近くを漂うデブリは見つけられるからな……)
ドローンが爆発したのか、画面上ではキラキラと破片が飛び散っていくのが見える。
シシーが画面を操作しているのか、宙域の一部がクローズアップされた。
『デストラーデの旗艦を発見しました。現在、アナザーヘブンと逆方向に向かっています』
『逃げてる……?』
「いや──」
その瞬間、アトランティスに衝撃が走った。
無理やり接舷しようとしているのか、デストラーデの船が半ば突っ込む形でアトランティスに食い込んでいた。
「狙いはここだ」
『ウソでしょ……!?』
『マジかよ、クソっ……。なんでバレたんだ、カイル・バトラーがそこにいるって……』
悪態をつくエクリとライに、俺は真相を告げた。
「俺がバラしたからな。ここにいるって」
『ウソだろ!?』
『なんで!?』
俺がここにいるとわかった以上、デストラーデに取れる選択肢は限られてくる。
無視するか、艦隊で集中砲火するか、直接乗り込むか。
無視をするとは考えにくい。これだけデストラーデをコケにして、メンツを潰してきたのだ。報復しなくては、海賊団の首領としての威厳もなにもない。
また、艦隊で集中砲火することも考えにくい。
今は俺が制圧したとはいえ、ここがやつらの本拠地に変わりないのだ。
愛着も蓄えられた財宝もすべて無視して焼き払うことができるだろうか。
そうなると、もっとも可能性が高いのはここに直接乗り込んでくることだ。
今回の首謀者が俺だとわかった以上、俺を倒せばデストラーデ側は勝利でき、船も奪還できる。
まさに起死回生の一手。ここから逆転を狙うのなら、これ以外考えられないだろう。
そのため、デストラーデはここに踏み込んでくる可能性が高いと踏んだのだ。
たしかにアトランティスを奪われたら、戦況はひっくり返り、俺の身も危うくなる。
だが、それを抜きにしても、姿を消すデストラーデをおびき寄せ、決着をつける絶好の機会でもあるのだ。
(もっとも、毒ガス対策をしないと中に入れないんだが……)
機関場に足を踏み入れると、デストラーデは辺りを見回した。
船内のほとんどの区画では毒ガスが蔓延しているため、満足に動くことはできないが、機関室であれば酸素ボンベなりガスマスクがあるだろう。
そう踏んでいたからこそ、強引に機関室に乗り込んだわけだが、結果的にこれはアタリだった。
「なんでデストラーデがここに……」
「毒ガス撒けば、海賊を全滅させられるんじゃなかったのかよ……」
目の前に現れたゴリラ顔の機関士とサル顔の機関士を見て、デストラーデは破顔した。
「お前たち、死にたくなければカインの居場所を教えろ」
船橋の扉が開くと、俺は操縦桿から手を離した。
相手は見るまでもない。監視カメラで何度もその姿を晒していたのだから。
「……あんたの椅子、なかなかいい座り心地だったぞ」
「カイン……! テメェだけは……テメェだけは、絶対ェぶっ殺してやる……!」
「違うな」
怒りに身を震わせるデストラーデを悠然と見据え、俺は静かに立ち上がった。
「……Cランク冒険者、カイル・バトラー。お前を倒す男の名だ」
「ぶっ殺す!!!!」
「エクリ、そっちの軍を出撃させろ。挟み撃ちだ」
『わかったわ!』
こちらの攻撃に呼応して、要塞側から展開した軍が海賊船に攻撃を加えていく。
一隻、二隻と海賊船が沈んでいく中、お目当ての船を見つけられずにいた。
『いない、デストラーデが……』
『逃げたのか……?』
エクリとライが捜索を続けるも、逃げ惑う海賊船の群れの中では、見つかるものも見つからない。
「シシー、ドローンを使え」
『待って。あいつの船はスキャナータイプでも捉えられないんでしょ!?』
「ああ、だから別の方を使う。……デブリ採取用のドローン、まだ余ってたよな?」
リサイクル業の縮小以降、少しずつ採取用ドローンを別のタイプに作り変えていたものの、未だに多くの採取用ドローンが残されていた。
『現在、5000基が使用可能な状態にあります』
画面上に現在使用可能なドローンたちが表示される。
「そいつを戦場一帯にばら撒いて、自爆させろ」
『了解しました』
『はぁ!?』
『これだけのドローン、全部自爆させんのかよ……』
自爆と同時に、この星域一帯に大量の宇宙ゴミ(デブリ)がばら撒かれることになる。
高密度にデブリが撒かれれば、デストラーデの船にぶつかるデブリも出てくるはずだ。
(デストラーデの船は捉えられなくても、近くを漂うデブリは見つけられるからな……)
ドローンが爆発したのか、画面上ではキラキラと破片が飛び散っていくのが見える。
シシーが画面を操作しているのか、宙域の一部がクローズアップされた。
『デストラーデの旗艦を発見しました。現在、アナザーヘブンと逆方向に向かっています』
『逃げてる……?』
「いや──」
その瞬間、アトランティスに衝撃が走った。
無理やり接舷しようとしているのか、デストラーデの船が半ば突っ込む形でアトランティスに食い込んでいた。
「狙いはここだ」
『ウソでしょ……!?』
『マジかよ、クソっ……。なんでバレたんだ、カイル・バトラーがそこにいるって……』
悪態をつくエクリとライに、俺は真相を告げた。
「俺がバラしたからな。ここにいるって」
『ウソだろ!?』
『なんで!?』
俺がここにいるとわかった以上、デストラーデに取れる選択肢は限られてくる。
無視するか、艦隊で集中砲火するか、直接乗り込むか。
無視をするとは考えにくい。これだけデストラーデをコケにして、メンツを潰してきたのだ。報復しなくては、海賊団の首領としての威厳もなにもない。
また、艦隊で集中砲火することも考えにくい。
今は俺が制圧したとはいえ、ここがやつらの本拠地に変わりないのだ。
愛着も蓄えられた財宝もすべて無視して焼き払うことができるだろうか。
そうなると、もっとも可能性が高いのはここに直接乗り込んでくることだ。
今回の首謀者が俺だとわかった以上、俺を倒せばデストラーデ側は勝利でき、船も奪還できる。
まさに起死回生の一手。ここから逆転を狙うのなら、これ以外考えられないだろう。
そのため、デストラーデはここに踏み込んでくる可能性が高いと踏んだのだ。
たしかにアトランティスを奪われたら、戦況はひっくり返り、俺の身も危うくなる。
だが、それを抜きにしても、姿を消すデストラーデをおびき寄せ、決着をつける絶好の機会でもあるのだ。
(もっとも、毒ガス対策をしないと中に入れないんだが……)
機関場に足を踏み入れると、デストラーデは辺りを見回した。
船内のほとんどの区画では毒ガスが蔓延しているため、満足に動くことはできないが、機関室であれば酸素ボンベなりガスマスクがあるだろう。
そう踏んでいたからこそ、強引に機関室に乗り込んだわけだが、結果的にこれはアタリだった。
「なんでデストラーデがここに……」
「毒ガス撒けば、海賊を全滅させられるんじゃなかったのかよ……」
目の前に現れたゴリラ顔の機関士とサル顔の機関士を見て、デストラーデは破顔した。
「お前たち、死にたくなければカインの居場所を教えろ」
船橋の扉が開くと、俺は操縦桿から手を離した。
相手は見るまでもない。監視カメラで何度もその姿を晒していたのだから。
「……あんたの椅子、なかなかいい座り心地だったぞ」
「カイン……! テメェだけは……テメェだけは、絶対ェぶっ殺してやる……!」
「違うな」
怒りに身を震わせるデストラーデを悠然と見据え、俺は静かに立ち上がった。
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