AI使いの冒険者、ドローンとハッキングで無双する ~手段を選ばず金儲けしていたら宇宙一の大富豪になっていました~

田島はる

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第24話 クラスチェンジ

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「いい? 単純な算数の話をするわね?」

 俺とライを執務室に連行すると、エクリは開口一番にそう言った。

「あんたらが冒険者ギルドから借りたお金が90億1000万ゼニー。先月の返済額が1000万ゼニー……その内、元金の返済が901万ゼニー。……返済が終わるのは何回目?」

 俺たちを睨みつけるエクリを尻目に、ライが辟易した様子でつぶやいた。

「……自分で計算できんのか、この女は」

「どうでもいいが、俺は早く厨房に戻りたいんだが……。メシの時間が遅れると、あいつらうるさいんだ」

 ちらりと時間を覗う。そろそろご飯が炊けた頃だろうか。

「だぁーかぁーらぁー、返済が終わるのは何回目って言ってるの!!!!」

 エクリが問いただすように、ライがすがるように俺に視線を向ける。

「単純計算すると、1000回になるな」

「そう、1000回! 毎月このペースで返済していたら、完済するのに84年もかかるのよ!? 死ぬまで借金を払い続ける気!?」

「そうだそうだ。嬢ちゃんの言う通りだ。……あ、オレは一応止めたんだがな。コイツが勝手に上限まで借りるって言いだしてな……」

 いつの間にか寝返ったライが俺を責める。

「……忘れているみたいだが、お前これ以外にも借金あるからな? 冒険者ギルドのラウンジで溜めた4億ゼニーの借金、肩代わりしてやるつもりはないからな?」

 俺の宣告に、ライがこの世の終わりのような顔をする。

 エクリが呆れた様子でため息をついた。

「どうするのよ、こんなに借金して……」

「勘違いしているようだが、律義に1000回も払う気はないぞ」

 俺の言葉にエクリが目をぱちくりさせた。

「……そうなの?」

「利益を設備なり人件費として投資して、資金効率を高めるんだ。」

「……それじゃあ、ちゃんと返済計画は立ててあるのね?」

「だからそうだと言ってるだろ」

「よかったぁ……」

 エクリがほっと胸を撫で下ろす脇で、ライがじろりと俺を睨みつけた。

「……ちなみに、何回払いにしたんだ?」

「36回」

「は!?」

 俺の言葉にエクリが目を白黒させた。

「36回ってことは……」

『3年です』

 シシーの機械的な声が響く。

「冒険者ギルドの金利が高くてな……。できるだけ早めに身軽になりたいんだ」

 冒険者ギルドで借りた資金の利息は、年利20%。
 時間が経つほど雪だるま式に膨れ上がるため、早く返済するにこしたことはない。

 また、利息を払い続けるということは、その分本来俺が受け取るはずだった利益が削がれ、規模拡大に投じる資産が増えないことを意味している。

 そのため、無理を承知で3年で返済することにしたのだが……

「無茶でしょ! 3年で90億を完済するなんて……」

「返済額は毎月アホみたいに膨れ上がっていくからな。3年目は毎月億単位の返済になるし、最後の月には20億近く払う計算だ」

「に、20億……」

「前々からクレイジーな男とは思っていたが、ここまでとは……」

「心配するな。事業は順調そのものだ」

 ドローンが自動でデブリを回収し、元海賊の部下たちがパーツごとにバラして、資格持ちの技術者が宇宙船の修理に再利用する。

 タダで集めた素材を使うのだから、かかるコストは人件費や宇宙要塞の維持費が主となり、利益率はかなりいい。

「このサイクルが回り続ける限り、俺の事業は破綻しない。それこそ、デブリがなくならん限りな──」





 部下からの報告に、俺は耳を疑った。

「……今、なんて言った?」

「それが……我々がデブリの回収に力を入れすぎたせいで、この星域からデブリがなくなりつつあるんです」

 元々、デブリとはロケットの残骸や廃棄された人工衛星などの宇宙ゴミである。

 ゴミの発生より回収が多ければ、当然デブリの総数は減少に向かう。

 案の定、エクリが慌てた様子で俺の元にやってきた。

「どうするのよ。デブリが減ったら、赤字になっちゃうじゃない!」

「まだあるだろ。売れるものが」

「えっ……?」

 視線の先。宇宙船の修理を行なうドックでは、他の工場から引き抜いた技術者たちが元海賊たちを指揮して宇宙船の修理を進めていた。

 慣れた様子で修理をする彼らになら、任せてみてもいいかもしれない。

「これだけいい腕を持った技術者がいるんだ。デブリ回収に代わる、新しいことに挑戦してもいいだろ」

「新しいこと……?」

「これからはデブリ回収の代わりに宇宙船の造船を始める。修理工場から造船所に転職クラスチェンジだ」
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