AI使いの冒険者、ドローンとハッキングで無双する ~手段を選ばず金儲けしていたら宇宙一の大富豪になっていました~

田島はる

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第14話 スキル購入

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 今から数世紀前。人類の相棒は板状のスマートな小型電話端末だった。
 好みのアプリをインストールしては自分好みにカスタマイズし、公私を問わず活躍したのだという。

 その後、ナノマシンの登場により人類の相棒は小型端末からナノマシンに移った。

 それに伴い、ナノマシン拡張アプリとしてスキルが普及すると、人体のネット通信接続はもちろん、身体機能の拡張が可能となり、人類の能力は飛躍的な進化を遂げた。

 スキルのカタログを開きながら、エクリが上機嫌で尋ねてくる。

「ねえねえ、<視力上昇>とかどう? 今の視力から9.0まで上げてくれるみたいなんだけど……」

「いらないだろ、それ。宇宙で戦闘するときはセンサーで敵を補足するんだ。自分の視力を上げてどうする」

「うーん、それもそうね」

 エクリがスキルのカタログを開き、ページを捲っていく。

 そこには、射撃に関わるスキルから、<柔術>などの接近戦に関わるスキル、<技巧>や<危機察知>、<高速演算>といった日常生活でも使えるスキルまで紹介されている。

「うーん、<精密射撃>もいいし、<超集中>もいいわね……。ねえ、アンタのオススメのスキルとかないの?」

 同じようにカタログを読んでいた俺に、エクリが尋ねた。

「そうだな……<砲撃察知>なんてどうだ? 敵艦の砲門の動きから、発射された攻撃がどう飛んでいくのか可視化してくれるスキルだ」

「へぇ……悪くないじゃない」

 エクリがウィンドウから商品ページを開くと、すぐに顔をしかめた。

「……って、これ全然人気ないじゃない。インストールされた数も10回くらいしかないし……」

「そりゃそうだ。敵の射線がわかったところで、初めからシールドで防げば避ける必要もないんだからな」

「なーんだ……じゃあ全然使えないスキルじゃない」

 ガックリと肩を落とし、ページを閉じようとするエクリ。

「シールドがある時はまったく使わないが、アンチシールドを使ってる間は役に立つぞ」

 多くの宇宙船ではシールドが標準装備されているが、ことアンチシールドを好んで使う俺の場合、<砲撃察知>のスキルは非常に重宝している。

 商船を護衛していた際、海賊船に小型船で侵入できたのも、実のところ<砲撃察知>による働きが大きいのだ。

「そっか……じゃあこれにしよ!」

 購入とインストールを済ませると、スキルを発動させて外を見る。

「もう使うのか?」

「試しよ、試し。せっかく買ったんだから、早く使ってみたいじゃない」

 付近を航行している宇宙船を見つけると、エクリが感嘆の声を上げた。

「うわ……すごっ……! 本当に砲門から射線が伸びてる……!」

 エクリの視界には宇宙船から伸びる赤や緑の線が映し出され、まさしくキルゾーンが可視化されているのだろう。

「これさえあれば、シールドがなくても戦えるだろ?」

「うんっ! これを作った人にお礼を言いたいくらいよ!」

 エクリが満面の笑みを浮かべると、シシーが四輪を駆動してやってきた。

 エクリに聞こえないよう、俺の脳内に直接語り掛ける。

『よいのですか、カイル。<砲撃察知>を作ったのが自分だと言わなくても』

(俺じゃないよ。俺とお前だ)

 その昔、高難易度ゲーム攻略のためにスキルの原案を練り、シシー協力の元ロジックの構築や修正を経て、ようやくリリースしたスキルなのだ。

 人気こそ出なかったものの、ゲームはもちろん現実の戦いでも通用する出来であると自負している。

(なんていうか、自分の作ったスキルで喜ぶ人がいるなら、それでいいよ)

『普段のカイルらしからぬ発言です。どういう風の吹き回しですか?』

(いいだろ、たまには。自分の作ったスキルが喜ばれて、嬉しくないやつはいないよ)

 シシーと歓談していると、<砲撃察知>の試運転に満足したのか、エクリが駆け寄ってきた。

「ねえねえ、カイルは何を買うか決めた? もし決めてないなら、あたしが選んであげようか?」

「必要ない。買うものはもう決めた」

 俺が断ると、エクリは不機嫌そうに頬を膨らませた。

「なによ、面白くないわね……で、何を買うつもり?」

「宇宙要塞」

「……ん? そんなスキル、あったかしら……?」

「スキルじゃない。本物の方だ」

「は!?!?!?」
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