AI使いの冒険者、ドローンとハッキングで無双する ~手段を選ばず金儲けしていたら宇宙一の大富豪になっていました~

田島はる

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第3話 Bランク冒険者、エクリ

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 掲示板に表示された依頼を眺めながら、俺は初任務となるクエストを吟味していた。

 宇宙を荒らす怪獣の討伐、海賊退治、貴族領の警備など武力を必要とするものから、鉱山の採掘まで、様々な依頼が並んでいる。

 ひととおり目を通すと、俺は「うーん」と唸った。

「いろいろあるな……。シシー、パッと見、なにか気になるクエストはないか?」

『商船の護衛がいいでしょう。低ランクでも可能な依頼で、なおかつ船体損傷のリスクが低く、冒険者初心者に適したクエストと言えます。シーシュポス号の保有する戦力でも問題なく達成できるでしょう』

 怪獣討伐や海賊狩りほど稼げるものではないものの、シシ―が勧めるのだから間違いないだろう。

「オーケー、それにしよう」

 依頼を受けるべく受付に向かおうとすると、目の前に小柄な少女が立ちふさがった。

 頭からぴょこんと跳ねた髪が俺の視界を塞ぎ、少女の琥珀色の瞳がジロリと睨みつける。

「……あんた、さっきの凄腕冒険者よね?」

 凄腕冒険者とは、先ほどのテストのことを言っているのだろうか。

 面倒くさそうなやつだな……

「いや、俺はただの新人冒険者だ」

「いいわよ、謙遜しなくても。さっきのテストはあたしも見ていたわ」

 少女がふふんと胸を張った。

「あたしと一緒に、海賊狩りをやらない? 一人より二人の方が効率がいいし、なんだったら先輩のあたしが冒険者のなんたるかを教えてあげても──って、こらー!」

 無視して受付に向かう俺の腕を掴むと、少女はその場にすがりついた。

「人がせっかく誘ってあげてるのに無視するなー!」

「なんだよ、俺はもう自分のクエストを決めたんだ。人手が足りないなら、他をあたってくれ」

 少女を無理やり引きはがすと、俺は一人受付に向かうのだった。



 一連の流れを見ていた受付嬢が困ったように笑った。

「エクリさんですね、Bランク冒険者の」

 Bランクということは、S、Aと続き、上から3番目……。
 何とも頼りなさげに見えたのだが、人は見かけによらないものだ。

「……ああ見えて、意外とやり手なのか?」

 答えにくい質問だったのか、受付嬢が苦笑を浮かべた。

「……実力はあるのですが、彼女はその……いろいろと不幸なんです」

「不幸? 元令嬢とか、没落貴族とか、そういうあれか?」

 受付嬢が首を横に振る。

「とにかく敵から狙われやすいと言いますか……自分の攻撃が誤爆して船が大破しかけると言いますか……よくガス欠を起こすと言いますか……」

「それはまあ……ご愁傷さまって感じだな」

「ついた異名は“不運《ハードラック》”。
 彼女と一緒のクエストは必ず酷い目に合うって、もっぱらの評判なんですよ。
 おかげでパーティーを組む人もいなくて……」

「それで俺のところに来たってわけか……」

 人間関係の固まっていない分、新人冒険者を誘えばパーティーを組める可能性は高くなる。

 また、彼女の前評判を知らなければ、さらに可能性は高くなるということか。

 なんとなく彼女のことがわかったところで受付を出ると、件《くだん》の少女を発見した。

 他につるむ相手もいないのかギルドの片隅で一人寂しく酒を煽っている。

 エクリの隣に腰を下ろすと、適当に飲み物を注文した。

「……昼間っから仕事もせずに酒盛りか?」

「ふん……なによ、どうせあんたもあたしと組む気ないんでしょ」

 その場に突っ伏すエクリ。ふて腐れているのか、こちらと顔を合わそうとしない。

「いいぞ」

「えっ……」

「組んでやってもいいって言ってるんだ」

「ほっ、ホント!? いいの!?」

 エクリが信じられないといった様子で顔を綻ばせる。

『本当によろしいのですか? 彼女をパーティーに加えて』

(なんだよ、人工知能のシシーでも運なんて非科学的なことを言い出すのか?)

『いいえ。ですが、これまでのやりとりから、彼女をパーティーに加える合理的な理由を見い出せませんでした。なぜ彼女をパーティに加えるのでしょうか』

(Dランク冒険者って言っても、俺はまだペーペーだ。……その点、あいつには冒険者としての経験がある)

『ですが……』

(それに、面白そうだろ。あれくらい賑やかなのが居た方が)

 納得したのか諦めたのか、シシーが沈黙する。

 シシーを説き伏せることに成功すると、エクリに向き直った。

「俺はこれから商船の護衛をする。海賊狩りはまたの機会だ。それでもいいなら……」

「いい! 全然いい! これからよろしくね!」

 食い気味に答えると、エクリはカイルの手を強く握るのだった。
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