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奈落の麗姫(うるわしひめ)編

第十四話「衣衣恋恋」中編

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 第十四話「衣衣恋恋」中編

 ザスッ!ザスッ!ザスッ!

 「ぐはぁぁっ!!」

 臨海りんかい兵士をハリネズミの如き姿にして射落としたのは――

 「……フフ……フフフフ……フフ……シ……シシ」

 ジトッとした三白眼少女!

 その奥にある得体の知れない危うい光と無機質な小さい口元に”にへらぁ”と不気味な笑みを浮かべて――

 「シ、死ね……死ね!死ね!死ね!シネ!シネ!シネ!シネ!しねっ!しねぇぇっ!」

 ”王族特別親衛隊プリンセス・ガード”四枚目にして精神病質サイコパシー四栞ししお 四織しおりは恥じらいも無くスカートを一気に捲り上げた!

 ブワァッ!

 スカート下には無数のギラついた光りを放つ刃達……

 標的は勿論――

 「ちっ!」

 ――鈴原 最嘉オレだっ!!

 このままだと並走する馬上から俺目がけ、暗器使いである四栞ししお 四織しおりの投擲短刀ナイフが幾つも放たれることだろう。

 「……」

 ――とはいえ

 俺ならばその程度の攻撃は全て叩き落とせる!

 ――落とせるのだが……
 「……」

 ドドドッドドドッ!!

 俺は腰の小烏丸こがらすまるを抜くこともせず、変わらず前を向いたまま陽子はるこの背を追っていた。

 ドドドッドドドッ!!

 何故なら……

 四栞ししお 四織しおりの投擲短刀ナイフに対応していては陽子はるこに逃げられてしまうから。

 「御姫おひい様っ、こっちさね!」

 直ぐ前方から”王族特別親衛隊プリンセス・ガード”筆頭である十一紋しもん 十一といの部隊が迫るこの状況で、そんな暇は微塵も無いというのが至極真っ当な理由だった。

 ダダダッ!ダダダッ!

 ドドドッ!ドドドッ!!

 「さい……か」

 命の天秤を簡単に選択して無防備に自身の後を追う俺に、暗黒の瞳がチラリと一瞬だけ”信じられない”とばかりに俺を振り返る。

 ドドドッドドドッ!!

 「惚れた女の尻を前に!の女に構うわけないだろぅ!なぁ?陽子はるこぉぉっ!!」

 ドドドドドッドドドドドッ!!

 視線に勝手に応じて叫び、手綱をしごいて愛馬を更に加速させる。

 「………………バカ」

 そして、一途さをアピールする俺の言葉選びワードセンスに感動したのだろう、陽子はるこの視線はとてつもなく冷ややかだった。

 「死ね!死ね!死ね!死ね!シネ!シネ!シネ!シネ!しねっ!しねぇぇっ!」

 ――おっと!

 それはさてき……

 そんな無防備な俺に四栞ししお 四織しおりのスカート下に無数に装備された投擲短刀ナイフが牙を剥く!

 ――――

 「尾宇美おうみかたき尾宇美おうみでぇっ!わたし自身がぁぁ返すぅぅ!!はっはぁはぁぁーーっ!?がっ!がはっ!ごほっ……はっ……うぇっ」

 高らかな笑い声と、高らかに笑いすぎて咳き込む滑稽な叫びが響き――

 「とぅ!」

 続いてどこから現れたのかっ!?

 巨漢の鎧騎士が宙に舞って!はしたなくもスカートを捲り上げた三白眼少女に飛びかかった!

 ――――――――ガシィィン!

 「……クフッ!!」

 降って湧いた巨漢の来襲に!馬上にて不意のフライングボディーアタックを喰らった三白眼少女は、圧倒的体格差に簡単に押し潰され……

 「さぁっ!」「おいさっ!」「よはっ!」

 ドカッ!ドカッ!ドサァァッ!

 「うわわっ!四栞ししお様!……もう、む、無理ですぅぅっ!!」

 ヒヒィィン!!

 馬上は騎手を含めた三人……

 それに追加で飛び込んできた同じような巨漢の三人と、計六人のピラミッドが突如積み上がってその加重に馬の足はもつれる!

 ガッ!!――ドシャァァーー!

 そして馬諸共にその場で豪快に倒れたのだった。

 「見たきゃーー!真打ちヒロインは遅れてやって来ると漫画では決まってるのだぁぁ!はーーはっははぁーーっ!?がっ!がはっ!ごほっ……はっ……うぇっ」

 教養の欠片も感じられない声の主は、少し遅れでその事故現場に到着した低身長チビのツインテール娘。

 ガシャガシャと着込んだ自長よりも大きな鎧を持て余して”ぷるぷる”とつま先立ちで目一杯仰け反って威勢を張って高笑いを披露……

 そして見事に蒸せて涙目になる恒例のおバカ娘だ。

 「がは……うええ……きもちわる……いぃぃ……はっ!……き、菊河きくかわ 基子もとこぉっ、見参っ!!」

 「……」

 ――いや、今更……格好付け直しても遅いぞ

 本当にシリアスな場をぶっ壊す天性のバカ娘だと俺は呆れながらも感謝はしていた。

 ドドドッドドドッ!!

 自慢の暗器が不発のままで四人の巨漢に押しつぶされて埋もれた四栞ししお 四織しおりと、かしましいおチビなツインテール娘はその間にも流れる景色と共に小さくなって行く。

 「まぁ、けど……助かった、幼女」

 「にゃ!?にゃにおぉっ!!だから私は十九歳の淑女レディであるぞっ!すずはら さいきゃぁぁっ!!」

 もう既にかなりの距離があるにも拘わらず、おつむ扨置さておき中々に耳は良いツインテール娘はすっかり小さな影になっても賑やか極まりなかった。

 ドドドッドドドッ!!

 「……」

 ――て……

 気持ちを切り替え俺は本命に集中する!

 ドドドッドドドッ!!

 「くっ!」

 流石の暗黒姫様も、もう余裕は欠片も無い。

 それはうるわしき後ろ姿を見れば充分に確認出来た。

 「……」

 ――先に”最後の札”を切って俺の足止めを試みた陽子はるこだが……

 ――俺にも”切り札”はあった!

 そもそもこの強襲撃は”無垢なる深淵ダークビューティー”たる京極きょうごく 陽子はるこの思考パターンを解析できる”詐欺ペテン師”の鈴原 最嘉オレだからこそ可能な追跡だと陽子はるこ自身も考えていただろう。

 故に迅速さでやり過ごすことを優先するため単独に近い数で動いた!

 ――目論見通りだ

 ならばこの後は……

 陽子はるこは最後の最後で例え追い詰められたとしても”切り札”による時間稼ぎだけで事は済むと予定通り手札を切ったのだろうが……

 ――その思考には盲点が一つ!

 我が陣営には”覇王姫”つまりペリカ・ルシアノ=ニトゥが率いる長州門ながすど“の三砦の魔女トリアングルマギカが揃い踏みなのだ。

 そしてその一角にして、”智の砦”アルトォーヌ・サレン=ロアノフと並び称される”両砦”のもう一人の異能者……”武の砦”

 小柄で可愛らしい風貌とは裏腹に軍を率いては天性の直感と呆れるほどの強運を備え、凶悪なまでの軍の強さを誇る通称”戦の子”

 ――菊河きくかわ 基子もとこ

 あの少々おバカなツインテール娘は……

 自らの隊を窮地に陥れるような罠を回避する”異質”すぎる”武運”

 自らの隊が狙いを定めた獲物へと確実に辿り着く”神がかり的”な”武運”

 どんな戦国武将でも喉から手が出るほど欲する”最強の天賦”を二つとも併せ持つ反則娘である。

 ――無論、陽子はるこもこの娘の存在は考慮済みだったろう……

 そして、菊河きくかわ 基子もとこは恐ろしい戦のてんぴんに恵まれてはいるが、将としての能力値は恐ろしく低いのも事実だ。

 統率力の低さから率いられる兵力も二、三百が限度。

 おまけに武力も知力もほぼ皆無と……

 天は破格の異能という二物を与えたが、それを帳消しにするぐらいに武将としてはすこぶる低能という致命的なマイナス要因も漏れなく装備させた。

 絶妙に微妙な風味テイストの、ある意味、前衛芸術作品とさえ言える使い処に困る娘だ。

 滅茶苦茶クセがある駒であり、それを使いこなせるのは”あの覇王姫”だからこそで、なにより今回の様に終始圧倒的劣勢に追い込まれた局面では……

 ――”自らの隊を窮地に陥れるような罠を回避する異質すぎる武運”

 が発動され、攻撃的戦力としては全く機能しない。

 陽子はるこにしてみれば、”菊河きくかわ 基子もとこ”封じはこれで充分だったのだろう……

 ――ならばと!

 そんな菊河きくかわ 基子もとこからその劣勢な状況を完全排除した環境で動かせれば?

 菊河きくかわ 基子もとこは”勝ち筋”さえ見せてやれば必ず大将首に辿り着けるという、とびっきり反則な異能の持ち主でもあるのだ!


 「……」

 ――”勝ち筋”

 ――つまりは”縦深じゅうしん突撃陣”

 とどのつまり、俺の戦術は”縦深突撃陣そこ”に帰結する!

 今回の俺の策、その全ては”縦深じゅうしん突撃陣”だけに勝機を求めた大博打だったのだ。

 たとえ局地的で時間限定であろうとも!

 この瞬間、この領域に限っては!

 獲物へと確実に辿り着く”神がかり的”な”武運”が発動する!

 この組み合わせが成立した時、俺以外に辿り着けないと思われた真実に……

 ”盤面の魔女”が本営に!

 全く知略と縁の無い反則的な裏道けいろ菊河きくかわ 基子もとこの別働隊が出現し、陽子はるこが切った最後の札を潰す結果と成ったのだ!!

 ダダダッ!ダダダッ!

 「くっ……」

 ドドドドドッ!ドドドドドッ!

 ――すべては決した

 ドドドドドッドドドドドッ!!

 ――戦略、戦術、全ての才に於いて京極 陽子かのじょに劣るだろう鈴原 最嘉オレだが……

 「くっ……さいか……」

 ドドドドドッドドドドドッ!!

 ――こと逆境……”負ける経験”に関して俺は彼女を圧倒的に凌駕するっ!!

 ドドドドドドドドドドッ!!

 「はるこぉぉっ!!」

 俺は右手を大きく前方に伸ばし、そして遂に――

 「くっ!……さい……か」

 ――初めて……十五のあの邂逅からずっと、ずっと……

 ガッ!

 焦がれ続けた女の肩に!目一杯伸ばした指先が背後から触れた!!

 「っ!」

 1ミリでも繋がれば俺には充分!

 グラッ――

 そこから器用に手繰り寄せ、大きくバランスを崩させて――

 「きゃっ!」

 揺れる馬上から容易く落下させる!

 ――


 全速で疾走はしるる馬からの落下は通常重大な事故だ。

 して身体的に常人女性である陽子はるこならなおのこと、死に繋がる可能性もあり得る。

 ――ダッ!

 陽子はるこを落とした直後に俺も愛馬”瞬星しゅんせい”から跳び、そしてアクロバティックに彼女を空中で受け止めた!

 「っ!」

 「……」

 瞬間!漆黒の宝石と視線が交わるも――

 俺はそのまま彼女を両手だけでなく全身を使って抱き包んでいた。

 ――――ガッ!

 直後、一緒に矢のように流れる荒地に激突!

 「ぐっ!」

 衝撃と痛みに顔をしかめる俺に対して――

 文字通り壊れ物を扱う様に、優しくタオルで包み込むように、

 「……っ」

 俺の腕に包まれた陽子はるこに痛みは微塵も無いだろう。

 ガッ!――ガガッ!――ガッ!!

 そのまま二度、三度、二転、三転しながら俺の体は地面に叩き付けられ、都度削られて小石のように跳ね続ける!

 「ぐ!……はっ!……く……」

 木場きば 武春たけはるとの死闘で受けた骨折が軋み、全身が痺れるも俺は決して陽子はるこを離さない!

 そして――

 ガガッ!――ドシャァァーー!!

 散々に跳ね飛んだ挙げ句に、最後には数メートルも背中を削られながら地面を滑ってから俺はやっと停止したのだった。

 ――

 「…………うぅ……さい……」

 派手な事故同然の状況に遭っても全く無傷だった美姫は呆けた表情かおでムクリと上半身を起こし、何度もシャッフルされただろう頭を軽く振りながら現状を確認しようと……

 「……っ!?」

 ――ガッ!

 だが俺はそれより逸早いちはやく身を起こして、未だ呆けたままである彼女の後頭部を乱暴に掴んでいた!

 ――――――――ドシャッ!

 そしてそのまま、これまた乱暴に美姫の顔を地面に押し潰す!

 「っ…………うぅ」

 悲鳴を上げる間もなく”うつ伏せ”に押さえつけて、続いてその背に馬乗りになる俺。

 「さい……」

 ググッ!

 「……っ……か……あ……う……」

 至上の美姫と称えられる見目麗しき女性のご尊顔を、野蛮丸出しの雑さで荒野に押し着ける暴挙は――

 「ひ、姫様っ!!」

 「御姫おひい様っ!!」

 まさに彼女を信望する者の心をえぐる惨劇だろうが……

 「悪いな、陽子はるこ……」

 実は、実害は見た目ほどでなく、その辺はちゃんと手加減をしている。

 シュル――

 そして俺は、ポケットから取り出した布切れにて、押さえ込んでいる陽子はるこに後ろから目隠しをする。

 「……」

 ――神如き権能を現在いまは失っているとは言え”魔眼”だ

 用心する事に越したことは無い。

 ギュッ!ギュギュ!

 更に、馬乗りになったままの状態で俺は美姫の両手を後ろ手に拘束していた。

 「くっ……」

 目隠しでうつ伏せに組み伏せられ、無礼にも馬乗りになった男の手によって虜囚そのものに成り下がっていゆく京極きょうごく 陽子はるこ

 たとえその身が無傷であろうと……

 崇め称えられてきた絶世の美姫カリスマだけに、見た目の悲惨さは格別の見世物だ。


 ――ズザザザァァッ!!

 「なんてことすんだいっ!若造っ!!」

 馬を飛ばし、率いる部隊よりも一足先に辿り着いた十一紋しもん 十一といは砂煙を跳ねさせて横付けに急停止させた馬上から鬼の形相で怒鳴りつけてくる!

 「は、陽子はるこ様っ!!」

 そしてその直後に、全てを捨てて駆け着けただろうボロボロの十三院じゅそういん 十三子とみこは、その光景に血の気が引いた表情で固まっていた。

 「……」

 野蛮な男に暴挙の限りを尽くされ虜囚となった主君の姿。

 彼女達の忠誠心が本物、忠臣成ればこそ――

 「く……この……」

 「は……はるこ……さま」

 その心を引き裂くのには十分すぎる衝撃的センセーショナルな光景だろう。

 「……」

 ――俺にしてみれば当然それも狙っている

 グイッと、俺は無言にて拘束した陽子はるこを引き上げて立ち上がると――

 ドサッ!

 そのまま虜囚の陽子はるこを前に抱いたままで再び愛馬に跨がった。

 「……」

 「……」

 二人の王族特別親衛隊プリンセス・ガードだけでない!新政・天都原あまつはら軍は一兵卒に至るまで――

 本当に肌に突き刺さるほど殺意剥き出しの視線を三百六十度から俺にぶつけて来る。

 「…………怖いな」

 ――京極きょうごく 陽子はるこがこれまでどれだけ神聖視されていたか解る

 だが俺は……

 凍てつく敵意の中心であろうと、戦場全体に響き渡るよう声を張り上げてこの時の為に用意していた言葉を発するのだ。

 「新政・天都原あまつはら軍の全兵士に告げる!武器を捨て両手を頭に、その場に膝を折って大地にひざまずけっ!!」

 ――――――――っ!!

 我が命に即応する声はひとつも無い!

 「……」「……」「……」「……」

 誰一人従わず、そして全ての新政・天都原あまつはら兵士が眼光は俺を呪い殺す勢いのままだ。

 ――だろうな……

 戦場全体を見渡せば見渡すほどに――

 負けを認めるなんて決して納得のいかない状況だ。

 「只で済むなんて思うんじゃないよっ!鈴原 最嘉ガキ!」

 十一紋しもん 十一といが殺気を代表し、白鞘に手をかけ馬を前へ……

「これで戦は終わりだ。まだ続行するというのなら京極きょうごく 陽子はるこくびり殺す!」

 俺はその一歩をそういう台詞で止めた。

 「あ?……なんだってぇ?アンタ、自分の置かれた状況が……」

 「といねぇさんっ!!」

 実際、それを完全に止めたのはもう一人の王族特別親衛隊プリンセス・ガードである十三院じゅそういん 十三子とみこだった。

 「十三子とみこ……」

 「……」

 怒りを抑え切れない切れ長の瞳で同僚を睨む女だが、それを銀縁眼鏡の女は無言で首を横に振って諭す。

 ――そうそう、そういう事だよ、”といねぇさん”とやら

 俺は駄目押しとばかりに腕の中の虜囚をグイッと!更に密着させて、

 その細首に腕を絡めて”へし折る”パフォーマンスを見せつけた。

 「ちっ……解ってるさね、御姫おひい様が在ってのアタシたちさ……ち……ざまぁないね」

 抜きかけた白鞘を戻しガシャンと地面に放り出すと、馬を降りて――

 ドサッ!

 十一紋しもん 十一といはその場で両手を後頭部で組み、膝を折ってひざまずく。

 ――っ!?

 その行動に多くの新政・天都原あまつはら兵士が目を見開く中……

 「……」

 続いて十三院じゅそういん 十三子とみこも下馬して同様にひざまずいた。

 「……賢明だな、王族特別親衛隊プリンセス・ガード

 この尾宇美おうみ決戦を始める前――

 短期決戦を想定ゆえにお互い本拠地同士を狙う戦になるだろう。

 まるでそれは”盤面遊技ロイ・デ・シュバリエ”の様相であろうと。

 臣下の草加くさか 勘重郎かんじゅうろうが例えた通り……

 他のどの様な勝利条件よりもお互いの王を獲る事が優先されるであろう事実を、一廉ひとかどの将帥ならば理解している。

 ザザザザザッ!ザザザザザッ!

 そして――

 崇拝する京極きょうごく 陽子はるこの無残な姿に続き、主将達が相次いで降伏を受け入れたのを目の当たりにした新政・天都原あまつはら兵士達は全て、その場にひざまずいて降伏を受け入れたのだった。

 「…………終戦だ」

 馬上の俺は静かに頷いた。

 ――――――――――ワアァァァァアァァァァッ!!

 少し間を置いて現実を認識した我が兵士達から歓声が上がる!

 「か、勝ったぞぉぉ!!」

 「我々臨海りんかい軍の勝利だぁぁっ!!」

 ワアァァァァッ!!ワアァァァァッ!!

 ワアァァァァッ!!ワアァァァァッ!!

 終始劣勢で、壊滅寸前からの大逆転劇だ。

 ワアァァァァッ!!ワアァァァァッ!!

 ワアァァァァッ!!ワアァァァァッ!!

 この狂喜乱舞ぶりも無理ないだろう。


 ――ただ……

 「……はる」

 俺の腕の中で力なく撓垂しなだれた美姫が――

 「…………」

 美しい容姿を泥に穢された陽子はるこが――

 虜囚となった以降に一言も言葉を発しなかったのは……

 「…………そうか」

 俺が尾宇美おうみ決戦前に自らに課した――

 無垢なる深淵ダークビューティーを亡くすことなく終結させる方法……

 鈴原すずはら 最嘉さいか”史上最も困難な戦争ミッションの失敗。

 最悪の行く末を意味していたのだった。

 第十四話「衣衣恋恋」中編 END


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