上 下
8 / 43

しおりを挟む
スカイ視点

「…けど……こ……のは…」
「で…あん……ば……ひ……?」

__何か、聞こえる。

「み…んちゃ…ど……る…」
「…か………ん…めて……」

相談のような、喧嘩のような、そんな声が聞こえる。
彼女(彼かもしれない)等は仲が良いのだろうか
きっと、俺とは違って対等な関係___

「怪我人に頼んなドアホ共が!!
言い合いならよそでしやがれ!!
俺は喧嘩解決屋じゃねーっての!!」

___撤回します対等じゃなくて圧倒的強者がいます舐めたこと言ってすんません。

「あ___?」

そんな思考に浸っていると、ふと、口から声が出た。
声は予想以上に洞窟内に響き、全員の視線が俺に集まるのがわかる。

「うぉーい、起きてるー?」
「お、きた」

声はカラカラだ。
声を出すと喉が痛み、あり得ないほどに喉が乾いていた。

「み、ず。」
「んぇ?水?あーなるほど。」

目の前にいる緑髪の女は俺から目を離し茶髪に水を取るよう声をかけた。
そして、俺に問いかける

「自分の名前わかる?」
「スカイ」

カラカラの声で何とか返答する。
すると、目の前の女は少し目を見開き、考え込むように下を向いて何かを呟き出した。

そして、ふと俺の方を見やり、こう告げた。

「お前、綿空スカイだよな?」
「え、」

その名前は、前世の、俺のゲームの名前で、誰も、それこそ、前世の仲間以外、誰も知らないはずの。 

その名前を、俺に向けて口にした

「そう、だ、けど」
「あやっぱり」

俺が、どうにかして答えを返すと、女は当たり前のように納得した。

そのタイミングで、茶髪が水を持ってきた。

「やほやほー!ルクアちゃんだよーん!」

良くも悪くも、その女の言葉が俺の緊張を少し和らげた。
俺は半ば奪い取るような動作でコップの中の水を飲み干し、緑髪に疑問をぶつけた。

「なんで俺の名前知ってんだよ」
「アレ?頭の悪いスカイくんにはおわかりにならない??」

うっざ。

っと、まぁ俺バカって言われるけどそこまで馬鹿じゃねぇし、ちょっと考えりゃわかるわ。

「お前も転生者、とか?」
「ピンポンピンポーン」

緑髪、いやミカンが煽るような口調で告げる。うぜぇ。

「俺は立華ミカン」
「ふっふーん!ルクアちゃんなのだぁ!」

変わらない。ゲーム内の時と。
変わらない。変わってない。
ルクアがふざけた口調で話し、その後か前にミカンがいつもの淡々とした口調で話す。

不意に、涙が込み上げてきた。

この世界に転生してきて、不安だったのに。
仲間ができて嬉しかったのに。

俺は、いつも不幸だった。

前世アッチでも、そして、今世こっちでも、苦しかった。

ゲームの仲間は、一直線に突っ込んで行くばかな俺に、合わせてくれて、認めてくれて。
嬉しかったし、いたずら三人組とか呼ばれるぐらいにはいたずらもした。

でも、俺を見捨てたりしなかった、仲間達。

それが、この世界にもいる。

そして、今、ここにいる。

俺は、泣いていた。
自分でもわからないうちに。

「っあ、え、なん、で」

つらくて、苦しくて、悲しかったことが、全部、流れ込んできたみたいに、涙が溢れてきた。

「え、あ、うぁ、」

俺は、怖かった。

死ぬのも嫌だ。
痛いのも嫌だ。
一人でいるのも嫌だ。
奪われるのも嫌だ。

「っう、えあ、う」

うまく言葉に出来ないけど、何かが込み上げてきて。

「お疲れさん」
「そーだねぇ!よく頑張ったよスカイ君!!」
「お疲れ様、スーちゃん。」

みんなが俺の背中をさすっている時には、俺はみっともないだろうけど、声を出して泣いていた。

みんなは、それを受け入れてくれた。

その日は、俺が寝るまで、俺は泣いていた。

余談だが、俺が寝ているときに誰が俺を枕にするかで争ってきたやつが二人いるらしい。

結果だけ言うと朝起きたらルクアとサラが頭にたんこぶこ出来てたよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

転生した俺が神様になるまで

HR
ファンタジー
ゲーム廃人の佐藤裕は強盗に銃で撃たれて、異世界に転生! ・・・の前に神様とあって 「すべての職業になったら神になれるよ。」 と言われた佐藤裕改め、テル=ハングルはアルファ王国を支えるハングル家に転生して神様になる っていう感じの作品です。 カクヨムと、小説家になろうでも連載しています。 面白いと思ったら ブックマーク、感想、レビュー、評価をお願いします。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

転生したらチートでした

ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!

まさか転生? 

花菱
ファンタジー
気付いたら異世界?  しかも身体が? 一体どうなってるの… あれ?でも…… 滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。 初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

処理中です...