婚約者の愛人がまさかの前世の恋人なんです！？

1章

婚約者の顔合わせ

今日が初めての顔合わせ、ここまでよく頑張ったと思う。
顔も性格もよく分からない人を調べあげて好みや趣味、苦手なものを把握とは……
これが殿下との婚約なのだろうか……
そりゃあ結婚出来ない人もいるだろうな。
結婚出来てもきっと別れる。

調べ上げた所、長男だからと甘やかされて育ったのだろうな。
傲慢な性格、か……
でも、まだ情報を入手しただけ、まだ相手のことを全然知らない身、もしこの情報が間違えていたりでもしたら、私は速攻婚約破棄、精進しなければ、

なんで前世も今世もこんなことに苦労しなきゃなのかなー
私は神様に嫌われてる？？？有り得る…

もしかしたらはるか昔に何か大罪でも犯したのかなー
そうだとしたらこの環境は分かるな…
もしかして殺人鬼とか？？？
怖いなぁー

「はぁ、」

「お嬢様…その姿勢はどうでしょうか？
もう殿下との顔合わせは目前だと言うのに」

グチグチと私の隣で文句を言いたれる女性
プリッツ

うん、いつも以上に気合い入ってんなー
はぁ、なんでこんな時だけ、、

「リラックスしとかなきゃダメだよプリッツ」

「リラックスし過ぎです。それはもうダラダラしているのと一緒ですよ…」

そう言って私の隣に腰かける。
プリッツ、あなたも大概座り方おかしいわよ、
そうとは言えずにプリッツを見る。

「お嬢様、、どうかこの日だけは成功させてください。」

「…珍しい、私にそんなこと言うなんて」

「…あなたにマナーを教えたのはこのためと言ってもいいからですよ。大人の事情というものです。」

そう言ってプリッツは心配そうな瞳で私を見る。
なぜそのような目で見るのか分からなく、不思議だった。

「なぜ？？私は」

「お嬢様、、現実を見てください……」

真剣な顔でそう言われた
なぜ、現実？？
よく分からない
私はいつも真面目に現実を見ている
だってそうでしょう？？
いつもなぜ私が頑張っているのか
それは

「お嬢様、私はあなたのような人を何人も見てきました。輝きに満ちた瞳、堂々たるそのお姿、、でも、その全員はいつの日か現実を見て、死んだ眼でこちらを見やるのです。」

「…」

「何故だと思います。諦めの悪い、自分の信念を貫いてきた令嬢はいつの日か気づくのです。」

「……私は違う…現実なら見てる。プリッツあなただって見たでしょ私の頑張りを努力を！！傍で見ていたあなたなら！！」

「お嬢様、聞いてください……もう貴方は立派なレディーなのです。もう子供ではありません……」

私は足元を見る。もう、小さい頃とは違う身長なので見る景色も違う、彩る世界もどんどん変わる。容姿も変わり大人っぽくなっている。

「どうしたらいいのよ……なら私はどうしたらいいのよ！！！！どこにも無いの、私の未来が……なんで、なんで」

「お嬢様、もう、前を見てください」

プリッツは私に鏡を向けて自分の姿を露わにする。
あーあ、もうこんなに変わってる。
いつぶりだろうか鏡を見るのは……
輝きに満ちていた瞳とは、どのようなものか忘れてしまった。
何も無い、ただその瞳だけは、私の唯一の救いだった。
自分は自惚れていた。
惚けていた、自分が何者になれるか分からなくて理想を追い求めて頑張ったのに、何もかも忘れて新たな道を歩もうと思ったのに……

「なんでこんなに悲しいの」

鏡の中の人物は悲痛な顔で泣き叫んだ。
あーぁ、目を腫らしてしまったら、婚約が台無しになってしまう。

「お嬢様、お嬢様」

「プリッツー……」

プリッツは私の肩を抱く、
もう、こんな事ないだろう、
なぜなら私は殿下の婚約者になるのだ
弱味なんて見せられない。
それに、今の私を彼女に見せる気もない。
最初は幸せだった。
先のことをあまり考えなかったから、
お父様とお母様のことをパパ、ママと呼んでいた。
強くなろうと必死に頑張った。
その努力がいつか報われると信じて……
なのに、

「こんなの、あんまりよ……」

「えぇ、分かりますよ。私もそうです。でも、ここからなんです、ハナ、あなたの人生は、、」

「私の、人生？？？」

「あなたはハナ･ブラウスなのです。私は信じております。いつか公爵夫人のようなとても素晴らしい御方になることを……」

涙ぐんだ目でプリッツは私に元気、勇気、根気をくれた。
そうだ、私はハナ･ブラウスなのだ。
私は、まだ
やるべきことがあるのだ

さぁ、扉を開いて私の第一歩を進もう