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土曜夜いびきの主は炬燵猫
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どようよる いびきのぬしは こたつねこ
ある冬の日のことです。
いつも通り、炬燵に入ってのんびり夕食を摂った後、テレビを見ながらワイン(といっても安いものですが)を飲んでいると、炬燵で寝ていた猫が「にゅふぅ~」と長い鳴き声を発しました。
どうやら、いびきをかいたようです。
猫もいびきをかくんですね……
のんびりの象徴のような猫が見せて(聞かせて?)くれた、さらにのんびりの姿。
迷わず、句にすることにしました。
今回は題材が明確なので、まずは句の中に入れたい要素を17音の中に入れらるかどうかをチェック。音数の確認なので、破調もお構いなしで作ります。
食後のワイン炬燵猫の鼾
ワイン飲み干せば炬燵猫の鼾
こたつ猫の鼾聞くほどにワイン
最初にできたのがこの3つ。上から、16音、17音、17音です。これで音数は問題ないと確認できました。
そして3つめで「ほどに」を入れたことで、のんびり感を強調する方向性に気付きます。
実際、ゆっくりしてましたからね。休日の前の日だったので。
ともあれ、音数に収まることが確認できたので、次の推敲過程は、字余り字足らず含めた五・七・五、あるいは句またがりの形に挑戦。
ワイン飲めば鼾は長く炬燵猫
9時過ぎのワイン炬燵猫のいびき
夜9時のワインこたつ猫の鼾
こたつ猫の鼾聞けばワインは空
こたつ猫鼾はワイン空ける頃
炬燵から猫の鼾か空の瓶
炬燵猫の鼾酒瓶は空に
夜十時ワインと炬燵猫の鼾
夜十時ワインに炬燵猫の鼾
ひとまず、形を整えることも問題なさそう、と確認。
そしてこの過程で、のんびり感の強調も意識しています。「9時」や「夜十時」といった時刻や「空」という表現がそれ。
ちなみに「夜十時」のほうは若干誇張入ってます。「9時」の形を見直した際、俳句は本来縦書きなので数字は漢数字のほうが良いのでは、と考え、どうせなら一時間遅らせてみるかという発想でのことでした。
9時スタートの2時間番組が半分過ぎた頃でもありますからね……
この段階で気づいたのが、お酒の瓶が空だという情報を入れるよりは、時刻を具体的にしたほうが良い、ということ。
そして、時刻でなく曜日で攻めたらどうか、と考えて次を考案してみました。
土曜夜ワインに炬燵猫の鼾
「土曜夜」です。翌日は日曜。
夜更かしできるタイミングだということを明示することで、猫のいびきを聞くほどにのんびりしてたのだ、と示す効果を狙いました。
そしてこの形が割と気に入り、一度はこれを使おうとも考えました。
が、日をおいて見てみると、なんとなく詰め込み過ぎの感覚が。
土曜の夜にワインを飲んでいたら炬燵猫のいびきが聞こえたのだ、それくらいのんびり過ごしていたのだ、という情景を表現できているとは思うのですが、表現した「だけ」で終わってしまっているような気がしたのです。
説明文としては分かるんだけど感慨がわかない、という感じ。
なので、試しに少しいじってみました。
炬燵猫いびきの響く土曜夜
炬燵猫いびき響いた土曜夜
土曜夜いびきの主は炬燵猫
こんな感じに。
お酒の情報が消えてしまいましたが、こちらのほうが猫のいびきを強く意識できます。
引き算の効果、なのでしょうね。
ちなみにこの3つの形、いびきは響いて当たり前のものですし、句の状況からいびきの主が猫であることは明確なので、それらをわざわざ書く意味があるか、という点は悩みどころでした。
いつもの推敲のやり方だと、書かなくても分かることは書かずに音数を削る、情報の重複は避ける、という方向が基本だからです。
ですが、その基本を破ったほうが詩としての印象が高まるのであれば話は別です。
基本が大事とはいっても、基本も応用も結局は手段の一つに過ぎませんからね。目的のほうがより大事。
そもそも、今回は「炬燵猫」と「いびき」の8音で言いたいことが言えてしまうので、音数を削って他の情報を入れこむ必要性に乏しいのです。
そんなわけで、「土曜夜いびきの主は炬燵猫」を採用することにしました。
この形だと、いびきをかいていたのは猫だった、というオチが最後に示されるので趣も出るかな、と。
ちなみに、お酒の情報を入れた次の形も対案として作ってはいました。
晩酌や鼾の主は炬燵猫
晩酌を鼾で締めた炬燵猫
晩酌や締めは炬燵猫のいびき
晩酌や肴は炬燵猫のいびき
「ワイン」だと音数の座りが悪いので「晩酌」に。「いびき」の前後両側に平仮名が入ってしまうところは「鼾」にしています。
これらの形も味があるのですが、主役の「炬燵猫」に対して「晩酌」だと脇役としては強すぎる、というのがネックでした。
そう考えると、「ワイン」を使った形も脇役が強すぎたのかな、と。
なんだか、役者の組み合わせって難しいですね……
いつか、猫とお酒、両者を上手く組み合わせた句を作ってみたいものです。
ある冬の日のことです。
いつも通り、炬燵に入ってのんびり夕食を摂った後、テレビを見ながらワイン(といっても安いものですが)を飲んでいると、炬燵で寝ていた猫が「にゅふぅ~」と長い鳴き声を発しました。
どうやら、いびきをかいたようです。
猫もいびきをかくんですね……
のんびりの象徴のような猫が見せて(聞かせて?)くれた、さらにのんびりの姿。
迷わず、句にすることにしました。
今回は題材が明確なので、まずは句の中に入れたい要素を17音の中に入れらるかどうかをチェック。音数の確認なので、破調もお構いなしで作ります。
食後のワイン炬燵猫の鼾
ワイン飲み干せば炬燵猫の鼾
こたつ猫の鼾聞くほどにワイン
最初にできたのがこの3つ。上から、16音、17音、17音です。これで音数は問題ないと確認できました。
そして3つめで「ほどに」を入れたことで、のんびり感を強調する方向性に気付きます。
実際、ゆっくりしてましたからね。休日の前の日だったので。
ともあれ、音数に収まることが確認できたので、次の推敲過程は、字余り字足らず含めた五・七・五、あるいは句またがりの形に挑戦。
ワイン飲めば鼾は長く炬燵猫
9時過ぎのワイン炬燵猫のいびき
夜9時のワインこたつ猫の鼾
こたつ猫の鼾聞けばワインは空
こたつ猫鼾はワイン空ける頃
炬燵から猫の鼾か空の瓶
炬燵猫の鼾酒瓶は空に
夜十時ワインと炬燵猫の鼾
夜十時ワインに炬燵猫の鼾
ひとまず、形を整えることも問題なさそう、と確認。
そしてこの過程で、のんびり感の強調も意識しています。「9時」や「夜十時」といった時刻や「空」という表現がそれ。
ちなみに「夜十時」のほうは若干誇張入ってます。「9時」の形を見直した際、俳句は本来縦書きなので数字は漢数字のほうが良いのでは、と考え、どうせなら一時間遅らせてみるかという発想でのことでした。
9時スタートの2時間番組が半分過ぎた頃でもありますからね……
この段階で気づいたのが、お酒の瓶が空だという情報を入れるよりは、時刻を具体的にしたほうが良い、ということ。
そして、時刻でなく曜日で攻めたらどうか、と考えて次を考案してみました。
土曜夜ワインに炬燵猫の鼾
「土曜夜」です。翌日は日曜。
夜更かしできるタイミングだということを明示することで、猫のいびきを聞くほどにのんびりしてたのだ、と示す効果を狙いました。
そしてこの形が割と気に入り、一度はこれを使おうとも考えました。
が、日をおいて見てみると、なんとなく詰め込み過ぎの感覚が。
土曜の夜にワインを飲んでいたら炬燵猫のいびきが聞こえたのだ、それくらいのんびり過ごしていたのだ、という情景を表現できているとは思うのですが、表現した「だけ」で終わってしまっているような気がしたのです。
説明文としては分かるんだけど感慨がわかない、という感じ。
なので、試しに少しいじってみました。
炬燵猫いびきの響く土曜夜
炬燵猫いびき響いた土曜夜
土曜夜いびきの主は炬燵猫
こんな感じに。
お酒の情報が消えてしまいましたが、こちらのほうが猫のいびきを強く意識できます。
引き算の効果、なのでしょうね。
ちなみにこの3つの形、いびきは響いて当たり前のものですし、句の状況からいびきの主が猫であることは明確なので、それらをわざわざ書く意味があるか、という点は悩みどころでした。
いつもの推敲のやり方だと、書かなくても分かることは書かずに音数を削る、情報の重複は避ける、という方向が基本だからです。
ですが、その基本を破ったほうが詩としての印象が高まるのであれば話は別です。
基本が大事とはいっても、基本も応用も結局は手段の一つに過ぎませんからね。目的のほうがより大事。
そもそも、今回は「炬燵猫」と「いびき」の8音で言いたいことが言えてしまうので、音数を削って他の情報を入れこむ必要性に乏しいのです。
そんなわけで、「土曜夜いびきの主は炬燵猫」を採用することにしました。
この形だと、いびきをかいていたのは猫だった、というオチが最後に示されるので趣も出るかな、と。
ちなみに、お酒の情報を入れた次の形も対案として作ってはいました。
晩酌や鼾の主は炬燵猫
晩酌を鼾で締めた炬燵猫
晩酌や締めは炬燵猫のいびき
晩酌や肴は炬燵猫のいびき
「ワイン」だと音数の座りが悪いので「晩酌」に。「いびき」の前後両側に平仮名が入ってしまうところは「鼾」にしています。
これらの形も味があるのですが、主役の「炬燵猫」に対して「晩酌」だと脇役としては強すぎる、というのがネックでした。
そう考えると、「ワイン」を使った形も脇役が強すぎたのかな、と。
なんだか、役者の組み合わせって難しいですね……
いつか、猫とお酒、両者を上手く組み合わせた句を作ってみたいものです。
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